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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Athlonは年内に1.33GHz以上、2001年1月に1.5GHz以上に


●AMDはThunderbirdの製品計画を大幅にドライブ

AMDのデスクトップロードマップ図
 AMDは、次世代Athlonプロセッサ「Thunderbird(サンダーバード)」のクロックをアグレッシブに引き上げる。今年の第3四半期に1.13GHzへ、第4四半期には1.33GHz以上へ、そして来年の第1四半期には(ジェリー・サンダース会長の公約通りなら)1.5xGHzへと駆け上る。「AMDのデスクトップロードマップ図」を見てもらえばわかるが、じつに急激な高クロック化だ。また、Athlonの生産量も、以前の計画より大きく引き上げるように変更したという。これらの変化は、何を意味するのだろうか。

 AMDは今年後半から来年頭にかけてのThunderbirdの計画を、OEMメーカーに明らかにしたという。まず、Thunderbirdのクロックは700MHz以上で、1GHzまでの現行Athlonを置き換えるという。これは、もうすでにほかのニュースで報じられている通りだ。Thunderbirdは、1次キャッシュ128KBで2次キャッシュは256KBの構成になる。このコラムで予想していたよりも2次キャッシュ容量が少ない。しかし、Thunderbirdでは、CPUと同じチップ上に統合されたオンダイ(On-Die)キャッシュになりCPUコアと同クロックで駆動できるようになるため、高クロック品では2次キャッシュが遅い現行のAthlonより性能が上がると思われる。


●第3四半期には266MHz FSBの1.13GHz版が登場

 AMDは、その後、第3四半期中にThunderbirdに1.1GHz版(200MHz FSB)と1.13GHz版(266MHz FSB)を加えると言われている。ここで1.13GHz版が登場するのは、266MHz FSBをサポートするチップセットAMD760が登場するからだ。AMDは、1.1GHz以上のAthlonは266MHz FSBへ、それ以下のクロックのAthlonは200MHz FSBとしてリリースしてゆくようだ。もっとも、266MHz FSBをフルに活かすには266MHz DDR SDRAMが必要となるため、266MHz DDR SDRAMの供給状況が悪ければ200MHz FSB版でより高クロックの製品が登場することになるかもしれない。

 さらにAMDは、第4四半期中には1.2GHz版(FSBの4.5倍)と、おそらくは1.267GHz版(4.75倍)と1.33GHz版(5倍)をリリースすると見られている。この第4四半期のクロック向上は、ロードマップ図を見るとわかるのだがかなり急激だ。これはFab30で製造する銅配線版Thunderbirdの比率が高まることを前提としている可能性が高い。銅配線版Thunderbirdは、アルミ配線版と比べてクロックをある程度向上できるからだ。

 AMDの銅配線プロセスHiP6LのGate Widthが0.10μmで、現行のFab25のアルミ配線プロセスCS50の0.12μmと比べて短いので、同じ0.18μmプロセスでもゲートディレイは減ると見られる。そのため、Fab30版Thunderbirdが、銅配線に最適化した配線にされていなくてもある程度は高クロック化が可能になると思われる。AMDはFab30からの製品のメドがかなり立ってきたから、これだけアグレッシブな製品計画を立てたのかもしれない。

 もっとも、同じThunderbirdにアルミ配線板と銅配線版が混在することは、また互換性の問題を引き起こす可能性がある。実際、AMDがOEMに現在アナウンスしているThunderbirdとKX-133の互換性問題は、銅配線版の問題だと業界筋では言われている。ちなみに、ジェリー・サンダース会長来日時のAMDの資料を見ると、銅配線版のAthlonコアはK76と呼ばれているようだ。

 AMDは、おそらく将来的には性能重視のAthlon系はFab30、コストパフォーマンス重視のDuron系はFab20と、完全に製造ラインを分けるつもりだと想像される。アルミ配線板のAthlonは将来は消えることになるだろう。だが、それが達成されるのは、おそらく2001年に入ってからになるだろう。


●AMDは来年には1.4GHz以上をデスクトップに投入

 AMDは、4月下旬に、OEMメーカーに対して、来年第1四半期にはデスクトップ向けに1.4GHz(5.25倍)以上のバージョンをリリースするとアナウンスしたという。しかし、AMDのサンダース会長兼CEOは、4月27日に開催した「2000 Annual Meeting」で、来年1月には1.5GHzを達成すると明言している。そのためには、1.4GHzの次の1.467GHz(5.5倍)のハードルも超えなければならない。AMDはどうやってこのハードルを超えるのだろうか。

 まず考えられるのは、AMDが第4四半期に登場するとアナウンスしている、次々世代Athlon「Mustang(マスタング)」で1.5xGHzを達成するというケースだ。Mustangは、CPUコア自体が機能拡張され、さらに銅配線に最適化した物理設計になっていると思われる。そのため、Thunderbirdよりさらにクロックを上げられるようになっていると推測される。ちなみに、Mustangのサーバー&ワークステーション版は、最大1MBの2次キャッシュを搭載し、Thunderbirdとはピン互換になる。

 もし、AMDがAthlon系コアで1.5GHzを来年1月に達成できるとすると、Intelはやっかいな問題に直面する。というのは、この時点でのWillametteのクロックは1.5GHzで、再びクロック競争になってしまうからだ。ただし、もし1.5GHzを達成するのがMustangだった場合、AMDがMustangコアをデスクトップPC向けに持ってこない限り、ハイエンドデスクトップでIntelと競合する形にはならない。

 ちなみに、AMDは、MustangとCorvette(Mustangと同じコアを使ったモバイル版CPU)を第4四半期に出すとしているが、2000年中のAMDの生産数量のカウントにMustangもCorvetteは入っていない。そのため、これらの新CPUの本格生産は来年からになると見られる。


●AMDは2000年中に3,000万個のCPUを出荷?

 AMDは生産計画もアグレッシブに切り替えた。下のグラフはAMDがあるマザーボードメーカーに示した生産計画だ。これは、以前このコラムで紹介した、顧客からの情報を元にした生産計画の推測より、今年後半の生産数量がかなり増えている。また、2000年を通じての総生産個数も、約3,000万個へと増加している。それも、増えた分はDuronではなくAthlonだ。これと、Athlonのロードマップが高クロックへシフトしていることを合わせて考えると、AMDはFab30での生産が思ったより順調にいくという感触を得て、その分の生産個数を上乗せしたのかもしれない。

AMDの生産計画グラフ

 しかし、2000 Annual Meetingのサンダース会長の発言を見ると、AMDの2000年の予想生産個数は2,500万個で、Athlon系CPU(Duronを含む)の生産数量は、第1四半期に120万個、第2四半期に180万個、第3四半期に360万個、第4四半期に720万個となっている。これは、OEMに示した数字より15~35%くらい小さい。この差はいったいどういうことだろう?

 AMDがOEMメーカーに対して行なった説明によると、サンダース会長の説明した数字は、OEMメーカーに対してインフラ(マザーボード)の準備をすでに要請した数字であり、実際に予測される生産可能な個数はそれよりも上になると見ているという。逆を言えば、AMDが今年出荷するCPU個数はAnnual Meetingの数と、OEM向けの説明の数の間ということなのだろう。


●Duronの2次キャッシュは64KB

 このほか、AMDのCPU計画のアップデイトでは、Celeron対抗の「Duron(デュロン)」のスペックが見えてきた。コードネームSpitfire(スピットファイア)と呼ばれていたDuronのキャッシュサイズは、1次キャッシュが128KB、2次キャッシュが64KBの構成になるという。複数の情報筋によると、2次キャッシュが128KBの構成のSpitfireもあったが、製品化は64KB版の方で行なわれるという。ダイサイズ(半導体本体の面積)を小さく留め、コストを引き下げるためだ。

 Duronのキャッシュ容量に関しても、このコラムでの以前の予測は外れている。それは1次キャッシュの方が大容量というDuronのキャッシュ構成がかなり変則的だからだ。それだけAMDが128KBの1次キャッシュにこだわったということは重要だ。おそらく、1次キャッシュを64KBに減らした場合のパフォーマンスの低下が著しかったと思われる。こうした変則的なキャッシュ構成の場合、どうやって性能を引き出すのかが気になるところだ。

 AMDのチップセットパートナーも変わりつつある。AMDは、台湾Acer Laboratories(ALi)を中核のチップセットパートナーにし、Micron Technologyからも市場にチップセットの供給を受けることになったらしい。VIA Technologiesの位置はかなり後退したことになる。AMDのAthlon戦略の明白な弱点はチップセットであり、Athlonの成否を握っているだけに、Computexでのこのあたりのパートナーの展開がどうなるかが注目される。


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(2000年5月17日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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