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PMAの前日や初日レポートではPMA発表の大物新製品をレポートした。だが、今回PMAは開催初日が日曜日であったため、二日目になって初めて公開された製品があった。その中でも注目されるKodakの新製品をレポートしよう。
●静止画、動画、MP3を1台でカバー
Kodak mc3 |
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KodakはPMA開催2日目になって、新しいタイプのポータブル・マルチメディアモデルを正式発表した。このモデルは、「Kodak mc3」と呼ばれる。
手のひらサイズのコンパクトな縦型モデルで、これ一台で、640×480ピクセル(VGA)の静止画撮影、320×240ピクセル(1/4VGA)のQuickTimeムービー、MP3再生をフルにカバーできる“パーソナル・マルチメディア・デバイス”だ。
しかも、VGAのCMOSセンサと反射式カラー液晶、CFカードスロットを備えているなど、基本機能も充実。さらに、価格は、64MB CFカードとのセットで299ドル、16MB CFカードとのセットでは229ドルという、きわめて手頃な価格を実現している。
●大学生をターゲットにカッコいいツールを目指す
想定ユーザーのお部屋!? |
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もともと、同社幹部は、昨年あたりから、デジタルカメラと動画、そしてMP3を融合させることで、これまでカメラを持っていることを格好の悪いことと思っている、この年齢層のユーザーに対して、新しい価値観を備えたモデルを投入したいという趣旨の発言を繰り返しており、今回のモデルはそれを実現させたものだ。
スタイリングは、曲面を多用した縦型デザイン。サイズは6.5×10.5×3.5cmとなかなかコンパクトで、重さはバッテリー込みで170gと軽量。また、ボディの凹凸が少ないこともって、シャツの胸ポケットなどにも十分収まり、常時気軽に携帯できるレベルだ。
機能的にもかなり凝ったものになっており、省電力化を図るため、撮像素子はKodak自社開発の「KAC-0310」と呼ばれるVGAサイズのCMOSセンサを採用。
レンズは35mmカメラ換算で37mm相当の単焦点タイプ。明るさもF2.8と比較的明るめだ。ピントは残念ながら固定焦点式で、70cm以遠の撮影に限定されている。
●反射式液晶を搭載
液晶は反射式 | 底面 |
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この価格帯ながらも、本体でのムービー再生など実現するために、液晶モニタを搭載。しかも、消費電力はもちろん、日中屋外で利用されるケースが多い本機の特性を考慮し、反射式のカラー液晶を搭載している。
記録媒体は、大容量のデータをハンドリングするため、CF Type1を採用。現在は、CFカードとのセット販売のみが予定されており、ボディ単体での販売は予定されていない。電源は、コンパクトで入手が比較的容易な単4型電池3本という仕様になっている。
静止画撮影は640×480ピクセルのVGAサイズのみ。もちろん、JPEG記録だ。会場で画質を見た限り、CMOSセンサ搭載のVGAモデルのなかではトップレベルのクオリティを実現しており、色のきれいさはKodakの面目躍如という印象だ。解像度はそれなりのものだが、E-MAIL添付や名刺サイズ程度のプリントであれば、実用十分なレベルといえる。
また、CMOSセンサは感度が低めなものが多いが、本機はISO120相当あり、ストロボは内蔵されていないが、暗めの会場内でもメモ用途であれば実用になる画質だった。
動画はQuickTime形式で、サイズは1/4 VGA(320×240ピクセル)のみ。フレームレートは20fpsと10fpsの2種類が用意されており、ファイルサイズはそれぞれ、1MBあたり4秒と20秒。そのため、10fpsモードであれば、64MBカードで約20分の撮影ができる。
サンプルを見る限り、20fpsではかなり動きの速いシーンでも十分対応できる。動画スナップ程度であれば10fpsでも実用十分だ。
なお、この手のモデルでは、日本国内はMPEG-4が主流になりつつあるが、本機はビデオ出力機能を備えていることやフィルムメーカーとしての動画時の品質へのこだわり、さらに汎用性の高さや再生環境を重視し、QuickTime形式を採用したようだ。
●PCへの転送はUSB、クレドールも用意される
クレードル |
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そこで気になるのが、著作権の問題。これについて、ブースで質問したところ、「個人での利用であれば問題はない。基本的にはユーザー側の判断にゆだねる。」という。MP3で先行した富士フイルムはID付きスマートメディアと専用ソフトによる著作権保護をうたっているのは対照的だが、北米ではMP3に対して、このような認識が一般化しているのも事実だ。
USB接続用ソケットはボディ底面に用意されている。また、本機には専用のクレードルがオプション(30ドル前後)として用意されており、これを利用することで、さらに簡単にPCとの接続ができる。もっとも、「FinePix6800Z」のような充電機能はないが、クレードルにセットするとビュワーソフトが自動起動し、静止画、動画、MP3のファイルを自動的に一覧表示してくれるので、使い勝手はなかなかよさそうだ。
明快で割り切ったコンセプトと充実した機能。さらに、64MBカード付きでも200ドル台という大胆な価格設定のため、かなりの人気モデルになる可能性は十分にありそう。
もちろん、CMOSがVGAサイズのため、静止画のクオリティはそこそこのものだが、動画やMP3メインであれば必要十分だ。もちろん、市場の要望が高まれば、メガピクセルクラスのCMOSセンサを搭載したモデルが登場するかもしれない。
米国での発売時期は3月。日本国内での展開は未定だが、発売されることは確実だ。とはいえ、私自身、もし、その場で購入できるなら、すぐにでも持って帰りたいほど魅力的なマルチメディアツールだった。
●デジタルの正しい使い方を感じさせる製品
どうも、最近の国産デジタルカメラは、高画素指向でコンパクトカメラの置き換え的なものが多く、デジタルであることによるメリットを感じさせるものがきわめて少ない。そんななかでこのモデルは、デジタルだからできる“楽しさ”を全面にアピールした、21世紀の新世代映像デバイスといえる。
今回このモデルを見て、液晶付きモデルの元祖「カシオ QV-10」を初めて見たときに感じた、「デジタルの正しい使い方」を久々に見せつけられたような気がした。
□PMA2001のホームページ(英文)
http://www.pmai.org/pma2001/
(2001年2月14日)
■注意■
[Reported by 山田久美夫]