元麻布春男の週刊PCホットライン

地味だが好感が持てるSmartVision Pro2 for USB


●前モデルからの変更点はソフトウェアとリモコン対応

SmartVision Pro2 for USB

 昨年の夏発売されたNECのSmartVision Pro for USBは、手軽なUSBタイプの外付けTVチューナでありながら、高い実用性を持つ製品として話題になった。このコラムでも取り上げたが、使い勝手の良さと画質のバランスが取れていたことが印象に残っている。ただ、タイムシフトを可能にするため、常時ハードディスクに書き込みを行なっているのが、筆者の利用形態(ながら視聴)とマッチしなかったため、常用するには至らなかった。また、タイムシフト/キャプチャ時の画質(ビットレート)を変えられない、音質がもう一息、といった不満もあった。

 そのSmartVision Pro for USBが、ソフトウェアの改良と赤外線リモコン(受光部はUSB接続)への対応を柱としたモデルチェンジを行なった。新しい製品名はSmartVision Pro2 for USBで、あまり変わりばえしない? が、それもそのハズ。基本的にハードウェアに変更はない。筐体の色がシルバーをベースにした落ち着いたものになったものの、本機の心臓部とも言えるMPEG-2エンコーダチップ(GloveSpan iTVC12)をはじめ、電気的には前作と同じと考えて良い。つまり最高画質にもほとんど変化はないことになる。

 ソフトウェアもユーザーインターフェイスに違いがないせいか、インストールして起動しただけでは、どこが変わったのかよく分からない。が、スペックを調べ、実際に使ってみると、多くの点で改良が施されていることが分かる。まず最初に触れておきたいのは、Windows 2000での動作がサポートされた、ということだ。従来モデルでも3月にWindows 2000対応モジュールが公開され、Windows 2000でも利用できるようになったが、これまでこの種のデバイスは、Windows 9x系だけがサポート対象になっていることが多かった。しかし、年内にWindows XP Home Editionのリリースも控える今、Windows 9x系のみのサポートでは何かと不安も残る。Windows 9x系に加えWindows 2000のサポートも行なわれたことで、Windows XPへの移行もよりスムーズになるものと期待される(ただし、現時点でNECが本機のWindows XPでの動作を保証しているわけではない)。


●タイムシフト解除やビットレートの指定が可能に

 実際に使ってまず気づいたのは、タイムシフトの解除が可能になった、ということだ。本機は、動画データをハードウェアMPEGエンコーダチップで圧縮した後、USB経由でPCに転送、ソフトウェアでデコードして画面表示を行なう。このため、タイムシフトを解除しても、実際の放送とは若干(1秒前後)のタイムラグが生じるが、これはやむを得ないところだろう(このためこのモードはセミライブモードと呼ばれる)。

 タイムシフトの解除を行うことでハードディスクへの書き込みがなくなるため、別のアプリケーションを使いながら、TVを流しておく、といった使い方がしやすくなった。とはいえ、タイムシフトモードにも改良(タイムシフトでさかのぼって視聴するだけでなく、それをファイルとして保存できる)が加えられており、どちらを常用するか迷うところだ。ただ、起動や終了時など、結構重たい(時間がかかる)のは、相変わらずである。

 キャプチャについての変更は、ビットレートが指定可能になったことと、MPEG-1によるキャプチャが可能になったことの2点。最高ビットレートは、前回固定されていた6Mbpsと変わらず、MPEG-1のサポートと合わせ、ビットレートを落とす方向で拡張されている。より高いビットレートのサポートがないことに失望している人もいるかもしれないが、本機が12MbpsのUSB 1.1対応であることを考えれば(ましてや12Mbpsをほかのデバイスと共有しなければならないことを考えれば)、それもしようがないところだ。

 逆に、ビットレートを落とすことが可能になったことで、CD-Rのようなビデオには必ずしも十分な容量ではないメディアに、動画を記録することが容易になった。画質調整ユーティリティを使ってMPEG-2の下限である3Mbpsまで落とすと、700MBのCD-Rメディアに民放の30分番組がギリギリおさまる(TV CMを除いた場合。だいたい28~29分程度記録できる)。それより長い番組の場合は、MPEG-1モードを使えばよい(ビットレートを2Mbps以下に落とせばよい)のだが、本機にはもう1つのオプションとしてエクスポート機能が用意されている。

 エクスポート機能は、いったん録画したファイルを、指定のファイルサイズに分割して出力するもの。CD-R向けには、メディアに合わせて650MBあるいは700MBを指定すればよい。また、この機能をうまく使うと、録画した番組終了後のTV CMをカットする、といったことも不可能ではない。次回のバージョンアップでは、容量による指定だけでなく、時間での指定もできるようになると、さらに有用性が増すのではないかと思う(固定ビットレートのみのサポートなのでそれほど難しくないと思う)。

ビットレートの指定が可能になった いったん録画したファイルを、指定のファイルサイズに分割して出力するエクスポート機能も搭載した

 このほか、再生機能としては、シーンの変わり目を自動検出してサムネイル表示するシーンインデックス機能(サムネイルをダブルクリックすることでその位置からの再生ができるほか、静止画キャプチャも可能)、番組テロップの有無や音声出力の切り替わりを使って、ニュース番組を短時間で見る機能などが、新しい機能として加わっている。


●リモコンのBSボタンの謎

リモコン付属モデルも用意される

 さて、もう1つ新しく加わったソフトウェアの機能は、リモコンのサポートだ。SmartVision Pro2 for USBには、最初からリモコンがセットになったもの(実売価格:33,000円前後)と、そうではないもの(実売価格:3万円前後)の2種類があるが、リモコンなしのバージョンを購入しても、後からリモコンキットとして別途購入することができる。このリモコンキット、SmartVision Pro2 for USBだけでなく、SmartVision BSサポートキットNXと共通のもの。カバーを開けたところに、BSなどと書かれたボタンがあるのは、おそらくそのためだ。マウスポインタとカーソルキーのどちらかを選択してエミュレーションできるほか、一般のTVのリモコンとしても使えるスグレものである。

 そのほかの機能については、おおむね前バージョンと同じだ。ADAMSやBitcastのサポート、文字放送/字幕のサポートなどは、以前と変わらない。残念ながら、今回もインターネットベースのEPGサポートは見送られたが、ADAMS-EPGは以前同様利用できる。ADAMS-EPGには、インターネットに接続しなくても使えるというメリットがあるのだが、最初にデータをロードするのが不便(決まった時間にしかデータが放送されていないため、放送時間を待たねばならない)というデメリットがある。フレッツに代表される常時接続環境の普及、EPGから番組情報Webページへのジャンプなどを考えれば、インターネットベースのEPGサポートも欲しいところだ。また、今回のバージョンでは、iモードからの録画予約がサポートされたのだが、この機能を利用できるのはBIGLOBEの会員に限定されているのが残念だ。


●地味だが好感が持てるバージョンアップ

 以上のように、SmartVision Pro2 for USBに加えられた改良は、ソフトウェアによるもので、それも使い勝手に関するものが多い(ただし音質も改善されたような印象を受けた)。ハードウェアも含めた見直しはUSB 2.0対応版(もし出るのであれば)を待つ必要があるのだろう。どちらかといえば、地味な改良かもしれない。

 だが、旧版(SmartVision Pro for USB)のユーザー向けに、バージョンアップしたソフトウェアのみの提供を行なう(PK-VS/AG20UA:店頭予想価格4,000円)、リモコンの単体販売を行なう(PK-VS/AG21PA:実売価格4,000円弱)といった、ユーザーを重視する姿勢は好感が持てる。書き込み可能なDVDフォーマットを巡る争いの趨勢が見えるまで、CD-Rで頑張ろうというユーザーには手ごろな製品かもしれない。

 筆者個人はというと、仕事マシンにはすでにTVチューナーカードが入っていることもあり、SmartVision Pro2 for USBを常用することはないかもしれない。しかし、リモコンが意外と使えるのと、3Mbpsまでビットレートを落とした時の画質が思ったより良いので、最近めっきりと火の入る機会が減ったリビングルームPCの再構築に使おうか、などと考えているところだ。

□NECのホームページ
http://www.nec.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.nec.co.jp/japanese/today/newsrel/0106/0801.html
□関連記事
【6月8日】NEC、タイムシフト録画が可能になった「SmartVision Pro 2」(AV Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20010608/nec.htm
【3月8日】NEC、SmartVision Pro for USBがWindows 2000に対応
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010308/nec2.htm
【2000年9月6日】USB TVチューナ/MPEG-2キャプチャボックス「SmartVision Pro USB」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000906/hot107.htm
【6月30日】ソフトで大幅機能アップした「SmartVision Pro 2 for USB」発売(AKIBA PC Hotline)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010630/etc_smartvpro2.html

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(2001年7月4日)

[Text by 元麻布春男]


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