Pentium III-S 1.13GHzのデュアルサーバーをテストする



SuperMicro P3TDL3

 前回のこのコーナーではTualatinコアを利用したPentium III-S 1.13GHzのテストを行なった。Pentium III-Sは「-S」とサーバー(Server)を意味するSがついていることからもわかるように本来はサーバー向けに利用されるCPUだが、前回はサーバー用マザーボードが入手できなかったのでシングル環境における評価となった。今回はデュアル環境における性能評価を行なってみよう。


●サーバー用マザーボードのSuperMicro P3TDL3

 今回用意したのはSuperMicroの2ウェイマルチプロセッサをサポートしたサーバー用マザーボード「P3TDL3」だ。P3TDL3はチップセットにServerWorksのServerSet III LEを採用している。

 ServerWorksはPentium III用に2つのチップセットを用意している。1つは今回紹介するP3TDL3に搭載されたServerSet III LEで、もう1つがServerSet III HEだ。SeverSet III HEは、LEの基本機能に加えて、DRAMモジュールに障害が発生した場合でも発生したモジュールを無効にしてシステム全体は動き続けるChipkill Technologyや最大メモリ容量が16GBである点、IMB(Inter Module Bus)と呼ばれる専用バスが用意されている点など複数の機能が追加されているもので、上位バージョンであると考えればいいだろう。

 ServerSet III LEは最大4GBのメインメモリ(ECC対応、PC133 SDRAM)、64bit PCI、Ultra ATA/66などのスペックになっており、NB6635というノースブリッジとIB6566というサウスブリッジから構成されている。AGPには対応しておらず、こうしたことからもグラフィックス性能が追求されるワークステーション向けではなく、サーバー向けのチップセットであることがわかる。問題はこのServerSet III LEがTualatinに対応しているかどうかだが、実はServerWorksはこれに関する技術情報を公開していないためわからない。

ノースブリッジNB6635 サウスブリッジIB6566

 しかし、実はPentium IIIチップセットをTualatin対応にするのは難しいことではない。というのも、実はTualatinに対応していないチップセットでも、マザーボードに搭載されている電圧変換を担当するVRM(Voltage Regulator Module)の仕様が最新のVRM8.5の仕様を満たしていればTualatin対応にすることができるからだ(これはTualatinのシステムバスがCoppermineの1.5Vよりも低電圧な1.25Vで動作するためだ)。

 ただし、チップセットベンダーは、バリデーションプログラムという互換性検査を通ったものだけを動作保証の対象としている。例えば、Tualatinが登場する前に出荷されているチップセットは、当然Tualatinでの動作は確認されていない。そのため、チップセットベンダーとしては動作を保証できないわけだ。

 IntelもIntel 815でもBステップ以降をTualatin対応としているほか(実際にはBステップ以前のIntel 815でも、Tualatin対応のマザーボードを作るのは技術的には不可能ではないのだ)、ほかのチップセットベンダも同様で、VIA TechnologiesのApollo Pro266とApollo Pro266Tの違いも、実際にはバリデーションがされているかそうでないかの問題なのだ。

 さて、ServerSet III LEがTualatinでバリデーションされているかどうかだが、正直わからない。ただ、P3TLD3には間違いなくVRM8.5に準拠したVRMが搭載されており、TualatinコアのPentium III-Sを利用することができる。SuperMicroだからきちんとそのあたりのテストはされていると考えていいだろう(実際に、先週のPlatform ConferenceでSuperMicroの関係者に確認したところそうだという答えが返ってきた)。


●FC-PGA2には専用のCPUクーラーが必要

 さて、もう1つ前回のPentium III-Sのレビューで触れるのを忘れていたことがあるので、ここで触れておこう。Tualatinコア(と実際にはDステップのCoppermineの一部製品)のPentium IIIは、FC-PGA2という新しいパッケージに変更されている。

 このFC-PGA2は従来のFC-PGAにIHS(Integrated Heat Spreader)がついている形状になっている。このため、従来のFC-PGAに比べて若干高さが高くなっているため、従来のFC-PGA用のCPUクーラーについているクリップでは利用できない。リテールボックスを購入した場合には最初からFC-PGA2用のクーラーが付属してくるので問題ないが、バルク品を購入した場合には注意が必要だ。

 現在のところ、FC-PGA2用のクーラーは選択肢が少なく、筆者はFC-PGA用のクーラーを転用しているが、クリップが非常にきつくなってしまい、若干ではあるがCPUソケットを傷つけてしまっている。できればFC-PGA2用のクリップが付属しているCPUクーラーを入手したいところだ。


●従来のPentium III 1.0B GHzに比べてパフォーマンスアップを確認

 今回はPentium III-S 1.13GHzのパフォーマンスを計測するため、2つのベンチマークを利用した。1つはBACPO( http://www.bapco.com/ )のWebMark2001とe-Testing Labs( http://www.etestinglabs.com/ )のNetBench Version 7.0.1を利用した。

【動作環境】
サーバークライアント
マシン自作サーバー日本IBM ThinkPad X20
CPUPentium III-S 1.13GHz/Pentium III 1GHz低電圧版モバイルPentium III 600MHz
メモリ512MB(PC133 SDRAM、ECC、Registered)192MB(PC100 SDRAM)
マザーボードSuperMicro P3TDL3
チップセットServerSet III LEIntel 440ZX AGPSet
グラフィックスATI Technology RAGE XLATI Technologies Rage MOBILITY
HDDIBM DTLA-307030(30GB)IBM DJSA-220(20GB)
OSWindows 2000 ServerWindows 2000 Professional

 WebMark 2001はインターネットアプリケーションのベンチマークで、サーバー側、クライアント側にそれぞれインストールしてクライアント側のパフォーマンスを計測するベンチマークだ。今回は、クライアントを固定し、Webサーバー側のCPUを交換することでパフォーマンスに変化が出るかを計測してみた。NetBenchは主にファイルサーバーの性能を計測するもので、クライアントからファイルサーバーにファイルを転送し、転送できたファイルサイズなどを計測している。

 結果はグラフ1、グラフ2の通りだ。共に見てわかるとおり、Pentium III 1.0B GHzに比べてパフォーマンスが上がっており、CPUを交換するだけでもWebサーバーや、ファイルサーバーとしてパフォーマンスが上がることがよくわかる。ただ、今回は1クライアントと実際の環境と比べて少数であり、そうした意味ではあまり負荷がかかっていない状況でのテストとなっている。そうした意味では、負荷をかければより明確な差がでる可能性が高く、実際にはこれ以上の差が出る可能性が高いことを付け加えておこう。

【グラフ1:WebMark2001】
B2B 098.40
097.62
B2C 102.83
101.49
Business 099.94
099.18
Overall 100.37
099.42
Pentium III-S 1.13GHz
Pentium III 1.0B GHz

【グラフ2:NetBench Version 7.0.1】


●とにかくパフォーマンスの高いサーバーを作りたいユーザーにお薦め

 このように、Pentium III-S 1.13GHzの2ウェイサーバーは、Pentium III 1GHzに比べて高いパフォーマンスを持っていることがわかった。今回は比較していないが600MHz以上のPentium III Xeonで、Pentium IIIの256KBより大きい容量のL2キャッシュが搭載されているのはPentium III Xeon 700MHzで、1MB/2MB版が用意されているぐらいだ(Pentium III Xeon 1GHzなどは256KB版のみ)。

 そう考えると、Pentium III-S 1.13GHzは512KBという大容量キャッシュ、さらには1.13GHzとサーバー用CPUにしては高クロックを実現するなど魅力があると言える。ネックとなるのは価格で、リテールボックスで4万円と、やや高めな値段設定がされている。マザーボードのP3TDL3も7万円台半ばとやや高価だが、オンボードSCSIなしモデルであるP3TDLEを選択すれば5万円弱とやや安い。こうしたサーバー用としては決して高いわけではなく、高性能なサーバーを自作したいユーザーであれば、検討してみていいだろう。

□関連記事
【7月9日】Tualatinコア採用のPentium III-S 1.13GHz登場!
Pentium IIIから移行すべきCPUなのか?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010709/hotrev117.htm
□Akiba PC Hotline!関連記事
【6月30日】“Tualatin”コアを採用した最新型サーバー向け「Pentium III-S」がデビュー
512KBの2次キャッシュを内蔵、動作クロックは1.13GHz
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010630/pentiumiii-s.html

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(2001年8月3日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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