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山本雅史のソフトウェアコラム



【第1回】 ストリーミング・サーバーを構築するには?

 ソフトウェアをテーマにした不定期コラムです。今回は全4回にわたって、RealSystem Server、Windows Media Service、SHOUTcastを使ったミュージック・サーバーのレビューを行なっていきます。(編集部)


 MP3やWMA(Windows Media Audio)などの登場により、ある程度の音質で、高い圧縮率の音楽データをデスクトップPCに格納できるようになった。筆者のPCの中にも、さまざまなアルバムCDをリッピングしたデータが格納していて、仕事中はCDプレーヤー代わりに流して聞いている。

 しかし、この状態では1台のデスクトップPCでしか音楽は聞けない。あまり広い部屋ではないが、複数台PCがある環境を考えれば、どのPCからでも音楽を聴くことができるようにしたい。そこで、音楽をホームLAN上に配信するストリーミング・サーバーを作ることにした。

 ストリーミング・サーバーを構築すれば、2階の部屋に置いてあるPCでも音楽を聴くことができるし、無線LANなどを利用すれば、自宅のどこででもノートパソコンを使って音楽を再生できる。うまくいけば、プライベートな有線放送をPC上で作ってしまえる。

●著作権に関して

 気になるのは、CDから音楽をパソコンにリッピングして、構築したストリーミング・サーバーを使って、ホームLAN上で配信することが著作権を侵害しないかということだ(簡単にいえば、違法か、そうではないかということ)。結論から言ってしまえば、「個人が自分で購入したCDを、私的利用の範囲内で利用することはOK」いうことだ(By 音楽著作権協会:JASRAC)。つまり、自分が購入したCDをストリーミング・サーバーにリッピングして、ホームLANに配信したり、ノートパソコンにコピーして聞くことは、私的利用の一部ということだ(扱いとしては、CDからMDにコピーして、カーステレオで聞いたり、ポータブルプレーヤーで聴くのと同じ。デジタルかアナログかの区別はない)。

 問題になるのは、ストリーミング・サーバーをインターネットなどで外部に公開したり、会社などで配信した場合。これは私的利用の範囲を超えてしまう。

●ハードウェア

 ストリーミング・サーバーを構築するのに、どんなハードウェアが必要になるのだろうか? 配信するだけの機能なら、1GHzものCPUパワーは必要ない。一昔前の500MHzのPentium IIIで十分だ。

 ただし、ストリーミング・サーバーでCDのリッピングと圧縮を行なう場合は、Pentium IIIでも800MHz以上は欲しくなる。これは、MP3やWMAなどに圧縮するときにCPUパフォーマンスを使用するためだ。グラフィックカードにはそれほどのパフォーマンスは必要ない。

 また、音楽データを大量に保存しておくため、HDDの容量はある程度必要になる。できれば、OS領域とは別に音楽データを保存しておくHDDを用意しておくほうがいいだろう。MP3などの128kbpsのステレオデータでも、1枚のCD(72分最大限に入っているとして)に約70MBほどしか消費しない。40GBぐらいのHDDなら約570枚のCDを入れることができる。

 もうひとつ、ある程度の容量が必要なのは、メモリだろう。配信時にメモリを使うため、512MBぐらいあればOKだ。LANカードに関しては、できれば100Base-TX対応のLANカードを使ってほしい。音楽を128kbpsで1チャンネルだけ流すなら、LANカードに負担はかからないが、複数チャンネルを流す場合はトラフィックを考えて100Mbps対応のものにしたほうがいいだろう。最近では、100Base-TX未対応のLANカードを探す方が難しいくらいだ。Hubに関しては、ホームLAN上に多数のPCがある場合はスイッチングHubを使い、台数が少なければ、ISDNルータやブロードバンドルータに内蔵されているハブをそのまま使ってもいい(こちらもスイッチングになっているものが増えている)。

●ソフトウェア

 ストリーミング・サーバーのOS自体は、ストリーミング・サーバー・ソフトが対応してさえいれば、Windows 2000でも、Linux、FreeBSD、Solarisでもかまわない。CDのリッピングなどを同じPC上で行なうなら、さまざまな使いやすいソフトがそろっているWindowsがいいだろう。また、ストリーミング・サーバーは信頼性が重要な要素になってくる。Windows 98/Meなどでストリーミング・サーバー・ソフトを動かすよりも、Windows 2000で動かした方が、より信頼性が高く、安心して動作させられる。サーバー・ソフトによってはWindows 2000環境しかサポートしていないモノもある。そこで、今回はWindows 2000の環境を中心にして話を進めていく。

 ストリーミング・サーバー・ソフトとしては、いくつかの種類がある。今回は、その中でも、RealNetwork「RealSystem Server8」、Microsoft「Windows Media Service」、Nullsoft「SHOUTcast」の3つを紹介する。

□RealNetwork RealSystem Server8
http://www.jp.realnetworks.com/
□Microsoft Windows Media Service
http://www.asia.microsoft.com/japan/windows/windowsmedia/
□Nullsoft SHOUTcast
http://www.shoutcast.com/download/license.phtml

 今回構築するストリーミング・サーバーは、クライアントPCからの要求で音楽を流すオンデマンド方式ではなく、LAN上に特定の音楽を流しつづけるブロードキャスト方式を採用する。ブロードキャスト方式にすれば、クライアントPCからは、ラジオのようにチューナーを合わせる感覚で音楽を聞くことができるようになる。また、クライアントの台数が増えたときでも、ブロードキャスト方式を使用しているとLAN上で消費する帯域が少ないのも特徴。オンデマンド方式では、クライアント側からの要求にしたがって、音楽を配信するため、クライアント数分だけセッションを開く必要があり、帯域もセッションの数だけ消費することになる。

 まあ、ラジオのように流しっぱなしの方が、BGMとして流すのには便利だろうという判断だ。

●RealSystem Server

 RealPlayer、RealJukeBoxなど、ストリーミング関係では多くのシェアを持っているRealNetworksが開発したストリーミング・サーバーが「RealSystem Server(以下RealServer)」だ。2001年8月現在、バージョン8がリリースされている。

 RealServerは、60ストリームをサポートし、さらにコンテンツ制作用のRealProducer Plusがバンドルされて329,000円と非常に高価だ。しかし、RealServerでは、25ストリームまでサポートし、1年間ストリーム配信ができるライセンスを持ったRealServer Basicが無料で配布されている。コンテンツ制作用のRealProducerも無料版のBasic、RealPlayerにも同じく無料版のRealPlayer Basicが用意されている。これらを利用すれば、ほとんどコストをかけずにストリーミング・サーバーを構築することができる。

 Basicは、基本的なストリーミング・サーバーとしての機能をサポートしている。なお、Plus以上のシステムでは、多数のストリーミング・サーバーを連携させて動かす機能や、多数のストリームを同時にサポートするなど、大規模システムに対応した機能が搭載されている。

●Windows Media Service

 Windows Media Serviceは、Microsoftが提供しているストリーミング・サーバーだ。このサーバーソフトは、Windows 2000 Serverにバンドルされており、Windows 2000 Serverでしか動作しないようになっている。システム自体もサーバーソフトとして単独で存在するというよりも、WebサーバーのIISなどと融合したストリーミングを担当するサービスといっていいだろう。

 コンテンツを作成するツール「Windows Media Encoder」は、無料で配布されている(Server以外でも動作する)。Windows Media Encoderを利用すれば、Windows 2000 ProfessionalなどのクライアントOS上でも、ユニキャストベース(オンデマンドベース)のストリーミング・システムは構築できる(ブロードキャストのシステムは、Widnows Media Serviceだけ)。システムと一体なので手間はかからないが、Windows 2000 Server自体が高価なのが難点だ。

 このほか、コンテンツ制作用のMS Producer(英語版)が提供されている。

●SHOUTcast

 WinampなどのMP3プレーヤーとして有名なソフトを開発したNullsoftが、Winampに対してネットワーク上で音楽を配信するために作ったサーバーソフトがSHOUTcastだ。Nullsoftでは、SHOUTcastを開発するときにオープンソース手法を採用したため、Nullsoft以外でもSHOUTcastをベースとしたMP3ストリーミング・サーバーが開発されている。その中でもicecast( http://www.icecast.org/ )が有名だ。icecastは、オープンソースのMP3コーデックOgg Vorbis( http://www.xiph.org/ogg/vorbis/index.html )と連携した動きを見せている。

 次回は、RealServer Basicを使ったストリーミング・サーバーの構築方法をレポートしてみたい。

(2001年8月7日)

[Reported by 山本雅史]


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