|
WinHECはWindows関連のハードウェアの話題を扱うイベントとあって、展示会でもハードウェアエンジニア向けの展示が行なわれている。Intel、AMD、VIA、ALiなどといったお馴染みのコンポーネントメーカーのほか、ビル・ゲイツ会長兼CSAの基調講演でデモされたTablet PCのプロトタイプなどが展示されており、大きな注目を集めていた。
Microsoftが展示したTablet PCのプロトタイプ。詳細なスペックは不明 |
しかし、来場者の注目を最も集めていたのは会場の一角にひっそり展示されていたTablet PCのプロトタイプだ。Tablet PCのOSはWindows XPをベースに手書き認識や回転表示などを追加したもの。ハードウェアのスペックなどについても質問してみたが「あくまでプロトタイプであり、スペックなどは公開していない」と明らかにはしてもらえず、あるPCメーカーが作ったプロトタイプとのことだ。
Tablet PCプロトタイプの上面。CardBus対応のPCカードスロットが用意されていた |
日本語化の可能性について聞いてみたがMicrosoftの展示員によれば「もちろん、日本語バージョンも開発している。日本語版はIMEを開発したチームが行なっており、それなりのタイミングで出荷できるはず」とのことで、期待したいところだ。
●VIA TechnologiesはC3のデモとSuperSavageのデモ
VIAはCeBITに引き続きC3をデモ |
VIAによればC3のCには3つのCの意味が込められており「Computing、Connectivity、Communications」の3つのCの頭文字をとったものであるという。
VIAではこのC3により「Value Internet Architecture」と呼ぶ低価格PCに向けたソリューションを実現していくとしている。クロック周波数は最高733MHz。1000個ロット時の価格は54ドルとなっており、価格面でのメリットは決して小さくない。
C3の特徴は主に以下の点だ。
・64KBのL2キャッシュを搭載
・製造プロセスルールは0.15μm(ダイサイズ52平方mm)
・1.5Vと低電圧駆動が可能であるため低消費電力
・動的にクロック/電圧を変えられるLongHaulテクノロジに対応
C3とCeleronのパフォーマンスを比較するスライド |
また、駆動電圧が1.5Vへと下げられ、製造プロセスルールも0.15μmへと微細化されているため、CPU全体で40%も消費電力が低減されているという。同クロックのCeleronと比べても大幅に消費電力量が低減されており、VIAではC3を低価格デスクトップPCだけでなく、ノートパソコン市場にも普及させていく計画だ。このため、従来のCPGAに加えて、モバイル向けのEBGA、μPGAなどが投入される予定となっている。
さらに、先日発表したばかりのSuperSavageのデモも行なわれた。SuperSavageはSONICblue(旧S3)とVIAの合弁企業であるS3 Graphicsがリリースしたビデオチップで、モバイル用をターゲットにした製品だ。スペックは以下のようになっている。
・128bit3Dレンダリングエンジン(コアクロック143MHz)
・フレームバッファ:SDRAM(128bit幅)/DDR SDRAM(64bit幅)、最大64MB
・AGP 4Xインターフェイス
・RAMDAC:270MHz
・DuoView(マルチモニタ機能)対応
・DVDアクセラレーション
・TV-OUTサポート
SuperSavageにはMCM(Multi Chip on Module)技術を利用して1つのチップに、グラフィックスコアとフレームバッファ(ビデオメモリ)となるSDRAMを最大で32MBまで統合したSuperSavage/IXと、フレームバッファを内蔵しないSuperSavage/MXが用意されており、ノートPCメーカーは目的に応じて選択することができる。
S3 GraphicsのSuperSavage/IXを搭載したデモマシン | SuperSavage/IXを搭載したビデオカード。ビデオメモリはチップに内蔵されている |
今回VIAのブースに展示されていたのは、このうちSuperSavage/IXの8MB統合版で、ビデオカード上にはフレームバッファとなるメモリは搭載されておらず、MCMとなっている。会場では3DMark2001が実行されており、特に問題もなく動作していた。現時点ではどのようなパフォーマンスを持っているのかは未知数だが、S3 GraphicsはノートPC市場では20%近いシェアを持っており、今後ノートPCなどに採用されていきそうだ。
●AMDはモバイルAthlon 1GHzとTwister-Kのデモを行なう
AMDは既にCeBITでPalominoやAMD-760MPなどのデモをしているが、WinHECでは新たにVIAのモバイルAthlon/Duron向けチップセットであるTwister-K(VT8362)のデモを行なった。
VIAのTwister K(VT8262)を利用したモバイルAthlon 1GHzのデモシステム | Savage4相当のグラフィックスを統合している |
と、言うと新しいチップセットのように聞こえるが、基本的にはデスクトップPC向けのモバイルAthlon/Duron向けのチップセットであるProSavage KM133(VT8365、S3のSavage4を統合した統合型チップセット)のモバイル版で、チップセットレベルでPowerNow!テクノロジ(AMDの省電力技術)をサポートしているということ以外は、基本的にKM133とほぼ同等だ。AMDブースではこのTwisterーKを搭載したリファレンスマザーボードとモバイルAthlon 1GHzを利用したデモが行なわれており、実際にPowerNow!テクノロジのデモ用アプレットを触って、クロックや電圧を落とすことが可能になっている。
既にAMDはCeBITにおいてALi MAGiK 1との組み合わせで、モバイルAthlon 1GHzのデモを行なっているが、今回VIAチップセットでのデモも行なわれたことで、スタンドアローン、統合型両方のモバイル向けチップセットによるデモが行なわれたことになる。AMDとしてはこのように複数のチップセットでモバイルAthlonのデモを行なうことにより、「プラットフォーム面でIntelのモバイルCPUに遅れをとっている」という世評を覆したいということなのだろう。
しかし、そうしたことがアピールできたかと言えば、そうでもないだろう。VIAもALiもIntelのモバイル向けにチップセットを出荷しているが、採用されている例は非常に少ない。あるOEMメーカーのエンジニアに言わせれば、パワーマネジメント周りの信頼性がイマイチだからだという。確かに、TransmetaのCrusoeを搭載したマシンでも、サウスブリッジにALiやVIAではなく、わざわざIntelの82371EBを搭載している例は非常に多い。なぜかと言えば、その方が安定したマシンを作りやすいからだ。VIAやALiしか選択肢がないとなると、Intel 815EMや440MXなどの強力な自社製チップセットに加え、ALiやVIAなどもチョイスできるIntelプラットフォームにくらべ、AMDのモバイルプラットフォームは、やや不利であるという点は否めない。
それでは、AMDはモバイル向け自社製チップセットは作らないのだろうか? という疑問がでてくるだろう。AMD-760の出来は大手OEMメーカーでも評価されており、決してクオリティでIntelに劣るということはない。しかし、この計画は全くない。
AMDの自社製チップセットと言えば、AMD-750そしてAMD-760だが、これらがモバイル用にリリースされる予定はないのだ。AMDコンピューテーションプロダクトグループ(CPG)プロダクトマネージャのマーティン・ブース氏によれば「AMDの自社製チップセットは、基本的にプラットフォームの立ち上げを目的に製品計画を立てている。パートナーとなるチップセットベンダのチップセットが立ち上がったあとはバトンタッチして、その役割を終える。そうした意味ではモバイルは最初からALiやVIA Technologiesなどのパートナーのチップセットが利用可能になっており、自社製チップセットを投入する意味はない」とのことで、その必要はないというのがAMDの姿勢だ。
こうしたブース氏の発言はチップセットに関するAMDの立場を非常によく表している。つまり、AMDはALi、SiS、VIAといったチップセットベンダにAMD向けのチップセットを作ってもらうために、自社のチップセットには力を入れないということなのだろう。なぜなら、AMDは前出の3社に対して「AMDのチップセットを少しでも早く作ってくれ」とお願いする立場にあるからだ。
ALi、SiS、VIAといったチップセットベンダのコアビジネスはIntelプラットフォーム向けのチップセットであり、出荷量はこちらのほうが圧倒的に多い(VIAなどは明確にこの事実を認めている)。そのため、サードパーティのチップセットが新世代のチップセットをリリースする場合、まずIntelプラットフォームのチップセットが登場し、その後AMD向けのものが登場する。
例えばVIA TechnologiesのSavage4を統合した統合型チップセットは、最初にIntel用のProSavage PM133が登場し、その後AMD用のProSavage KM133が登場している。同じように、DDR SDRAMをサポートしたチップセットは、最初にIntel向けのApollo Pro266が投入され、その後AMD向けのApollo KT266が投入されている。同じように、SiSも最初にIntel向けのSiS630sが投入され、その後に、AMD向けにSiS730sが市場に投入されることになっている。これはVIAとSiSが、どちらかと言えばIntel向けに開発リソースを多く割いていることの証と言える(なお、ALiはAMDから先に投入されているが、これはALiがP6用チップセットの投入が遅れたため、P6用チップセットのOEM先をほとんど持っていないという事情により、AMDプラットフォームへ経営資源を投入しているためだ)。
AMDとしてはこうしたサードパーティベンダにAMD向けチップセットにも開発資源を割いて貰い、いちはやくチップセットを投入させるためには、彼らに「AMD向けのチップセットを作れば儲かる」という認識を持って貰う必要があり、少なくともAMDの自社製チップセットとの競合を避けなければならない。そのため、ブース氏の言うように「AMDのチップセットはプラットフォームの立ち上げのみ」という立場をとっているのだろう。
ここで問題になるのは、OEMメーカーのサードパーティチップセットに対するイメージだ。多くのOEMメーカーはサードパーティのチップセットベンダに対して「ローコストである」というイメージは持っているが、少なくとも「クオリティが高い」というイメージは持っていない。となると、AMDも対抗して信頼性の高い自社製を……と行きたいところなのだが、前述のようにサードパーティへの配慮からAMDがALiやVIAのチップセットを上回るような製品を作りにくい。このあたりが、AMDのチップセット戦略のジレンマと言える(もっともVIAやALiがIntelを上回るモバイル向けチップセットを作ってくれればそれでよいのだが……)。
また、AMDはCNR(Communication and Network Riser)、ACR(Advanced Communication Riser)の両方をサポートしたユニバーサルデザインのマザーボードを公開した。これは、1つのスロットでCNRとACRの両方を利用できるようにしたもので、CNR、ACRの両方のスロットを薄くすることによりどちらのカードも挿せるようにしたものだ。ACRに関してはあまり採用が進んでいないが、こうしたユニバーサルデザインであればマザーボードメーカーも受け入れやすく、ACR普及の決め手となるかもしれない。
Atheros CommunicationsはIEEE 802.11aの無線LANカードのデモを行なっていた。無線LANといえば、現在は周波数2.4GHzのIEEE 802.11bが主流だが、IEEEの規格では5GHz帯のIEEE 802.11aの規格も用意されている。802.11bが最大で11Mbpsであるのに対して、802.11aは54Mbpsと約5倍の転送速度を実現しており、有線の主流である100Base-TXに比べて遅いという不満はだいぶ解消されるだろう。
IEEE 802.11aに対応した無線LANカード | IEEE 802.11aのデモ。5GHz/56Mbpsという帯域を生かし、右端のマシンのDVD-ROMドライブに入っているDVDビデオを左端のマシンで再生し、その逆も行なっている(中央の2台は比較用の802.11b) |
今回Atherosが行なったデモは、片方のDVD-ROMドライブにあるDVDを802.11aのカードで接続されているもう一方のPCで再生するというもので、DVD再生のような大量のデータ転送にも十分耐えうることをデモした。デモに利用されたPCカードはAtherosの802.11a対応無線LANコントローラを内蔵したもので、展示員によれば量産が進めば802.11b対応の無線LANカードと同じコストで利用できるようになるという。
ただし、もちろん周波数が異なるので802.11aに対応した無線LANカードを、802.11bのアクセスポイントに接続させることはできない。この問題を解決するには次の2つの方法が考えられる。
(1)PCカード側を両規格に対応させる
(2)アクセスポイント側を両規格に対応させる
(1)はPCカードに両方のチップやアンテナを内蔵させるのが難しいため実現は不可能と考えられるため、今後は両規格に対応したアクセスポイントがどれだけ早期に出回るかが802.11a普及のポイントになるものと思われる。展示員によればそうしたアクセスポイントを計画しているベンダもいくつかあるようで、そうした問題も今後は解決されるだろうとしている。
XJACKライクなアンテナを持つ3ComのBluetoothカード |
Bluetoothカードは、アンテナ部がかつてのXJACKのように格納される形式になっており、持ち運び時にはアンテナが格納できるため、ノートパソコンなどに挿しっぱなしで持ち歩くのに適している。展示されていたのはモックアップだが、製品版もまもなく完成するということだった。
さらに、802.11bに対応した無線LANカードもアンテナ部分がPCカード本体に格納できるようになっており、やはり持ち運びに適している。既に米国では発表されており、リストプライス(定価)で200ドルと若干高めだが、やはりノートパソコンに挿したまま持ち運べるメリットは大きく、市場に出れば人気を集めそうだ。
アンテナがPCカード本体に収納できる3ComのIEEE 802.11b対応無線LANカード。持ち運び時に非常にスマートだ |
XJACKライクなアンテナを持つ3ComのBluetoothカード |
NECはIEEE 1394と無線LANのブリッジとなるIoGateを展示した。IoGateはイーサネット、IEEE 1394の各ポートと、PCカードスロットが用意されており、IEEE 802.11bの無線LANカードがセットされている。
それぞれのネットワークがブリッジ可能になっており、例えばIEEE 1394で接続されたPCなどからIP over 1394を利用してインターネットへアクセスする、といった使い方が可能になっている。NECではこの製品はプロトタイプで製品化の予定はないとしているが、反響によっては製品化の可能性もあるとしている。
また、BIOSメーカーのPhoenix TechnologiesはIEEE 1394のデバイスからブート可能なBIOSのデモを行なった。
ブースでは、IEEE 1394に接続されているIEEE 1394のハードディスクなどからPCを起動するデモが行なわれ、実際にOSがインストールされたIEEE 1394ハードディスクからWindows XPがブートしていた。今後PhoenixがリリースするBIOS(Award BIOSも含まれる)に順次搭載されていくそうで、今後はIEEE 1394から起動というメニューがマザーボードのBIOSに追加されることになるのかもしれない。
NECによるIoGateのデモ。IEEE 1394、無線LAN、イーサネットがブリッジされ、相互に通信することができるようになる |
□WinHEC2001ホームページ
http://www.microsoft.com/winhec/
(2001年3月28日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]