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筆者は現在、Transmeta Crusoeプロセッサ搭載NotePCとして、富士通のLOOX S5/53WにWindows 2000を乗せて使っているが、強力なライバルが現れた。CASIO CASSIOPEIA FIVA MPC-206である。今回、約一週間ほど試用することができたので、そのレポートをお届けする。 |
少し筆者の好みに再配置しているが、下に見えるのがMobile Cockpit IIというFIVA専用アプリケーションだ |
詳細は同社のWebをご覧いただきたいが、特徴的な仕様をまとめると以下のようになる。
如何だろうか!? 薄型A5ファイルサイズにギッシリ詰まったインターフェース。特に筆者が日頃使っているIBM
ThinkPad 240Xと富士通LOOX
S5/53Wには内蔵していない“100Base-TX/10Base-T”と“IEEE 1394”、そして“CFカードスロット”があるのは非常に魅力的だ! ハードディスクが20GBというのもハイエンド・デジタルカメラのストレージとして考えれば嬉しい限り。Transmeta
Crusoe
TM-5600/600MHzのパフォーマンスについては下記のベンチマーク結果を参考にして欲しいが、筆者の用途を考えれば十分なパワーを持っているといえよう。
※OSはプリンストール状態のWindows Meで測定。この結果から大雑把に比較すると、フルパワー時、K6-II 450MHzやCeleron 450A(300A OverClock)と同程度のパフォーマンスであることがわかる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Mobile Cockpit IIからCrusoe固有のパワーマネージメントを設定できる。ロングランの設定は300(1.20V)/400(1.23V)/500(1.40V)/600MHz(1.60V)の4段階だ。液晶パネルは十分明るいので、かなり暗めにしている | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
困るとすれば、シリアルポートが全くないことだが、これだけのデバイスを標準搭載していれば問題にはならないだろう |
●Linuxも標準搭載!?
A側が通常のOS、B側にするとMP3プレーヤとFTPクライアントのみ使えるLinuxが起動する。何らかの方法でプログラムを実行さえできればもっと遊べる環境になるだろう。やればできると思うが、面倒なので今回は省略する |
左の写真をご覧いただくとわかるように、このFIVA
MPC-206はちょっと変わったスイッチが付いている。電源ONまたは再起動時、ModeをA側にするとWindows Meが起動し、Mode
B側にすると何とLinuxが起動するのだ。 ただしこのLinux、汎用環境というわけではなく、X-Windowとsawfish 0.30.3上でFTPクライアント(gFTP)とMP3プレーヤ(XMMS)だけ使える限定環境。gFTPに関しては内蔵の100Base-TX/10Base-Tを使いDHCPでIPアドレスを取得し、Proxy経由で外部のFTPサーバーへアクセスすることもできた。もちろん、MP3を聞きながらFTPすることも可能である。ただLinuxのパーテーションは計212MBと非常に小さい。 gFTPを使いローカルのファイル構造を眺めたところ、/mnt/DISK、/mnt/CFcard、/mnt/PCcardへFATファイルシステムをマウントしている。bashやxtermもあるのものの、起動する手段がないのでこれ以上は遊びようがない。MP3専用プレーヤーとして使うにもリモコン付きのヘッドホンがあるわけでもなく、いったいこの環境を何に使うのか!? 筆者的にはちょっと理解できないが、せめてxtermとcanna程度は動くようにして欲しかった! そうすればmozillaかNetscapeを入れ、インターネット関連はこちらの環境だけでOKになったのに非常に残念だ。20GBもハードディスク容量があるのだから1GB程度Linuxに使っても文句は出ないと思うのだが……。 試しに/program/system/lilo/boot/vmlinuzを別のLinuxマシンへ転送し起動したところ問題なく動いた。Kernelは2.4.1-pre10である。いずれにしても大手メーカーのNotePCとしては非常に面白い試みであり、今後更なるアプローチに期待したい。 【/program/system/lilo/lilo.confの内容】 boot=/dev/hda3 map=/system/lilo/boot/map install=/system/lilo/boot/boot.b delay=0 timeout=0 default=linux lba32 compact image=/system/lilo/boot/vmlinuz label=linux initrd=/system/lilo/boot/initrd.img append="ramdisk_size=15000" root=/dev/hda3 【/usr/bin/xinitrcの内容】 #! /bin/sh PATH=$PATH:/usr/X11R6/bin export PATH network_restart xmodmap -e "keycode 22 = BackSpace"& xmodmap -e "keycode 118 = KP_Insert"& xmodmap -e "keycode 119 = KP_Begin"& xmodmap -e "keycode 120 = KP_End"& xset s off& sawfish& LANG=ja_JP.eucJP export LANG main_menu (これがCASIOオリジナルのメニュープログラム) if [ ! -e /DEBUG ] ; then sync shutdown -h now # caution /etc/inittab Cntl-Alt-Delete use same "shutdown -h now" fi sync |
MP3プレーヤ、XMMS 1.2.3J。下に見える“起動セレクタ”は、起動時にMP3プレーヤを立ち上げるか? FTPクライアントを立ち上げるか? の選択ができる | |
FTPクライアント、gFTP。ネットワーク経由でMP3のデータだけでなく、いろいろなファイルも転送可能だ。/mnt/DISKへFAT32がマウントされるので、こちらへファイルを転送すれば容量不足にもならない |
●Windows 2000に挑戦!
いろいろな所からドライバを集め、無事全てのデバイスが使えるようになった。セカンダリIDEに×が付いているが、何もつながっていないので特に問題はない |
現在、筆者のメイン環境はWindows 2000 Professional。FIVA
MPC-206は非対応であることを知りつつ、試しにインストールすることにした。運良く(?)初期ロットはハードディスクの約半分の容量が未使用のままだったので、そこへNTFSのパーテーションを作りセットアップ開始。 問題なくインストールは終了し、Windows 2000が起動したものの、Video、Sound、Modemのドライバが無く、中途半端な形での起動となった。これを解決するのに試行錯誤した結果、Soundに関しては付属のCD-ROMからセットアップ、VideoとModemについては裏技であるが他社製品の該当するドライバをインストールした。 具体的には、
これらのドライバを流用。(但し、これは筆者もメーカーも保証しない裏技であるから、問い合わせはNG。読者自身で判断して欲しい)これでFIVA
MPC-206のデバイスが100% Windows 2000上で使えるようになり大満足だ。実際、Windows
Meと比較して動きの滑らかさや安定性は格段に上。ただ、できればメモリは最大容量の192MBにしたいところか!? | |||||||||
Windows Meでしか動かない特殊システムドライバ、CasRobin Driver |
●総論
薄型A5ファイルサイズ/990gという、非常に小型軽量のNotePCの割には、必要なデバイスを全て搭載、CPUパワーもそこそこあり、バッテリ駆動時間やハードディスク容量も十分……と、文句無しのMPC-206。あえて欠点を挙げると、もう少しボディーに質感と強度が欲しいのと、正式にはWindows
2000非対応ということだろう。
ボディーに関しては(コスト的に厳しいかも知れないが)次モデルに期待!? Windows
2000に関してはMobile Cockpit
II以外はパワーユーザーならば何とか自力(裏技!?)でインストールできる範囲。後はWindows
2000でも動くMobile Cockpit
IIが同社のWebに登録されるのを期待しよう!!(笑)。この問題さえクリアすれば筆者は是非購入したいと思っている。宜しくお願いします!!>CASIO様
【追記】●LongRun-GUI.zip