会場:Paris Expo ,Porte de Versailles
いきなりネタばれで恐縮だが、昨年は土壇場でApple expo 1999の取材を見送った。そのためこの見出し、実は一年越しのネタだったりする。念願かなったところで、13日にオープンした展示会場から、主催者でもある米Apple Computerのブースの状況をお伝えしよう。
■ラインナップのすべてをバランスよく展示したAppleブース
展示会場となる「Porte de Versailles」は、パリ郊外に位置するコンベンション施設で、広大な敷地のなかにいくつものホールが点在している。Apple expo 2000は、このなかの第4ホールを使って開催されているが、他のホールでも別の催しがあって敷地内はかなりの賑わいを見せている。第4ホールの規模は、おおむね東京ビックサイトの東側ホール片側をもう一回り広くしたようなイメージ。推定来場者数こそ6万人となっているが、今年の2月に幕張メッセで開催されたMacworldよりも展示規模はふたまわりほど大きいと例えると、ピンとくる人もいるだろう。Apple Computerのブースは、もちろん展示会場のほぼ中央に位置している。おなじみのMacworldと異なるのは、イベントの主催をApple Computerが直接行なっていることだ。
出展傾向は、同社の製品ラインナップがハード、ソフトともにバランスよく展示されている印象。ブース中央に位置するプレゼンテーションステージでは、Mac OS XやiMovie2などのデモが繰り返し行なわれている。iMac DVとG4 Cubeは来場者が実際に体験できるように展示されている一方で、今回発表された新製品であるiBookは、丸い島状のエリアでスタッフが個別に質問に答えてくれる。
新しいiBookの詳細なスペックは昨日の記事に詳しいが、FireWire以外にも新しいインターフェイスが搭載されている。本体に向かって左側、FireWireポートの隣に位置するAVインターフェイスがそれだ。このポートからは、ビデオ映像と左右の音声信号が出力されており、液晶のモニタ画面をテレビにミラーリングすることが可能となっている。iMovie2で編集した映像の再生や、大画面でのゲームプレイ、あるいはDVDビデオの再生などができ、iBookがコンシューマ向け製品であることを改めて意識させられる。新たに搭載されたFireWireを有効に利用するための改良点でもあるのだろう。ここはフランスのためビデオ出力はPAL形式だが、米国や日本ではNTSCをサポート。これらはハード自体が異なるのかソフトによる切り替えが可能なのかは、現時点で確認が取れていないが、たぶんソフトによるものと予想される。
■一時間、二時間はあたりまえ。Mac OS Xの購入に長蛇の列
開場と同時に、Mac OS Xのパブリックベータ版を販売するコーナーには、長い列ができあがった。基調講演会場からのシャトルバスが到着するたびに、この列は壁沿いにのびていき、もっとも長いときには端まで到達して二時間程度の待ち時間となっていたようだ。筆者はさすがに取材があるためすぐに行列に並ぶことはできなかったが、閉場間際の午後7時少々前になんとか10分ほどの待ち時間でゲットすることができた。
販売価格は、仏フランで249フラン (9月14日現在、1フラン=約14.3円) 。これにはあらかじめVAT(付加価値税)が19.6%の40.80フランも含まれているため、米国での販売価格29.95ドルと比べるとややお高く感じる。来場者であれば、国籍が日本でも問題なく購入できるようで、購入時に必要な住所や名前などの入力も問題はなかった。この入力にはiMacが使われており、最初の画面でインストラクションを英語かフランス語で選ぶ。しかし、英語を選んでもキー配列については自動的に切り替わらず、メニューバーから別途変更しないといけない。最初は、どう入力しても叩いたキーとは別の文字がでて、往生してしまった。こんなことはプログラム作り方次第でどうにでもなりそうな気がするので、この辺も行列が長くなった原因のひとつかも知れない。
購入可能なMac OS X(パブリックベータ版)の種類は、英語版、仏語版、独語版の三種類。ただし、中に入っているCD-ROMはすべて同一で、インストールに利用する言語をインストール画面が起動したときに選ぶことができる。パッケージの違いはパッケージ裏面の文字と、中に含まれているインストールマニュアルなどの紙関係が、それぞれの言語にあわせて別々になっているだけの違いだ。
日本語版の発表がなく、がっかりしているユーザーも多いと思われるが、実際のところCD-ROMのなかにはちゃんと日本語環境も含まれている。いったん英語のインストラクションでインストールをしたあと、プライマリ言語を日本語に変更すれば、次の起動時にはきちんと日本語環境で起動できる。Osakaをはじめ、ヒラギノフォントまでちゃんと含まれているので、Mac OS Xのワールドワイド対応を改めて認識することができるはずだ。
想像するに、今回日本語版が発表されなかった理由は、添付のマニュアルや、インストーラー部分の日本語化がまだなされていないことが大きいと思われる。時期的なことを考えれば、あくまでも予想に過ぎないが、10月17日から幕張メッセで開催されるWORLD PC EXPOあたりで、日本語によるインストールにも対応したパブリックベータ版がお目見えするのではないかと思われる。いずれにせよ、基調講演でスティーブ・ジョブズ氏が述べたとおり、パブリックベータ版の販売はユーザーからのフィードバックを目的とする部分も大きい。日本のユーザーの声をAppleに届けるためにも、できるだけ早い対応を望みたいところだ。
なお、Mac OS X(パブリックベータ版)の内容については、後日機会を見つけてなんらかの形でレビューをお届けしたいと考えている。
基調講演の詳細と、展示会場の様子は追ってより詳しくお伝えする。
(2000年9月14日)
[Reported by 矢作 晃(akira-y@st.rim.or.jp)]