同シリーズは当初、130万画素モデルからスタートし、マイナーチェンジを重ねてきたわけだが、今回ようやく200万画素級モデルへとステップアップしたわけだ。
なお、撮影はHQモードでフルオートで撮影している。
●スタイルはミュー風だが大柄な外観
この「C-900」系モデルは、いまもコストパフォーマンスの高さと、コンパクトカメラ“ミュー”風デザインで人気の高い系列だ。
それが今回211万画素化されたわけだが、正直なところ「また、このボディーか……」という印象も強い。なにしろ、話題のキヤノン「IXY DIGITAL」(2倍ズーム機)が発売されて間もない時期だけに、ユーザー側としても、コンパクト機の二大巨頭である「IXY」VS「μ(ミュー)」のデジタル版対決を期待していた部分もある。
デザイン的にはライバルといえなくもないが、サイズは、ふた回り以上も違う。ズームが2倍と3倍という違いもあり、レンズの明るさも異なる両機種ではあるが、それでもこの大きさは結構気になるところ。
もちろん、同じボディやレンズを共用しているからこそ、コストダウンが図れるというメリット(メーカーの論理?)はあるにせよ、「ここまで使い回すか」という印象の方が強く、このボディはこれを最後にして欲しいと思う。
もっとも、実際に手にしてみると、見た目ほど大きな感じはせず、ホールド感も比較的良好。実用機として割り切れば、これでも十分に許容範囲なのだが、それでもやや魅力薄であることに変わりはない。また、重さも270gと重く、手にするとズッシリとした重量感を感じる。携帯性は今ひとつといえるだろう。
屋外撮影 | |
●分かりやすい操作性
操作性の良さでは定評のあるシリーズだけに、本機もその流れをきちんと受け継いだものになっている。
なかでも、メインスイッチ兼用のレンズバリアをスライドさせるだけで撮影OKという、コンパクトカメラ並の簡単操作を実現している点は高く評価できる。
操作部は、今春発売された「C-960ZOOM」のものを踏襲しており、使用頻度の高い、ストロボ、セルフタイマー、マクロに専用スイッチがあり、その他の設定はモニター表示と十字スイッチを組み合わせて設定するタイプとなっている。
あまり目新しい部分はないが、液晶上のメニューが日本語化されているうえ、C-960に比べ、より分かりやすいものへと進化している。また、前モデルから、スイッチOFF時の設定を記憶し、次回起動時に再生する機能が新設されたため、以前のようにメインスイッチOFFで初期設定に戻ってしまうようなこともなくなった。
ただ、大半のカメラのように、起動時に液晶モニターを自動的にONにすることはできないため、液晶ファインダー派の人にはやや使いづらい点は、そのまま引き継がれてしまった。
屋内撮影 | |
●起動・記録は軽快だが、遅い再生表示
ゲインアップ |
ISO200相当にオートゲインアップ |
記念写真をはじめとした、一般的なスナップショット中心の中堅機であれば、このレベルで十分であり、起動時間や記録待ちが問題になる時代ではなくなった感もある。
だが、再生時のコマ送りはかなり遅く、標準的なHQモードで約3秒、画質優先のSHQモードでは約6秒もかかる。特にコマ送りの最中はモニターがブラックアウトするため、一瞬、カメラが壊れたかと思うほどだ。記録側は大容量バッファを利用することで高速化できたが、再生側の遅さはいかんともしがたく、気軽に再生して楽しむ雰囲気ではない。
●IXY DIGITALやDSC-S50がライバル!?
