VIA Technology Forum 2001レポート

Total Connectivityの実現を目指すVIAの戦略
~P4X266、P4M266、KT266Aなどのデモを実施

会期:9月4~5日(現地時間)

会場:TICC(Taipei International Convention Center)

 VIA Technologiesが開発者向けに開催しているセミナーがVIA Technology Forum 2001(VTF 2001)だ。2回目となる今回はVIAのチップセットやCPUに関するさまざまなセッションが用意されたほか、同社のウェン・シー・チャン社長兼CEOやパートナーであるTSMCのモーリス・チャン会長による基調講演が行なわれた。また、会場であるTICC(Taipei International Convention Center、世界会議中心)においてVIA、およびパートナー企業による展示会が行なわれた。


●Pentium 4用統合型チップセットのProSavage P4M266を初披露

基調講演を行なうVIA Technologies 社長兼CEOのウェン・シー・チャン氏。余談だが、氏が登場する前にスモークを焚きすぎて火災報知器がなるハプニングもあった。ある関係者は「Intelの警報がなったのか」などと言っていたが……
 最初のスピーカーとして壇上に登ったウェン・シー・チャン社長兼CEOは「以前のPCは単なる計算機としての存在だった。しかし、インターネットという存在がある現在、すべてがつながっていることが何よりも重要だ」と述べ、同社が推進する「Total Connectivity」について語った。

 「これまでのPCビジネスではクロック周波数や、価格のセグメント、コンシューマか企業向けかなどが問題とされてきた。しかし、これからのビジネスモデルでは、そうした点よりもスタイル、使い勝手、接続性、お買い得な価格であるか、そしてバランスのよい処理能力を備えているかが問題になる」と述べ、Intelが行なっている現在のPCのビジネスモデルは終わりを告げ、安価なビルディングブロックにより構成された複数のデバイスをユーザーが持ち、それらがおのおのに接続されるということが何よりも重要であると主張した。

 それを実現するビルディングブロックとして、VIAはC3などのCPU、Apollo Pro266などのチップセット、S3 Graphicsのグラフィックスチップなどを提供しているほか、プラットフォーム面でもDDR SDRAMの普及、MaxtorとUltra ATA/133を推進するなどの取り組みを行なっていると述べ、それらによる、より低コストのPCを構築することが何よりも重要であると主張した。

 最後に、チャン氏はVIAの最新チップセットである3つのチップセットのデモを行なった。

右からKT266A、P4M266、P4X266のデモ。一番最初のKT266Aがハングアップしていたのはご愛敬だが、Pentium 4用のチップセットで統合型が公開されたのは今回が初めて

 1つはApollo KT266Aで、Athlon用の最新チップセットだ。Apollo KT266Aは従来のKT266に比べて性能面での改良が著しいとアピールした(ただ、デモはマシンがハングアップして失敗してしまったのだが)。また、P4X266のライブデモを行なったほか、ProSavage P4M266を実際に動かして見せた。

 P4M266はP4X266とピン互換のチップセットで、ProSavage PM133/KM133と同じSavage 4コアのグラフィックスが統合されている統合型のチップセットだ。チャン氏はP4M266で実際にベンチマークを動かして見せ、「P4M266はほぼできあがっている。このチップセットを出荷することで、Pentium 4を搭載したシステムのコストを削減できる」と、P4M266がPentium 4の普及に役立つとアピールする事を忘れなかった。

P4M266のシステム。リファレンスマザーボードであるVT5580Bを利用したシステムで、AGPのビデオカードが刺さっていないことからも統合型チップセットであるのがわかる。P4M266はP4X266とピン互換になっており、同じ基板で単体、統合型の両方のマザーボードを作ることができる VIAのパートナーでCPUやチップセットの製造を担当するTSMCの会長であるモーリス・チャン氏。しかし、講演は中国語で、通訳もなかったので台湾国外の関係者には内容はさっぱりわからなかった


●USB 2.0やUltra ATA/133対応サウスブリッジのデモが行なわれる

VIAのUSB 2.0ホストコントローラのVT1221

 併設された展示会場ではVIA Technologies自身のブースでは、VIAの最新チップセットなどのデモが行なわれた。このうち、注目を集めていたのがUSB 2.0ホストコントローラチップと、Ultra ATA/133に対応したサウスブリッジのデモンストレーションだ。

 これまでUSB 2.0ホストコントローラチップをリリースしている会社と言えば事実上NECだけで、USB 2.0に対応したUSBアダプタカードなどにはすべてNECのチップが採用されていた。

 今回、VIAがデモしたUSB 2.0ホストコントローラはそれに続くものと言える。展示員によれば、現時点では出荷時期などは明確になっていないものの、NECのコントローラに比べて安価な価格設定がされているという。

 なお、気になるサウスブリッジへの統合は、もちろん計画されているという。情報筋によれば、VIAはOEMメーカーに説明しているロードマップにおいてVT8235というサウスブリッジを用意しており、ここでUSB 2.0を統合する予定であるという。なお、このVT8235の投入は2002年が予定されており、エンジニアリングサンプルは2002年の第1四半期が予定されている。

 Ultra ATA/133のデモは既存のサウスブリッジであるVT8233を利用して行なわれていた。VIAはVT8233Aという新しいリビジョンでUltra ATA/133をサポートすると既に発表しているが、これはシリコン自体はVT8233と同じで、単にUltra ATA/133でのバリデーション(互換性検証)が行なわれているだけの違いであると言ってよい。

VIAのVT8233、Maxtorのハードディスクを利用したUltra ATA/133のデモ。現時点ではあくまでデモで、OSは動作していなかった

 今回のデモは、Maxtorのハードディスク(エンジニアリングサンプル)、Quantum製のソフトウェアを利用してデータ転送を行なっていたもので、OSが動作していたわけではない。Maxtorの展示員によれば、今後Ultra ATA/133に対応したハードディスクを出荷する用意があるということで、次世代またはさらにその次の世代においてサポートされそうだ。


●OEMメーカーの不安という課題を残しているP4X266

 今回の展示会にはマザーボードベンダも参加していた。その中でいくつかのマザーボードベンダはP4X266を搭載したマザーボードを展示していた。ECS、Shuttle、Tyan、Acorp、Chaintechの5社は、P4X266を搭載したオリジナルのマザーボードを展示していた。各ベンダーとも、VIAからチップを受け取り次第出荷できるとしており、9月中にはP4X266を搭載したマザーボードが市場に出回る可能性もある。

ECSのP4VXMS(microATX、左)とP4VXAS(ATX、右)。P4X266を搭載しCPUソケットにはPGA423を採用している。メモリスロットはDIMM×3

 奇妙なのはGIGA-BYTE Technology、MSI COMPUTER、ABIT COMPUTERといった大手マザーボードベンダがP4X266を搭載したマザーボードを展示していなかったことだ。ましてや、ASUSTeK COMPUTERなどはそもそもブース自体がなかった。

 これらの大手マザーボードベンダはVIAにとってもプライオリティ(優先順位)が高く、出荷量も多いため、何はともあれ採用して欲しいメーカーの代表であると言える。それでは、これらのベンダーはP4X266を搭載したマザーボードを持っていないのだろうか?

ShuttleのAV40。やはりATXで、DIMM×3、mPGA478ソケットを採用している TyanのP4X266搭載マザーボードのS2266。ATXで、mPGA478ソケット搭載だが、DIMMスロットが4本あるのが特徴

 いや、そうではないようだ。VIA Technologyでチップセット戦略を立案するストラテジックプロダクトマーケティングディレクターのエリック・チャン氏は「そうしたマザーボードベンダもサンプルは持っている」と証言しており、これらのベンダがP4X266のマザーボードを計画し、実際にサンプル段階までこぎ着けているのは間違いないだろう。では、なぜ展示しないのか?

 多くの台湾筋の関係者は、それらのマザーボードベンダが“ティア1”とよばれる、Intelのトッププライオリティのカスタマーであるからだと指摘する。ティア1のベンダーは、Intelとダイレクトに取り引きしているベンダーで、Intelからボリュームディスカウントやデータシートの早期配布などのメリットを享受している。

Chaintechの9VIA。mPGA478ソケットを採用し、microATXで、DIMMソケットは2つ デュアルIntel 815マザーボードで一躍有名になったAcorpの4VPX266A。ATXで、CPUソケットはmPGA478、DIMM×3

 つまり、ティア1であるかどうかは、大手のマザーボードベンダにとってそれこそ会社の浮沈に関わる重要なポイントなのだ。だから、現時点でIntelからP4システムバスのライセンスをとっていないP4X266を使うことにより、Intelとの間に問題が発生し、ティア1の“特権”がなくなってしまうことを恐れているのだ。

 一部報道では、“Intelがそうしたベンダーにプレッシャーをかけ、P4X266を採用させないとしている”とされているが、マザーボードベンダーは公式にはそうした事実を認めていないため、実際にそうであるのかどうかはわからないし、仮にそうだったとしてもビジネスの世界ではそうした話はよくある話だ(たとえばSiSがVIAからのプレッシャーに直面しているとする報道もある)。

 どちらにせよ、ティア1のベンダは、Intelと問題を起こすことを怖がっているのは事実だ。ベンダとしてはそれが発生することによりティア1としての特権を剥奪されては成り立たなくなる可能性があるわけで、だからIntelとの問題を抱えているP4X266の採用をためらっているのだろう。既に設計が終わっていつでも出荷できるとしても、だ。

 VIAのマーケティングマネージャであるリチャード・ブラウン氏は、「Intelとの法的問題は存在しない。我々は製品を出荷しているが、いまだにIntelから訴訟を起こされたりはしていない」と述べており、VIAとしてはPentium 4のシステムバスライセンス問題は存在しないというのが公式な立場であるようだ。

 しかし、これではマザーボードメーカーの不安は拭えず、大手メーカーに採用させるのは難しいだろう。この点をどう解決するかが、P4X266の普及に大きな課題として残されている。

□VIA Technology Forum 2001のホームページ
http://www.via.com.tw/jsp/en/vtf/index.jsp
□関連記事
【8月24日】VIA、Pentium 4用チップセットP4X266へIntelが圧力と抗議
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010824/via.htm

(2001年9月5日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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