Pentium IIIのパフォーマンスを加速する
Apollo Pro266搭載マザーボード登場



 AMDのAthlon用DDR SDRAMチップセットとしては、AMD-760、ALi MAGiK1という2製品が既に市場に登場している。さらに、先週、システムバスクロックが266MHzとなったAthlonプロセッサが発売されたことにより、AMDのプラットフォームでは本格的に次世代メモリであるDDR SDRAMを利用する環境が整ったと言える。

 これに対して、Intel陣営では、Pentium 4でこそDDR SDRAMに対抗するDirect RDRAMが利用できる(というよりほかのメモリは選べない)のだが、Pentium IIIに関してはIntel 820を搭載したマザーボードが市場からほとんど姿を消してしまったため、事実上SDRAMしか選択できないという状態になっていた。そうした状況の中、サードパーティであるVIA TechnologiesがPentium III/Celeron用DDR SDRAM対応チップセットであるApollo Pro266をリリースし、それを搭載したマザーボードがGIGA-BYTE TechnologyからGA-6RXとして発売された。果たしてApollo Pro266はPentium IIIのプラットフォームを拡張するに値するチップセットなのか、検証していこう。


●メインメモリとしてPC2100、PC1600、PC133 SDRAMをサポート

 Apollo Pro266はノースブリッジのVT8633とサウスブリッジのVT8233という2つのチップから構成されている。VT8633はIntelのP6バスに対応しており、CPUとしてIntelのPentium III、Celeron、VIAのCyrixIIIが利用可能になっている。対応するシステムバスクロックは66/100/133MHzで、CPUソケットはPGA370(いわゆるSocket 370)だけでなく、Slot 1も利用可能で、最高で2プロセッサシステムに対応可能となっている。なお、システムバスの電気信号はAGTL+に対応しており、製造プロセスが0.13μmに微細化されたPentium III/Celeron用コアであるTualatin-256(テュアラティン)には対応していない(VIAはTualatinに対応したApollo Pro266としてPro266Tというリビジョンアップ版を計画している)。

ノースブリッジ
VT8633
サウスブリッジ
VT8233

 VT8233の最大の特徴は、Pentium III/Celeron用Intel純正チップセットではサポートされていないDDR SDRAMに対応していることだ。サポートされているメモリは、SDRAM、VC SDRAM、DDR SDRAMで、メモリバスのクロックは66/100/133MHzの3つのクロックに対応している。メモリバスのクロックは比較的柔軟に設定可能で、システムバス-33MHz、ないしはシステムバス+33MHzという2つの設定が可能になっている。このため、例えばシステムバスが66MHzのCeleronを利用している場合はメモリバスを100MHzに設定したり、逆にシステムバスが133MHzのPentium IIIを利用している場合にメモリバスを100MHzに下げて設定したりということが可能になっている。設定できるSDRAMのCASレイテンシは1T、2T、3Tで、DDR SDRAMは2T、2.5T、3Tとなっている。

 メモリへの電圧は、LVTTL/3.3V(SDRAM用)、SSTL-2/2.5V(DDR SDRAM用)の2つが供給可能となっている。さらに、チップセット側でSDRAMとDDR SDRAMのどちらのメモリモジュールが挿入されているか自動判別する機能をもっているため、SDRAM用の168ピンDIMMソケットと、DDR SDRAM用のメモリソケット184ピンDIMMソケットに両対応したマザーボードデザインも可能になっている。

 今回取り上げるGA-6RXはDDR SDRAM用の184ピンのDIMMソケットしかないが、既にAKIBA PC Hotline!「DDR SDRAMとSDRAM両対応のSocket 370対応マザーは来週発売」[ http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010224/etc_pro266m.html ]でもお伝えしているように来週には両方のソケットを搭載したMSI COMPUTERのPro266 Master-Rが秋葉原で販売される予定になっており、そうした製品を購入すればDDR SDRAMの値段が高い当初はSDRAMで利用し、後にDDR SDRAMへアップグレードという自作ユーザーに対するメリットのほか、BTOメーカーなどがBTOのメニューとしてSDRAMとDDR SDRAMの両方をサポートすることができるというメリットがある。ただし、チップセットの仕様上、SDRAMとDDR SDRAMの両方は同時に利用することはできない。

 VT8633は552ピンのBGAパッケージで、製造プロセスルールは0.22μm、駆動電圧は2.5Vとなっており、システムバスを133MHzで駆動させた際には発熱はそれなりにある。安定して動作させるには最悪でもヒートシンク、できればファンつきのチップクーラーを用意したほうがいいだろう(GA-6RXにはヒートシンクがつけられている)。

