カノープスから低価格TVチューナ搭載ビデオキャプチャカード登場



WinDVR PCI本体。Low Profile対応の基板で、チューナとビデオデコーダ「FUSION 878A」が搭載される。カード自体は非常にシンプルな構成だ
 このところ、低価格でMPEG-2形式でのリアルタイムキャプチャを実現する製品が相次いで登場し話題を集めているが、そういった製品は大きく2種類に分けられる。1つは、入力された映像をMPEG-2形式でキャプチャすることが主目的の製品、そしてもう1つが、TVチューナを搭載してパソコン上でテレビ番組を録画したり、タイムシフト機能による便利なテレビ視聴を実現するのが主目的の製品だ。

 今回取り上げるカノープスの「WinDVR PCI」は、後者の機能を重要視した低価格ビデオキャプチャカードだ。常に高品質かつ高性能な製品を送り出すことで定評のあるカノープスの製品ということもあり、発売当初からかなりの売れ行きを見せているようだが、実際にどの程度の実力を誇っているのか検証してみよう。


■非常にシンプルなハードウェア構成

 カノープスが発売するTVチューナ搭載ビデオキャプチャカード「WinDVR PCI」は、PCIバスに取り付ける拡張カードだ。Low Profile PCI対応で、カード上の主要パーツはTVチューナユニットとCONECANT製のビデオデコーダ「FUSION 878A」だけ。カード自体はよく言えば非常にシンプル、悪くいえば海外メーカー製の低価格TVチューナ搭載ビデオキャプチャカードとほとんど変わらない仕様だ。どうやらカード自体はビデオカードの「SPECTRA」シリーズのようにカノープスが独自に設計・製造しているのではなく、海外メーカーからOEM供給を受けているようだが、ほかの海外メーカー製の格安TVチューナカードではサポートされていないことが多い、テレビ放送のステレオおよび音声多重放送の受信をサポートしていることを考えると、ハードウェアの設計にカノープスが関わっているのだろう。ただし、音声多重放送の受信は製品付属のドライバでは対応しておらず、カノープスのホームページで配布されることになっている。ちなみに、11月末現在ではまだ配布が開始されておらず、12月初旬の配布が予定されている。

 カードに用意されている入出力端子は、ブラケット部分にテレビとFMの2系統のアンテナ接続コネクタと、Sビデオ入力端子、ステレオ音声出力端子に加え、付属リモコン用の赤外線受光部を接続するコネクタが用意されている。また、カード上にはサウンドカードに接続するための音声出力端子と、CD-ROMドライブからのサウンドケーブルを接続する音声入力端子が用意されている(この入力端子からの音声入力は音声出力端子からスルーアウトされるだけだ)。

 ちなみに、WinDVR PCIには音声キャプチャ機能は用意されておらず、録画時に音声も同時にキャプチャする場合にはサウンドカードが必須となる。ブラケット部分の音声出力端子とサウンドカードのLINE-IN端子をケーブルで接続するか、カード上の音声出力コネクタとサウンドカードのCD-INコネクタを専用ケーブルで接続すればよい。ただし、WinDVR PCIにはブラケット部分に音声入力端子が用意されていないため、外部入力を利用したキャプチャを行なう場合、サウンドカード側の音声入力端子にソース機材からの音声ケーブルを直接接続しなければならない。

 付属品としては、各種ケーブル類とLow Profile用のブラケットに加え、赤外線リモコンが同梱されている。赤外線リモコンでは、受信ソフトの起動や終了に加え、チャンネルの切り替えやボリュームのコントロール、表示画面の全画面化およびウィンドウ化などが行なえる。

ブラケット部分のコネクタ類。左からリモコン用赤外線受信機の接続コネクタ、FMとテレビのアンテナ接続端子、Sビデオ入力端子、音声出力端子 付属品一覧。赤外線リモコンや、ビデオケーブル、音声ケーブル、FMフィードアンテナなどが付属している 赤外線リモコン。ソフトの起動、チャンネル切り替え、ボリューム調節などが可能。下の方にあるボタンには機能が割り当てられていないものもある

 ちなみに、対応OSはWindows 98 Second EditionとWindows Me、Windows 2000となっている。Windows 2000をサポートしている点は、ユーザーにとって嬉しい部分といっていいだろう。動作環境としては、Pentium II 300MHz以上のパフォーマンスを持つCPUを搭載するマシンで、800×600ドット以上の解像度でハードウェアオーバーレイをサポートするDirectX 7対応ビデオカードが必須となっている(動作保証されているビデオカードはカノープスの「SPECTRA」シリーズのみ)。また、既に紹介したように、音声キャプチャを行なう場合にはPCI接続のサウンドカードも必須となる。

 ところで、既にお気づきかもしれないが、WinDVR PCIにはMPEG-2ハードウェアエンコーダは搭載されていない。MPEG-2形式でのビデオキャプチャを行なう場合にはソフトウェアCODECを利用することとなる。ということは、快適なキャプチャ環境を実現するためには、かなりのCPUパワーが必要となる。

 メーカーが発表している数値では、先ほど紹介した動作環境のPentium II 300MHzというのはテレビを表示させる場合のもので、テレビ番組の録画・再生を行なう場合には、画質の違いによって表1のようなCPUパワーが必要とされている。とはいっても、現在ではPentium III 700MHzやAthlon 700MHzはローエンド近くに位置しており、それほど厳しい条件ではないと考えていいだろう。

【表1:録画時に必要となるCPUパワー】
画質キャプチャ形式(MPEG-2)CPU
普通320×240ドット 映像ビットレート2Mbps
        音声ビットレート224kbps
Celeron 400MHz
640×240ドット 映像ビットレート4.8Mbps
        音声ビットレート224kbps
Pentium III 450MHz/Duron 600MHz
最良640×240ドット 映像ビットレート5.6Mbps
        音声ビットレート224kbps
Pentium III 700MHz/Athlon 700MHz


■テレビの受信や録画などのコントロールは付属ソフト「WinDVR」で集中管理

 WinDVR PCIでは、テレビの受信や表示、MPEG-2形式での録画などを、「WinDVR」というソフトで集中的にコントロールするようになっている。このソフトは、その名前からピンとくる人も多いと思うが、ソフトウェアDVDプレーヤー「WinDVD」でおなじみのInterVideoが開発したものだ。

 WinDVRで実現されている機能は、テレビ放送の受信と表示、テレビ番組の録画(もちろん予約録画も可能)、ビデオ入力端子から入力される映像の録画、録画したファイルの再生などとなっている。現在放送されているテレビ番組を一時停止したり、数分前に巻き戻して再生する、今やPCでのテレビ受信機能として欠かすことのできない「タイムシフト」機能ももちろんサポートしている。MPEG-2エンコードをソフトウェアCODECで行なうようになってはいるものの、テレビの表示や録画に関する機能は、ハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載する製品とほとんど変わらないといっていいだろう。

テレビ表示と録画をコントロールする「WinDVR」。通常のテレビ表示はもちろん、16分割でのプレビューも可能(画面にはモザイクをかけています) 受信チャンネルは初起動時にスキャンされ登録される。受信チャンネルはCATVにも対応している プロパティメニューで録画品質を設定する。「普通」「良」「最良」の3種類のプリセットに加え、ユーザー設定でより細かく設定できる

 キャプチャ形式はMPEG-1およびMPEG-2をサポートしている。MPEG-2時の録画品質だが、表1で示したような3種類のプリセットモードに加え、ユーザー設定モードを選択すれば、表2のように映像と音声の解像度やキャプチャレートを細かく設定できるようになっている。ただし、縦方向の解像度を240ドット以上に設定した場合はプレビュー表示ができなくなるので注意が必要だ。

