GeForce2 GTSの高クロック版
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秋葉原初登場となった3D Blaster GeForce2 Ultra。空冷ファンは従来より一回り大きくなり、ビデオメモリ上にも冷却用のヒートシンクが搭載される |
現在のビデオカード市場の牽引役であるNVIDIAから、GeForceシリーズの最新モデルとなる「GeForce2 Ultra」が発表され、搭載製品が秋葉原に登場した。ATI Technologiesの「RADEON」に一部追い抜かれた形となっていた3D描画能力を、GeForce2 Ultraで奪い返すことができるのか、その実力を検証してみよう。
●動作クロック引き上げにより、GeForce2 GTS比約30%の性能向上を実現
GeForce2 Ultraは、GeForce2 GTSと動作クロックが違うだけで、チップの仕様は全く同じだ |
GeForce2 GTSは、ビデオチップが200MHz、ビデオメモリが166MHz(DDR動作時333MHz)で動作していたのに対し、GeForce2 Ultraでは、ビデオチップが250MHz、ビデオメモリが230MHz(DDR動作時460MHz)と、ともに動作クロックが大幅に引き上げられている。ここで注目すべきなのは、ビデオメモリの動作クロック向上率がビデオチップに比べてかなり大きくなっている点だ。
GeForce2 GTSやRADEONなど、3D描画能力の高い最新ビデオチップでは、チップの処理能力に対してビデオメモリのデータ転送能力(バンド幅)が足りないことによって、表示解像度と表示色数が共に大きくなればなるほどパフォーマンスが頭打ちになってしまうという問題があった。GeForce2 Ultraではその状況を打開するために、搭載されるDDRメモリの動作クロックを、GeForce2 GTSの166MHz(DDR動作時333MHz)から230MHz(DDR動作時460MHz)へと40%近く引き上げられている。これによって、ビデオメモリのバンド幅は従来の5.3GB/秒から7.4GB/秒へと向上し、ビデオメモリのボトルネックがかなり解消されているといっていいだろう。もちろん、ビデオチップの動作クロック引き上げによるパフォーマンス向上もあり、GeForce2 Ultraの3D描画能力はテクセルフィルレートが2Gテクセル/秒、ピクセルフィルレートが1Gピクセル/秒、ポリゴン処理能力が3,100万トライアングル/秒と、トータルで30%近いパフォーマンス向上が実現されている。
【GeForce2 Ultraの主な仕様】
GeForce2 Ultra | GeForce2 GTS | |
---|---|---|
ビデオチップの動作クロック | 250MHz | 200MHz |
ビデオメモリ動作クロック | 460MHz(230MHz×2) | 333MHz(166MHz×2) |
テクセルフィルレート | 2Gテクセル/秒 | 1.6Gテクセル/秒 |
ピクセルフィルレート | 1Gピクセル/秒 | 800Mピクセル/秒 |
ポリゴン処理能力 | 3,100万トライアングル/秒 | 2,500万トライアングル/秒 |
ちなみに、GeForce2 UltraとGeForce2 GTSの違いは、チップとビデオメモリの動作クロックのみとなっており、それ以外の仕様は全く同じだ。つまりGeForce2 Ultraは、RIVA TNT2におけるRIVA TNT2 Ultraと全く同じ存在であると考えていいだろう。
●GeForce2 Ultra搭載初の製品はクリエイティブメディアから登場
GeForce2 Ultra搭載ビデオカードは、クリエイティブメディアやカノープス、エルザをはじめ、さまざまなビデオカードメーカーが投入を発表しているが、秋葉原に最初に登場したのは、クリエイティブメディアの3D Blaster GeForce2 Ultraだ。クリエイティブメディアは、NVIDIA製ビデオチップを搭載する製品を他社に先駆けて市場に投入することで定評がある。最近は他社に先を越されることが多かったものの、久々の初登場となった。
3D Blaster GeForce2 Ultraでは、ビデオチップの動作クロックが大幅に引き上げられて増えた発熱量に対応するため、従来のものよりも一回り大きい空冷ファンがビデオチップ上に搭載されている。また、ビデオチップ用の空冷ファンだけでなく、ビデオメモリ上にもヒートシンクが取り付けられている点が目を引く。動作中にビデオメモリ上のヒートシンクを実際に触ってみたところ、かなり熱くなっており、ビデオメモリにまでヒートシンクを搭載するということが大げさではないことがよくわかる。とはいっても、ビデオチップの空冷ファンからの風がビデオメモリ上のヒートシンクにも届くため、冷却能力は十分確保されていると言ってだろう。ちなみにビデオメモリはDDR SDRAMが64MB搭載されている。
クリエイティブメディア独自のユーティリティ「Blaster Control」のTweakメニューでは、従来同様ビデオメモリの動作クロックを変更する機能が用意されている。標準は458MHzで、412MHz~503MHzの間で1MHz刻みに変更可能 |
現在発売されているものは、日本語環境での動作が確認されている英語版だが、順次日本語版も投入されることになるだろう。また、ソフトウェアDVDプレーヤーの「WinDVD 2000」とゲームソフト「Rage Rally」がバンドルソフトとして同梱されている。
●高解像度・多色モードでの描画能力が大幅に向上
それでは、3D Blaster GeForce2 Ultraの描画能力を、ベンチマークテストを通して検証してみることにしよう。ビデオドライバは、製品に付属しているもの(バージョン4.12.01.0625)を利用した。また、比較用として、同じくクリエイティブメディアが発売しているGeForce2 GTS搭載製品「3D Blaster GeForce2 GTS」を用意し、そちらでも同じテストを行なった。ただし、3D Blaster GeForce2 GTS用のビデオドライバは、NVIDIAが配布しているリファレンスドライバDetonator3(バージョン4.12.01.0631)を利用した。
ところで、テスト環境は以下の通りだが、RADEONを取り上げた時に利用したCPU(Pentium III 800EB MHz)を諸事情によって利用できなかったため、残念ながら結果を比較できなくなってしまった点はあらかじめお詫びしておく。
【テスト環境】
CPU:Intel Pentium III 600EB MHz
マザーボード:Intel D815EEA
メモリ:PC133 SDRAM(128MB、CL=3)
ハードディスク:IBM DTLA-307030(30GB、Ultra ATA/100)
OS:Windows 98 Second Edition+DirectX 7.0a
(1)2D描画能力
2D描画能力の測定にはいつもと同様に、Ziff-Davis,Inc.のWinBench 99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark 99とHigh-End Graphics WinMark99を利用した。結果は表の通りだが、双方に全く違いは見られない。動作クロックが向上しているからと言って、2D描画能力に差が出ることは全くなく、2D描画能力が飽和状態にあるということがよくわかると思う。
WinBench 99 Version 1.1
Business Graphics WinMark 99 | High-End Graphics WinMark 99 | |||
---|---|---|---|---|
1,024x768 | 1,024x768 | |||
16bit | 32bit | 16bit | 32bit | |
3D Blaster GeForce2 Ultra | 267 | 267 | 749 | 750 |
3D Blaster GeForce2 GTS | 267 | 268 | 754 | 754 |
(2)DirectX 7環境下での3D描画能力
次に、DirectX 7環境下での3D描画能力だ。MadOnion.comの「3DMark2000」を利用し、1,024×768ドットと1,280×1,024ドットの16bitおよび32bitカラーモードにおける描画能力を測定した。
3DMark2000/3DMark
1,024x768 | 1,280x1,024 | |||
---|---|---|---|---|
16bpp | 32bpp | 16bpp | 32bpp | |
3D Blaster GeForce2 Ultra | 5,944 | 5,285 | 5,412 | 4,105 |
3D Blaster GeForce2 GTS | 5,637 | 4,444 | 4,684 | 2,993 |
結果は表にまとめたとおりだが、1,024×768ドット16bitカラーモードでは、GeForce2 UltraとGeForce2 GTSとの間にそれほど大きな差は見られないものの、解像度が高く、色数が32bitカラーモードになれば、GeForce2 Ultraのほうが大幅に描画能力が向上していることがよくわかる。これは、ビデオメモリの動作クロックが大幅に引き上げられたことによって、メモリのバンド幅が向上し、メモリ部分でのボトルネックが解消されたことが大きな要因といっていいだろう。もちろん、この問題はGeForceシリーズに限ったことではなく、RADEONなどのほかの3D描画能力の高いビデオチップでも同様で、どれだけ高速なビデオメモリを搭載できるかが、ビデオカードのパフォーマンスを決定するカギになるといっても過言ではないだろう。
(3)OpenGL対応3Dゲームにおける3D描画能力
最後に、OpenGL対応3DゲームソフトであるQuake III Arenaを利用して、OpenGL環境での3D描画能力を測定してみた。この結果も、3DMark2000の結果同様、解像度が高く、32bitカラーモードになれば、GeForce2 Ultraのパフォーマンス向上率が高くなっている。
Quake III Arena Demo 1.09
1,024x768 | 1,280x1,024 | |||
---|---|---|---|---|
16bpp | 32bpp | 16bpp | 32bpp | |
3D Blaster GeForce2 Ultra | 109.5 | 103.3 | 104.0 | 76.1 |
3D Blaster GeForce2 GTS | 108.2 | 90.7 | 89.7 | 54.1 |
●現役最強のビデオカードだが、ややおすすめしづらい
GeForce2 Ultraでは、ビデオチップとビデオメモリの動作クロックを大幅に引き上げたことによって、特に高解像度・多色モードでの3D描画能力が大きく向上している。これで、RADEONに抜かれていた高解像度・多色モードでの3D描画能力トップの座も奪い返し、現役最強のビデオチップに返り咲いたといえる。ハイエンド3Dグラフィックソフトを常に利用するという人で、とにかく現状で最もパフォーマンスの高い製品が欲しいというのであれば、GeForce2 Ultra搭載カードはメインの選択肢になるといっていいだろう。
ただ、そう遠くない将来に、GeForce2 GTSの2倍の3D描画能力を誇ると言われる最新チップ「NV20」の登場が予定されており、GeForce2 Ultra搭載カードの製品寿命はそれほど長くない可能性がある。また、販売価格が5万円前後とかなり高価であることなども考えると、一般的にはややおすすめしづらい製品であると言わざるを得ない。
現在発売されている3D描画のゲームソフトでは、GeForce256クラスの3D描画能力でも十分であり、GeForce2 Ultraの登場によって価格が下がる可能性のあるGeForce2 GTS搭載製品や、より安価なGeForce256またはGeForce2 MX搭載製品のほうがコストパフォーマンスという面での魅力が高い。Matrox GraphicsのG800や3dfxのRampageなど、他メーカーからもハードウェアT&Lをサポートする最新チップの発表や搭載製品の発売が予定されており、現状では低価格の製品を購入しておき、NV20も含めて新製品の動向を見守るというのが最も賢い選択肢ではないだろうか。
□Akiba PC Hotline!関連記事
【10月14日】GeForce2 Ultra搭載ビデオカードの第1弾がCreativeから登場
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20001014/etc_gfultra.html
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【5月12日】【Hothot!】速報:GeForce2 GTS搭載ビデオカードがついにデビュー!
~GeForceを超えるのはやはりGeForceなのか~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000512/hotrev61.htm
(2000年10月20日)
[Text by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]