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Linux World Expo/Tokyo 2000レポート

日立がItanium搭載Linuxサーバーを参考出展

期日:5月11日~12日

会場:東京ビッグサイト(東京国際展示場)


 IDGの主催するLinuxのイベント「Linux World Expo/Tokyo 2000」が開催された。3回目となる('99年3月開催時は、Linux World Conferenceと称していた)今回は、会場が東京ビッグサイトに移され、出展社も85社に増えた。会場を回るとIBMやSGI、Compaqといった、すでに米国でLinuxビジネスを展開する外資系メーカーに加え、NEC、日立、富士通といった国内メーカーもブースを構え、雰囲気は国内のほかのイベントに近い。

 Linuxというと、アンチMicrosoftの最有力候補のように言われてきたが、現状では各社が狙っているのは、サーバーや業務用システムなどの分野である。従って製品を展示するというより、各社が構築可能なシステムの見本を見せるといったもの。このため展示会場の雰囲気は、単にカタログを集めて回るよりも、気になったブースでじっくり説明を聞くといった感じだ。ただし、いまだに国内においては、Linuxの普及率は高いとはいえず、「Linuxとは何?」といった感じの来場者も少なくない。


●オラクル、自社製データベースに最適化した「Miracle Linux」

ミラクル・リナックス社の矢野広一社長。対Windows NTでLinuxを2003年までに40%シェアに持っていくというが……
 日本オラクルは、NEC、ターボリナックス ジャパン、サンブリッジ、オービックビジネスコンサルタント(OBC)と共同出資してLinux専門の「ミラクル・リナックス株式会社」を設立した。オラクルのデータベースを動かすために最適化されたLinuxである「Miracle Linux」を開発し、販売、コンサルティング、サポート、教育などを行なうという。

 基調講演では、同社の矢野社長などにより、同社の方向性や開発目標などについてのプレゼンテーションが行なわれた。それによると、Oracle8iに最適化されたサーバー向けのMiracle Linux Standard Editionを今年9月ぐらいまでに開発し、来年上期には、IA-64(Itanium)対応、下期には、上位版であるEnterprise版を出す予定だという。また、開発されたものは、オープンソースとして公開されるとのこと。

 この動きに合わせ、OBCは「奉行シリーズ」で、Linux用のサーバーソフトウェア(クライアント側はWindows)を出荷する(当面は、Turbo Linuxを利用)。つまり、Oracleと強力して最適化されたLinuxを作り、業務向けのシステムを構築していこうというわけだ。

 このMiracle Linuxは日本で開発され、国内向けに最適化されたものになるという。Miracle Linuxでは、目標として2003年の国内すべてのLinuxのシェアを40%にするとしている(IDGの予想では、10%となっている)。

 MicrosoftとOracleは、事あるごとに衝突しているが、日本国内ではOracleがOSを提供するという動きに出た。しかも、単にOSを売るのではなく、Oracleを組み合わせ、さらにOBCを巻き込んで、業務系のパッケージでも展開を図るという、まったくの逆襲に出たわけだ。結果がどうなるかは神のみぞ知ることではあるが、今年の1つの見所といってもいいかもしれない。

 なお、セミナーやワークショップなども開催されており、こちらは展示会場内にあるせいか、かなり人が集まっていた。


●日立はItanium搭載サーバーを参考出品

日立のItanium(IA-64)サーバーマシン。製品としては、Microsoftの64bit対応OSが出ないと出荷できず、今年末を予定しているとのこと
 展示会場では、NECや富士通、日立といった国内の大手メーカーが目立つ。ただし、ハードウェアは展示されているものの、ほとんどは従来Windows NTをメインOSとしていたサーバー機にLinuxを載せたもの。日立は、Itanium搭載サーバーの参考出品を行なったが、説明員の「製品の出荷はIntelからCPUが出て、Microsoftから64bit対応のOSが出てから」という言葉に象徴されるように、「Linuxも」やりますというスタンスだ。

 外資系メーカーとしては、SGIやIBM、Compaqなどが出展しており、やはりサーバーやソリューションサービス中心の展示となっている。IBMは今年3月のニューヨークで開催されたLinux World Expoと同じく、メインフレームであるSystem/390を持ち込んでLinuxのデモ。Eコマースなどでは、企業がメインフレームで管理しているデータベースに最終的にはアクセスすることになるので、同じアーキテクチャのメインフレームでLinuxを動かして、ApacheなどのWWWサーバーを動かしたほうが、管理がしやすいという。しかも、メインフレームのネイティブなOS(データベースを動かしている)とLinuxが高速で通信できるような仕組みを開発中らしい。

SGIのLinuxベースのGraphic Workstation試作機。SGIは、WindowsからLinuxへ転向し、最近では、OpenGLのソースコードを公開するなど、積極的な動きに出ている IBMのメインフレームSystem/390。これはメインフレームの中でも小さいものであるが、これで数千万円なのだとか。ただし、パソコンなどよりも平均故障間隔(MTBF)が長く、担当者曰く「一度買えば、一生壊れない」とか

 そのほかハードウェア系では、ラックマウントのサーバー機が目立った。CompaqはAlpha、VA LinuxやNorthan LightsはPCアーキテクチャ、NECはExpress 5800シリーズなどで、ラックの基本サイズである1Uサイズのサーバーを展示している。Linuxでは、1つの用途に1つのマシンを割り当てるといった「シン(Thin)サーバー」といった展開や、多数のマシンを共同させて動かす「クラスタリング」が今の流行。このため、多数のコンピュータを設置する必要があるが、1Uのラックマウントマシンを使えば、コンパクトに設置できるというわけだ。

CompaqのAlphaを使ったラックマウントサーバー。クロススイッチで、4台のノードを高速接続。クラスタを使い、CGのレンダリングをデモ NECのExpress 5800 ラックマウントサーバー。クラスタシステムをデモ VA Linuxのラックマウントサーバー。VA Linuxは、Linuxをメインにハードウェア、システムを提供する米国のメーカー Northern Lightsも同じく、サーバーなどのハードウェアとLinuxを提供するメーカー。こちらも1Uのラックマウントマシンを展示

 もう1つの方向は、小さな匡体にコンピュータを詰め込んでしまうというやり方。最近では、CPU能力も高くなり、HDDの容量も大きくなった。デスクトップPCでも「ブック型」という超小型のマシンが増えてきているように、超小型のマシンでLinuxを動かそうというもの。こちらは、SOHOなどの小規模なオフィス向き。

ハードウェアに凝ったThinサーバー。aquarium computerのsilver neon。横にあるのは、メルコのルータ NTT DoCoMoは、米国Cobalt Network社のQubeというThinサーバーに携帯電話用のメールシステム(原理は10円メールと同じ)を載せたシステムを展示。サーバー側にも携帯電話をつないで通信を行なう。NTTの公衆回線を使って接続しないのは、NTTに接続料を取られるからいやだそうだ

 ソフトウェア系は、OSカーネルとしてのLinuxと各種基本ツールを組み合わせてインストーラーでまとめた「ディストリビューション」を作るメーカー(Laser5、RedHat、TurboLinux、Stormix、Caldera、Corelなど)と、純粋なアプリケーション系、ソリューション(システムインテグレーションや、アプリケーション+システム構築)などに分かれる。

 ほかのイベントでは、ハードウェア単体やアプリケーションなどが展示される事が多いが、Linuxではディストリビューションのデモなら、見えている画面は、X-Window Systemとウィンドウマネージャなのである。そのほかは、サービスやサポートいった「形のない商品」を売っているため、展示はあくまでもモデルや構築例、デモだけであり、視覚的なインパクトは弱い。

ディストリビューション大手のRed Hatのブース。展示よりも、セミナーが中心 カナダのStormix Technologies。やはりLinuxのディストリビューションを手がける

オービックビジネスコンサルタント(OBC)の奉行2000新ERPシリーズ。手前のクライアントはWindows 韓国のHancomLinux incの日本語ワープロ アレアハングル2000。もちろんLinux上で動く

□LinuxWorld Expo/Tokyo 2000
http://www.idgexpo.com/linuxexpo/

(2000年5月12日)

[Reported by 塩田紳二]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp