山本雅史のソフトウェアコラム


Windows CE 4.0「Talisker」β2レビュー

 Microsoftは先日、次世代Windows CE(開発コード名:Talisker)のβ2を一般に公開した。今回は、Taliskerを実際に入手し、インストールしてみたので、簡単なレビューをお届けしよう。

●さらに進化した次世代Windows CE「Talisker」

 今回、公開されたTaliskerのβ2は、現在PocketPCやハンドヘルドPCに採用されているMicrosoftの組み込みOS「Windows CE」の次期バージョン(つまりWindows CE 4.0)だ。PocketPCやハンドヘルドPCなどは、Windows CEを利用したデジタル・アプライアンスの一部といえる。

 Taliskerは、組み込み機器用OSとして最低限必要なタスクやスレッドコントロールなどは、Windows CE 3.0をベースにし、より高度化され、OS自体の信頼性が向上している。

 また、OSの機能はモジュラー化されており、最小機能だけなら200KB程度で構成できる。後はユーザーインターフェイス、ブラウザ、ネットワーク機能などを、必要に応じて追加していけばいい。

 Taliskerでは、特にネットワーク関連のデバイスや機能への対応が強化されている。Bluetoothのサポート、IEEE 802.11bのサポートなど以外に、接続可能なネットワークを自動的にチェックして、接続する機能などが用意されている。これ以外にも、DirectX 8のサポートなど、さまざまな機能が用意されている。

●β2には2種類ある

 今回公開されたTaliskerベータ2には、Talisker Emulation EditionとTalisker Technology Previewの2種類がある。

 Talisker Technology Previewは、Taliskerがサポートしているすべての開発ボード(各種CPU)、開発ツールなどが入ったものだ。これは、米国MicrosoftのWebページから、CD-ROM(12.80ドル+送料+税)もしくはDVD-ROM(8.95ドル+送料+税)でオーダーできるようになっている。

 Talisker Emulation Editionは、Windows 2000/Windows XP上でエミュレーションを行ないながら、Taliskerを動作させることができる。これにより、Windows 2000/Windows XP上でTaliskerの機能を確認しながら、ハードウェアが完成していなくても、アプリケーションの開発を進めることができる。こちらは無料でダウンロードが可能。

 Emulation Editionのウィザード機能では、インターネット・アプライアンスやモバイル・ハンドヘルドなど、目的別のOSセットがあらかじめ用意されている。このため、開発者は、これらのメニューからOSセットを選択し、さらに必要なモジュールがあれば、個別に追加することで、OSを構築できるようになっている。

 このソフトウェアは、Talisker Emulation Editionと名づけられているが、簡単にいってしまえば、Windows CEの開発をサポートするPlatform BuilderのTalisker版(フル機能ではない)に、エミュレーション機能をつけたものだ。ただし、容量は合計約400MBあるため、ダウンロードして試してみたいというユーザーは、心して取り掛かるように。

●Talisker Emulation Editionを使ってみる

 Talisker Emulation Editionは、TaliskerをエミュレートしてWindows上で動作させる。このため、CPUパワーとメモリがそれなりに必要だ。現在のTalisker Emulation Editionは英語版のみが提供されているが、Windows 2000の日本語版上でも問題なく動作した。

 必要な動作環境は、Pentium III 500MHz以上のCPU、192MB以上のメモリ(Toolに128MB、エミュレーションに64MB)となっている。しかし、実際に日本語版のWindows 2000上で動かすには、Pentium IIIの1GHzでも十分なスピードとはいえない。また、メモリに関しては、512MBぐらいはほしい。

 Talisker Emulation Editionのβ2では、ユーザーインタフェースやデバイスドライバの開発機能がまだサポートされていない。さらに、Audioやパラレル、USB、Bluetoothなどのデバイスに関してもサポートがされていないため、テストする時には注意が必要だ。

 今回は、基本的な動作をテストするために、Talisker Emulation Editionのウィザードで用意されているOSセットを利用して、OS環境を構築している。

 ウィザードには、Internet Applianceやデジタル家電など、いくつかのOSセットが用意されている。このOSセットは、コアOSに、ブラウザ(IE5.5)が搭載されていたり、Windows Media Player 7(最終的にはWMP8になる)、DirectXなどのモジュールが組み込まれたものとなっている。

 後は、選択したOSセットをビルドして、エミュレーション環境にダウンロードすれば、Taliskerを動作させることができる。

 実際に動かしてみると、さすがにエミュレーションだけあって、お世辞にも速いモノとはいえないが、Windows 2000のEthernetカード経由でインターネットにアクセスしたり、いろいろと面白いことができる。PDAや組み込み用OSに興味がある方は試してみてほしい。


Talisker Emulation Editionの起動画面。この画面からわかるように、このエディションは、エミュレーション機能を有したPlatform Builderといえる このPlatform Builderには、OSセットを再構築するために組み込み機器向けのVisual C++も入っている Platform BuilderでNew Platform Wizardを起動し、構築するOSセットを選択するところ

今回提供されたPlatform Builderでは、すでに構築するOSセットを目的別に分けてある。開発者は、これらの中から必要なコンフィグレーションを選択し、さらにシステムを追加したり、削除したりして、独自のWindows CEシステムを構築できる 今回は標準的なInternet ApplianceのOSセットを選択している Platform Builderでは、Windows CEを搭載するハードウェア(開発用ボード)のコンフィグレーションがBSPs(Board Support Packages)として用意される。Emulation Editionでは、エミュレーション環境しか用意されていないが、開発キットにはさまざまな開発用ボードに対応したBSPsが用意される

Internet ApplianceのOSセットでは、ブラウザ類だけで構築するのか、Pocket Wordなどのアプリケーションもインストールするのかを選択できる Internet ApplianceのOSセットでインターネットに接続できるだけの機能を有したコンフィグレーション Internet Applianceでアプリケーションまで搭載した場合のコンフィグレーション

Taliskerでは、ワイヤレスLANやBluetooth、PPP、Voice over IPなどの機能も有している(ただし、β2版では機能制限がある) ウィザードでOSセットを設定すると選択されたモジュールが表示される。ウィザードでは、依存関係にあるモジュールを自動的にチェックしているため、モジュールが足りなくて動作しなかったりすることはない OSセットを動かすときは、OSの動作自体をステップごとにチェックするデバッグモードとOSの動作はデバッグしないリリースモードの2つがある

OSセットを構築するためにビルドを行なう。Pentium III 1GHzでも、ビルドには5~8分ぐらいかかるので気長に待つ ビルド中の画面。下のウインドウにビルドの状況が表示されている ビルドが正常に終了したら「Download/Initialize」を選択してTaliskerを動作させてみる

ダウンロードするターゲット環境がセットされていないときは、環境を設定するようにウインドウが出てくる。ここでは、すべてをエミュレーションにセットする ここでは、ビデオの解像度やメモリ環境、Ethernetなどの環境を設定する。ある程度のパフォーマンスで動かしたいときは、メモリ環境を128MBに設定しておく エミュレーション環境でTaliskerが動作した画面

Taliskerでは、日本語環境を開発当初からサポートしているため、日本語の表示や日本語IMEなども搭載されている エミュレーションで動かしているTalisker上でブラウザを起動し、PCのEthernetカードを経由して、インターネットにアクセスしてみた

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□Windows Embedded
http://www.microsoft.com/japan/windows/embedded/taliskerpreview/default.asp

(2001年9月17日)

[Reported by 山本雅史]


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