CCDは、今年のトレンドである、1/2.7インチの211万画素タイプを採用している。同サイズのものは、既にソニー「DSC-S50」やキヤノン「IXY DIGITAL」で搭載されているが、本機はこれらのような原色系ではなく、感度や解像感の面でやや有利な補色系を搭載している。
昨年のトレンドだった、1/2インチタイプの211万画素CCDに比べると、感度やノイズ面では不利だが、本機のように1/2.7インチの130万画素CCD搭載機を、レンズなどを変えずに200万画素化するには、実に好都合なデバイスといえる。
同社の説明によると、画質は同サイズのCCD搭載機の中でもトップレベルであるとのことで、実際、今回ベータ版モデルで撮影した範囲では、実用機としては十分なレベルにある。
解像度は、200万画素機としては平均的なもので、ポストカード大程度のプリントでは不満のないレベル。もちろん、130万画素機と比較すれば、明らかにワンランク上だ。とはいえ、昨年主流だった1/2インチタイプに比べると、若干だが見劣りがする印象もある。このあたりはベータ版なので製品化までに改良されることを期待したい。
色調は比較的自然だが、それでも原色系のようなヌケのいい感じではなく、補色系特有の若干濁った色調。やはり青空のブルーや木々の緑のクリアさは、あと一息という印象だ。
また、階調の再現性は、実用十分なレベル。もちろん、広いという印象はなく、ノイズの目立ちやすいディープシャドーがドスンと黒く落ちる(落としてある)ような印象の絵作りだ。とはいえ、本機のコンセプトやポジショニングから見れば、妥当なレベルといえそうだ。
参考までに、同じ1/2.7インチ211万画素CCDを搭載したキヤノンの「IXY DIGITAL」とソニー「DSC-S50」で同じシーンをほぼ同時に撮影してみた。印象としては、「C-990ZOOM」は全体にそつなくまとまっており、なかなか自然ではあるが、パッと見たときの印象がおとなしく、この手の中堅機を購入するユーザー層がこの絵づくりを好むかどうかは疑問を感じる部分もある。
同じテーマによる比較 | |||
C-990ZOOM | キヤノン IXY DIGITAL | ソニー DSC-S50 | |
ワ イ ド 端 | |||
テ レ 端 |
●感動や楽しさの薄い、そつのない実用機
初代の「C-900ZOOM」は中堅機のはしり的なモデルだったわけだが、今回の「C-990ZOOM」はまさに2000年夏の中堅機的なポジションといえる。
だが、この中堅機の世界にも、超小型で高品位な「IXY DIGITAL」やMP3対応の「FinePix40i」のような魅力的な新世代モデルや、バッテリーの持ちを重視した実用機であるソニーの「DSC-S50」などが続々と登場してきている。そのなかで本機を見ると、211万画素3倍ズーム機とはいえ、なんとも旧態然とした印象であり、新鮮味は微塵も感じられない。
価格はオープンプライスだが、実販価格は59,800円前後を想定しているようだ。これは「IXY DIGITAL」と同価格で、IXYは2倍ズームながらもスタイリッシュで超小型。しかも、専用充電池と充電器までセットになっていることを考えるとIXYのほうにお買い得感もあるように思える。
また、同じ1/2.7インチ211万画素の3倍ズーム付きモデルである「DSC-S50」はスタミナバッテリーや回転式で自分撮りもできる液晶モニターを搭載しているかわりに、実販価格は69,800円とやや高めだ。
それらを考えるあわせると、本機は、光学3倍ズームで59,800円と、なかなか手頃なイメージもあるが、その反面、これらのモデルに見られるような、“感動”や“楽しさ”といった部分は薄く、実用性という面でも、やや中途半端な印象を受ける。
全体的に見て、この「C-990Zoom」は、大きな欠点のない実用機ではあるが、積極的にこのモデルを選びたくなるような魅力に欠ける。同時発表の「C-2100 Ultra Zoom」はそれなりにインパクトがあるモデルだっただけに、より手頃な価格帯の中堅機にも、より魅力的なモデルを早期に投入して欲しいところだ。
日中シンクロ | |
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□オリンパス光学工業のホームページ
http://www.olympus.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/C990z/c990z.html
□製品情報
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/C990z/index.html
□関連記事
【6月15日】オリンパス、手ぶれ補正機能を備えた光学10倍ズーム機ほか
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000615/olympus.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm
(2000年6月15日)
■注意■
[Reported by 山田久美夫]