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5月24日に、Windows Mediaの最新版7.1(日本語版)をリリースしたマイクロソフトで、Windows Mediaを担当しているデジタルメディア本部 テクニカルエバンジェリスト 本島昌幸氏と、製品マーケティング本部 Windows製品部クライアントグループ プロダクトマネージャー 篠田尚平氏にインタビューを行なった。
●Windows Mediaを使ってマイクロソフトは、どのようなことを実現しようとしているのですか?
本島昌幸氏 |
Windows Media(以下WM)は、ビデオやオーディオをパソコンだけで録画(録音)/再生するプラットフォームではありません。PocketPCなどのプラットフォームにWMを展開することで、パソコンを中核としたデジタル家電製品などでデジタルコンテンツを利用できる環境を作り上げることです。これこそが、パソコンの次の利用方法になるでしょう。
篠田尚平氏 |
Windows Media Player(MWP)により、オーディオやビデオの再生ができるようになり、パソコンの利用方法は、よりAV機器に近くなっていくでしょう。Windows XPには、DirectX 8(DirectShow)にDVD再生のベースが統合され、アプリケーションベンダーは、自社のプレーヤーインターフェイスを開発しなくても、DVD再生が行なえるようになっています(MPEG-2再生のモジュールは入っているが、DVDの暗号を解くモジュールはWindows XPには標準では入っていない)。
●昨年からTVチューナカードなど、パソコンでTVを見たり、録画することが流行っていますが、これらのプラットフォームをサポートするようにWindowsはできていませんよね。
本島 我々もWindowsをAV機器と融合させるためのプラットフォームとしてDirectXなどのベースを開発していますが、日本では我々の予想よりも進んでいますね。現在リリースされているTVチューナカードを利用して、HDにビデオを録画するアプリケーションなどでは、個々のアプリケーションが独自仕様で動いています。今年のWinHEC(Windowsベースのハードウェアを開発しているエンジニアのためのカンファレンス)では、WindowsベースでTV放送を扱うためのプラットフォームを提案しています。
●WM8とWM7の関係を教えてください。プレーヤー側とコーデックのバージョン名が同じ名前で、混乱を招いていると思います。
本島 今回リリースしたWM7.1は、昨年βリリースをしていたWM8のコーデックを新たに入れ込んだものです。WM8は、コーデックのテクノロジ名なのです。今回の変更は、ユーザーインターフェイスなどは、WM7のままですが、コーデックの改良により、より低ビットレートでクオリティの高い音や画像が実現できるようになっています。つまり、コーデックのエンコーダ(圧縮)の変更が主な点です。WMPを再リリースしたのは、コーデックの変更だけでなく、いくつかのバグ修正や変更などがあったため(DirectShowでの動画のサポート)、バージョンアップしたということです。
オーディオに関しては、単に64KbpsでCDクオリティの音が再生できるといった圧縮率の向上だけでなく、今までWMが不得意だったアコースティックの立ち上がり音や女性ボーカルの声が、きれいに再現できるようになっています。WM7で圧縮した音楽は、キュルキュルした音が気になりましたが、これを修正しています。
エンコード(圧縮)ソフトをチューニングすることで、今まで苦手だった部分を修正して、クオリティの高い音を実現しようとしています。エンコードは、時間やCPUパワーをかければ、低ビットレートできれいな音を実現できます。WMでは、あまり時間をかけずに、きれいな音に圧縮できるようにコーデックのチューニングを行なっています。1曲の圧縮に1時間も2時間もかけるようでは、実用にならないと考えているのです。しかし、もう少し時間がかかっても、きれいな音で圧縮できるようにしてほしいという要望も聞いています。このあたりは、次への課題ですね。
篠田 Windows XPは、WM8が入っていると言ってきましたが、現在はWM for XPと呼んでいます。基本的には、WM8のコーデックに、XPで利用できる機能(GUI部分など)を実現したものです。基本的なコーデック機能は、WM for XPとWM7.1では変わりません。ですから、最新のWMは、Windows XPでしかサポートされないというのは、正確な情報とはいえません。コーデックという基本的な機能は、WM7.1でも、WM for XPとおなじなのですから。
●WM8のビデオコーデックの特徴を教えてください
本島 WM8のビデオコーデックは、ISOで決まったMPEG-4の機能を正確にサポートした ISO MPEG-4コーデックとマイクロソフトが独自に機能拡張したMSWM8コーデックの2種類が搭載されています。今までは、MPEG-4の規格が最終版になっていなかったため、マイクロソフト側で暫定規格を取り入れてMSMPEG-4コーデックを作り提供していました。しかし、MPEG-4規格が最終版になり、MSMPEG-4と若干異なっていたので、ISOのMPEG-4を完全にサポートするコーデックを開発しました。
さらに、マイクロソフトが拡張したテクノロジを採用したMSWM8を作ることで、既存のMPEG-4よりも低ビットレートでクオリティの高い映像が実現できるようになりました。MPEG-2を利用しているDVDに近いクオリティの映像を500Kbpsで実現しています。さらに、ハイビジョン(1,280×720ドット)クオリティの映像が3Mbpsに圧縮できます。
●WME(Windows Media Encoder)7.1とWM8エンコードユーティリティの違いは?
本島 WM8エンコードユーティリティは、WM8の全ての機能を利用して映像のエンコードを行なうことができます。例えば、VBRや2パスなどがサポートされています。しかし、WM8エンコードユーティリティは、コマンドラインしかサポートされていません。また、AVIなどの映像ファイルを、WM8でエンコードする機能しか持っておらず、キャプチャカードからキャプチャした映像を直接エンコードする機能などは、サポートされていません。
一方、WME7.1は、コーデックとしてはWM8を利用していますが、ユーザーインターフェイスにWME7と同じモノを使用しているため、WM8独自機能を利用することができません(コーデックのみ利用する)。しかし、WM8エンコードユーティリティでは、サポートされていないキャプチャカードから直接エンコードして、ブロードキャストする機能などがWME7.1ではサポートされています。
当面エンコード システムとしては、WME7.1とWM8エンコードユーティリティの2本立てになるでしょう。WM8エンコードユーティリティは、コマンドラインで利用できるため、バッチエンコードなどプロ用に利用されるでしょう。
もちろん、どちらでエンコードしても、WM8コーデック対応のプレーヤーであれば問題なく再生できます。
□Windows Mediaのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/windows/windowsmedia/
□関連記事
【5月24日】マイクロソフト、最新コーデックを搭載したWindows Media Player 7.1日本語版
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010524/ms2.htm
(2001年6月4日)
[Reported by 山本雅史]