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Intelが次世代IA-64プロセッサ「McKinley」システムを展示


●McKinleyの1Uサーバーモデルが登場

McKinleyの1Uサーバーシステム。手前の大きなヒートシンク2つがMcKinleyのCPUモジュール。左下に見えるのが巨大な冷却ファンとダクト。青いダクトがMcKinleyを、赤いダクトがI/Oボードの下に隠れているメモリコントローラチップ群(4チップ)を冷却する

 Intelの次世代IA-64プロセッサ「McKinley(マッキンリ)」システムが、Intelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」に登場した。カンファレンス前にオープンしたIDFの展示会場に、McKinleyのユニットサーバーシステムのコンセプトモデルが展示されたのだ。McKinleyは、やはり現在のIA-64プロセッサ「Itanium(Merced:マーセド)」と同様に筆箱大のユニットに納められていた。ただし、ユニットのサイズはかなり小さくなっており、また、このモデルを見る限り、McKinleyではL2キャッシュSRAMはOn-Dieで統合されるようだ。また、名称は「Itanium」を引き継ぐようだ。

 展示されていたのは、デュアルMcKinleyを搭載する1Uサーバーで、McKinley用チップセット「Intel 870」を搭載する。まだコンセプトモデル段階で、動作はしていなかった。McKinleyは、パッケージングメーカーの米INCEPがIntelと協力して開発したロープロファイルのパッケージに納められている。このパッケージを現在のItanium(Merced:マーセド)のパッケージと比較すると、劇的に薄くスマートになった印象を受ける。Mercedの場合CPUの横にあった巨大な電源ユニットのヒートシンクもこのシステムでは見あたらなくなっている(CPUユニットに統合)。

 ただし、ユニット全体の消費電力は600Wと依然高く、また、非常に強力な冷却システムを搭載している。INCEPによると、CPU自体の消費電力も依然として非常に高いという。i870チップセットも、CPUコントローラチップとメモリコントローラチップが別チップになっているハイエンド向け仕様。8DIMM、InfiniBand、GigaBitEthernetなどのインターフェイスを備える。Mercedよりは扱い易そうだが、まだまだ“怪物”だ。


●これまでにない特殊なCPUパッケージ

McKinleyのCPUユニットの底面。ItaniumのロゴがついているのがInterposerで、μPGAピンの背面にMcKinleyがある。Interposerの下に見えるのがVRMボード
 INCEPのパッケージでは、McKinleyはPentium 4ライクなヒートスプレッダでカバーされ、μPGAピンを持つ基板(Interposer)上に実装されている。底面から見た限りでは、Interposer上にはL2キャッシュ用SRAMチップが実装されていないように見えるため、L2キャッシュはOn-Dieになっている可能性が高い。

 電力はInterposerと接続する専用のインターコネクトから供給される。INCEPによると、このInterposerと電力供給の仕組みはMcKinleyの標準的なものだという。INCEPのパッケージでは、Interposerの上にVRM(Voltage Regulator Module)ボードを配置、その上にヒートシンクを載せている。INCEPによると、McKinleyは低電圧で大電力を必要とするため、安定した電力供給のためには、マザーボードからVRMを分離する必要があるという。これは、Mercedでも同様だった。

 VRMボードにはMcKinleyのヒートスプレッダと同程度のサイズの穴が開いていて、この穴を通じて、McKinleyのヒートスプレッダはヒートシンクと直接密着する。アタッチ素材は低熱抵抗タイプのグリース。ヒートシンクはアルミニウムのフォールドタイプで、Pentium 4用ヒートシンクで登場した銅ベースなどの技術は使っていない。これは、冷却ファンが70cfm(立方フィート/分)と極めて高速で高効率のものであるため、オールアルミで対応できるからだという。このヒートシンクが、McKinleyとVRMボード両方の放熱を行なう。



INCEPの展示パネル
 INCEPによると、このシステムはMcKinleyの0.13μm版である「Madison(マディソン)」にもヒートシンクの改良で対応可能だという。ヒートシンクを開発したATS(Automation Tooling Systems)によると、CPUの放熱量が増えた場合には、熱抵抗値を減らすため、ヒートシンクのベースを中空構造にするベイパーチャンバー技術を採用する方向だという。ベイパーチャンバーは、現状では非常に高コストだが、採用が増えるにつれて価格が下がると見ているという。

 今回のシステムに搭載されているIntel 870チップセットは、CPUコントローラの「SNC」、DDR SDRAM対応メモリコントローラの「MRH-D」、レガシーI/Oをサポートする「ICH」、PCI-X経由でSCSIやイーサネットを接続している「P64H2」、InfiniBandインターフェイスを接続する「SIOH」で構成されているという。写真のシステムでは、CPUの向こうのI/Oボード上にSIOHなどが載っている。また、その下4個のMRH-DとSNCが隠れている。

 今回のIDFでは、キーノートスピーチなどでMcKinleyについて突っ込んだ発表があると見られている。IDFの展示会場は、そうした発表内容に合わせて展示が変わってゆくため、今後、IDF期間中に、McKinleyについてさらに別な展示が行なわれる可能性がある。



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(2001年2月27日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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