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正直なところ、今回の MACWORLD Conference&Expo /San Francisco 2001 では、Apple以外からは、あまりインパクトのある新製品が発表されず、やや寂しいイベントとなった。とはいえ、Macintoshが得意とするスキャナやプリンタなどの映像関係の新製品も多く、ユニークな小物も結構見られるなど、楽しめる内容となった。
●ニコン:新世代フィルムスキャナ3種を同時発表
ニコンは今回のExpoで、フィルムスキャナ「Coolscan」の新シリーズ3機種を同時発表した。やはりフィルムスキャナが活躍するDTPや画像処理の世界はMacintoshユーザーが多いことから、それを重視した展開といえる。
今回の新モデルは、スキャナの光学系に、色収差が少ない特殊低分散ガラスのEDレンズを採用した高解像度の「Scanner Nikkor ED光学系」を採用。歪曲収差がきわめて少なく、高解像度で高コントラストなものに仕上がっているという。
さらに、Coolscanという名称の由来となっているLED光源も改良されており、より安定度が高く、従来より高精度なスキャンを可能にしているようだ。
また、今回のモデルでは、従来のイメージフィックス(ソフトウエア的にフィルムの傷やゴミを補正し消去する技術)の発展系である「Digital ICE3」を全機種に採用している。
これは、従来からの傷やホコリを除去する「Digital ICE」、色褪せた画像をオリジナルの色調に自動的に復元する「Digital ROC」、粒状性の荒れたフィルムを滑らかな画像にする「Digital GEM」の3種の総称で、かなり効果的な機能といえる。
また、ドライバもインターフェイスが大幅に改良され、より使いやすく高機能なものへと進化している。
今回の発表モデルは、35mmフィルムまでカバーできる「Coolscan IV ED」(2,900dpi/12bit/895ドル)、その上級機となる高解像度/広ダイナミックレンジモデル「Super Coolscan 4000 ED」(4,000dpi/14bit/1,695ドル)、6×9cm版のブローニーフィルムのスキャンまでカバーする高機能モデル「Super Coolscan 8000 ED」(4,000dpi/14bit/2,995ドル)の3種。4×5インチ版までスキャンできる「COOLSCAN4500」の後継機は登場せず、並行して販売されるようだ。
新機種のインターフェイスは、「Coolscan IV ED」のみがUSB。「Super Coolscan 4000 ED」と「Super Coolscan 8000 ED」はIEEE 1394を採用している。もちろん、いずれもMacintoshだけでなく、Windowsにも対応している。仕様は同社のカタログページを参照して欲しい。
デジタルカメラが台頭したとはいえ、商業印刷の世界ではまだまだフィルムからのデジタル化が主流。さらに、デジタルカメラの画質が向上した分、フィルムスキャナにも、さらに高いクォリティーが要求される時代になっており、今回の製品はそれに対応した、新世代フィルムスキャナといえる。
また、米国では「COOLPIX990」などCOOLPIXシリーズの人気がきわめて高く、ユーザーも多い。さらに、コンバージョンレンズや周辺機器などにも関心が高く、同ブースではCOOLPIXのアクセサリ専用カタログまで用意されていたほど。
しかも、ニコン純正のCOOLPIX用バッグまで販売されているのはビックリ。リュック型のものはノートPCが一緒に持ち歩けるように考えられており、小型三脚まで付属している。また、ショルダータイプのものには、フィルタケースが付属。しかも、いずれのバッグにも、充電式バッテリとチャージャが付属している。価格は前者が149ドル、後者が99ドルと、メーカー純正アクセサリとしては、手頃な価格だった。
●セイコーエプソン:G4 Cubeイメージの新デザインプリンタ
米国でも着実にシェアを伸ばしているエプソンは今回、Macintoshを強く意識したプリンタを2種発表した。
まずひとつはMac用のワイヤレスネットワークである「Air Port」(日本名Air Mac)に対応したIEEE 802.11bに対応したプリンタサーバーだ。こちらはまだ参考出品という形であり、価格も正式には決まっていないようだが、説明員によると130ドル前後になるのでは……ということだった。
もちろん、IEEE 802.11bの機能をプリンタ本体に内蔵することもできるが、今回は外付けのプリントサーバーというスタイルで考えているという。そのため、接続されているプリンタもごく普通のタイプだった。
ブースでは実際にワイヤレスでのプリントデモも行なわれており、きちんと稼働することを確認することができた。プリンタとの接続はUSBではなく、普通のパラレルを採用。これは高価格帯のプリンタにも利用できるように配慮したものといえる。
また、同社は透明な筐体のG4 Cubeをイメージした720dpiのインクジェットプリンタ「STYLUS COLOR 83」を発表。このモデルは、同社の「STYLUS COLOR 880」がベースのようだが、型番を「888」とするところを「STYLUS COLOR 83」と表示し、「エイト・キューブ」と読ませようというわけだ。
とはいえ、プリンタの上カバーを角張った透明のものにしたモデルであり、残念ながら、あまりCubeのイメージに近い感じがしなかったのは、ちょっと残念だった。
●HP:自動両面プリント機能を搭載した、メモリカード対応プリンタ
アメリカ最大のプリンタメーカーである「HP」。同社は今回、日本国内未発表の自動両面印刷機能搭載の新型モデルを出展した。
なかでも、デジタルカメラのメモリカードからのダイレクトプリントが可能な「PhotoSmart」シリーズでは、既発売の「PhotoSmart 1000」の上位機種となる「PhotoSmart 1218」(499ドル)を展示。ブースのなかでも、比較的目立つポジションで、積極的なデモが行なわれていた。
もっとも、デモでは、メモリカード経由よりも、もっぱら同社のデジタルカメラを使って、JetSendによる赤外線通信によるプリントをアピールしていた。
また、今回のイベントでは、同社の写真画質プリンタの最高峰となる「deskjet 990」シリーズ(499ドル)も出品され、注目を浴びていた。
さらに、同社ブースにある総合カタログは、Macintosh専用のもので、対応OSなどはMacintoshのものしか書かれていないという徹底したもの。いくらExpoとはいえ、この対応には感心してしまった。
●Hoodman:デジタルカメラなどのモニター用フード専門メーカー
アメリカのイベントを見ると感心してしまうので、小規模メーカーのユニークな製品が実に多いこと。今回も小規模メーカーが並ぶ、いわゆる1コマブースには、そのようなメーカーが数多く見られた。
なかでもユニークだったのが、モニター専用フードを専門に作っている「Hoodman」というメーカー。海外のデジタルカメラユーザーの間では、結構知られているメーカーだ。
同ブースには、大小さまざまなデジタルカメラや液晶モニターに対応できるフードが揃っており、1.5~1.8インチ用、2インチ用、3インチ用(各19.95ドル)など実に細かくラインナップされている。しかも、機種により取り付け方が異なり、ゴムベルトで取り付けることもできるし、ベロクロテープで取り付けることも可能だ。
素材は適度に腰のある布製で、内面は反射が少ないように黒い布になっている。また、携帯時には折り畳んでポケットに入れておくこともできるように考えられている。
最近のヒット作は、「Nikon D-1 HOODCAP」で、傷が付きやすいD1の液晶モニターを保護する透明カバー(19.95ドル)。モノとしては、実に簡単なものだが、自作しようとすると結構大変。そんなかゆいところに手が届くのが、このHoodmanの製品といえる。
しかし、正直なところ、モニター用フードだけで、メーカーが成り立つのかどうか、ちょっと心配になってしまう部分もあるのだが。
●Pacific Image:ユニークな小型フィルムスキャナ
スペック的には、12bit入力の36bit出力に対応しており、35mmカラーポジはもちろん、カラーネガフィルムにも対応している。スキャン時間も35秒(プレビューは10秒)と実用レベルの実力といえそうだ。
●ラトック:FireWire式HDDと、取り外しが容易なFireWireドック
さらに、HDDの低価格化と動画編集など大容量データの利用で、今後需要が広がる超高速で簡単に交換できるモバイルHDDシステムとして「FR-MDK1」を公開。こちらは、UltraATA/66に対応したもので、ワンタッチで着脱可能なHDDケースにUltraATA/66用の回路を組み込んだユニットをベースにしたもの。対応できるHDDに多少の制約があるようだが、これだけHDDが安価になってくると、ごく簡単に大容量HDDを交換して利用できれば相当に便利でコストパフォーマンス。それだけに、このユニットは、大容量データを高速に編集したい人にとって、きわめて魅力的なものになりそうだ。
●Contour:動画編集に便利な、シャトルダイアル搭載コントローラ
Contourは、コンパクトで簡単に動画編集が可能なシャトルダイアルを装備した新型コントローラ「ShuttePRO」を発表した。
このコントローラはUSB接続で、普通のマウスよりひと周りくらい大きなサイズのもの。中央のシャトルダイアルにより、ビデオ編集時でも簡単にサーチやコマ送りができるため、とにかく便利。さらに、各ボタンにはユーザーが機能を割り当てることができる。
さらに、ダイアルの感触もきわめてスムーズで気持ちよく操作でき、デザインもかなりカッコイイ。価格は108.45ドルと、機能を考えれば、十分にリーズナブルなものといえる。確かに、この手のツールはありそうで、あまり無かっただけに、Macintoshで頻繁に動画編集をするユーザーにとっては、とても魅力的な製品といえる。
●Matias:Mac/Win/Palmに対応した独自配列の超小型キーボード
これまでも超小型のキーボードはいろいろと登場してきたが、サイズや対応機種の点で、一長一短だった。
そこで今回登場したのが、この「Half Keyboard」だ。これはスペースキーで文字をシフトさせることで、通常の半分のキー数でアルファベットの入力を可能にしたもの。しかも、全体はとてもコンパクトだが、キーのサイズは十分に大きく、キーの感触も薄型ボディとしては、かなり良好で軽快。これなら、少し慣れればブラインドタッチも可能なレベルといえる。
しかも、対応機種は、WidnowsとMacintosh(USB接続)のほか、Palmにも対応しており実用性も十分(PocketPCは未対応)。価格も99ドルと納得できる範囲に収まっている。
実際に入力してみたが、コツを掴めば、意外にスムーズに入力できた。最近ではPalm用の折り畳みキーボードが人気だが、慣れは必要なものの、それより遙かに小さなスペースで使えるキーボードとして、魅力的な製品だった。
●kodak:1,600万画素デジタルカメラパック
(2001年1月12日)
■注意■
[Reported by 山田久美夫]