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プロカメラマン山田久美夫の

フジ「FinePix40i」 超ファーストインプレッション


 富士写真フイルムから、薄型コンパクトで、しかもMP3プレイヤーとしても使える、マルチメディアデジタルカメラ「FinePix 40i」が発表された。

 このモデルは、「いつでも、どこでも、誰にでも楽しめる」を基本コンセプトとして開発された、これまでにない新スタイルのデジタルカメラだ。

 もともと、デジタルカメラは持ち歩いて撮影しなければ意味がないモノ。だが、撮影しているとき以外はただの荷物になってしまうわけで、この点は大きなジレンマだ。その意味もあって、コンパクトなモデルに人気が集中する傾向があるわけだ。

 今回の「FinePix40i」は、いつでも気軽に持ち歩ける、コンパクトなデジタルカメラでありながらも、MP3プレイヤーとしても使えるという付加機能を備えている。これなら、普段はMP3プレイヤーとして音楽を聴き、必要なときに高画質な撮影ができるため、使用頻度も自然と増えるわけだ。

 MP3機能付きデジタルカメラという発想は、海外でも昨年暮れに発表されているが、35万画素クラスの簡易なモデルであり、今回の比較対象にはならない。



【編集部注】製品の仕様については関連記事をご覧ください。なお、撮影した本体はベータ版で、特に指定のない画像は2,400×1,600ピクセル、露出/ホワイトバランスはオート、圧縮はノーマルで撮影しています。また、縦位置の画像はサムネールのみ縦位置とし、画像データは回転させていません。
 なお、オリジナルデータが2,400×1,600ピクセルのものは、画像が把握しやすいようにサムネールが2段階になっています。サムネールをクリックすると1,280×960ピクセルのサムネールが表示されます。実写データをご覧になる場合はさらにクリックしてください。



●とにかく"楽しい"新感覚モデル!

 このモデルの最大の魅力は、“楽しさ”。高機能・高画質なデジタルカメラもいいが、大きくて、ヘビーなモデルになると、持ち歩くのも億劫になり、目的がないと持ち歩かなくなるモノ。だが、これでは宝の持ち腐れだ。

 その点、本機は、薄型で携帯性のいい240万画素単焦点モデルで、しかも、普段日常的に音楽を楽しめるMP3プレイヤーとしても使える点がいい。これなら、外出時に、いつでも気軽に持ってゆくようになるし、自然とシャッターチャンスも増える。

 このようなある種の複合機は、ともすると、奇をてらった感じになりがちだが、本機は出先や移動中に楽しめるアイテムである「デジタルカメラ」と「MP3プレイヤー」を一体化することで、いつでも、どこでも、気軽に楽しめるモデルに仕上がっている。

 この方向性は、純粋な携帯カメラとしての機能を追求した「IXY DIGITAL」とベクトルは異なるが、楽しさという面では、かなりいい関係のライバル機だ。



●携帯MDプレイヤーのような薄型のスタイリング

 本機はパッと見た感じは、カメラというよりも、携帯型のMDプレイヤーといった方がいいような、薄型でややスクエアに近いスタイリングになっている。外装はアルミとマグネシウム合金によるもので、質感もなかなか良好だ。

 サイズは85.5×71mmと、「IXY DIGITAL」よりも縦長だが、厚みが28.5mmと薄手なので、かなりコンパクトな印象を受ける。また、重さは155gと軽く、電池とスマートメディアを入れても約210gで、現行の高画素機のなかでもトップレベルの軽さだ。

 また、携帯時には、レンズ全面にカバーがかかるため、ケースなしで気軽に持ち歩ける点に好感が持てる。実際に、ワイシャツの胸ポケットに入れたり、ズボンのポケットに入れて持ち歩いてみたが、若干嵩張るものの、いつも持ち歩いているMDプレイヤーとさほど変わらぬ感覚で持ち歩くことができた。



●240万画素ハニカムCCD搭載の単焦点機

 カメラ部は「FinePix4700Z」と同じ240万画素のハニカムCCDを搭載した、単焦点モデルだ。出力解像度は2,400×1,600ピクセル(432万画素相当)が標準設定だが、1,280×960ピクセルや640×480ピクセルモードにも変更できる。

 レンズは単焦点タイプで、35mmカメラ換算で36mm相当とややワイド気味だ。また、1280×960ピクセル時には、約2倍(正確には1.875倍)、640×480ピクセル時には約4倍(3.75倍)のデジタルズームが利用できる。しかも、操作はボディー背面上部にあるズームレバーでできるため、感覚的には光学ズームで撮影しているような感覚だ。もちろん、光学ファインダーには反映されないため、液晶ファインダーでの撮影になるが、これは結構便利。

 スナップ的な用途がメインであれば、高画質が必要な大人数の記念写真などは、2,400×1,600ピクセルモードで撮影し、普段は1,280×960ピクセルモードでの2倍ズーム機的な感覚で撮影するといいだろう。

 もちろん、もともとの画素数が高いため、1,280×960ピクセル時でも、通常の130万画素機よりもシャープな画像が得られるため、サービス判やハガキ大くらいまでのプリントならば、このような使い方でも実用的には十分な画質が得られる。

 また、「FinePix4700Z」で初搭載された簡易動画撮影機能が、本機でも採用されている。フォーマットはAVI形式のMotion JPEGで、サイズは320×240ピクセル。フレームレートは秒10フレーム固定だが、音声付きで最長80秒までの連続撮影が可能。また、動画撮影時には1.875倍のデジタルズーム撮影もできるため、画面の変化も付けやすい。



●機敏な操作感

 撮影間隔は約1秒ときわめて軽快。また、起動時間も、単焦点タイプのため、レンズが沈胴する量が少ないこともあって、約1.5秒と高速だ。

 操作性もよく錬られており、扱いやすいモデルに仕上がっている。とくに、静止画記録・再生・動画記録モードが回転式スイッチになっており、簡単に素早く切り替えられる点に好感が持てる。

 また、機能面では、新たに、再生時に画像が切り替わるときの画面効果を設定することができたり、メニュー操作で2,400×1,600ピクセルモードから1,280×960ピクセルモードなどへの縮小リサイズができるようになっている点もなかなか便利だ。  ただ、やや気になったのは、液晶モニターの日中屋外での視認性。本機は1.8インチのD-TFDタイプを採用しているが、屋内の視認性や色再現性はいいが、バックライトが暗いためか、明るい場所では液晶が見にくくなるのが残念だ。



●きれいで見栄えのするシャープな写り

 画質は良好。レンズが単焦点ということで、基本性能が高いせいか、今回撮影した感じでは、解像度はズーム機の「FinePix4700」を越える実力に感じられた。色再現性も、適度に見栄えのする明るめの仕上がりで好感が持てる。

 本機では、マクロ撮影が最短6cmから撮影できるため、かなりの近接撮影を楽しめる。レンズがワイド系とはいえ、スマートメディア+α程度の面積が画面一杯に撮れるマクロ撮影が楽しめ、花の接写などでも威力を発揮する。

屋外撮影
1,280×960ピクセル 1,280×960ピクセル
デジタルズーム時
1,280×960ピクセル
マクロ撮影
ストロボ撮影
マクロ・ストロボ撮影
1,280×960ピクセル
人物・ストロボ撮影



●高速で簡単操作のMP3転送

 MP3プレイヤーとして使う場合には、Windowsマシンでは、付属ソフトである「RealJukebox Plus」を使って、MP3ファイルを生成する。もちろん、生成時間はそれほどかからず、CD1枚分でも数分単位でOKだ。

 そして、PCとカメラを付属のUSBケーブルで接続し、付属ソフトである「Audio Downloading Software」を使いカメラにダウンロードするわけだ。ダウンロードにようする時間も短く、CD1枚で1分強しかかからない。

 MP3データを記録するスマートメディアは、ID付きのタイプに限定されている。これは、「InfoBind」という著作権保護機能を使うためで、各スマートメディア固有のIDを利用し、暗号化処理をおこない、不正なコピーができないようにしてある。そのため、本機でMP3データを記録したものを、通常のMP3プレイヤーで再生しようとしても、「InfoBind」機能のため再生できない。

 なお、MP3と画像記録は、同じスマートメディア内で共存することができるため、用途に応じてメディアを入れ替える必要はない。



●想像以上の高音質

 さて、この手のモデルになると、MP3機能は単なるオマケ的な位置づけかというと、決してそんなことはない。

 実際に音楽CDから96Kbpsと128KbpsでMP3に変換し、40iで聞いてみたが、想像以上に音質がよく、感心してしまった。ただし、MP3再生はイヤーレシーバーのみで、本体スピーカーでの再生はできない。もちろん、構造上は可能だが、再生時の音質を重視したため、あえてこの機能を搭載しなかったという。

 残念ながら、付属しているイヤーレシーバーは、コスト重視のものだが、リモコンから先は通常のステレオミニプラグになっているため、他社の高音質なものに取り替えて利用することもできる。

 今回は、いつも聞き慣れているソニーの「ステレオ・イヤーレシーバーMDR-ED238ML」(http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Models/Current/MDR-ED238ML_J_1/index.html)に付け替えてみたが、音質が飛躍的に改善され、臨場感のある音質となった。

 MP3プレイヤーとしてのポテンシャルは十分に高く、普段、気軽に音楽を楽しむには十分な実力といえそうだ。ただし、音質を重視する人には、イヤーレシーバーの交換をお薦めする。

 なお、電車の中や雑踏を歩きながら音楽を楽しむのであれば、ビットレートの低い96Kbpsでも十分実用になる。これなら、64MBカードで約80分の録音ができるため、短めのCDであれば40MB前後に収まり、撮影のためのエリアもある程度確保できる。カメラ本体で、MP3部分だけを消去することもできるため、撮影枚数が足りないようであれば、音楽データを即座に消して容量を増やし、撮影することができる。

 ただ、1枚のスマートメディアに、MP3と撮影画像を共存させて使うには、やはり64MBクラスのメディアは不可欠。今回は、64MBカードに40MB分のMP3データを記録し、残りのエリアを使って撮影してみたが、2400×1600ピクセルモードでは枚数的にも厳しいものがある。スナップ用と割り切って、1280×960ピクセルのNormal圧縮モードをベースに撮影すれば、これでも十分実用になりそうだ。



●意外に持つ電池

 ここで心配になるのが電源。本機は単三型電池2本という仕様で、標準で1600mAhのニッケル水素電池2本が付属する。

 今回は短時間での撮影のため、電池の持ちが問題になるようなことはなかったが、このあたりはもう少し使い込んでみないと、その実力はわからない。

 ただ、MP3再生の場合には、電力をさほど消耗しないため、数時間単位の音楽再生を楽しむことができる。また、メーカーとして推奨はしないが、MP3用途だけに限定するのであれば、アルカリ電池でも稼働可能という。



●よくできたリモコン

 細かいことだが、イヤーレシーバーに付属するリモコンは、単にMP3再生時の再生・静止や送り・戻し、音量などをコントロールするだけではない。撮影時には、再生ボタンを押すことで、リモコンでシャッターを切ることができるうえ、デジタルズーム操作までも、このリモコンでの手元操作が可能だ。また、再生時にはリモコンでコマ送り操作ができるため、テレビを使った簡易プレゼンテーションなどにも便利に使えるだろう。

 実際にこれらの操作をしてみると、意外なほど面白く、一度体験してみることをオススメしたい。このリモコンは、見かけ以上に多機能だが、最近の携帯AV機器に比べ、あまりオシャレなデザインとはいえない。初物だけに手が回らなかったのかもしれないが、コストダウンによる影響も大きいのだろう。



●新スタイルの常用ツールへ

 「FinePix」シリーズはこれまでも、さまざまなチャレンジをしてきたわけだが、今回の「デジタルカメラ+MP3」という試みは、かなり実用的なものとして高く評価できる。

 しかも、静止画カメラとしての品質も、動画スナップ機としての機能も、MP3プレイヤーとしての品質も、一般的な日常用途では十分に満足できるレベルであり、これらをうまく融合しながらも、スタイリッシュで気軽に持ち歩けるツールとして仕上がっている点に好感が持てる。

 とくに、私などはウオークマン世代のため、どこにゆくにも、何らかの携帯プレイヤーが欠かせない年代だ。しかも常時、デジタルカメラを持ち歩いている私にとって、この「FinePix 40i」は、まさに待望の新・常用ツールだ。

 常用向きのデジタルカメラとして、「IXY DIGITAL」のようなカメラとしての品格やコンパクトさにこだわった製品もいいが、この「FinePix 40i」のようにいつでも気軽に持ち歩け、“生活を楽める”ツールも大いに魅力的だ。

 「デジタルは人を幸せにしてくれるもの」であるとすれば、この「FinePix 40i」はまさに、それにピッタリの、新時代のマルチメディア・デジタルカメラだ。


□関連記事
【6月1日】富士フイルム、リモコンもついたMP3プレーヤー兼用デジカメ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000601/fujifilm.htm

デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

(2000年6月1日)


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[Reported by 山田久美夫]


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