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SSE対応0.18μmCeleron 600MHz製品版レビュー
~Celeron大ブーム再来か? 900MHzで動作~



 数回前のこの連載で製造プロセスルールが0.18μmとなったCoppermine-128KことSSEに対応したCeleron 600MHz、533A MHzについて取り上げた。その時に入手したCPUはエンジニアリングサンプルであったため、クロックアップなどにはチャレンジしなかった。が、先週末のAKIBA PC Hotline!でもお伝えしたように、バルク品が秋葉原に出回り始めたので、Celeron 600MHzを入手して実際の製品がどこまで回るのかという自作ユーザーが気になるところをチェックしよう。


●あの「Celeron」の後継として期待されていた新Celeron

 今回新しく登場した600MHz、566MHz、533A MHzのCeleronは、SSEに対応しているという点でも注目を集めているが、もう1つ「裏」の注目を集める理由があった。それが「クロックアップ耐性が高いのではないか」という期待だ。というのも、Mendocinoというコードネームで呼ばれる第2世代のCeleronが登場した時には、300A MHz(66MHz×4.5)のFSBを100MHzにして450MHzで動作させることが流行したからだ。今回の新Celeronも、基本的にはPentium IIIに利用されているCoppermine-256KのL2キャッシュを半分にしただけなのだから、Pentium IIIと同じようなクロックで動作してしまうのではないかと淡い期待を抱いていたユーザーも多いだろう 。

 さて、前回Celeron 600MHz、533A MHzの2製品をレビューした時には対応BIOSなどもなかったため、起動時の表示には「Pentium III 600E MHz」などと表示され、Pentium IIIと認識されていた。特にこれでも問題はなかったが、徐々に各マザーボードベンダなどから対応BIOSが登場しつつあり、対応したBIOSを利用すれば起動時の表示も「Celeron」と表示されるようになる。例えば、筆者の利用しているABIT ComputerのBF6の場合、同社のFTPサイトに掲載されている最新BIOSにアップデートする事で「Celeron」と表示されるようになった。軽くベンチマークをやってみた限りでは、BIOSをアップデートする前とパフォーマンスはほとんど変わらないのでアップデートすることは必要条件ではないかもしれないが、気になる人はアップデートしておけばよい(ただ、ここに公開されている最新BIOSはBE6-II用らしく、アップデート時にモデルが違うというメッセージがでる。気にせず進むとアップデートすることができる)。

 なお、H.Oda!氏作のCPU情報を表示するソフトWCPUIDでCeleron 600MHz(66MHz×9)が133MHz×4.5と表示される問題も、H.Oda!氏のホームページに掲載されている最新のβ版(Version 2.7e-B3)を利用することで、解決することができる。こちらを利用すれば、きちんと66MHz×9倍と表示される。


●期待に応える「当たり」だったCeleron 600MHz

 それでは、今回入手したCeleron 600MHzの製品版をクロックアップしてみよう。ただ、この記事の最後にもあるように、クロックアップはCPUを壊す可能性があり、決して万人にお勧めするものではない。あくまでCPUの仕組みなどを理解できていて、壊してしまったとしても「仕方がない」と思える人だけができる遊びだ。仮にクロックアップをしてマザーボードやCPUなどを壊してしまったとしても、筆者をはじめ誰も責任は持てないし、PCショップなどの保証も受けられないので注意したい。

 さて、マザーボードにはABIT ComputerのBF6を利用した。BF6は豊富なFSB設定を持っていることで知られ、クロックアップを楽しむユーザーには定番の製品と言える。特に83MHz以降は1MHz刻みで、FSBをかえていくことができるほか、PCIバスやAGPのクロック、CPUコア電圧やI/O電圧などを細かく設定できる。今回は最初はコア電圧やI/O電圧、PCI/AGPのクロックなどを特にいじらずにクロックアップしていくことにした。今回テストに利用したのはZiff-DavisのWinBench99 Version1.1に含まれるCPUmark99、FPU WinMarkの2つで、Windowsが起動しこの2つのテストのスコアが表示されれば、とりあえずクロックアップ成功ということにした。利用したCPUファンはリテールのBOX版Pentium III(FC-PGA)に付属してきたFC-PGA用のCPUファンで、特に特別な冷却装置などは追加していない。

 まず75MHzに設定したところ、特に問題なく両テストとも行なえた。このあと、83MHz、85MHzと徐々にあげていったが特に問題なくCPUmark99、FPU WinMark共に終了した。しかし、86MHzにしたところ、Windows 98は起動するものの、WinBenchがメッセージを出して異常終了してしまう。この状態ではPCIバスクロックがFSBの1/2倍(つまり43MHz、PCIバスの標準は33MHz)、AGPのクロックがFSBの1倍(つまり86MHz、AGP標準は66MHz)となっている。そこで、PCI/AGPの倍率をそれぞれ1/3、2/3に設定してPCI/AGPのクロックを落としたところ、問題なく動作するようになった。更にFSBを88MHzにしたところ、やはり同じような問題が起きるようになった。そこで、CPUコア電圧を1.7V(Celeron 600MHzの標準は1.5V)に、I/O電圧を3.6V(同3.5V)にしたところ問題なく動作するようになった。本来のクロックの1.5倍にあたる900MHz(100MHz×9)では動作しないと思ったが、CPUコア電圧を1.7V、I/O電圧を3.7Vに設定したところ900MHzでもCPUmark99、FPU WinMarkを実行することができた。さすがにこの上のクロックは、何をやってもだめだったが、とりあえず特に特殊な冷却装置を利用しなくても、900MHzまではなんとかクロックアップ可能というのが、Celeron 600MHzの今回入手した個体のクロックアップ耐性であるようだ。

クロックFSBクロックコア電圧I/O電圧PCIAGPCPUmark99FPU WinMark
600661.53.51/21/140.0 3,170
675751.53.51/21/145.0 3,570
747831.53.51/21/150.6 3,970
765851.53.51/21/151.5 4,090
774861.53.51/21/1Windowsは起動、ベンチマークでエラーWindowsは起動、ベンチマークでエラー
774861.53.51/32/351.1 4,130
783871.53.51/32/352.8 4,170
792881.53.51/32/3Windowsは起動、ベンチマークでエラーWindowsは起動、ベンチマークでエラー
792881.73.61/32/352.9 4,220
801891.73.61/32/353.8 4,260
810901.73.61/32/354.1 4,310
882981.73.61/32/3途中でハングアップ途中でハングアップ
891991.73.61/32/3途中でハングアップ途中でハングアップ
9001001.753.61/32/3途中でハングアップ途中でハングアップ
9001001.73.61/32/3途中でハングアップ途中でハングアップ
9001001.63.61/32/3BIOS画面でハングアップBIOS画面でハングアップ
9001001.53.61/32/3BIOS画面でハングアップBIOS画面でハングアップ
9001001.753.71/32/362.8 4,770
9361041.753.71/32/3Windows起動時にハングアップWindows起動時にハングアップ

【テスト環境】
マザーボード:ABIT Computer BF6(440BX、Celeron 533A、600)
メモリ:PC100 SDRAM
HDD:WesternDigital AC14300(4.3GB)
ビデオカード:カノープス SPECTRA5400 Premium Edition(RIVA TNT2 Ultra、32MB)


●玩具としては値段も比較的安いし遊べる

 今回利用したCeleron 600MHzは比較的当たりであったようで、900MHzまでクロックアップすることができた。ただ、お断りしておきたいのは、今回編集部で入手したCeleron 600MHzがたまたま900MHzまでクロックアップできたからといって、すべてのCeleron 600MHzが同じような傾向を示すとは限らない。しかし、この個体がこれだけの耐性を示したと言うことは、同時期に作られた同じロットの個体は同じように高い耐性を持っている可能性があるわけで、そうした意味において、自作ユーザーにとっては高価な「玩具」としては格好のターゲットと言っていいだろう。特に、秋葉原ではまだ発売されていない、倍率が低いCeleron 533A MHz(66MHz×8)は狙い目といえるだろう。

 最後に0.18μmのCeleronの入手性に関して触れておこう。現時点ではバルク版のみの販売で、CPUファンとセットになったリテール版は販売されていない。この背景には、Pentium IIIの供給不足があるようだ。情報筋によれば0.18μmのCeleronは大手PCメーカーでも非常に供給量が少なく、各メーカーで奪い合いになっているのが現状だという。それも当たり前の話で、0.18μmのCeleronはPentium IIIに利用されているCoppermine-256KBのL2キャッシュを半分無効にしたCPUなので、より高い値段で売れるPentium IIIが足りていない現状では、それをわざわざL2キャッシュの半分を無効にして安くしなければならない理由はない。となれば、0.18μm版Celeronの供給量が非常に限られたものになり、OEMメーカーに出荷する量に比べればニッチ市場である自作PC用に向ける分が全くないというのも理解できる。0.18μm版Celeronは、前回のレポートでも述べたとおり、別にクロックアップせずとも高いコストパフォーマンスを実現しているだけに、できるだけ早くリテールパッケージも出回ることを期待したいものだ。

□関連記事
Akiba PC Hotline! Hothotレビュー
【4月8日】2次キャッシュ倍率も変更可能なAthlon用オーバークロックツール
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000415/celeron600.html
【3月31日】SSEに対応した0.18μmの新世代Celeron登場!
~Coppermine-128K 600/533A MHzをベンチマーク
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000331/hotrev56.htm

バックナンバー

(2000年4月21日)

[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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・CPU動作周波数やコア電圧の変更は、CPUやマザーボードおよび関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。その損害について、筆者およびPC Watch 編集部、またマザーボードメーカー、購入したショップもその責を負いません。規定以外への電圧の変更は自己の責任において行なってください。

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