プロカメラマン山田久美夫の

三洋電機「DSC-MZ1」最新β機 実写ミニレポート


三洋電機「DSC-MZ1」
 山田久美夫氏による三洋電機「DSC-MZ1」のβ機によるミニレポートをお送りする。β機ではあるが、5月31日のファーストインプレッションにて掲載したバージョンよりも、製品に近いバージョンとなっている。また、今回は通常モードでの画像と、白トビ、黒ツブレを軽減するという「ワイドレンジショット」機能を使用した画像を並べて掲載しているので見比べていただきたい。

 特に指定のないものは、フォーカス、露出、ホワイトバランスともオートで1,600×1,200ピクセルで撮影されている。β機のため、撮影された画像は、出荷された製品によるものとは異なる可能性がある。

 なお、製品の仕様については関連記事を参照されたい。
(編集部)


●ダイナミックレンジを改善する「ワイドレンジショット」機能

クラス最大の1/1.8インチ211万画素CCD搭載機「三洋電機 DSC-MZ1」の最新ベータ版ボディが手元に来た。そこで、前回のボディでは搭載されていなかった新機能や動画の実写データを公開する。

 本機には、実にいろいろな新機能が搭載されているのだが、なかでも注目されるのが「ワイドレンジショット」機能だ。この機能は、小型CCDを搭載したデジタルカメラの欠点であるダイナミックレンジの狭さを、技術的に解決しようという試みだ。

 原理的には、露出を変えて撮影したカットをカメラ内で合成することで、ワンショット撮影では得られないような、幅広いダイナミックレンジを実現しようというもの。つまり、この機能を使うことで、明暗比の高いシーンでも、ハイライトが白く飛んだり、シャドー部の潰れが軽減され、より幅広い明暗域を再現できるわけだ。

 この種の機能は、すでに「日本ビクター・GC-X1」ですでに実用化されており、露出を変えて撮影した2種のカットを合成することで、それを実現している。だが、同機の場合は、CCDの構造や内部処理速度の関係で、2コマ撮影する間の時間差が約1秒前後発生するため、完全に静止しているものを、三脚を使って撮影する必要があった。

 だが、今回の「DSC-MZ1」が搭載した「ワイドレンジショット」では、その時間差がきわめて短く、動きの速いシーンでない限り、手持ちでの撮影を可能にしているのが大きな特徴といえる。


●屋外

通常撮影 ワイドレンジ撮影


●プログレッシブCCDだから実現できた「ワイドレンジショット」

 本機が搭載しているCCDは、1/1.8インチと大きいだけでなく、形式もポピュラーなインターレース式ではなく、全画素読み出し式のプログレッシブタイプを採用している。実は、この「ワイドレンジショット」は、このCCDを搭載したからこそ実現できたものといえる。

 インターレース式の場合には、走査線の奇数列と偶数列を交互に読み出して画像を生成するため、どうしても機械式シャッターを使って一度露光したあとに、シャッターを閉じて2回にわけて画像を読み出す必要がある。そのため、構造上、超高速連写が困難になる。

 その点、本機のようなプログレッシブタイプのCCDであれば、構造上、機械式シャッターを使わずに、電子シャッターのみでの撮影が可能になる。そのため、VGAサイズでの動画撮影や超高速連写が実現できるわけだ。

 そして、本機のCCDの場合、秒間30フレームの動画撮影や超高速連写などを実現するために新開発された、現在もっとも高速駆動が可能なプログレッシブCCDを搭載している。

 そのため、その特性を最大限に生かして、露出の異なる2コマを連続撮影。その、時間差のきわめて少なく、露出が異なる2コマを独自の演算処理で合成することで、この「ワイドレンジショット」を実現しているわけだ。

 具体的には、適正露出に対して、ややオーバー気味のカットと、アンダー気味のカットを撮影。シャドー側のデータは、露出オーバーのコマから抽出し、ハイライト側は白飛びが少ない露出アンダーのコマから得て、一枚の、再現域の広い画像を生成するわけだ。

 ちなみに、この露出差は公開されていないが、シャッター速度が2種類に固定されているわけではなく、明るさに応じてシフトする仕組みになっている。そのため、明るいシーンでも、暗いシーンでもそれに見合った効果が得られるわけだ。

 そして、結果的に得られた画像は、ワンショットでは到底得られないような幅広い階調性を備えているうえ、2枚の画像を合成することで、ノイズ成分が減少するという副次的な効果もある。

●屋外・マクロ

通常撮影 ワイドレンジ撮影


●高明暗比や高彩度シーンで威力を発揮

 実際に撮影してみると、シーンによってその効果の度合いは異なる。実際に、ほとんど差のないものもあったが、明暗比の高いシーンでは、驚くほどの効果が得られた。

 とくに効果的なのが、ハイライト側の再現性。なにしろ、通常のワンショット撮影では白く飛んでしまっているハイライト部の多くがワイドレンジショットモードでは再現されている。

 なかでも、屋内撮影をしたときの、窓の外の風景や光源の周囲の描写には目を見張るものがある。

 もちろん、シャドー側の再現性向上にも効果がある。もちろん、露出的にもともと再現できないようなきわめて暗い部分の階調再現は難しいが、ワンショット時にまっ黒に潰れずに、ごくわずかでも階調が残っているような、普通のシャドー部の階調性は十分に向上している。

 また、初期のベータ機に比べて、ノイズ成分が減っていることもあるが、確かにノイズの軽減効果もあるようだ。

 このほかに、意外なほど効果があったのが、彩度が高いシーン。とくに、彩度の高い花の花びらの描写などに、明確な違いが見られたのは、本当に意外だった。

 これはおそらく、ワンショット時には、RGBのいずれかのデータがサチった(飽和した)状態になって、彩度の高い部分の階調性が失われていたのが、ワイドレンジショットにより、その部分のデータが飽和せずにすんだため、鮮やかな色の中の、微妙な階調が再現されたものと思われる。

 なお、この処理はカメラ内で行われているわけだが、本機は内部処理がきわめて高速なため、事実上の処理時間は、通常撮影時とほとんど変わらないレベル。秒間10コマの超高速連写こそできないが、撮影間隔は通常撮影と同等でストレスを感じるようなことはないので安心だ。

●屋内・マクロ

通常撮影 ワイドレンジ撮影


●魅力的だが若干の注意も必要

 今回使ってみて、若干気になった点や注意すべき点がいくつかあった。

 まず、このモードの場合、明暗の再現域が広くなったこともあって、通常のワンショット時に比べて、見かけの階調が軟らかくなっており、ややコントラストが不足気味に見えるカットもあった。もちろん、撮影後に画像処理ソフトなどでややコントラストを高めれば、階調域が広くても、メリハリのある画像を作ることもできるので、この点は評価が分かれるところ。

 もっとも、階調再現域が広がっているのであれば、通常の8bitデータとして保存するのではなく、その効果をより生かせる、16bitでのデータ保存ができるモードも欲しくなる。もちろん、このクラスの200万画素級モデルでそこまで必要かという議論はあるわけだが、このあたりは今後の課題といえそうだ。

 このほか、本機能は、間髪を入れずに露出を変えて連続撮影しているといっても、動きの激しいシーンでは画像がずれるケースもある。また、フリッカーのある蛍光灯光源も、露出差が不安定になるので苦手だ。

 さらに、ストロボの充電時間が連写に間に合わないため、ストロボ撮影にも対応できない。また、電子シャッターのみでの撮影になるため、輝度が極端に高い部分ではスミアが発生するケースもある。

 そのため、必ずしも万能な機能ではないが、ダイナミックレンジの狭さが気になる人にとってはかなりの朗報であり、苦手なシーンを把握した上で使うのであれば、このモードを常用してもいいと思うほど魅力的なものといえる。

●屋内

通常撮影 ワイドレンジ撮影

通常撮影 ワイドレンジ撮影
フラッシュ使用


●QuickTime動画

ムービー1(320×240、9秒、約5.3MB)
ムービー2(640×480、10秒、約7.4MB)



□関連記事
【5月31日】【山田】三洋電機「DSC-MZ1」β機ファーストインプレッション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010531/yamada.htm
【5月30日】三洋、プログレッシブスキャンCCDを搭載した動画対応デジタルカメラ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010530/sanyo.htm

(2001年6月15日)


■注意■

[Reported by 山田久美夫]


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