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BURN-Proof対応ATAPI CD-RWドライブ
「プレクスター PX-W1210TA/BS」レポート


 三洋電機が開発した「BURN-Proof」は、CD-R/RWドライブの「バッファーアンダーランエラー」を防止する画期的な技術で、OSのフリーズ・電源遮断などのない限り基本的に書き込みに失敗することはなくなった。すでに発表から半年が過ぎ多くの方がご存じの事だろう。技術的な詳細は省略するが、概容としては「データ転送が間に合わなかったら書き込みを一時中断し、データが再び貯まってきたところで再び書き込みを再開する」というものだ。

ライオンが目印のパッケージ。箱の大きさも前モデルの1.5倍近い

 すでに、三洋電機からSCSI版のCRD-BP2(12/4/32倍速:CD-R書き込み、CD-RW書き換え、CD-ROM読み込み、以下同、バッファ2MB)が出荷されており、国内ではそのOEM品のアイ・オー・データ機器「CDRW-SX124BG、CDRW-SB124BG」、三菱化学メディアの「MKRWT4BP」が発売され、秋葉原など一部にバルク品も出回っている。

 しかし、上記の製品はすべてSCSIインターフェイス。三洋電機のATAPIドライブCRD-BP900P(12/4/32倍速、バッファ2MB)も、2000年4月の出荷予定とされていたが、まだ姿を見せておらず、ATAPIインターフェイスの製品の登場が待たれていた。

 そんな状況で登場したのが、「PX-W1210TA/BS」だ。CD-Rのトップブランドとも言える「プレクスター」から発売されるBURN-Proof対応ATAPIドライブという魅力に加え、4~10倍対応のHigh Speed CD-RW対応、デジタルオーディオ出力端子(S/PDIF)端子の装備、そして4万円を切る店頭価格など、すべての面で注目すべき製品となっている。

BURN-Proof対応CD-RWドライブPX-W1210TA/BS 一番上がCRD-BP2、2番目がPX-W1210TA/BS PX-W1210TA/BSのリアパネル。左からデジタルオーディオ端子、アナログオーディオ端子、設定ジャンパ、IDE40ピンインタフェース、4ピン電源コネクタ


●書き込み品質テスト

 CD-Rの命は「記録」の精度だ。同じ条件下で同一メディアを使用して、C1/C2エラーの数を計測し、ドライブの精度とした。

 比較は、三洋電機のメディア診断ソフト「UM-Doctor Pro Ver1.01」にて測定を行なった。UM-Doctor Proは、メディアのC1/C2エラーを測定するソフトで、対応機種はCRD-RW2/BP2/BP900Pでのみとされている。なお、メディアのエラーレートに関してはすべてのメディアが一般的な用途において十二分に問題のないレベルであった。

 三井化学の700MBメディアでテストしたところ、12倍速とは思えないほどPX-W1210TA/BSは非常に低エラーレートを示した。


●BURN-Proofテスト

 最近のマシンスペックでは、普通の方法ではバッファーアンダーランを発生をさせるのは難しい。そこで、低速な転送方法として10Base-T Ethernetを経由したPCのファイルを直接12倍速でCD-Rに書き込むテストを行なった。

 この方法では、従来のCD-Rドライブでは転送が間に合わなくなったところでバッファアンダーランエラーが発生し、書き込みに失敗する。しかし、PX-W1210TA/BSでは2~3秒おきにBURN-Proofが動作しながら、無事に書き込みに成功した。なお、PX-W1210TA/BSでは、BURN-Proof動作時は、書き込み中のオレンジ色のLED点滅がいったんグリーンとなり、再び書き込みが再開されるとオレンジの点滅となる。ちなみに動作音は静かでCPUファンの音より小さいぐらいだ。

 また、BURN-Proofを多発させてテスト記録したメディアのエラーを、同様にUM-Doctor Pro Ver1.01で測定してみた。すると、エラーが増える傾向が現われたが、データ用CDでは全く問題にならない程度だった。


●HS CD-RWはここまで早い

 国内では普及してないCD-RWだが、簡単に仕様を振り返ってみよう。現在、HS(High Speed) CD-RWを含めてCD-RWには3つの仕様がある。

【表1:CD-RWドライブの3つの仕様】
Orange Book Part III対応記録速度代表的なドライブ備考
2倍速Volume 1、Ver.1.0x2のみリコーMP6200もっとも最初のCD-RWで、リコーが開発した技術を元に規定が策定されている
4倍速Volume 1、Ver.2.0x1、x2、x4ヤマハCRW4424、リコーMP7060、松下寿電子CW7585Ver1.0の上位互換で、4倍速に対応するとともに、等倍にも新たに対応した現在主流の規格
High SpeedVolume 2、Ver.1.0x4、x8、x10(従来のx4,x2ではCAVのみだったが)CLVにも対応 プレクスターPX-W1210TA、ヤマハCRW8824、リコーMP7120A高速化のかわりに、従来の4倍速までのCD-RWドライブとは、メディア互換性が無くなった

【表2:ドライブとメディアの書き込み速度】
メディア
2倍速4倍速HS CD-RW
書き込み速度x2x1x2x4x4x8x10
ドライブ2倍速×××××
4倍速×××
HS CD-RW

