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プロカメラマン山田久美夫の

ソニー「DSC-P1」レポート & 実写画像
~気軽に楽しめる高画質コンパクトモデル~


 ソニーから「Cyber-shot DSC-S70」の姉妹機となる超小型モデル「Cyber-shot DSC-P1」が発表された。このモデルは、334万画素で光学式3倍ズームを搭載しながらも、大幅なコンパクト化を図った、携帯性に富んだニューモデルだ。

 撮影した本体はβ版。特に指定のない画像は2,048×1,536ピクセルで撮影している。また、縦位置の画像はサムネールのみ縦位置とし、画像データは回転させていない。スペックなどについては参考記事を参照されたい。(編集部)





●妥協のないハイスペック・コンパクト機

 最近では、「IXY DIGITAL」や「FineCam 3300」などのように、コンパクト化を特徴にしたモデルが登場し始めている。しかし、これらのモデルは、CCDが200万画素の小型タイプだったり、ズーム比が2倍だったりと、スペック的に我慢を強いるような部分もあった。

 だが、この「DSC-P1」は、これらのモデルのように、スペック的な妥協をせずに、これほどのコンパクト化を実現している点が大きな特徴といえる。

 実際、本機を見てみると、現行機でもトップクラスの334万画素光学3倍ズーム機であり、光学ファインダーも搭載。さらにインフォリチウムバッテリ(NP-FS11)を採用し、同社の特徴であるスタミナを実現しながらも、これだけコンパクトにまとめている点は特筆に値する。

 もちろん、これほどのコンパクト化は、同社の334万画素3倍ズーム機「DSC-S70」と同じユニットを使ったのでは実現することは不可能。そのため本機では、レンズの明るさをやや暗くし、小型化を優先させた新レンズを開発。さらに、主要回路や基板設計のレイアウトや配線の取り回しなどを工夫することで、これほどのコンパクト化を実現しているわけだ。

■屋外撮影


●高品位な横長ボディ

 ボディデザインもなかなか個性的。メモリースティックを連想させるような横長デザインで、パッと見ると、やや持ちにくそうな雰囲気もある。だが、実際に手にしてみると、横幅と厚みがあるためか、意外なほど持ちやすく、手にフィットする。そのため、ボディが軽くて小さい割にブレにくく、好感が持てる。

 質感もなかなか良好。外装は金属素材がメインであり、手にするとひんやりとした感触があり、なかなか高級感がある。

 携帯性は良好。とくに本機は、同社で始めてレンズバリアを内蔵していることもあって、ちょっとかさばるのを我慢すれば、ケースレスでポケットにいれて持ち歩くこともできるレベル。もちろん、「IXY DIGITAL」のような薄型モデルに比べると、ズングリとした印象だが、バッグに収納して持ち歩くのであれば、大差ないレベルといえる。

●やや暗めの3倍ズーム

 レンズは新設計で6群6枚構成の光学式3倍ズーム。もちろん、ボディーの小型化のために、レンズの明るさがF2.8~5.3とやや暗めの設定になっている。これは同社の「S70」に比べると、ワイド側で1段(1/2)、望遠側では約2段(1/4)近くも暗くなっている点は残念だ。

 しかも、CCDの実効感度は「S70」と同じため、屋内撮影などでストロボなしに望遠側で撮影すると、ぶれやすい点が若干気になるところ。
 とはいえ、ボディーが持ちやすく、通常のプログラムモードでは、シャッター速度が1/15秒まで下がると、自動的にゲインアップ機能が働き、それ以上スローシャッターにならないため、F値の差から想像されるほど、ブレやすいわけではない。それでも撮影時には注意が必要だ。

 残念なのは、ストロボの到達距離がきわめて短い点。なにしろ、ワイド側で2.3mはいいとしても、望遠側ではわずか1.2m(いずれもメーカー推奨値)しかない。もちろんこれは、レンズの暗さが原因であり、コンパクトさと引き替えになってしまった部分といえる。

■室内撮影

ストロボOFF ストロボON

ストロボON ストロボOFF

■マクロ撮影

ストロボOFF ストロボON


●明るい1.5インチ液晶モニター

 基本的な操作性は、S70のものを踏襲しており、同シリーズユーザーであれば、何の違和感もなく使えるもの。ただ、ボディーのコンパクト化の影響もあって、操作ボタンや十字パッドは全体に小さめだ。

 撮影感覚はとても軽快。まず、起動時間は2秒強と、沈胴式のズームレンズ搭載機としては十分に早く、スピーディー。撮影後の記録時間も実質2秒弱しかかからず、軽快な撮影を楽しめる。また、AF測距も従来機よりやや高速化されているようだ。

 また、撮影していて感心したのは、液晶モニターの視認性だ。本機はボディーの小型化のために、1.5インチのTFT液晶モニターを採用、バックライトも省エネ化のために、蛍光管ではなく、近年主流になりつつある白色LED方式を搭載している。

 この白色LED式バックライトは、消費電力は少ないのだが、大半のモデルでは光量が不足気味という欠点を抱えていた。だが、本機のモニタは、実に明るく明快で、日中の屋外撮影でも、液晶モニターの視認性が実用十分なレベルを維持している点に好感が持てた。

 もちろん、光学式ファインダーを搭載しているので、日中はそちらを使っても良いわけだが、液晶モニターでもこれだけの視認性を確保できれば、デジタルカメラらしく、液晶ファインダーをフルに活用した撮影が楽しめるわけだ。

■人物撮影

ストロボON ストロボOFF


●遅い再生表示

 一方、撮影した画像の再生表示は、きわめて遅く、実にのんびりとしたもの。これは同社のS70も同じだが、この点はまったくといっていいほど、改善されていない。
 例えば、撮影モードから再生モードに切り替えると、約3秒間ブルー画面があらわれ、そのあとに画像が表示される。しかも、再生モードでコマ送りをした場合にも、次のコマが表示されるまで約3秒も待たされるのには閉口してしまう。

 まあ、カメラ側での画像再生は、撮影時ほどのスピーディーさが要求されるわけではないが、最低限、撮影時と同じレベルの軽快さを感じられるレベルは維持して欲しいところ。特に本機は、ノンPCユーザーを視野に入れた展開を予定していることを考えると、この点は大きなマイナス要素になりそうだ。

●十分なバッテリ駆動時間

 バッテリは、同社のインフォリチウムバッテリ(NP-FS11)が標準添付される。同社によれば、1,700枚、連続90分の使用に耐えるとしており、半信半疑で使ってみた。

 結果的には、確かに通常の撮影パターン(液晶モニター常時ON)で200枚以上の撮影しても、バッテリの残量は十分すぎるほど残っており、まだまだ撮影できる状態。これなら、フル充電したバッテリであれば、日帰りはもちろん、一泊二日くらいの旅行でも安心して使えそうだ。

 とはいえ、この手の充電式バッテリーは、単三形のものと違い、外出先で電池を購入することができないため、やはり予備電池を1つは用意しておくべきだろう。

●楽しめるアニメーションGIF機能

 本機の新機能として、カメラ単体でアニメーションGIFが作成できる点がある。どうも、アニメーションGIFというと、作るのが面倒な印象があるが、これがカメラ単体でできるようになると、意外に気軽に楽しめるもの。

 といっても、実際に撮影してみると、なかなかいいアイデアが浮かばないものだが、とにかく、簡単に作って、その場で結果が即座に確認できる点がうれしい。

 また、この機能を使って作成したアニメーションGIFを、同時発表のiJumpというサービスを使ってiモード対応の携帯電話に送ることもできる。

■アニメーションGIF機能


●必要十分な画質

 本機は「コンパクトなカメラでも、200万画素や2倍ズームじゃ物足りない」というユーザーを強く意識したモデル。それだけに、画質面でも「DSC-S70」にひけを取らないレベルの絵づくりを実現している。

 まず、解像度はやはり334万画素機らしさを十分に堪能できるレベルであり、明らかに211万画素系モデルよりもワンランク勝る世界。

 階調の再現性もなかなか自然なもの。とくに、シャドー側の階調再現性を意識した設定になっているような印象があり、シャドー部がドスンと潰れるようなケースはなかった。また、このタイプのCCDで問題になるシャドー部のノイズも、さほど目立たないレベルに抑えられている感じだ。

色再現性は、比較的ナチュラルなもので、比較的派手目の絵づくりになっている「DSC-S70」よりも若干抑え気味の印象だ。

 全体に、見栄え優先の現行の「Cyber-shot Sシリーズ」よりも、どちらかというと「MVC-CD1000」などのマビカ系に近い印象の絵づくりといえる。

 通常の用途では、これだけ写れば十分といえるレベルだが、欲を言えば、画像全体がやや立体感に欠ける印象があるのが少々残念だ。

■動画撮影

320×240 320×240 160×120
【1,838KB】
【1,914KB】
【120KB】

■夜景モード撮影

プログラムモード 夜景モード


●ちょっと欲張りな新携帯モデル

 ポケットサイズの334万画素3倍ズーム機。これを納得できるレベルで実現したモデルが、今回の「DSC-P1」といえる。

 機能面では、コンパクト化による弊害が見られる点もあるが、このサイズと携帯性のよさを考えれば、「仕方ないかなあ~」と思える。また、価格的にも、99,800円とこのクラスのモデルとしては手頃なレベルに抑えられている点も大きな魅力といえる。

 なにしろ、画質最優先のデジタル一眼レフやパーソナルハイエンド機は別として、このタイプのカメラはどんなに性能が高くても、実際に気軽に持ち歩いて撮影できなければ、その魅力は半減してしまう。

 その点、本機は、突出した点はないが、サイズ、機能、操作感、画質といった各要素がうまくバランスバランスがとれており、なかなか好感が持てるモデルに仕上がっている。

 さらに、同時発表された、「i-Jump」や「ピクチャーパラダイス」といった新展開や、コンパクトで手頃な価格の水中ハウジング、豊富なキャリングケースなども用意されており、本機の魅力をさらに引き立てる周辺環境が整っている点も、大きな魅力といえる。

 今後のデジタルカメラは、カメラ単体の魅力もさることながら、その魅力をフルに発揮できる環境が整っているかどうかが、大きなポイントになる。その意味で本機は「デジタルカメラのある生活」をエンジョイできる、新世代のデジタルカメラシステムとして大いに注目される、魅力的なモデルといえるだろう。

■定点撮影

2,048×1,536ドット
ワイド端 光学テレ端 デジタルテレ端
【1,290KB】
【1,280KB】
【990KB】

1,600×1,200ドット
ワイド端 光学テレ端 デジタルテレ端
【872KB】
【813KB】
【685KB】

1,280×960ドット
ワイド端 光学テレ端 デジタルテレ端
【557KB】
【559KB】
【449KB】

640×480ドット
ワイド端 光学テレ端 デジタルテレ端
【60KB】
【62KB】
【61KB】

※光学テレ端は光学ズームのみ使用した場合、デジタルテレ端はデジタルズーム併用時の画像です


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.co.jp/sd/CorporateCruise/Press/200009/00-0912A/
□製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/DSC/DSC-P1/
□関連記事
【9月12日】ソニー、沈胴式光学3倍ズーム搭載324万画素コンパクトデジカメ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000912/sony1.htm

(2000年9月12日)


■注意■

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp