プロカメラマン山田久美夫の PMAレポート 海外&低価格モデル編

モデム内蔵やカラー版腕時計カメラも登場

開催期日:2月11日~14日(現地時間)
会場:Orange County Convention Center,Orlando Florida




●Polaroid、モデム内蔵で直接ネットにアップロード可能なVGAモデルを発表

 MP3やプリンター内蔵機など、ユニークで手頃な価格のモデルを多数商品化し、北米で大きなシェアを持っているPolaroid。

 同社は今回大胆にも、インターネット上でのフォトシェアリング(写真の共有)をメインにした、56kbpsモデム内蔵の「Photo MAX PDC640 Modem」を発表した。

Photo MAX PDC640 Modem

 このモデルの最大の特徴は、カメラ側面にあるPhoneジャックに、通常の家庭用電話回線のモジュラーケーブルをセットするだけで、撮影した画像データを、カメラ単体でインターネット上にアップロードできることだ。つまり、本機と電話線さえあれば、どこからでも写真をWebにアップロードして、みんなで楽しむことができる。

 プロバイダーやアクセスポイントを設定する必要はない。ダイヤルアップ先は日本でいうフリーダイヤルで(1-800-XXXX)、あらかじめカメラに設定されているし、接続できるWebもPolaroidが運営する「PolaroidDigital.com」に限定されている。

PolaroidDigital.com

 このサイトは、北米の大手フォトシェアリングサイトである「PhotoIsland」のシステムを利用したもので、1ユーザーあたり無料で50MBのディスクスペースが提供される。

 通信先を限定しているため、アップロード操作は簡単だ。背面の液晶モニタで画像を選び、通信メニューのボタンを押すだけでいい。

 ユーザーにとっては、自分が普段使っているWebやシステムが使えないという不満があるかもしれない。しかし、そのあたりにこだわりがなく、Web上で気軽に写真を楽しみたい人にとって、きわめて便利な製品だろう。利用規約の問題はあるが、業務用途でも使えそうだ。万が一、米国取材中にカメラを紛失しても、このモデルを買えば最低限の取材はできると思えた。

 フリーダイヤル経由で、50MBのWebスペースが供給されて、採算が合うのか心配になってしまう。しかし、通信回線が安い米国で、乱立状態で競争が激化しているフォトシェアリングサイトの生き残りをかけた手段と考えれば、納得できなくもない。

 カメラとしての機能は、ベースとなった「PDC640」と同様で、単焦点レンズのVGA(640×480ピクセル)クラス機だ。フラッシュと液晶モニタを搭載しており、2MBのスマートメディアも付属する。

 価格は249ドル。モデムを内蔵しているためか、超低価格というわけではないが、ネット上での使い勝手のよさを考えると、かなり魅力的な設定だろう。米国での発売は4月を予定しているという。

 アップロード機能は、フリーダイヤルの関係で北米でしか使えないため、このモデルがそのまま日本国内で登場する可能性は低い。しかし、担当者は日本のフリーダイヤルシステムを使う可能性を探っているという。

 本機の場合は、インストタントカメラが主力商品というPolaroidのお家の事情があるので、Web経由でのプリントサービスと結びつけた展開はしていない。だが、この製品が成功すれば、PCがなくても、Web経由で簡単にプリントが依頼できるシステムとして展開される可能性もある。今後の動向が楽しみな、インターネット時代の新世代デジタルカメラといえる。


●DXG Technology、カラー対応の腕時計型デジタルカメラを出品

Color Wrist Cam

 すでにカシオがデジタルカメラ内蔵のモノクロタイプの腕時計を発売しているが、今回のPMAでは台湾のDXG Technologyが、カラー液晶を搭載した「Color Wrist Cam」を発表した。

 撮像素子はCMOSを採用し、640×480ピクセルの静止画撮影ができる。メモリーは2MBの内蔵式専用で、PCへの転送はIrDAのほか、USB転送にも対応している。

 もちろん、液晶モニタもカラーで、撮影画像の再生が可能。電源は急速充電タイプで、ベルト部分に内蔵されている。また、通常はWatchモードにしておくことで、普通の腕時計として使うことができるという。

 実際に現物を見ると、普段使っているカシオのものに比べて、かなりの厚みがあり、実用性という点では若干の疑問が残る。だが、やはりVGAサイズのカラー画像になると、ちょっとしたメモ用にも使えて便利そうだ。展示機はまだモックに近い状態のようだったが、実販価格200ドル前後で、今年中には発売を予定しているという。

 また、同社は今年発売を予定しているという、コンパクトな130万画素の液晶モニタ搭載機も出展していた。こちらは完全なモックアップだが、スタイリングもなかなかオシャレで、国産モデルにはない雰囲気を持っている。

液晶モニタ搭載機

 同ブースには、このほかにも、多数のデザインモックが展示されており(撮影禁止)、そのいずれもが、かなりスタイリッシュでカッコイイものばかり。もちろん、それらがそのまま製品化されるわけではないが、今後の展開が期待できそうな台湾メーカーだった。


●CONCORD、独創的な超小型光学3倍ズーム機など多数出展

 コンパクトカメラでは、世界屈指のOEM供給元メーカーであるCONCORD。同社は近年、コンパクトカメラで培った技術を生かして、デジタルカメラにも積極的に取り組んでいる。

 今回も、きわめてユニークなデジタルカメラを多数出展していた。

 一番の注目機は「Q eye」と呼ばれるシリーズのトップモデルで、26mmと超薄型で手のひらサイズの光学3倍ズームと液晶モニタ搭載機だ。

 実はこのモデル、昨秋のフォトキナに参考展示されていたが、取材・撮影ともに慇懃無礼に断られたもの。今回は快諾してくれたので、晴れて紹介できるわけだ。

 写真でもわかるように、とにかくコンパクトで、スタイリッシュ。正直なところ、このサイズで光学3倍ズームが搭載れているとは思えないレベルだ。122gと軽量だが、質感もなかなか良好だ。

Q eye

 本機は、電源としてカメラ用の「123A」と呼ばれるリチウム電池を採用しており、これ一本で300枚以上の撮影ができるという。

 撮像素子は、640×480ピクセルのCMOSセンサを採用。ブースでは「MegaPixel」とうたっているが、これは同社独自の補間技術を使った結果での最大出力画素数というわけだ。

 レンズは、6.5~18mmF2.8の光学式3倍ズームで、マクロモードも備わっている。ストロボも内蔵式だ。

 ファインダは光学式。なのだが、それを覗きながらシャッターを押すと、撮影したその瞬間に、機械的に液晶ビューファインダに切り替わり、撮影した画像が表示されるという、なんとも凝ったもの。これは、液晶モニタをファインダとして使うと電力消費が多くなりすぎるので、液晶でなければ確認できない撮影画像だけを短時間表示しようという考え方だ。もちろん、再生モードではビューファインダで画像が確認できる。

 記録媒体は4MBの内蔵式専用で、最大80枚の撮影ができる。PCへの転送はUSBだ。

 操作感はなかなか軽快。画質は未知数だが、液晶で見る限り、それほど悪い感じではなかった。このサイズでマクロもできる3倍ズームであることを考えると、かなり魅力的なメモ用機といえそう。

 価格は実販200ドルというが、同社のブランドで市場に並ぶ可能性は低く、実際の価格はもうちょっと高くなるかもしれない。

 同社はこのほかにも、先の光学式と液晶モニタのハイブリッドファインダを搭載した、リングをイメージした、単焦点レンズ搭載の超小型VGAモデル「Q eye Go!」(85×62×25mm、180ドル)、Nokiaの多機能携帯電話「9210」にIrDA経由で画像データを転送できる、マルチメディアカード(MMC)採用のストロボ内蔵超小型VGAモデル「Q eye Ir」(129ドル)なども、同時に公開していた。

Q eye Go! Q eye Ir

 いずれのモデルも、スタイリッシュでオシャレ。このあたりはコンパクトカメラのOEMで培ったものだけに、かなり魅力的で完成度も高い。価格も大いに魅力的だ。

 おそらく、そう遠くない時期に、どこかのブランド名でこれらのモデルが登場してくることは確実。同社のコンパクトカメラは、日本の大手メーカーのブランドでも多数ラインナップされており、日本国内で入手できる可能性もありそうだ。


●SKANHEX、台湾メーカー初の300万画素3倍ズーム機を公開

SX330z

 台湾メーカーのなかでも、早い時期から高画素モデルに積極的に取り組んでいるSKANHEX。数十社が参入しているとみられるVGAクラスのCMOS搭載機が中心の台湾勢のなかでは、ちょっと変わった存在だ。

 今回は、今年6月発売予定となる、待望の334万画素光学3倍ズーム機「SX330z」を公開した。価格は実販で599ドル前後を予定しているという。

 もともとコンパクトカメラのOEM生産を手がけていたメーカーであり、カメラとしての作り込みはなかなかのもので、スタイリングや操作部のレイアウトなどは、手慣れた感じがする。

 スペックも充実しており、1.8インチTFT液晶モニタやCFカードの採用、USB接続など、国産機と比較しても遜色のないレベルだ。その半面、本機ならではの機能は見あたらない。

