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Windows 2000での非PCM出力に対応したUSB光オーディオアダプタ「D2link」 |
4月17日、カノープスはdtsのソフトウェアデコードに対応したWinDVD 3.0を5月下旬から発売すると発表した(標準価格7,800円、アップグレードパッケージは3,980円)。これにより、少なくともdts対応タイトルをダウンミックスによる2チャンネル再生が可能となる(アナログのマルチチャンネルスピーカーに対応したサウンドカードを利用していれば、ソフトウェアデコードによるマルチチャネル再生も可能)。実際に、Windows 2000上でβ版をテストしてみたが、これまで音が出なかったdtsタイトルをちゃんと再生することが可能であった。
とはいえ筆者の場合、dtsのソフトウェアデコードは必ずしも不可欠というわけではない。デスクトップPCは常時ドルビーデジタルおよびdtsに対応したデコーダ(ヤマハDP-U50)に接続しているため、S/PDIFへのリダイレクトさえサポートしてくれれば良いのだが、Windows 2000では(より正確にはWDM準拠のドライバでは)これが容易ではない。2チャンネルのPCMフォーマット(一般的なWaveの再生、MDへのサウンド出力など)は問題ないのだが、ドルビーデジタルやdtsのようなマルチチャネルのフォーマット(非PCMフォーマット)をS/PDIFで出力するのは、非常に難しい。
もちろん、VxDモデルのドライバがサポートされないWindows NT系OSでは、Windows 9x系と同じ手は使えない。カーネルミキサーのバイパスがサポートされるのを待たねばならず、Windows 2000ではService Pack 2での対応が予定されている(Windows XPは最初からサポート)。しかし、残念ながらSP2の配布は、現時点でいつになるのか不明だ。Windows XPの発表以来、SP2についてあまりニュースを聞かなくなった気がするのだが、UDMA 100対応の問題などもあり、Windows XPがSP2にとって代わったわけではないと思う。
Windows 2000上でドルビーデジタルやdtsのマルチチャネルオーディオをS/PDIFから出力するには、上記のカーネルモードバイパス、これに対応したオーディオドライバ、これをサポートしたソフトウェアDVDプレーヤーの3つが必要になる(幸いにもDirectXの対応は完了しているようだ)のだが、肝心のSP2が入手できないのではメドが立たない(理想的にはカーネルミキサーがマルチチャネルオーディオに対応するべきなのだが、それにはミキサーの全面的な書き換えだけでなく、Windows上でマルチチャネルオーディオを扱う標準フォーマットの確立、アプリケーションの対応、そして何より著作権保護措置と映画産業の同意が必要になるだろう)。
D2linkの最もストレートな使い道は、PCサウンドをMDなどに録音する(2チャンネルのみ。ドルビーデジタルやdtsに対応したMDはない)、ということになるのだが、D2linkでは光デジタル端子からドルビーデジタルのマルチチャネルオーディオを出力できるという。なお、筆者が試したところでは、dtsの出力も問題なく可能だった。基本的にはストリームをリダイレクトしているだけだから当然かもしれないが……。公式には不可能?なことを実現できたのは、D2link専用のWinDVD 2000が付属しているからだ。実際、パッケージ版のWinDVD 2000、WinDVD DH、上述したWinDVD 3.0βの3種類と組み合わせて試してみたが、S/PDIFからマルチチャネルオーディオを出力することはできなかった。なお、リニアPCMによるステレオ音声やソフトウェアデコードしたドルビーデジタルのダウンミックス音声は出力可能。もちろんテストに際しては、各プレーヤーソフトごとにOSごと入れ替えている。
というわけでD2linkだが、現時点でWindows 2000からS/PDIF経由でドルビーデジタル/dtsのマルチチャネルストリームを出力できる数少ない一般向け製品の1つであり、おそらく最も安価な製品だろう(ALL-IN-WONDER RADEONもこの機能を持つが、以前筆者が試した時は安定動作しなかった)。付属のWinDVD 2000専用版が「サービス品」扱いで、アイ・オー・データ機器によるサポート対象外となっているため、将来のバージョンアップなどに不安があるものの、7,000円を切る実売価格を考えれば文句は言えない。もし付属のWinDVD 2000の機能に不満が生じた場合は、WinDVDシリーズ以外の他社製プレーヤーとの併用(S/PDIF出力はサポートできないだろうが)を試みるしかないだろう。その方が同じWinDVDの新版を加えるよりは共存できる可能性が高い。
ただ、オーディオ機能をD2linkのみに委ねるのは難しいかもしれない。アナログ入出力機能を一切持っていないため、たとえば、システムにTVチューナカードなどを加えた瞬間、ほかのサウンドカードが必要になってしまう。逆に、S/PDIFをサポートしていない多くのノートPCにとっては、理想的な補完関係が築ける製品といえるだろう。
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【4月23日】アイ・オー、USB経由で光デジタル出力するオーディオアダプタ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010423/iodata1.htm
(2001年5月2日)
[Text by 元麻布春男]