後藤弘茂のWeekly海外ニュース

俺がハマーだ! 見えてきたAMD次世代プロセッサの姿


●Platform ConferenceでHyperTransport内蔵が明らかに

 AMDが来年後半に繰り出す次世代CPU「Hammer(ハマー)」の正体がまた少し明らかになった。Platform ConferenceでAMDが、Hammerのバスインターフェイスについて、正式に明らかにしたのだ。笠原氏のレポートにもあるが、ClawHammerは「16/16」構成のHyperTransport、つまり、片方向16bitづつで合計32bit幅のHyperTransportインターフェイスを持つ。それに対して、SledgeHammerは16/16 HyperTransportインターフェイスを2~3ポート備えるようだ。ClawHammerとSledgeHammerでは、同じHyperTransportをシステムインターフェイスに使いながら、その構成は大きく異なる。これはもちろんSledgeHammerがマルチプロセッサ構成を前提としているためだ。

 まずClawHammerで、Platform Conferenceでは下のようなブロック図が示された。この、左側の図を見るとClawHammerのHyperTransportが16/16であることがわかる。HammerファミリはDDR SDRAMインターフェイスをCPUに統合していると言われているので、デスクトップシステムの構成は、下の「ClawHammerシステムの推定構成図」のようになると想定される。


 デュアルプロセッサ対応サーバーシステムの場合、2個目のClawHammerが最初のClawHammerのバックエンドに接続されている。HyperTransportでは、デバイスをデイジーチェーン状に接続するTunnelingができる。そのため、1つ目のClawHammerがTunnelチップとなり2つ目のClawHammerをサポートすると思われる。

 また、写真のPlatform Conferenceのプレゼンテーションの図では、この場合のHyperTransportの構成が8/8になると受け止められる。これは、ClawHammerの16/16の、半分の8/8をCPU間の接続に使うことを意味する可能性がある。その場合、ClawHammerのHyperTransportは16/16だけで、デュアル構成ではそれを2つの8/8に分割するということになる。そう想定すると、ClawHammerのデュアルCPU構成は下の「ClawHammerシステムの推定構成図」の右側のようになる。システムバスの帯域は半分になる。

 この場合、問題はメモリの構成だが、AMDはHyperTransportにメモリのコヒーレント(一貫性)を取るためのプロトコルを加えることを明らかにしている。これは、通常のHyperTransportのスーパーセットで「Coherent HyperTransport」と呼ばれており、おそらくClawHammerのシステムバスはこのプロトコルになっていると思われる。Coherent HyperTransportを使うと、各CPUノードに物理的に分散したメモリをNUMA(Non-uniform memory access)構成で、単一のメモリプールとして扱えるようになる。

●SledgeHammerは複数の16/16を備える

 Platform Conferenceではワークステーション向けSledgeHammerの構成も示された。写真の右端の構成がそれだ。非常に特徴的なのは、SledgeHammerでは16/16のHyperTransportのコネクションが複数出ているように見えることだ。PCI-X Tunnelチップと接続する16/16以外に、AGP Tunnelチップにも16/16が出ている。また、それ以外にセカンドCPUも接続している。そのため、SledgeHammerでは3つの16/16 HyperTransportインターフェイスを備えている可能性がある。そう仮定した場合のシステム構成が、下の「SledgeHammerシステムの推定構成図」だ。

 どうしてSledgeHammerではこんなにHyperTransportインターフェイスが必要なのか。それは、4ウエイ以上のマルチプロセッサ構成も想定しているからだ。HyperTransportを使った4ウエイ構成を想定した下の「SledgeHammerマルチプロセッサシステムの推定構成図」を見ると、SledgeHammerに3つのHyperTransportが必要な理由がよくわかる。

 この構成では、SledgeHammerはCoherent HyperTransportでリング状に接続される。そのため、CPU間リンクだけで2つのHyperTransportポートが必要になる。こうした構成では、メモリアクセスのためのトラフィックだけでも膨大になるため、CPU間にはそれぞれ16/16が必要になるだろう。プラスI/Oへの接続でもうひとつ16/16という構成になっているのではないだろうか。ワークステーション構成の時は、そのうちのひとつの16/16をAGP Tunnelとの接続に回すと考えるとつじつまが合う。

 ちなみに、こうしたメモリ分散型の構成のマルチプロセッサの場合、構成規模が大きくなるにつれてノード間のトラフィックが増大して効率が落ちることがネックとなる。そのため、8ウエイではCPU同士をHyperTransportでリンクするこうした構成では対応できない可能性がある。その場合は、HyperTransportスイッチチップなどを使うと思われる。

●ピン数を抑えるためにClawHammerでは16/16だけ

 ClawHammerとSledgeHammerでHyperTransportのポート数が異なる理由はコストだ。Platform Conferenceの技術セッションでは、16/16のHyperTransportのピン数がトータル103ピンになると説明された。Hammerファミリはメモリインターフェイスも統合しているため、16/16を複数搭載すると、ピン数はかなりのものになる。デスクトップCPUとして経済的なパッケージングを考えて、ClawHammerは16/16だけを搭載するのではないだろうか。

 ちなみに、HyperTransportの帯域は次のようになる。穏当なところで、16/16の帯域は3.2GB/sec、そのうちには6.4GB/secというあたりではないだろうか。

HyperTransportの帯域
800MHz DDR400MHz DDR400MHz200MHz
32/3212.8GB/sec6.4GB/sec3.2GB/sec1.6GB/sec
16/166.4GB/sec3.2GB/sec1.6GB/sec800MB/sec
8/83.2GB/sec1.6GB/sec800MB/sec400MB/sec
4/41.6GB/sec800MB/sec400MB/sec200MB/sec
2/2800MB/sec400MB/sec200MB/sec100MB/sec


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(2001年7月27日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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