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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Intelがチップセットロードマップを大きく変更
~RDRAMはハイエンドデスクトップとWSだけに後退~


●BrookdaleはDDR SDRAMをサポートか?

 先週お伝えたしたとおり、IntelはPentium 4チップセット戦略を組み替え、RDRAMベースの第2世代チップセット「Tulloch(トゥルシュ)」をキャンセル、SDRAMベースの新チップセット「Brookdale(ブルックデイル)」をロードマップに登場させた。Intelは、ここ2~3週間で主な顧客を回り、Brookdaleの説明を行なったようだ。そこで、OEMベンダーやPC/メモリ業界関係者からの情報を元に、この変化を反映したチップセットの推定ロードマップ図を作った。(関連記事参照)

 こうして図にしてみると、IntelがRDRAMの位置を大きく後退させたことがはっきりわかる。今回の説明では、Intelは、RDRAMをハイエンドデスクトップのためのテクノロジと位置づけ、メインストリームデスクトップ全体をRDRAMにシフトさせるという言い方はしなかったそうだ。それどころか、2002年にもSDRAM系のPentium 4チップセットをメインストリームPC向けに出すと明言したという。これは、SDRAM→RDRAMというシフトを事実上諦めたことを意味している。

 また、最大の疑問であるDDR SDRAMサポートに関しても、一部の顧客に対しては積極的に評価していると説明したという。ある関係者によると、Intelは「BrookdaleでDDR SDRAMをサポートすると言ってもいい」と発言したそうだ。つまり、メモリインターフェイスをSDRAM/DDR SDRAM互換で設計するということらしい。また別な情報では、DDR SDRAMが本当に量産PC向けの技術として採用できるかどうかを、メモリ業界とともに評価していると説明したという。評価の結果は、10月頃にもっと明確な形でOEMベンダーに伝えるそうだ。


●DDR SDRAMに関して異常に神経質なIntel

 興味深いのは、このBrookdaleとDDR SDRAMの説明にあたって、IntelがOEMメーカーに情報の漏洩に気をつけるように厳重に申し渡したことだ。実際、今回はなかなか情報が集まらなかった。また、DDR SDRAMに関しては、Intelの説明から、積極的ではない印象を受けた顧客もいる。Intelの説明自体も、相手によってまちまちらしい。

 このあたりから推測できるのは、IntelがDDR SDRAMに関して、かなり神経質/慎重になっているということだ。つまり、DDR SDRAMサポートに積極的という情報が流れてはまずいと警戒しているらしい。

 その理由として、まず考えられるのはRambusとの関係だ。報道されているように、IntelがRambusとの契約で2002年いっぱいまで他の広帯域メモリ技術(1GB/secを越える)を採用できないとなると、DDR SDRAMサポートの前にその契約を変更しなければならないことになる。まだ真相はわからないが、この調子だと、IntelはDDR SDRAMサポートをするとしても、ギリギリまで発表しないだろう。


●サーバーはDDR SDRAMに

 RDRAMに絡むチップセット戦略の変更は、他にもいたるところに見える。もっとも顕著なのは、サーバーのチップセットからRDRAMベースのIntel 860(Colusa:コルサ)が消えたことだ。Intelは、以前はデュアルプロセッサのエントリサーバーではIntel 860チップセットを使う予定でいた。しかし、しばらく前から、サーバーではIntel 860を使わない方針に切り替わった。その代わり、IntelはPentium 4サーバーには、サーバー向けチップセットメーカーであるServerworksのチップセットを推奨する。IntelとServerworksが決裂したというウワサもあったが、現状では両社は協力関係にあるらしい。

 ServerworksのチップセットはDDR SDRAMを使うと見られる。そのため、Pentium 4サーバーはSDRAM/DDR SDRAM系になり、RDRAMはこのエリアには当面は浸透しないことになる。実際には、デスクトップPCやワークステーションとほぼ同じような構成でエントリサーバーを投入するメーカーも出るため、Pentium 4+Intel 860/850+RDRAMのサーバーも登場するが、主流はSDRAM/DDR SDRAMになるだろう。

 Intelのサーバー向けチップセットには、次世代IA-64プロセッサ「McKinley(マッキンリ)」とPentium 4の両方に対応するバージョンがあるIntel 870も来年末に控えている。i870は、インターフェイス自体はRDRAM系と見られていたが、これもどうなってくるかわからない。

 DDR SDRAMに傾いたサーバーに対して、IntelはワークステーションだけはRDRAMを強くプッシュする。これは、Pentium 4の性能をフルに活かしたい反面、メモリ搭載量はサーバーほど求めないというミッドレンジ以下のワークステーションでは、RDRAMがまだ成功を見込めるからだ。Intel 860はワークステーションで使われることになる。

 こうしたチップセット戦略の変更は、Pentium 4のスケジュールにも影響を与えているようだ。Pentium 4のサーバー&ワークステーション版は「Foster(フォスタ)」だが、ワークステーション版はPC向けにそれほど遅れずに登場するのに対して、サーバー版はデュアルプロセッサタイプが来年第2四半期、4Way以上のマルチプロセッサタイプが来年第3四半期頃と、当初の予定よりかなり遅れる。これは、チップセットのスケジュールに合わせるためだと思われる。


●モバイルにもグラフィックス統合型CPU「Timna」を投入

 このほか、新しい情報としては、バリューPC向けの新チップセット「Intel 810E2」が来年登場する。これは、Intel 810Eに、新しいICH(I/O Controller Hub)チップであるICH2を組み合わせたものだという。Intel 815にはICH2を組み合わせたIntel 815Eがあるのに、Intel 810系にはICH2が提供されていない。そのため、現状では、Ultra ATA/100やLAN統合といったフィーチャを欲しいと思ったら、バカ高いIntel 815Eを選ばなければならなかった。Intel 810E2は、そのギャップを埋めて、安価にICH2を搭載するソリューションを提供するものだと言われる。このほか、図では途切れてしまっているが、IntelはIntel 440BXチップセットも、結局継続して供給することを約束したという。

 また、モバイルもチップセットがかなり変わった。最大の変化は、モバイル版のグラフィックス統合型CPU「Timna(ティムナ)」が加わったことだ。OEMメーカーによると、ローエンドノートPC向けにIntelは「Mobile Timna+」と呼ばれる、Timnaのモバイル版を、来年の早い時期に投入するという。TimnaのメモリインターフェイスはRDRAMだが、デスクトップ版Timna同様に、MTH(Memory Translator Hub)を使いSDRAMベースで提供されると見られる。また、モバイルでは「0.13μm版Pentium III(Tualatin:テュアラティン)」が来年半ばに投入されるため、Tualatin対応チップセットのモバイル版「Almador(アマドール)」も提供されるという。

□関連記事
Intel チップセットロードマップ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/intel/chipmap.htm


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(2000年8月11日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp