IDF Fall 2001レポート

モバイルPentium 4 1.7GHzを2002年第1四半期に投入へ
~低電圧/超低電圧版モバイルPentium III-Mは10月上旬に投入

モバイルPentium 4プロセッサ。パッケージはμFC-PGAで478ピン
 Intelは先週行なわれたIntel Developer Forum Conference Fall 2001においてモバイル向けCPUに関するプレスブリーフィングなどを開催し、同社のモバイル向けCPUに関する戦略を説明した。本レポートではそのセッションの内容と、IntelがIDF後にOEMメーカーなどに対して説明した内容などから、今後のIntelのモバイルCPU戦略について探っていきたい。


●拡張版SpeedStepに対応したモバイルPentium 4は1.7GHzで登場

 Intel モバイルプラットフォームグループ マーケティングマネージャのドナルド・マクドナルド氏は「2002年の前半にはモバイルPentium 4プロセッサを1.5GHz以上で投入する」と改めて語った。

 モバイルPentium 4については、既にサンプルが公開された段階で触れているが、もう一度そのスペックを整理しておこう。

○モバイルPentium 4プロセッサ
・コードネーム:モバイルNorthwood
・製造プロセスルール:0.13μm
・L1キャッシュ:12KB μOPS トレースキャッシュ+8KBデータキャッシュ
・L2キャッシュ:512KB
・拡張命令セット:MMX、SSE、SSE2
・省電力機能:拡張版SpeedStep、Deeper Sleep
・パッケージ:μFC-PGA(478ピン)

Intel Developer ForumでデモンストレーションされたモバイルPentium 4 2GHzのリファレンスシステム
となっており、デスクトップPC向けNorthwoodとの違いは、省電力機能である拡張版SpeedStepテクノロジ、DeeperSleepをサポートしていること、パッケージがIHS(Integrated Heat Spreader)のつかないμFC-PGAであるということだ。チップセットは既報の通り、Intel 845MPで、基本的にはIntel 845のモバイル版となる。

 Intel Developer Forum Conference Fall 2001の基調講演レポートでも説明したように、Intelモバイルプラットフォームグループ フランク・スピンドラー氏の基調講演では、モバイルPentium 4プロセッサ 2GHzのデモが行なわれた。ただし、スピンドラー氏が行なったデモは、実際にはノートパソコンではなく、ATXフォームファクタのリファレンスマザーボード、デスクトップPC用の電源、CPUファンなどを利用して行なわれたデモであり、モバイルPentium 4 2GHzがすぐに出荷されるわけではない。

 それでは、当初はどのあたりからスタートになるのだろうか? 情報筋によれば、IDF終了後IntelがOEMメーカーに対して新しいロードマップを説明したという。それによれば、2002年の第1四半期に投入される最初のモバイルPentium 4プロセッサは1.7GHzからスタートするということだ。同時に、1.6GHz、1.5GHz、1.4GHzも投入される。IDF前には第1四半期に1.6GHz、第2四半期に1.7GHzという説明がされていたが、1.7GHzが前倒しされ、第1四半期に一挙に4つのクロックグレードで投入されることとなった。この後、第3四半期に1.8GHz、そして第4四半期には2GHzのモバイルPentium 4が投入されることになる。

モバイル向けCPUの説明を行なうIntel モバイルプラットフォームグループ マーケティングマネージャ ドナルド・マクドナルド氏 IDFで示されたモバイル向けロードマップ

●モバイルPentium 4の登場で再びハイエンドはA4フルサイズに

 それでは、このモバイルPentium 4プロセッサはどのようなノートパソコンに搭載されるのだろうか? 情報筋はモバイルPentium 4の熱設計電力(TDP:Thermal Desgin Power)が25W~30W程度に設計されていると伝えている。

 具体的にいうと、登場時の最高クロックのモバイルPentium 4 1.7GHzが駆動電圧1.3Vで29W、1.4GHzでも1.3Vで26Wとなっており、これまでの最高だったモバイルPentiumIII(-Mではない、つまり0.18μmプロセスの)1GHzの24.8Wを軽く超えている(ちなみに、SpeedStepで設定される下のクロックは1.2GHz/1.2Vとなる)。

 つまり、モバイルPentium 4はモバイルPentium III 1GHzがぎりぎり入っていたようなノートパソコンには入らない可能性がある。具体的には、A4サイズでもやや薄型のThin & LightとIntelが呼んでいるA4薄型ノートパソコンには厳しい可能性が高い(こうしたA4薄型ノートのほとんどは25Wあたりを上限に設計されている例が多いからだ)。

