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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Intelがボックス売りPentium 4にRDRAMをバンドルして値引き販売

●Pentium 4にRDRAMをくっつけて売るワケ

 前回のコラムで、IntelのPentium 4(Willamette:ウイラメット)救命策「RDRAM Credit Program」についてレポートしたが、実はボックス売りのPentium 4でもIntelは類似のプログラムを用意するらしい。Intelは、大手OEMに対しては、Pentium 4システムに必要となるRDRAMによるコストアップ(SDRAMとの差額)をある程度補填できる金額分、Pentium 4を値引き販売すると言われている。しかし、Pentium 4をボックス売りでも同様に値引きしたら、IntelのCPUの価格体系がガタガタに崩れてしまう。そこで、ボックス売りPentium 4では、IntelはなんとRIMM(RDRAMのメモリモジュール)をバンドルして提供することにしたそうだ。

 複数の業界関係者によると、Intelは、ボックス売りPentium 4では128MB分のRIMMをバンドルして提供するソリューションを用意、そのパッケージで値引きを行なうらしい。具体的な金額はわからないが、Pentium 4+RIMMの市場価格から、大手OEMに提供するPentium 4の値引き額と同程度のプライスカットを行なうようだ。そうしないと、大手OEMとの格差ができてしまうので、これは当然の措置と言えるだろう。しかし、この措置は、Pentium 4に目に見えるカタチでRDRAMがくっついて売られることで、市場でのRDRAMのバッドイメージをますます高めてしまうような気がする。また、メモリモジュールベンダーにしてみれば、いやな話だろう。

●後退したPentium 4への移行

 では、こうした慌ただしいIntelの動きで、今後のIntelデスクトップCPUの移行はどう変わったかを推測してみよう。PC Watchサーバーに「IntelデスクトップCPUの移行推測図」をアップしたのでご覧いただきたい。Pentium 4の普及のカーブは明らかに後退していると思われる。

 そもそも、ラウンチの時期も9月中旬のウワサがあり、Intel自身もOEMに9月から10月と期待を持たせる説明していたのが、今では10月下旬になったと言われている。出荷の数量も、当初IntelがOEMにアナウンスしていたより少ないという業界関係者もいる。

 それから、ボリュームゾーンへ持って行くための第2世代チップセットの計画も、1四半期ほど後ろへずれたと思われる。Intelは、予定通り最初のPentium 4を「Intel 850(Tehama:テハマ)」チップセットで立ち上げる。しかし、来年提供する第2世代Pentium 4チップセットは、RDRAMベースの「Tulloch(トゥルシュ)」からSDRAMベースの「Brookdale(ブルックデール)」へと変わった。その結果、第2世代チップセットのリリース時期も第2四半期中から第3四半期中に変わったようだ。つまり、Brookdaleとの組み合わせでPentium 4パソコンが普及価格帯に降りてくるとしても、それは来年秋モデルあたりからになるということだ。

 ちなみに、最初のPentium 4は423ピンのPGAパッケージ(OLGA+Interposer)で登場するが、Brookdaleはこの「Willamette-423」をサポートしない。その代わり、478ピン(以前は479ピンと伝えられていた)のμPGAパッケージに対応するという。478ピンμPGAではWillamette-478だけでなく、「0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)」に対応する。Pentium 4の本命はこのNorthwoodで、0.13μmへのFabの移行が進むにつれてPentium 4の生産量は急激に拡大すると思われる。Northwoodでは、CPUの駆動電圧が1.6Vから1.3V程度へと下がると見られるため、消費電力は大幅(同クロックなら66%に)に下がり、かなり設計は容易になるだろう。Intelは、Northwoodのアーリーサンプルをかなり早い時点からOEMに流すつもりらしい。Northwoodでは、L2キャッシュ容量もWillametteの2倍の512KBになる模様だ。

 ちなみに、このμPGAパッケージは、FC-PGA2とIntelが呼ぶ、フリップチップ実装のFC-PGAにIHS(Integrated Heat Spreader)を載せた新世代のパッケージになる。IHSのために、放熱効率がアップすると言われている。また、パッケージサイズも53×53mmの423ピンPGAよりかなり小さい35mm×35mmになると言われる。PGAのピンピッチもかなり狭まり、電気的なパフォーマンスが上がると言われている。

●Intelの間隙を突いてAMDが価格攻勢に出る

 こうしてCPUの移行を眺めて見ると、Intelの苦境がよくわかる。Pentium 4がハイエンドに張り付いている来年第3四半期までの間、IntelはAthlonの高クロック品に対抗する有効な手段を持たないのだ。Intelは、今年の終わりから、新しい0.18μm版Pentium IIIである「Coppermine-T(カッパーマインT)」を投入すると言われているが、これは現在のPentium III(Coppermine)と比べてそれほど性能がアップしない。基本的にはCoppermineのFSB(フロントサイドバス)を、次世代の「0.13μm版Pentium III(Tualatin:テュアラティン)」と共通の新FSBに変えた製品だ。性能的には、来年後半でも1.2GHz止まりだと思われる。となると、年内に1.3GHzを超えようというAthlonが、ミッドレンジPCの価格帯で高クロック化を進めると、Intelは来年前半は対抗できなくなってしまう。