 PX-W1210TAを初めとするHS CD-RWドライブは、表2に示したとおり従来の2/4倍速のメディアに加え、HS CD-RWメディアも記録(書き換え)可能だ。逆にHS CD-RWメディアは、従来の2/4倍速のCD-RWドライブでは記録できない。ただし、記録したHS CD-RWメディアは従来のCD-RWドライブを含め、CD-RWメディアが読み出しできるマルチリード対応のCD/DVD-ROMドライブで読み出しできる。

 PX-W1210TA/BSを使い、2倍速、4倍速、HS CD-RW(10倍速)メディアにそれぞれ約74分のデータを記録し、その後メディアの完全消去のテストを行なった。

 結果として、2倍速、4倍速、10倍速と速度が上がるにつれて、所用時間はぼぼ半分ずつに短縮されている。これで、かなり快適にCD-RWの記録と消去が行なえるようになったことは間違いない。


●読み込み速度

 CDSPEED99最新版を使用し、データ/音楽CDそれぞれの読み出しを測定したところ、読み出し速度は、データCDでは最大で32倍速、音楽CDでは最大24倍速となった。音楽CDの吸い出しの品質を示すDAE(デジタルオーディオ抽出)も全くエラーがなく、実際に音楽CDを吸い出したデータにもノイズなどは入っていなかった。

データCD 音楽CD


●対応ライティングソフト

 PX-W1210TA/BSには、ビーエイチエーのB's Recoder GOLD Ver1.68と、パケットライトソフトB's CLiP Ver1.54が付属している。共に現時点での最新版だ。PDFのマニュアルによればVer1.67で東芝のDVD-ROM一体型SD-R1002、ヤマハCRW8824に新規対応し、Ver1.68でPX-W1210TAに対応している。

B's CLiP Page設定 対応ドライブ一覧

 また、付属のソフト以外では、アプリックスのWinCDRは5.01fで正式対応済み、nero英語版のV5.0.0.9でも正常に認識され、BURN-Proofによる書き込みに成功した。ソフトの選択肢で不自由をすることはないだろう。

WinCDR 5.01f nero英語版 V5.0.0.9


●HS CD-RWメディアが付属

 従来の、プレクスターのリテール品には太陽誘電のCDR-74TY CD-Rメディアが付属していた。しかし、PX-W1210TA/BSには初めてプレクスターオリジナルのHS CD-RWが1枚付属する。

もちろんBURN-Proof対応だ
 プレクスターオリジナルのライティングソフト「Plextor Manager」は、DISCDUPE2000、Audio Capture2000、MVP2000の3つから構成されている。添付されているのは、プレクスターのホームページでは公開されていない最新版のVer.1.06だ。BURN-Proofの対応などが更新内容のようだ。

 ちなみに、ライティングソフトはプレスされたCD-ROMではなく、CD-Rにレーベル印刷されたものが添付されており、出荷ぎりぎりまで開発が行なわれたことを感じさせる。

 そのほかの付属品は標準的なもので、IDEケーブル、オーディオケーブル、取り付けねじ、強制イジェクトピンなどだ。マニュアルは、初心者にもわかりやすい必要最低限の事項を記載したファーストステップも付属している。



●互換チップセットユーザーは注意が必要

 記録品質の高いBURN-Proof、高速なHS CD-RWへの対応、静粛性、高いコストパフォーマンスといいことづくめなのだが、実は何もなかったわけではない。

 テストマシンには、「AMD-751/VIA VT82C686A」を搭載したフリーウェイのAthlon用マザーボード「FW-K7VM」を使用したが、Windows 98 SEで標準インストールされるMicrosoftのIDEドライバを、VIAのサイトに公開されていた最新のIDEドライバにアップデートし、DMA転送を有効にする必要があった。

 BURN-Proofに対応した上、10倍速CD-RW書き換え速度を達成し、ドライブのレベルも非常に高いにも関わらず価格が3万円後半というのは「安い」としか言いようがない。PX-W1210TA/BSは間違いなく現在のCD-Rドライブの中で最も「買い」である。買って不満が残ることは、まずないだろう。CD-R初心者の方にとっても、予算に余裕があればぜひお勧めしたいドライブでもある。唯一、ドライブの供給面が需要に追いつくのかどうか、これだけが心配である。

【テスト環境】
CPU:AMD Athlon 500MHz
M/B:フリーウェイ FW-K7VM/MR Rev1.04
RAM:SD-RAM 128MB PC100 CL=2
HDD:Maxtor DiamondMax VL30 M31536U2(15.3GB)
VGA:ATI RageIIC AGP
LAN:プラネックスコミュニケーションズENW-8300-T(PCI、10-Base-T)
OS: Windows 98 SE


□プレクスターのホームページ
http://www.plextor.co.jp/home.html
□製品情報
http://www.plextor.co.jp/products/pxw1210ta.html
□関連記事
【5月18日】プレクスター、ATAPI対応CD-R12倍速/RW10倍速BURN-Proofドライブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000518/plextor.htm
【6月17日】新定番の勢い?BURN-Proof対応のATAPI CD-Rドライブ登場(Akiba PC Hotline!)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000617/etc_1210ta.html
□【鈴木直美のキーワード】BURN-Proof(Buffer Under RuN-Proof)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991224/key103.htm#BURN_Proof

(2000年6月23日)

[Reported by 山田暢貴]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp