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2003年までが明らかになったIntelのサーバー&ワークステーションCPU--その2


●0.13μmのPrestoniaを一気に普及させる

 Intelは、先週サンノゼで開催された「Microprocessor Forum 2001」で、2003年までのサーバー&ワークステーション向けCPUロードマップを明らかにした。月曜には、そのうちハイエンドCPUの動向を明らかにしたが、今回はそれ以下のフィールドを整理したい。

 まず、汎用のデュアルプロセッサ(DP)サーバーとフロントエンドのラックマウントサーバー。このエリアでは、IntelはPentium 4アーキテクチャベースのDP向け次世代CPU「Xeon(Prestonia:プレストニア)」を強力にプッシュする。現状では、この市場セグメントはPentium III Xeon/Pentium III-Sという旧アーキテクチャのままになっているが、IntelはPrestoniaで一気にそれを置き換えるつもりだ。

 業界関係者によると、Prestoniaは0.13μm版デスクトップPentium 4(Northwood:ノースウッド)と同様2.2GHzで来年第1四半期に登場、第2四半期中には2.4GHz、来年中盤には2.53GHz(533MHz FSB)へと移行するという。PrestoniaのコアはNorthwoodそのままで、512KBのL2キャッシュを搭載、クロック向上のペースもデスクトップPentium 4とほぼ変わらない。

 また、Intelはここからプロセッサのブランディングの仕切りを変える。つまり、シングルプロセッサがPentium 4でデュアルがXeon、4way以上がMP版Xeonと明確に切り分けられるようになる。従来のPentium IIIがシングルからデュアルだったのとは大きな差だ。デスクトップCPUはシングルという方向性を明確にしたことになる。狙いは、いくつか考えられる。デュアル市場向けCPUをできるだけデスクトップCPUの価格競争から遠ざけることや、デュアルCPU構成相当を実現するHyper-Threading技術のデスクトップへの導入への布石などだ。

●プラットフォームの問題で消えたFoster

 Intelは、もともとこの市場には0.18μm版Xeon(Foster:フォスタ)+RDRAMベースチップセット「Intel 860(Colusa:コルーサ)を持ってくる計画だった。それが、けっこう早い段階で、Foster+ServerWorksの「GC-HE」チップセットプラットフォームに変わった。これは、RDRAMベースだとメモリ容量に制約があったためだと言われている。

 ところが、この夏にはFosterの投入自体が取りやめとなってしまった。サーバー版Fosterの中止について言われている理由は、プラットフォームとなるGC-HEがなかなか安定しなかったためと言われている。Fosterがずれ込んでしまい、Prestoniaとの時間差がなくなってしまったため、XeonはPrestoniaでスタートすることにしたというものだ。

 実際、GC-HEのバグについては非常に多くの業界関係者が指摘している。ある業界関係者は「ServerWorksはFSBだけでなくメモリインターフェイス、I/Oブリッジの3つを同時に変えようとした。そうしたら、バグフィックスが全然追いつかなくなってしまった」と指摘する。

 このFoster+GC-HEのローンチ失敗の影響は、DRAM業界でとくに大きかった。今年の1~2月頃はDRAM関係者の多くが、もうすぐServerWorksでDDRメモリサーバーが立ち上がるからと期待していた。あるDRAM業界関係者は「ServerWorksの遅れが今年前半のDDRの最大の誤算。サーバー向けにx4の256Mbit DDR SDRAMを用意してたのだが、結局出なかった」と嘆く。国内DRAMベンダーは、サーバー→デスクトップで、まず高付加価値高価格からDDRを導入という流れを考えていたために当てがはずれてしまった。

 ちなみに、今週前半までの「Intel Server CPUコアの移行推測図」で、デュアルサーバーにFosterが入っていたのは、こちらのミス。じつは、この図は夏前に作った図を改造して作ったのだが、その際に、Fosterの部分を取り忘れていたのだ。皮肉なことに、間違いがロードマップの変化を反映してしまったわけだ。もっとも、現実的にはワークステーション向けXeon(Foster)はすでに発売されているわけで、当然、それを使うサーバーソリューションも世の中にはある。

●サーバーはXeonでDDRメモリへと移行

 IntelがPrestoniaで一気にメインストリームのサーバー市場もPentium 4アーキテクチャに持っていこうとしているのには2つの理由がある。

 ひとつは0.13μmで製造されるPrestoniaの熱設計消費電力(TDP:Thermal Design Power)が、現行のXeon(Foster)と比べてかなり低いことだ。そのため、ラックマウントの1U(約44mm厚)または2U(約88mm厚)といったフォームファクタにも、比較的楽に搭載できるようになる。あるベンダーは、ラックマウントではFosterとPrestoniaではずいぶんと設計の容易さが違うという。