 そして、もちろんAMDもこれを理解している。AMDは、Pentium 4とPentium IIIの隙間を突くために、Athlon/Duronで徹底的な価格攻勢に出るらしい。これまで、AMDはAthlonの価格を、同クロックのPentium IIIとさほど変わらない価格につけてきた。しかし、AMDのOEMメーカーによると、AMDはこの夏からこの価格戦略を変更、同クロックのIntel CPUよりワンランク下の価格にAthlonを引き下げると伝えてきたという。つまり、同じ価格なら、Pentium IIIより100MHzくらいクロックが上のAthlonが買えるように価格を設定するというのだ。

 さらに、AMDはCPUの出荷個数を大幅に増やすつもりらしい。PC業界関係者によると、AMDは今年第4四半期に1,000万個のCPUを出荷する計画でいるという。これは、昨年と比べると約2倍の生産個数になる。これで、Athlonのアキレス腱であるチップセットがなんとかなってくれば、メインストリームデスクトップPCの市場はこれまで以上にAMDに浸食されるだろう。だからこそ、Intelは何がなんでもPentium 4の離陸と、普及価格帯への浸透を成功させなければならないのだ。

 そういう意味ではDuronに対抗しなければならないバリューデスクトップも苦しい。ここでは、Intelはグラフィックス/チップセット統合型Celeron「Timna(ティムナ)」を投入する。Timnaは当面はMTHを使いPC100 SDRAMサポートで、グラフィックスエンジンを拡張した来年後半のTimna+でPC133サポートになると見られる。しかし、Timnaは、Intelが価格的に魅力を出さないと、成功はできないだろう。

 もっとも、Intelは2002年に新しい統合CPUを出す予定で、統合CPUへの本格的な移行はそのフェイズになるかもしれない。この次世代統合CPUがTualatinベースになれば、かなり低コストで低放熱のCPUが実現できるはずだ。だが、もしIntelがNorthwoodをベースにしたら、再び扱いにくいCPUになってしまうかもしれない。

 ちなみに、Intelは2002年にこのほか2つのチップセットの計画を持っている。Pentium 4向けにRDRAMベースとSDRAMベースの2種類の次々世代チップセットを提供すると、OEMメーカーには説明したと言われる。もっとも、来年の計画ですらどんどん変わっているこの状況で、2002年の計画の話はあまり意味がないだろう。PC Watchサーバーのチップセットロードマップ図も、このあたりの最新情報も反映して再び更新した。

●AlmadorはSDRAMとRDRAMの両方をサポート

 それから、来年のPentium III向けグラフィックス統合チップセット「Almador(アマドール)」について、面白い情報がある。メインメモリでSDRAMをサポートするAlmadorに、RDRAMインターフェイスがついているというのだ。詳細はまだわからないが、どうやらビデオメモリとしてRDRAMを外付けできるようになっているらしい。OEM関係者によると、これは「Media-RIMM(MRIMM)」と呼ばれており、今のRIMMとは多少スペックが異なるという。

 となると、Almadorは、内部グラフィックスコアで共有メモリを使う構成と、内部グラフィックスコアでMRIMMをビデオメモリに使う構成、そして外付けAGP 4Xを使う構成の3つの使うことができることになる。Almadorのグラフィックスコアは、内部256ビットの266MHz駆動になっていると言われ、Intel 815と比べてかなり性能がアップしていると見られている。そのため、MRIMMを使えばメモリ帯域の制約は薄れるのでかなりの性能は発揮できると思われる。しかし、ここでも問題はこれがRDRAMだということだ。RDRAMはピン数を抑えながらメモリ帯域を確保するリーズナブルなソリューションだが、Almadorが登場する来春までに、RDRAMの価格がどこまで下がっているかが問題だ。

 それから、AlmadorやBrookdaleから組み合わせられる新しいICH(I/O Controller Hub)チップ「ICH3」に複数のバージョンがあることもわかった。どうやら、USB2.0のサポートバージョンと非サポートバージョンがあるらしい。これは、価格戦略のためなのか、USB2.0のサポートが間に合わないためなのか、そのあたりはまだわからない。

 最後に間違いの訂正。昨日のコラムに「Pentium 4は450gの重いヒートシンク&ファンを載せ、それを50Gの圧力でマザーボードに圧着しなければならないという」と書いたが、これは正確な記述ではなかった。450g×50GとIntelのプレゼンテーションにあるのは確かだが、これは、おそらく対衝撃の荷重のガイドラインを示していると思われる。ここでおわびしておきたい。しかし、Intelが22.5kgに耐えるようにと指示しているのも、Intelがマザーボードの仕様で細かく指示を出しているのも確かだ。

□関連記事
【8月17日】後藤弘茂のWeekly海外ニュース
IntelがPentium 4搭載機にRDRAM代を補助 --窮余の策でPentium 4立ち上げに臨む
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000817/kaigai01.htm
IntelデスクトップCPUの移行推測図
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/intel/desktop.htm
Intelチップセットロードマップ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/intel/chipmap.htm


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(2000年8月18日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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