SX230z

 また、同じボディを使った230万画素3倍ズーム機「SX230z」も同時発表しており、こちらは499ドルという価格になっている。

 今回のPMAでは話を聞けなかったが、発売時期を考えると、すでに供給先も決まっているようだ。そのため、北米では近い将来、どこかのブランドで、台湾製の300万画素モデルが登場するだろう。現在は日本製モデルが独占している、このクラスでは新しい展開だ。

 しかし、今回ソニーが発表した「Cyber-shot DSC-S75」が699ドルという破格のプライスを実現するなど、日本の大手メーカーもがんばっており、コスト面の争いでも、なかなか大変そうだ。


●Largan Digital、超薄型のCMOS搭載VGAモデルを出品

 昨秋、名刺サイズの超薄型モデルを参考出品したLargan Digitalは、今回、その進化モデルとして「Chameleon 2」と「Chameleon 3」の2機種を公開した。

Chameleon 2 Chameleon 3

 基本的には、記録画素数がVGAのCMOSを搭載した、光学ファインダ専用の単焦点レンズ搭載機である。メモリも内蔵式のみというシンプルなもの。

 サイズは88.4×57.4×18.4mm、重さはわずか75gしかなく、ワイシャツの胸ポケットにいつでも気軽に入れておける点が最大の魅力だ。電源は単4電池2本。

 上位機種となる「Chameleon 3」にはビデオアウト機能も搭載されており、カメラ単体でスライドショーもできるなど、結構凝ったものだ。

 価格は「Chameleon 2」が139ドル、ビデオ出力付きの「Chameleon 3」でも149ドルと、なかなか手頃だ。

 同社もOEMメーカーであり、OEM先は契約上、明らかにされていない。ただし、ブースには「日立マクセル WS30」と瓜二つのモデルがあった。

 今回の超薄型モデルが、どこから登場するかは知る由もないが、日本国内で入手できるようになれば、結構人気になりそうな、日本人好みのモデルといえる。


●PREMIER

 おそらく台湾最大級のデジタルカメラOEM元メーカーとなるPREMIER。同社は実に機種が多く、ウインドーを覗いていると、どこかで見たようなモデルがゴロゴロしている。

 もちろん、通常のコンシューマ向けのイベントでは、このようなOEMメーカーがブースを持つことはないが、PMAは基本的にトレードショーであり、一般来場者は事実上おらず、すべてが写真業界関係者。そのため、積極的に自社のOEM用ラインナップをアピールできるわけだ。

 とはいえ、最近では、OEM先の要望をかなり盛り込んだカスタマイズがなされているため、パッと見た感じではだいぶ印象の違うモデルに仕上がっているケースも多い。

 今回も、同社ブースにあった製品によく似た製品を会場のあちらこちらで見かけた。このあたりは、PCの世界ではもっと激しいのだろうが、ちょっと不思議な感覚だ。

 まあ、写真をよくよく見ていただければ、今回のPMAレポートのなかで、大手ブランドから出品されているモデルを見つけることができるだろう。


●コニカ

 コニカは今回、30万画素CMOSセンサーを搭載した3モデルを、PMAに先駆けて国内発表した。

 これらのモデルは、従来のコンパクトカメラやプ高画素デジタルカメラとは異なり、メール添付などのデジタルならではの楽しみ方をアピールしている。発表時の広報写真でみるよりも、現物の作りはよく、機能的にもなかなか実用的なものだった。

e-mini
e-mini-D
e-mini-M

 同社の場合、デジタルカメラよりも、デジタルカメラからのプリントサービスを中心とした展開にシフトしている。とはいえ、そろそろ、コニカらしい独創的なモデルが登場して欲しい時期であり、今後の展開に期待したい。


●東芝

 東芝は、PMA前夜の「Digital Forcus」で、CESで初公開した334万画素3倍ズームの「PDR-M65」と、今回のPMA発表となる230万画素3倍ズーム機「PDR-M61」を出品していた。いずれも、「PDR-M60」をベースにしたもので、やや大きめだが、比較的持ちやすいモデルだ。価格は、699ドルと499ドルと、リーズナブルな設定になっている。

 さらに、同社ブースでは、低価格指向の211万画素と130万画素の単焦点モデル「PDR-21」と「PDR-11」も公開されている。

 いずれも、1.8インチ液晶モニタを搭載しており、スマートメディア採用でUSB対応。電源は単三型を採用するなど、ごくおとなしいスペックのモデルになっている。

 価格は、211万画素機が349ドル、130万画素タイプが249ドルと、手頃なレベルだ。

□PMA2001のホームページ(英文)
http://www.pmai.org/pma2001/

(2001年2月15日)


■注意■

[Reported by 山田久美夫]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp

Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.