 MPEG-2キャプチャ時の映像ビットレートだが、オンラインマニュアルでは最高10Mbpsと書かれているが、ビットレートの設定範囲に関する正確な記述は見あたらない。ユーザー設定モード時には100kbps刻みでかなり幅の広い設定が可能となっており、10Mbps以上に設定することも可能だった。映像ビットレートを20Mbpsに設定しても録画可能だった。とはいっても、テレビ放送はもともと解像度がそれほど高くないため、ビットレートに比例して録画品質が高くなるわけではない。実際に20Mbpsで録画した映像は、プリセットモード「最良」で録画した場合と比較して大幅に画質が向上したという印象は受けなかった。

ユーザー設定では、画像の解像度やビットレート、音声ビットレートなどを細かく指定できる タイムシフトを有効にすると、コントロールウィンドウ上部にスライドバーがあらわれる スライドバーで表示する場面をコントロールできる

 ところで、筆者の使用している環境では、ビットレートを6Mbpsに設定した場合、縦方向の解像度が240ドット以下の場合はフレーム落ちなくキャプチャ可能だったが、640×480ドットでは若干の、720×480ドットではかなりのフレーム落ちが見られた。筆者が使用しているマシンのCPUはPentium III 800EB MHz、ハードディスクはUltra ATA/66対応の5,400rpmドライブのため、ハードディスクの転送速度がボトルネックになっている可能性も考えられるが、720×480ドットでのキャプチャではビットレートを4Mbpsに設定しても3~4割近いフレーム落ちが見られたため、CPUのパワー不足が主原因だと思われる。720×480ドットでのキャプチャには1GHzクラスのCPUが必要になるのかもしれない。

 タイムシフト機能だが、こちらも使い勝手があまりよくないと感じた。タイムシフト機能を有効にするボタンをクリックし、タイムシフト機能が有効になって画像が表示されるまでの間に、10秒近いタイムラグが発生してしまうだけでなく、タイムシフト時のリアルタイム表示でも、本放送との間に数秒のタイムラグが発生してしまう。このタイムラグは、ほかの製品と比べても大きく、かなり気になってしまう。ちなみに、タイムシフト時の録画品質は、プロパティの録画品質で設定したものがそのまま採用される。ただし、ソフトウェアCODECを利用しているためにタイムシフト機能利用時の負荷はかなり高くなってしまう。そのため、安定したタイムシフト機能を実現するにはあまり高品質な録画設定は選択できないと考えたほうがいい。ちなみに筆者のマシン環境では、プリセットモードの「最良」画質を選択した場合でもタイムシフトは安定して利用できたが、ユーザー設定モードでより高い解像度やビットレートを設定した場合には、画像にもたつきを感じてしまう。

タイムシフトの設定メニューでは、タイムシフトの時間設定やタイムシフトファイルの保存に関する設定が可能 FM放送受信ソフト「Canopus FM Tuner」。最低限の機能のみが用意されており、使い勝手はあまりよくない

 こういった、キャプチャ時のフレーム落ちやタイムシフト時の問題点は、ソフトウェアCODECを利用している限りなかなか解消できない問題だと思うが、どうしてもハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載している製品と比較して劣っていると感じてしまう。もちろんそれだけ価格も安くなっているわけで、価格相応の品質であるといえばそれまでかもしれないが、やはり残念な部分でもある。

 そして、最も気になったのが、画面に表示されるテレビ画像の画質が思ったほど良くないと感じられる点だ。以前扱ったALL-IN-WONDER RADEONでの画質よりも劣っているように感じるほどで、この品質は1万円を切る価格で販売されている海外メーカー製の低価格TVチューナカードのそれとあまり変わらないといってもいいかもしれない。カノープスというブランドから来る、高品質・高画質というイメージがあるため、そう感じてしまうのかもしれないが、やはり海外メーカーのOEMボードを利用している限りどうしようもないのかもしれない。できればカノープス独自設計の製品を投入してもらいたいところだ。

 ただし、全体的に見ると、このソフトの完成度は非常に高い。後ほど紹介する「iEPG」による録画予約システムも加えて、使い勝手はかなり良く、ほかの製品を圧倒しているといっても過言ではない。それだけに、少ない欠点が余計目立ってしまうのが残念だ。

 ところで、WinDVR PCIはテレビ放送の受信だけでなくFM放送の受信もサポートしている。FM放送を受信する場合には、WinDVRではなく、FM放送受信専用ソフト「Canopus FM Tuner」を利用する。ただし、このソフトはFM放送を受信し音声を再生できるだけで、録音機能や予約録音機能は用意されておらず、FM文字多重放送への対応もない。FM放送の受信に関しては、おまけ的な機能と考えるのが妥当だろう。

【表2:ユーザー設定モード時のキャプチャ設定(MPEG-2時)】
解像度:80×60ドット~720×480ドットの間で全11種類
映像ビットレート:最低25kbps、100kbps以上は100kbps刻みで設定可能(正確な上限は不明)
音声ビットレート:64kbps~384kbpsの間で全11種類

【テストマシン環境】
マザーボード:ASUS CUSL2
CPU:Pentium III 800EB MHz
メインメモリ:128MB SDRAM(PC133)
ハードディスク:Western Digital 307AA


■テレビ番組予約録画システム「iEPG」に対応

 WinDVRはソニーが提唱する予約録画方式「iEPG」に対応している。iEPGは、インターネット上のテレビ番組情報サイトを利用して、テレビ番組の録画を手軽に行なうための予約録画方式で、もともとはソニーの「VAIO」シリーズ専用ソフトとして用意された「Giga Pocket」で実現されたもの。このiEPGに対応することにより、簡単にテレビ番組の録画予約(再生だけの予約も可能)ができるようになっている。

 コントロールウィンドウに用意されている「EPG」アイコンをクリックすれば、WWWブラウザが起動して「インターネットTVガイド」に接続される。そして、インターネットTVガイドに用意されている「iEPG番組表」を開き、そこに表示される番組表の中から目的の番組欄に用意されている「予約」ボタンをクリックすれば、録画する番組のチャンネルや日時といった情報が登録される。これだけで番組の録画予約が完了してしまうのだ。もちろんチャンネルや録画日時をユーザーが指定して予約することも可能だが、iEPGの機能があれば、手作業での予約機能など不必要と感じてしまうほど便利だ。

 ただし、テレビ番組の予約録画を行なう場合、常にマシンの電源が入っていなければならない。マシンの電源が落ちている場合はもとより、スタンバイ状態になっている場合でも予約録画は動作しない。電源が落ちている場合はしかたがないとしても、せめてスタンバイ状態からの予約録画についてはサポートしてもらいたかった。今後のソフトのバージョンアップによる対応を期待したい。

コントロールウィンドウの「EPG」ボタンをクリックすると、インターネットTVガイドに接続される 番組表の番組欄にある「予約」ボタンをクリックすれば、その番組の情報が録画スケジュールとして登録される 録画スケジュールは手動で登録することも可能


■WinDVRの機能は十分満足できるが、テレビ画像の表示品質は価格相応

 WinDVR PCIは、ソフトの完成度がかなり高いこともあって、機能や使い勝手には文句の付け所がない。キャプチャ性能がCPUパワーに左右される点は、ソフトウェアCODECを利用しているこの製品のアキレス腱ではあるが、キャプチャ品質に関しても十分満足できる。また、音声多重放送のサポートは最新ドライバの登場待ちではあるが、ステレオ放送と音声多重放送をサポートしている数少ないTVチューナカードであるという点も見逃せないポイントだ。しかも、2万円を大きく下回る販売価格で販売されているのだから、飛ぶように売れるのも頷ける。それだけに、テレビ画像の表示品質がやや劣っている点は気になる。テレビ画像の画質を価格相応と納得できるのであれば十分買いだと言えるが、カノープス品質の画質を求めているのであれば、購入前に店頭のデモ表示などで画質をチェックすることをおすすめしておく。

□Akiba PC Hotline!関連記事
【11月25日】MPEG-2録画対応の低価格TVチューナー付きキャプチャカードが人気
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20001125/etc_windvr.html
□関連記事
【10月20日】カノープス、TVチューナー付きMPEG-2キャプチャカード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001020/canopus.htm

(2000年12月1日)

[Reported by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]


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