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塩田紳二のSan Jose LinuxWorld Conference & Expoレポート

San Jose Convention Center
会期:8月14日~17日(現地時間)

会場:San Jose Convention Center


 LinuxWorld Conference & Expoが、米サンノゼで開催されている。このイベントは年2回の開催で、今年は3月のニューヨークに続くものだ。シリコンバレーでの開催のため、来場者も技術系の人が多い。なお、今回は日程が「お盆」にぶつかったため、日本からの出展者や参加者にはかなり不評である。

 昨年春のLinuxWorldに予想以上の来場者が来たせいか、このところLinux World Expoは拡大基調にある。ニューヨークでの開催もそうだが、来年は、ニューヨークとサンフランシスコでも開催するという。


●基調講演がMichael Dell!?

基調講演を勤めたMichael Dell
 さて、今回の基調講演は、Convention Center内のホールではなく、向かい側にあるCivic Auditoriumで行なわれた。2階席もありホールよりも広いが、観客は暑い屋外で待たねばならなかった。

 初日の基調講演は、Dell Computerの創業者にしてCEOのMichael Dell。同社は、サーバーにも力を入れており、シェアも上り調子。

 しかし、Linuxとの関わりあいは、BTOのOSの選択肢にLinuxを入れている程度で、直接的なものではない。ハードメーカーとしても、技術でリードするというよりは「顧客満足度ナンバーワン」というスタンスの企業だ。実際、Q&Aでも、「IBMなどは、技術をLinuxコミュニティに寄贈しているが、Dellはなにを提供するのか?」という質問がでていた。

 業界の著名人ではあるものの、証券アナリストや一般ユーザーの多いニューヨークならいざしらず、シリコンバレーで自社戦略の話をされても困ってしまう。同業者はともかく、Linuxコミュニティに関心のある話題とはいえない。初日のキーノートスピーカーとしては、妥当な人選とは思えなかった。


●Linus Tarvals Community AwardはDebianに

DebianのメンバーとLinus Tarvals
 基調講演の直後、Linuxの開発者Linus Torvalsが登場。

 恒例のLinus Tarvals Community Awardの授与式だ。今年の受賞は、ユーザーベース組織でLinuxのディストリビューションを行なうDebianプロジェクト。賞金はなんと25,000ドル(約270万円)だ。


●Linux業界版カルトクイズで盛り上がり

Linux Geek Bowlの優勝者には、ガラス製のペンギントロフィーが贈られた

 もっとも人気があったイベントは、午後に開かれたLinux Geek Bowl。簡単にいえば、Linux業界版カルトクイズである。VA LinuxのCEOのLarry AugustinやRedHatのBob Young、CaldreaのRansom Loveなどのメンバーが、2組に分かれてクイズ合戦だ。

 質問は、Linux系だけでなく、オタッキーな問題(Star Treckの放送されなかったパイロット版のタイトルは?)もあり、かなり会場は盛り上がっていた。

 さらにCNNfn(CNNの金融関係のチャンネル)のN.E.W.Showのアンカー(日本でいうキャスター)Patricia Sabdgeを招いて、Executive Roundtableが開かれた、先ほどのメンバーに加え、SuSEのVolker Wiegandなど6名が出席したが、この司会者、Linuxについてほとんど何も知らない。結局、Linuxを知らないこの司会者に業界著名人がよってたかって、説明するという形になってしまった。競合関係にある会社もあり、CEOが激論を戦わせると思っていたが、なんか肩すかしを食わされたよう。

 Linux Worldは、Linuxというコミュニティのお祭り的な部分があったし、今でも残っているが、主催者側がLinuxの一般化を目指してか、ごく当たり前のイベントにしたがっている印象だ。そろそろイベント自体が曲がり角にきたような気がする。


●Itaniumサーバーがてんこ盛りの展示会場

Intelブースに展示されていたデュアルItaniumマシン。筐体下側左側がCPU(と放熱器)。右側はCPUの電源ユニット
 展示会場は大幅に拡張され、多数の企業が出展している。とくに、サーバー系の主要メーカーは、軒並みItanium 搭載のサーバーを展示している。もしかしたら、世界中にあるItaniumサーバーのほとんどは、ここにあるんじゃないかと思うほどだ。来週、同じ会場でIDF(Intel Developer's Forum)も開催されるので、みんなマシンを持ってきているのだ。

 これに対抗してAMDは、今回、次世代の64bitCPUであるHammerシリーズでLinuxをサポートする方針を明確に打ち出した。RedHatなどの主要な開発者からもサポートコメントもとり、来月にはエミュレーターを公開する予定という。

 Intelが多数のItaniumマシンを展示し、翌週には同じ会場でIDFを開催するLinux業界全体にItaniumを印象づける作戦なのに対し、AMDは(実物がないこともあって)エミュレーターの公開を予告するなど、よりLinuxコミュニティに向けたアピールをする。両社にとって、Linux Worldは来週のIDFの前哨戦でもあるのだ。

 明日は会場を中心に、AMDについてもう少し詳しい話をお届けする予定だ。

□LinuxWorldのホームページ(英文)
http://www.linuxworldexpo.com/

(2000年8月17日)

[Reported by 塩田紳二]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp