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Intel Intel Architecture Group担当上級副社長のポール・オッテリーニ氏 |
Intel上級副社長のポール・オッテリーニ氏は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼで開催中のIntel Developer Forum Conference Spring 2001で講演を行ない、同社のCPUの2001年に関する戦略を明らかにした。この中で同氏は、IA-32のデスクトップ、モバイル、IA-64の次世代など言及し、製造プロセスルールが0.13μmになったモバイルPentium IIIなどに関するデモンストレーションを行なった。
●Brookdale-DDRの存在を公式に確認、だが……
Pentium 4のデモに利用されたコンセプトPC。2GHzで動作しているという |
既に後藤氏のコラム[ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010228/kaigai02.htm ]でもお伝えしているように、IntelはIntel 850でDirect RDRAMチップセットをサポートし続け、今年の第2四半期に登場するBrookdale(ブルックデール)でPC133 SDRAMをサポートし、2002年の初頭に登場するBrookdale-DDRでDDR SDRAMをサポートする計画になっていた。
今回オッテリーニ氏は「Intel 850はPentium 4のもつ性能を発揮させるものとして今後も存続していく。これに対して、BrookdaleはSDRAMをサポートするチップセットとして、コストパフォーマンスに優れており、Pentium 4をメインストリームセグメントに展開する武器になる」と述べた。さらに、「2002年の前半にはDDR SDRAMに対応したBrookdaleを出荷する」と述べ、初めて公式にIntelがDDR SDRAMをサポートしたチップセットを発表することを明らかにした。
Intelフェローのペーター・マクウィリアムズ氏 |
Intelのメモリ戦略に関するロードマップ。2002年にIntel850の後継となるDirect RDRAMサポートチップセットを出荷する。これらによりDirect RDRAMの普及を促進し、DDR SDRAMの入り込む余地は少ないというのがIntelの予想だ |
●0.13μmのモバイルPentium IIIをデモンストレーション
Pentium III 1GHz、0,13μmプロセスのPentium IIIに関する説明スライド |
また、オッテリーニ氏はモバイル向けMPUに関する戦略も明らかにした。「現在のノートパソコンは65%がいわゆるフルサイズのノートパソコン。しかし、2002年には60%がThin & Lightと呼ばれる薄型・軽量ノートブックが60%になるなどより携帯性重視の方向へトレンドが代わる」と述べ、今後モバイル性をより重視する方向に向かっていくことを強調した。
その携帯性を実現する方策として、オッテリーニ氏は「性能、フォームファクタ、バッテリー寿命、接続性の4つの方向でそれぞれ強化をしていきたい」と述べ、性能面では今四半期に1GHzのモバイルPentium IIIを出荷し、今年の後半に製造プロセスルールが0.13μmとなるモバイルPentium IIIを発表することを明らかにした。その中で、オッテリーニ氏はDell ComputerのノートパソコンLatitudeを紹介し、「この中に0.13μmのPentium IIIを搭載している」と、0.13μルールのモバイルPentium IIIを搭載した実機を初めて公開した。
この0.13μmルールのモバイルPentium IIIはTualatin(テュアラティン)のコードネームで知られており、IDFの直前にはOEMメーカー筋から、スケジュールが前倒しになったという情報も流れてきていたのだが、結局IDFで明らかにされた公式スケジュールでは今年の後半という従来通りのスケジュールに留まった。OEMメーカー筋の情報によれば、Tualatinは製造プロセスルールが0.13μmになるだけでなく、L2キャッシュの容量が現行のCoppermine(256KB)の倍となる512KBとなり、第3四半期に1.13GHz、1.06GHzからスタートすることになるという。
さらに、オッテリーニ氏はこの0.13μm版モバイルPentium III用のチップセットがIntel 830Mという製品名であることも併せて明らかにした。Intel 830MはこれまでAlmador(アルマドール)の開発コードネームで知られていたチップセットだ。OEMメーカー筋からの情報によればIntelはOEMメーカーに対してIntel 830MはIntel 815Mの後継で、主に内蔵グラフィックス周りを強化したチップセットになると説明しているという。
なお、余談だがこのTualatinを搭載したDell ComputerのLatitudeには「SST2+A3」とマジックで怪しい走り書きがしてあった。SST2とは「SpeedStepTechnology2」の略である可能性が高い。もしかするとTualatinは次世代SpeedStepと言われるSpeedStepTechnology2に対応している可能性が出てきたわけで、興味深いところだ。
●モバイル用0.13μm版Pentium4は2001年中に出荷とオッテリーニ氏
モバイル版Pentium4を説明するスライド。オッテリーニ氏は2001年にモバイル版のPentium 4をリリースすると発言した |
最後にオッテリーニ氏はモバイル版Pentium 4が0.13μmプロセスで、2001年中に追加されると、驚くべき発表を行なった。これまで、昨年のIDF Fallではクレイグ・バレット氏をはじめとしたIntel首脳は、Pentium 4のモバイル版に関して2002年には可能性がと述べていたものの、それが大幅に早まったということになる。
実はIntelはモバイル版の0.13μm版Pentium 4、すなわちモバイル版Northwoodについて既にOEMメーカーに対して説明を行なっていた。1月下旬にOEMメーカーに対して行なわれた説明では、モバイル版Northwoodは2002年の第2四半期に1.6GHz程度のクロックで登場すると説明されていた。今回のオッテリーニ氏の発表は、そのスケジュールをさらに前倒しにしたものであり、注目に値する。
結局Tualatinのスケジュールが代わっていなかったことを考えると、IntelはモバイルPentium 4のスケジュールを早め、ノートパソコンでもPentium 4の普及を早める戦略にでてきた可能性が高い。現時点では0.13μmのPentium 4がどの程度の消費電力になるかわからないため、果たして実現可能なのかどうかはわからないが、0.13μmプロセスでは1.3Vまで駆動電圧が落とされるので、現行のPentium 4に比べて大幅に消費電力が下がる可能性が高い。果たして、年末にはPentium 4を搭載したノートパソコンがでてきているのだろうか、デスクトップ版Pentium 4の急速立ち上げの宣言とあわせ、IntelがPentium 4の普及に対して“本気”を出してきたことを窺わせる基調講演であった。
□Intel Developer Forum Conference ,Spring 2001ホームページ
http://developer.intel.com/idf/
□スピーチのトランスクリプト(英文)
http://www.intel.com/pressroom/archive/speeches/pso20010227idf.htm
□関連記事
【2月28日】クレイグ・バレット氏基調講演
インターネットを推進エンジンにデジタルワールドは発展し続ける
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010228/idf04.htm
【2月28日】元麻布春男の週刊PCホットライン
特別編:IDFレポートIntelは、シリコンに回帰する
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010228/hot132.htm
(2001年2月28日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]