|
●次期RDRAMチップセット「Tulloch」が消えた
IntelはRDRAM路線から大きく後退、DDR系メモリへの傾斜を一気に強めた。Intelのチップセットロードマップに従うなら、来年中盤は、パフォーマンスデスクトップPCだけでなくワークステーションでも、DDRメモリが主流となるようだ。また、10月初めの台湾取材では、Intelが一部のOEMにしか明かしていない2003年のチップセットもある程度明らかになった。それによると、2003年には完全にトップツーボトムでDDR系メモリが普及することになるようだ。Intelが、シリアルメモリへの道程と考えていたRDRAMへの移行は、少なくとも当面は後退したことになる。
Intelは、最近、OEMメーカーに対してロードマップの変更をアナウンスした。PC Watchサーバーには、OEMメーカーからの情報をベースにしたチップセット推定ロードマップをアップした。ただし、2003年のチップセット、つまり、「Springdale(スプリングデール)」や「ICH5」についてはまだ不明の部分が多く、2003年の部分はどこまで正確かわからない。
今回のロードマップで、チップセットでもっとも変わったのはデスクトップ&ワークステーションだ。まず、デスクトップPC向けの次期RDRAMチップセット「Tulloch(タラクまたはトゥルッシュ)」が、今回のロードマップから消えた。キャンセルになったわけではなく、復活する可能性もあると説明を受けたOEMメーカーもあるそうだが、そのあとのチップセット計画を考えると、事実上なくなったと考えていい。Tullochに関しては、すでに今年7月頃からなくなるという情報が飛び交っており、9月までにはかなり信頼性の高い筋からTullochキャンセルの情報が入っていた。今回はようやくそれが公表されたに過ぎない。
その代わり、来年中盤にはIntel 850のFSB(フロントサイドバス)を533MHz対応にした「Tehama-E(テハマ-E)」が登場する。これは、来年中盤から登場する533MHz FSB版Pentium 4に対応した拡張だ。ただし、Tullochで約束していた、高速版RDRAM「PC1066」やローコスト版RDRAM「4i」、RDRAM 1チャネル構成のサポート(現在のi850は必ず2チャネルで構成する必要がある)などはなくなったと見られる。そうすると、RDRAMプラットフォームをより低コスト化するという、今年2月のIDFでIntelが示したヴィジョンも消滅したことになる。このほか、Tehama-EはUSB 2.0をサポートするICH4には対応しないという情報もある。
●DDRチップセットBrookdale-D/E/G/GLが来年登場
Tullochの消滅と入れ替わるように、来年中盤にIntelはデスクトップPCとワークステーションで、合計5つのDDRメモリチップセットを投入する。まず、パフォーマンスデスクトップでは、「Brookdale-E(ブルックデール-E)」と「Brookdale-G(ブルックデール-G)」が登場する。
Brookdale-Eは、来年1月に登場するDDR版Intel 845(Brookdale-D)の強化版。533MHz FSBに対応するほか、ICH4をサポートする。メモリは、Brookdale-Dと同様にDDR200とDDR266の両方をサポートするが、DDR333サポートは今のところ予定されていないという。
Brookdale-Gは、グラフィックスコア統合版でこちらも533MHz FSBとICH4をサポートする。Brookdale-Gのグラフィックスは、モバイルチップセットIntel 830Mシリーズに統合されているものと基本的には同じだと言われる。Brookdale-E/Gは来年第2四半期に量産、おそらく第3四半期に発表と見られるが、若干前倒しになる可能性もあると言う情報もある。メモリは、PC133 SDRAM/DDR200/DDR266をサポートする。
IntelはCeleronブランドでも、Pentium 4アーキテクチャベースの製品を来年第3四半期に投入する予定でいる。そのため、Celeron向けにも、Brookdale-Gを投入する。これは、「Brookdale-GL」というコードネームになっている。今のところ入っている情報では、Brookdale-Gとの違いは、533MHz FSBのサポートがないこと程度。Brookdale-G同様に、ICH4と組み合わせられる。メモリは、PC133 SDRAM/DDR200/DDR266だが、実際のマザーボードへのインプリメンテーションでは、SDRAMベースの製品が多くなるかもしれない。これは、来年のDDRメモリの浸透度合いで変わるだろう。
●ワークステーション向けにDDRデュアル+AGP 8XのGranite Bayが登場
一方、パフォーマンスデスクトップPCと地続きの、エントリレベルワークステーションでは、Intelは「Granite Bay(グラナイトベイ)」と呼ばれる新チップセットを投入する。Granite Bayは、デュアルチャネルDDR(DDR200/266)メモリでAGP 8X、533MHz FSBをサポート、ICH4との組み合わせとなる。DDR200デュアルなら400MHz FSBと帯域がマッチ、DDR266デュアルなら533MHz FSBと帯域がマッチする。登場時期は、Brookdale-E/Gのすぐあとだという。
このGranite Bayのスペックや時期は、2週間前にレポートしたデスクトップPC向けデュアルチャネルDDRチップセットほぼそのままだ。Granite Bayは、ユニプロセッサしかサポートしないから、対応するのも次世代Xeon(Prestonia:プレストニア)ではなくPentium 4(Northwood)だ。だったら、それを、Tullochが抜ける穴を埋めるためにデスクトップへ持ってくるプランがあったとしても不思議ではない。
実際、台湾のある業界関係者は「IntelはGranite BayをデスクトップのPOR(サポートプラン)に持ってくることを検討していると聞いた」と言っている。このチップセットを、PCに持ってこれるかどうかは、Intelの価格設定とPOR次第ということになる。
もっとも、デュアルチャネルDDRについては、2003年のチップセットSpringdaleもそうだという関係者もいる。このあたりは、情報が錯綜しており、まだ全体像がよく見えていない状態だ。また、Springdaleに関しては、サポートメモリがDDRから変わったという情報もある。ちなみに、SpringdaleとセットになるICH5は、ワイヤレスLANチップが加わり3チップ構成になる。ICH5は、3GIO世代の最初のICHになるはずだったが、現在は、この計画が変わっている可能性もあるらしい。
なお、SpringdaleやICH5をはじめとするIntelの各チップセットの詳しい状況、またIntel以外のチップセットの状況については、10月29日発売のDOS/V PowerReportの特集でレポートする予定だ。
●デュアルプロセッサワークステーションにはPlacer
ワークステーションでは、これまでIntelはRDRAMをメインメモリとして推進してきた。しかし、来年中盤になるとこれがDDRメモリへとシフトする。ユニプロセッサワークステーション向けのGranite Bayのほかに、デュアルプロセッサワークステーション向けのDDRメモリチップセット「Placer(プレイサ)」が登場するからだ。
Intelは、これまでGranite Bayの存在はOEMベンダーに対して隠していたが、Placerの方はずいぶん前からプランを伝えていた。OEM関係者によると、PlacerはPrestoniaのみをサポート、533MHz FSB、AGP 8Xモード、デュアルDDRをサポートするという。I/OチップはICH4のほかにPCI-XやInfiniBandブリッジなどもHUBインターフェイス 2.0を通じて直結できるという。こちらは、Granite Bayと違って、本格的なワークステーション向けだ。もっとも、Granite Bayの実体も、たんにPlacerの機能制限版かもしれない。
□関連記事
【9月26日】IntelがデュアルチャネルDDRメモリのPentium 4向けチップセットを計画
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010928/kaigai01.htm
(2001年10月15日)
[Reported by 後藤 弘茂]