 もうひとつのもっと大きな理由は、DDRチップセットが出揃うことだ。Prestonia用のデュアルCPU対応チップセットは、Intelから「Plumas(プルーマス)」、ServerWorksから「GC-LE」「GC-HE」、VIA Technologiesから「P4X266(またはその後継)」が提供される。

 PlumasとGC-LEはDDR200サポートのデュアルDDRインターフェイス(ダイレクト)で、3.2GB/secのメモリ帯域(FSB帯域とマッチ)、最大8DIMM、16GBのメモリ容量をサポートする。DDRメモリのサポートにより、サーバー市場で要求される大容量メモリ搭載が可能になる。Plumasは533MHz FSB登場と同時に対応版も投入される。533MHz FSB版ではDDR266もサポートされると言われている。また、メモリをシングルチャネルにしたローコストプラットフォーム用「Plumas LE」も予定されている。

 ちなみに、同じServerWorksのGC-LEとGC-HEの最大の違いはメモリ。GC-LEがDDRをダクレクトコネクトするのに対して、GC-HEはリピータチップをかませる。GC-HEは4CPU+4チャネルDDRメモリ構成が可能なので、よりハイエンド向けだ。デュアル市場ではGC-LEの方が、コスト面やメモリレイテンシ面で有利になる。

 サーバー向けボードは、Intel自身も、PlumasとGC-LE、GC-HEのそれぞれを使った製品を計画中と言われる。サーバー製品を手がけるボードベンダーも、来年1~2月に製品投入の計画を立てている。

 こうした流れで、Intelベースのサーバー市場も、遅れはしたが来年からデスクトップと同時にDDRメモリの波に乗ることになる。モバイルも同時期にDDRメモリの導入が始まり、ワークステーションも来年中盤にはDDRメモリ化が始まる。そのため、来年後半にはIntelプラットフォームは、バリュー以外のオールセグメントでDDRメモリへの移行が始まることになる。

●2003年にはDeerfieldとNoconaが登場

 また、IntelはラックマウントサーバーでもMcKinley(マッキンリ)-Madison(マディソン)の次世代IA-64プロセッサを持ってくる。実際、今年2月のIDFではMcKinleyベースの1Uサーバーのコンセプトモデルを公開している。とはいえ、CPUユニット全体の消費電力が数百WのMcKinleyを1Uに入れ込むのは並大抵ではなく、このモデルも異常に巨大なファンを備えていた。Intelがそこまで苦労してIA-64をフロントエンドに持ってくる理由は、今のところよくわからない。ひとつには、それだけラックマウントサーバーが上に向けても成長すると見ていることだろう。Madisonになると、TDPが下がることも見越していることもありそうだ。

 もっとも、2003年中盤になると、ローコスト版IA-64CPUの「Deerfield(ディアフィールド)」が登場するため、状況は変わる。Deerfieldは、Madisonと同世代の0.13μm版IA-64で、デュアルプロセッサ市場向け。現在判明しているMadisonとの違いはL3キャッシュサイズで、Madisonが6MBなのに対してDeerfieldは3MBと半分のL3キャッシュしか持たない。

 そのため、ダイサイズ(半導体本体の面積)は200平方mm台になると予想される。この予想が当たっているとすると、0.18μm版Pentium 4(Willamette:ウイラメット)の217平方mmとそれほど大きく変わらなくなる。つまり、コスト的にもIA-32系CPUに近づいてくると見られる。おそらく、チップセットもIntel 870よりローコストなものが提供されるだろう。ただし、それがIntel製なのかServerWorks製なのかはわからない。ちなみに、ServerWorksもIA-64向けチップセットを計画している。

 しかし、コストが下がるからと言ってDeerfieldが市場に大きく浸透するとは限らない。2003年のデュアルプロセッササーバー市場では、IntelがもうひとつCPUを持っているからだ。これは「Nocona(ノコーナ)」。IA-32ベースで「スレッドレベルパラレリズム(TLP:Thread-Level Parallelism)」技術をインプリメントしたCPUだ。

 IntelはPrestoniaをNoconaで完全に置き換えると思われる。Noconaのマイクロアーキテクチャが、Pentium 4をベースに拡張したものだとすると、クロックはこの時点で3GHzを大きく越えるだろう。また、Intelが8月のIDFで明らかにしたHyper-Threadingと似たような技術をNoconaにインプリメントするなら、デュアルNoconaは4スレッドを並列に処理できるようになる。つまり、論理プロセッサ数なら4CPU相当になるわけだ。

 チップセットもNoconaの時点で一新されると思われる。これは、おそらくFSBが変わる(クロックだけ?)ためだ。デスクトップのSpringdaleに相当する新世代チップセットが登場するだろう。また、Microprocessor Forumで会ったある業界関係者によると、DRAMベンダーは2003年のフェイズでDDR IIへのマイグレーションを促進しようとしているという。そのため、Nocona用チップセットがDDR II対応になる可能性も高いと思われる。


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(2001年10月25日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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