【VT8633のスペック】
CPUPentiumIII/Celeron/CyrixIII
システムバスP6バス
システムバスクロック66/100/133MHz
サポートするメモリSDRAM/VC SDRAM/DDR SDRAM
メモリモジュールPC100/PC133/PC1600/PC2100
メモリバスクロック66/100/133MHz
最大バンク数8
最大メモリ容量2Gバイト
AGP4X


●チップ間のバスにはV-LINKバスを採用

 Apollo Pro266のもう1つの特徴は、ノースとサウスのチップ間バスとしてV-LINKと呼ばれる専用バスを採用していることだ。以前のVIAのチップセットではPCIバスが採用されていたのだが、今後はこのV-LINKに置き換えられる。PCIからこうした専用バスに置き換えられていく背景には、今後サウスブリッジやPCIバスに接続されるバスがより高速化することが予想されているからだ。

 例えば、今年の終わりから来年にかけて普及が進むと見られている次世代USBと言えるUSB 2.0は400Mbpsと非常に高速だし、IEEE 1394も現状では400Mbpsだが、次世代では800Mbpsへスピードアップされると見られている。そうなると、PCIバスの133MB/secというバンド幅では十分でなくなる可能性が高く、既にIntelは'99年4月に発表したIntel 810以降のチップセットではHub Interfaceと呼ばれる266MB/secの専用バスへと変更している。ただ、Hub InterfaceはIntelが特許を持ったプライベートバスであり、サードパーティがこれに対応した製品を作ることはできない。そこで、VIAでは同じバンド幅266MB/secというスペックを実現しながら独自のバスを作った。それがV-LINKだというわけだ。

 V-LINKに対応したサウスブリッジとしてはVT8233が用意されている。VT8233は352ピンのBGAパッケージで、Ultra ATA/100に対応した2チャネルのIDEインターフェイス、6ポートのUSB(USB 1.1)、AC97コーデック、LPCなどに対応している(なお、ISAバスには対応していない)。このほか、イーサネットコントローラを内蔵しており、VIAのMII対応PHYを利用すれば標準でLANポート搭載も可能となっている。


●効果は確認できるがパフォーマンスアップはそれほど大きくはない

 今回はApollo Pro266のパフォーマンスを計測するために、以下のような環境を用意した。

【ベンチマークの設定】
Apollo Pro266(PC2100)Apollo Pro266(PC1600)Apollo Pro133AIntel815E
CPUPentium III 1.0B GHz
システムバスクロック133MHz
マザーボードGIGA-BYTE Technology GA-6RXGIGA-BYTE Technology GA-6VX7-4XIntel DE815EEA
チップセットApollo Pro266Apollo Pro133AIntel815E
メモリPC2100PC1600PC133 SDRAM
クロックレイテンシ2.52.533
メモリ容量128MB
AGPドライバ4in1ドライバ V4.28VVersion 4.04/12-21-2000Intel Chipset Software Installation Utility V2.80
HDDIBM DTLA-307030
IDEドライバWindows標準
DMAモードUltra DMAモードオン
ビデオカードGeForce2 GTS64MB DDR SDRAM
ビデオカードドライバNVIDIA Detonator3 Version 6.50/12-03-2000
解像度1,024×768ドット/16ビットカラー
OSWindows 98 Second Edition 英語版
DirectX8.0a

 CPUはPentium III 1.0B GHz、HDD、ビデオカードなども固定し、Apollo Pro266にはPC2100とPC1600のDDR SDRAM、Apollo Pro133AとIntel 815EにはPC133 SDRAMを用意した。ベンチマークに利用したのは、BAPCOのSYSmark2000、MadOnion.comの3DMark2000、id SoftwareのQuakeIII Arena、Virginia大学が開発したメモリのバンド幅計測テストであるStreamDの4つだ。

 少し詳しく見ていこう。グラフ1はSYSmark2000のうち、代表的なビジネスアプリケーションと言えるWord2000の結果だ(全ベンチマークデータはこちら)。見てわかるように、どの組み合わせもほぼ同じようなスコアを出しており、こうしたビジネスアプリケーションではほとんど差がないことを示している。

【グラフ1:Word 2000】
Word 2000 165
164
166
168
Apollo Pro266(PC2100) Apollo Pro266(PC1600)
Apollo Pro133A(PC133) Intel815(PC133)

 DDR SDRAMの明確な効果が認められたのは、3Dアプリケーションベンチマークである3DMark2000およびQuakeIII Arenaの低解像度の結果だ。グラフ2、グラフ3は3DMark2000(全データ)、QuakeIII Arena(全データ)の640x480ドット/16bitカラーモードの結果だがいずれもApollo Pro266+PC2100の組み合わせがトップのスコアを叩き出している。3Dアプリケーションでは高解像度ではグラフィックスカードがボトルネックになってしまい結果に差が出ないが、こうした低解像度ではCPUやメモリ周りの差が出やすく、CPUやグラフィックスカードを固定して計測している今回の結果はDDR SDRAMのパフォーマンス差を示していると言える。

【グラフ2:3DMark2000】
640x480/16 5,973
5,680
5,916
5,792
640x480/16/HW TL 8,342
7,834
8,042
8,072
Apollo Pro266(PC2100) Apollo Pro266(PC1600)
Apollo Pro133A(PC133) Intel815(PC133)

【グラフ3:QuakeIII Arena】
640x480/16 140.0
129.0
135.6
136.6
Apollo Pro266(PC2100) Apollo Pro266(PC1600)
Apollo Pro133A(PC133) Intel815(PC133)

 メモリのバンド幅を計測するStreamDテスト(全データ)でも、DDR SDRAMの効果は確認できる。グラフ4はStreamDのうちADD(加算)テストだが、Apollo Pro266+PC2100の組み合わせがApollo Pro133A+PC133、Intel 815+PC133という組み合わせを上回っており、メモリのバンド幅が向上していることが見て取れる。このように、前回の記事で取り上げたシステムバス266MHzのAthlon+AMD-760に比べると、ややパフォーマンスアップの幅が小さいというのが正直な感想だ。

【グラフ4:StreamD】
ADD 516.13
448.60
426.67
438.36
Apollo Pro266(PC2100) Apollo Pro266(PC1600)
Apollo Pro133A(PC133) Intel815(PC133)


●Pentium 4用のDDR SDRAM対応チップセットまでのつなぎとして有効

 以上のようなApollo Pro266の結果だが、Apollo Pro133AやIntel 815などと比較して飛び抜けて高いパフォーマンスを示しているかと言えば、残念ながらそうではない。こうした若干のパフォーマンスアップに留まった理由としては、2つ考えられる。1つはこのGA-6RXが登場したばかりであり、まだBIOSなどを含めて最適化が進んでいないことだ。そうした意味ではもうすこし時間が経過してからもう一度評価してみたい。

 もう1つの理由としては、システムバスの帯域がDDR SDRAMの帯域に比べて十分でないからということが考えられる。Pentium IIIのシステムバスは133MHzの1GB/secで、PC1600の1.6GB/sec、PC2100の2.1GB/secに比べて狭くなっている。システムバスがボトルネックになってしまっているとすれば、メモリによる差は出にくいことになり、こうした結果につながっていると考えることは可能だ。

 そうした意味では、やはりシステムバスが400MHzでバンド幅が3.2GB/secと余裕があるPentium 4にDDR SDRAM対応チップセットが欲しいところだ。既にIntelが2002年の1月にDDR SDRAMをサポートするBrookdale-DDRをリリースする予定のほか、ALi、VIAといったサードパーティもDDR SDRAMをサポートするPentium 4用チップセットを計画している。それらのPentium 4用DDR SDRAM対応チップセットが本命と言えるが、これらが入手できるようになるのは早くても来年の初頭という可能性が高い。AMDのプラットフォームを選択しないユーザーはそれまでPentium IIIでがんばらないといけないわけで、とりあえずDDR SDRAMを選択するという「つなぎ」の選択肢としてApollo Pro266は魅力的な存在だ。特に来週登場すると言われているDDR SDRAMとSDRAMの両方のDIMMソケットを搭載したような製品はユーザーの選択肢をフレキシブルにするという意味で魅力的であり、Pentium III/Celeron用マザーボードの購入を考えているのであれば、選択肢の1つに入れたい製品と言っていいだろう。

□Akiba PC Hotline!関連記事
【2月23日】Apollo Pro266搭載マザーが登場、Pentium IIIでもDDR SDRAMが利用可能に
第1弾はGIGABYTEの「GA-6RX」、DDR SDRAM普及の起爆剤となるか?
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010224/ga6rx.html

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(2001年2月26日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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