 それでは、現在発売されているノートパソコンで言うと、どのあたりにモバイルPentium 4は採用されるのだろうか? 代表例としてIBM、ソニーのノートパソコンを例に取り、セグメント分けしてみると、表のようになる。

【IBMとソニーのセグメントごとの製品】
はモバイルPentium III-M 1.13GHzが投入されているセグメント
 IBMSony
A4フルサイズ
 AシリーズFXシリーズ
A4薄型サイズ
 TシリーズGRシリーズ
サブノート
 XシリーズR505/SR9シリーズ
ミニノート
 SシリーズC1シリーズ

 A4フルサイズとしてはIBMがAシリーズ、ソニーがFX、A4薄型としてはIBMがTシリーズ、ソニーがGR、サブノートはIBMがXシリーズ、ソニーがR505とSR9、ミニノートはIBMがsシリーズで、ソニーがC1となる。面白いことに、両社とも現時点で最もハイエンドなノートはA4フルサイズではない。IBMでもっともハイエンドなノートパソコンはモバイルPentium III-M 1.13GHzを搭載したThinkPad T23、ソニーのハイエンドは同じくモバイルPentium III-M 1.13GHzを搭載したバイオノートGRと、どちらもA4フルサイズではなく、A4薄型ノートだ。これは最近の1つの傾向といえる。

 Intelも、今後はノートパソコン市場の60~70%がこうしたA4薄型ノートパソコンになると予想している。であれば、メーカーとしても売れ筋の市場にフラッグシップとなる高クロックCPUを搭載したノートパソコンをいちはやく投入するというのも無理はない。

 順当に考えれば、次のハイエンドモデルもこの製品の延長上にあると考えるのが妥当なところだが、A4薄型ノートにモバイルPentium 4 1.7GHzを入れることができるだろうか? 既に述べたように、それは難しいだろう。例えば、モバイルPentium III-Mの場合は熱設計電力が21.8Wで、熱設計でいろいろ工夫を加えたとしても、(現時点では両者がT23とGRにどの程度のマージンを持って設計しているかは不明なので、確かなことは言えないが)29WのモバイルPentium 4 1.7GHzを入れるのは厳しい可能性が高い。したがって、IBMにせよ、ソニーにせよ、モバイルPentium 4を搭載したノートパソコンはA4薄型ではなく、A4フルサイズとなる可能性が高い。

 元々ハイエンドだったAシリーズが再びフラッグシップの座に戻るIBMはよいが、A4フルサイズにFXシリーズというコストパフォーマンス重視のモデルしか持っていないソニーはどうするのだろうか? なんとかしてGRシリーズにモバイルPentium 4を入れるのか、それとも新しいA4フルサイズのシリーズを作るのか、という選択肢を迫られることになる。言ってみれば、メーカーのニーズとIntelが提供するソリューションの間で若干の乖離が起きているわけだ。このあたりの課題をどう解決するかがモバイルPentium 4を普及させるための課題と言うことになるだろう。

●低電圧版、超低電圧版モバイルPentium III-Mは10月に登場

 ハイエンドはモバイルPentium 4へ移行することになるが、熱設計上の問題からA4薄型やミニノート、サブノートなどは依然として2002年を通じてモバイルPentium III-M(ないしはモバイルCeleron)が利用されることになる。このため、モバイルPentium III-Mは今後もクロックがあげられ、2002年の第1四半期には1.26GHz、第3四半期には1.33GHzとクロックがあげられていく。

 また、現時点ではミニノート、サブノートに利用されている超低電圧版、低電圧版のモバイルPentium IIIは0.18μmプロセスのままだが、まもなく、製造プロセスルールを0.13μmに微細化した超低電圧版モバイルPentium III-Mと低電圧版モバイルPentium III-Mが投入される。

 情報筋によれば、Intelは10月の第1週にモバイルPentium III-M 1.2GHz、低電圧版モバイルPentium III-M 800/750/733MHz、超低電圧版モバイルPentium III-M 700MHz(650MHzであるという情報もある)、モバイルCeleron 900/866/800A/733MHzを一挙に発表するという。特に、低電圧版モバイルPentium III-Mでは、チップセットとしてIntel 830Mファミリーと組み合わせることになる。Intel 830MのサウスブリッジであるICH3-Mは、Ethernetコントローラを内蔵している。このため、有線LANには内蔵のEthernetコントローラを利用し、mini PCIで無線LANの機能を実現するといったことも不可能ではなくなるため、各メーカーとも低電圧版、超低電圧版のモバイルPentium III-Mを搭載したサブノート、ミニノートを計画していると見られており、この秋にはより魅力的なサブノート、ミニノートを入手することが可能になりそうで、期待したいところだ。

□Intel Developer Forum Fall 2001レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/link/idf01.htm

(2001年9月6日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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