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昨年後半の業績不振を覆すために、どのような魅力的新製品を出すのか? Apple CEOスティーブ・ジョブズ氏の基調講演には多くの関心が事前より集まっており、それは早朝から列をなす一般参加者やプレス関係者の数にもあらわれていた。しかも同社は期待を裏切らなかった。講演では多くの新製品ハードウェアやソフトウエアが発表され、聴衆を魅了した。この講演の内容を前後編でお送りする。
●VAIOよりも魅力的? 期待の新型PowerBook G4は超薄型
本日の基調講演ではジョブズ氏自身非常に気合いの入ったスピーチを行なった。中で目玉と言えるのが新型のPowerBook G4である。同氏得意の「最後にあともう1つ」を皮きりにして講演の一番最後に発表。チタニウムのボディを持った厚さ1インチ(約2.54cm)重さ5.3パウンド(約2.4kg)の超薄型ノートだ。もちろん搭載しているCPUはPowerPC G4。
発表時まず最初に画面に表示されたのは謎めいた「Ti」という化学記号。「皆さんは昔に勉強した化学をまだ覚えているかな?」と問いかけ、今回PowerBookに採用され、航空・宇宙機材に利用されているチタニウムを紹介、鉄よりも強くアルミより軽いという利点を説明した。
ジョブズは続いて画面に「Power + Sex」という文字を表示、Powerとして従来のPowerBook G3の写真を、SexとしてSONYのVAIO Z505シリーズの写真を表示。つまりはパワフルさとVAIOの薄型の魅力を合わせた製品である事を示した。続いて新PowerBook G4とVAIOの比較表で両機を仕様を比較し、PowerBook G4がいかに優れているかを主張した。とくにVAIOよりPowerBookが薄いのは(VAIOは1.15インチ)、文字の打ち間違いではないんだよと、薄さを強調していた。
また、液晶はかなりケースギリギリの大きさでフチが狭い。ジョブズ氏はあんまり境目が無いのでカーソルが画面から外に飛び出してしまわないか心配になると冗談を言う。
PowerBook G4には400MHzと500MHzの2つのモデルが用意され、両者とも15.2インチのTFT画面(最高1,152×768ピクセル)とスロットローディング形式のDVD-ROMドライブを搭載。400MHz機は128MBメモリと10GBHDDの仕様で価格2,599ドル、500MHz機は256MBメモリと20GB HDD仕様で3,499ドルと発表。また製品出荷は1月末になるとのことである。
●フィードバックを元に改善されたMac OS X、販売開始日も発表。
期待されているAppleの次世代OS「Mac OS X」。基調講演冒頭から同OSの説明が開始され、ユーザーから受けた多くのフィードバックを元にさらに改善が加えられたことが報告された。さらに一番の関心事である発売日は3月24日と公式に発表された。
75,000件に上るフィードバックを受けて、Mac OS Xには細かい様々な改良が加えられている。ジョブズ氏は「我々は常に聞いている」として、Appleがユーザーの意見を大切にしていることを強調していた。今回の講演では公開βでは無かったAppleメニューが追加されたほか、Dockに登録されたフォルダ内のファイルを直接選択するポップアップメニュー、Finderのカスタマイズ機能などの変更点をデモ。そのほかの細かい点でも公開β版と比較して、かなり手が加えられた印象だ。
ジョブズ氏は同OSはAppleにとって非常に重要な製品であると強く語り、その成功要因の最大の条件であるネイティブ対応アプリケーション数は現在1,200点が発表され、発売日には350点が利用可能であると述べた。また、対応ソフトが夏にかけてピークになるとの見込みから、Mac OS XがMac本体へプリインストールされるのは7月から開始されるという。
Mac OS Xネイティブアプリケーションとしては、同OSと共にMac市場に参入するAlias|Wavefrontのハイエンド3Dグラフィックソフトウエア「Maya」が同社Mayaテクノロジー・ディレクターのRivhard Kerris氏によりデモされた。従来のパソコン用3Dソフトとは次元の違う表現能力に観客からはため息がもれていた。
(2001年1月10日)
[Reported by Pierre Fujiki]