会場:NewYork Jacob K. Javits Convention Center
■PowerMac G4 Cubeは、ギミック満載で注目度バツグン
Apple Computerがこれまでこだわり続けてきた2×2のマトリックスによる製品カテゴリ。これを自ら打ち破り、第5のカテゴリに位置する製品として発表されたのが「PowerMac G4 Cube」(G4 Cube)である。基調講演の終了にあわせて公開されたアップルブースでは、数十台に及ぶG4 Cubeのデモンストレーションが行なわれていた。それらは同時に発表された3種類のディスプレイのいずれかが接続され、すべての機器に多用されているクリアパーツと下からのライトアップで、効果的な演出がなされていた。
G4 Cubeは、ホワイトシルバーの直方体をクリアパーツで覆い、脚部となるクリアパーツが他辺より長くなっているため、遠目には宙に浮かんでいるように見えるのが特徴。コード類をうまく処理する工夫で、不思議なオブジェという印象も与えることができそうだ。唯一アップルのロゴが、この物体がコンピュータであることを主張している。
詳細なスペックや価格は別記事を参照していただくことにして、スペックからではわかりにくい部分をチェックしてみた。まずiMacに続いて採用されたファンレス設計の部分。残念ながら展示会場内は騒然としているため、ファンレスによるノイズの少なさを体験することはできない。しかし、ファンレスによる放熱の具合を気にしてか、上部に手をかざす来場者も少なくなかった。実際に試してみたが、やや暖かいかなと感じる程度でほとんど気にならない。モニタを内蔵しているiMacの上部にある放熱口のほうがよほど暖かい。iMacを使っていて放熱の不具合による熱暴走などは発生したことはないので、それより発熱の少ないG4 Cubeでも問題はないだろう。G4 Cubeの放熱は、暖かい空気が上への気流を作り出すことを利用しており、上面と底面の双方に給排気口を配置している。そのため、横置きなどはできないので気を付けよう(もっとも、せっかくのデザインがみっともなくなるので試す人も少ないと思うが)。
上面にある電源スイッチにはタッチセンサーが採用されている。電源ケーブルをつなぐと、スタンバイ状態になり、一度触れると起動する。起動後はスリープスイッチとしての役割を果たす。こうした操作のたびにほのかにスイッチ部分が点灯するのも、アップルならではこだわりといえるだろう。この電源スイッチをのぞくと、すべてのインターフェイスやスイッチは底面に集中している。インタラプトスイッチや、リセットスイッチも底面にある。
G4 Cubeの工業製品としての完成度やデザインは素晴らしいと素直に思える。既存のMacユーザーも歓迎することは間違いない。一般ユーザーの注目度もバツグンだろう。しかし、販売面から見ると、ターゲットとなる購買層が見えてこないのは気がかりだ。同時に発表されたPowerMac G4が、マルチプロセッサとギガビットイーサネットを標準仕様にして、プロ向けの製品として特化していくことで、G4 CubeはG4を搭載するスタンダードモデルという位置づけなのだろうが、ここに第5のカテゴリの危うさがある。本体のみで19万8,000円からという価格は、10万円を切ったiMacのように手軽に買えるというものでもない。拡張性の点からはDTPやグラフィックデザインにフル活用するプロフェッショナルにはそれほど向かない。既存のMacから買い換えを行なうコアユーザー(たぶん、筆者もそのひとりになる)以外ではどういった層がターゲットになるのか、成功といえるデビューに続いて、適切な販売戦略が今後のカギとなるだろう。
■お色直しのiMacは、カラーとスペックの組み合わせで全8種
人気色ということで唯一前モデルから残ったGraphiteカラーと並び、Special Editoinに採用された「Snow」。これまでのiMacのなかではもっとも不透明なカラーで、ユーザーの好き嫌いはハッキリと分かれそう |
お色直しともいうべきマイナーチェンジを受けたiMacは、ブースを横断する形で展示されている。ひとつのテーブルに5色が揃うのではなく、GraphiteとSnowのSpecial Editionだけが並んだテーブルと、他の3色が並んだテーブルとにふたつずつ分けられている。それぞれにはDVカメラが接続され、iMovie2を中心としたデモンストレーションが繰り広げられた。
今回のiMacは、グレードが上がるごとに選べるカラーが増えるという変則的なモデル構成をとっている。また、Special Editionが初めて登場した前回以上にスペックの細分化も進んでいる。グレードとしては4段階だが。カラーとスペックを組み合わせると、全部で8種類の選択肢があることになる。うがった見方をすれば、いずれ訪れるであろうiMacの大胆なモデルチェンジを見据え、ユーザーの嗜好やニーズ、販売傾向のチェックに結びつけようとしているのかも知れない。
iMac、iMac DV、iMac DV+で選択できるカラー「Indigo」 | iMac DV、iMac DV+で選択できるカラー「Ruby」 | iMac DV+でのみ選択できるカラー「Sage」 |
■マルチプロセッサ搭載となったPowerMac G4
PowerMac G4は、最廉価のモデルこそシングルプロセッサだが、標準仕様としてはマルチプロセッサモデルとして位置付けられたと言っていいだろう。見過ごされがちだが、Apple Cinema Displayも今回の新製品だ。'99年9月に発表された製品では、デジタルRGBケーブルと、USBケーブル、電源ケーブルがそれぞれ分かれていたが、他の新製品に合わせる形で統合ケーブルにリニューアルされての発表になった。それ以外の部分は基本的に従来の仕様を踏襲している。残念ながら、15インチモデルで採用されたタッチセンサー式のスイッチ機能は含まれていない。
□Appleのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□Macworld Conference&Expoのホームページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
□関連記事
【7月20日】
Macworld Conference & Expo / NewYork現地レポート
スティーブ・ジョブズ基調講演で新ハードを公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000720/macw02.htm
【7月21日】アップル、新型Macintoshを国内でも発売
―Cubeは198,000円で8月中旬から、iMacは98,000円より28日から
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000721/apple.htm
(2000年7月21日)
[Reported by 矢作 晃]