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SiSがSiS730Sに関する説明会を日本でも開催
~AMDがPalomino、Morganの計画を公表~

8月31日 発表



 台湾のチップセットベンダであるSilicon Integrated Systems(SiS)は、都内のホテルで記者会見を開催し、同社初のAthlon/Duron用チップセットとなるSiS730Sについてのプレスブリーフィング(説明会)を開催した。そのゲストとして招かれた日本AMDの小島氏は同社の新しいプロセッサコアロードマップを公開し、従来はCorvette、Camaroのコードネームで呼ばれていたプロセッサコアがPalomino、Morganというコードネームに変更されたことを明らかにした。

●SiSのアドバンテージは「統合」であること

インテグレーテッドプロダクト部シニアマネージャ Sylvia Lin氏 インテグレーテッドプロダクト部プロダクトマーケティングディレクター Alex Wu氏

 最初に挨拶にたったSiSのインテグレーテッドプロダクト部シニアマネージャ Sylvia Lin氏は、SiSの基本戦略が「統合」であることを明らかにし今後とも統合にフォーカスした製品を発表していくという方針を明らかにした。さらに、SiSが自社工場を造ったことが、逆にビジネスに悪影響を与えているのではないか? という報道が相次いでいることにふれ、「統合型のコアを作っていくには自社工場は不可欠であり、必要な投資であると考えている」とのべ、自社工場が今後SiSが発展していくために必要不可欠であるという点を強調した。

 また、引き続きSiS730Sに関する説明を行なったインテグレーテッドプロダクト部プロダクトマーケティングディレクターのAlex Wu氏は「SiS730Sは1チップに様々な機能を詰め込んでおり、ユーザーにとってコストパフォーマンスに優れた製品である」とのべ、グラフィックスだけでなく、サウスブリッジ、イーサネット、HomePNAなど複数の機能を搭載しているSiS730Sの統合性の高さを強調した。

 ただし、発表された内容は、既に同社がCOMPUTEX TAIPEIで明らかにしている内容(関連記事)と同じであり特に新しいトピックはなかったが、出荷時期は10月、10,000個当たりのチップセット単体の価格が42ドルであることなどが明らかにされたほか、マザーボードメーカー各社のSiS730S搭載マザーボードが公開された。

 なお、報道陣からは「SiSはTimnaのような統合型MPUをやっているか」という質問がでたが、「もちろん、そうした製品には興味があるが、具体的なコメントはない。IntelのTimnaは面白い製品だが、本当に低コストで作れるかは疑問である」(Wu氏)とのべ、開発中であるなどの具体的な回答は特になかった。ちなみに、SiSは既にRise TechnologyよりmP6のIP(知的所有権)を入手しており、いつでも統合型MPUの開発に取りかかることができる。情報筋によれば、SiSはSiS550というmP6コアを採用した統合型MPUの開発をOEMメーカーにアナウンスしているそうで、IntelのTimna、VIAのMatthewとの激しい争いが統合型MPUでも展開されそうだ。

●Corvette/CamaroはPalomino/Morganに変更され、デスクトップにも展開

 今回のゲストとして呼ばれた日本AMDテクニカルマーケティング部 部長の小島洋一氏は、さらっとではあるが、AMDの新しいプロセッサコアロードマップについて語った。それによると、従来の公式ロードマップでCorvetteというコードネームで呼ばれていた、Mustangのモバイル版が「Palomino(パロミノ)」になり、またこれまでは公式なロードマップには存在していなかったものの、非公式にCamaroというコードネームで呼ばれていたCorvetteのバリュー版が「Morgan(モーガン)」というコードネームに変更されたことを明らかにした。

 提示されたプロセッサコアロードマップによれば、Palominoは「Desktop」、Morganには「Value」という但し書きがされており、これまでのPalomino(=Corvette)はモバイル、Morgan(=Camaro)はモバイルのバリュー版という定説を覆す内容となっている。筆者がこの件について質問したところ「現時点では明らかにできない」(小島氏)とのことで、登場時期なども含めて日本AMDとしての公式見解は明らかではない(図を見る限りはPalominoは今年の第4四半期の半ば~2001年の第1四半期に、Morganは第4四半期の終わり~2001年第1四半期頃と見受けられる)。

 これは何を意味しているのだろうか? 実は、これはMustang技術を利用したプロセッサコアのリポジショニングを意味している。これまでの定説では、AMDはサーバー・ワークステーションに大容量のL2キャッシュを搭載したMustangを投入し、そのモバイル版としてL2キャッシュの容量がMustangに比べて少ないCorvetteとCamaroをモバイル市場に投入するというものだった。しかし、情報筋によれば、AMDは8月に入ってからOEMメーカーに対して、これまでとは違う新しいプロセッサコアロードマップを公開し始めているという。その情報筋によれば、Palominoはデスクトップ版とモバイル版の両方が存在し、パフォーマンスPCのセグメントに2000年の第4四半期に投入されるという。さらに、Morganもデスクトップ版とモバイル版の両方が存在し、2001年前半に投入される計画になっているという。つまり、下の表のように置き換わるわけだ。

現行将来
AthlonThunderbirdPalomino
DuronSpitfireMorgan

 それでは、なぜAMDはThunderbird/SpitfireコアをPalmino/Morganコアで置き換えるのだろうか? 理由としては2つが考えられる。1つには、L2キャッシュの増量という展開が考えられる。サーバー/ワークステーション向けのMustangではL2キャッシュの容量が1MBや2MBといった大容量になる。それに併せて、パフォーマンス/バリューPC向けのPalomino/Morganでも512KBや128KBとL2キャッシュを増量するという展開は十分に考えられる(なお、Palomino/MorganのL2キャッシュの容量は現時点では明らかになっていない)。

 もう1つの理由は将来の高クロック化に対するヘッドルーム(余裕)を確保するためだ。銅配線に最適化され、コアの改良が行なわれると見られているMustangのテクノロジに基づくPalomino/Morganコアは、従来のThunderbird/Spitfireコアに比べて高クロックに耐えうる製品を作ることが容易になる可能性が高い。情報筋によればAMDはOEMメーカーに対して、Athlonは年末までに1.3GHz以上、2001年の第1四半期に1.4GHz以上、第2四半期までに1.5GHz以上を出荷し、Duronは年末までに800MHzを、第1四半期に850MHzを、第2四半期に950MHzを出荷するというロードマップを示しているという。そうした高クロックを実現したAthlonを予定通り出荷していくために、Mustangのテクノロジを利用したPalomino/Morganが必要になるというストーリーだ。

●AMDはx86-64に対応したMPUをデスクトップの領域にも展開

日本AMDテクニカルマーケティング部 部長 小島洋一氏 小島氏のプレゼンで提示されたプロセッサコアロードマップ。Palomino/Morganが追加されている

 AMDは既にx86-64についての詳細をプログラミングガイドなどの形で公開しており、徐々に詳細が明らかになってきている。x86-64に関する詳細はここではふれないが、注目したいのはそのことを発表しているAMDのプレスリリースだ。そのプレスリリースの中でAMDは「AMDのx86-64テクノロジはまず、2001年末に発表を計画している、コード名「Hammer(ハマー)」プロセッサ・ファミリでサポートされます」(AMDのプレスリリースより抜粋)としている。このように、これまではSledgeHammerと呼ばれていたx86-64に対応したプロセッサが「Hammerプロセッサファミリ」と複数形になっているのだ。仮にMPUの種類が1つだったら「ファミリ」にはならないはずで、x86-64に対応したMPUは複数存在すると考えるのが妥当だろう。

 AMDの小島氏に「x86-64に対応したMPUはデスクトップPCのセグメントにも投入されるのか」という質問をぶつけたところ、「x86-64はサーバーだけの技術ではなく、基本的にはすべてのセグメントに展開していくことを考えている」(小島氏)という答えが返ってきた。この答えと、さらには「Hammerプロセッサファミリ」と微妙に表現が変わっていることなどを考え併せると、デスクトップPC用、さらにはモバイル用なども考えている可能性は高いといえる。

 筆者が複数の情報筋に確認したところ、やはりAMDはHammerプロセッサファミリの1つとして、デスクトップPC用を計画しているようだ。情報筋によれば、そのコードネームは「ClawHammer(クロウハマー)」であり、SledgeHammerとの違いは、ClawHammerがユニプロセッサないしは2ウェイまでのマルチプロセッサをサポートという仕様であるのに対して、SledgeHammerは4~8ウェイのマルチプロセッサ構成をサポートする点であるそうだ。どちらも2001年の終わりから2002年にかけてに登場するとOEMメーカーに対して説明しているという。

 IntelがPentium III 1.13GHzをリコールするなど自ら躓いてくれたおかげで、AMDのMPUに対する期待はこれまで以上に高まっていると言ってよい。今年後半にPalomino/Morganコアを武器に大攻勢にでて、さらにはそこで築いたリードをx86-64に対応したClaw/SledgeHammerでさらに広げていくというあたりがAMDのMPU戦略だと考えられる。そんなストーリーも、これらを予定通り出荷できるのであれば、あながち夢物語では無くなってくるだろう。

●会場で展示されていたSiS730S搭載マザーボード

SiS730S搭載マザーボードも多数展示された SiSはMicro ATXのボードを2枚展示。レイアウトは若干異なる

ASUSのボード。下部にライザースロットのようなものがついている USIはAGPスロット無しのボードを展示。チップの型番は変わらずSiS730Sだった FASTFAMEは唯一ATXフォームファクタのボードを展示

ECS GIGABYTE GVC SOYO


SiS301カードデモ
 またSiSにより、SiS630搭載ボードに、テレビ出力/デジタル液晶ディスプレイ(DFP)/セカンダリのCRTの機能を備えたSiS301搭載カードを追加したデモが行なわれていた。

□SiSのホームページ(英文)
http://www.sis.com.tw/
□SiS730S製品情報(英文)
http://www.sis.com.tw/products/slota/730s.htm

(2000年8月31日)

[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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