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元麻布春男の週刊PCホットライン

DVD-RWとDVD-RAM、再書き込み可能なDVDメディアの今後


■IntelがDVD-RWを推奨?

表の一番下にDVD-RW in the futureの記述
 今年の春のIDFで、ちょっとドッキリするようなプレゼンテーションがあった。写真は筆者がメモ用に撮ったものなので見づらいと思うが、何とか文字は読めると思う(今回はプレゼンテーションを紙に出力したものをまとめたバインダが配布されなかったので、デジカメでメモ代わりに撮りまくった。バインダを配ったら配ったで重いと文句を言うし、配らなかった配らなかったで文句を言うのだから、勝手なものだが)。これは、将来のPCがどうなるか、というテーマに関するもので、内蔵ストレージデバイスに触れた部分だ。注目はスライドの一番下の項目にDVD-RWと書かれているとこだろう。

 これまでIntelは書き換え可能なDVDドライブに関して、特定のフォーマットや方式を推奨するような発言は、極力避けていた。たとえば'98年秋のIDFでは、ゲストスピーカーのJVCやSoftware Architectはともかく、Intel自身は「DVD-Rewritable」としか言っていない。このDVD-RewritableはいわゆるDVD-RWを指すものではなく、一般名詞的な意味、再書き込み可能なDVDと解釈する、と理解されてきた。絶対にDVD-RWという表記を用いなかったのは、特定の方式との混同を避けるため、と筆者も理解していた。


 それが、唐突に「DVD-RW」という表記が出てきたので、ビックリしてしまった。実はこのプレゼンテーションが行なわれたのは最終日の3日目のことだが、報道関係者の大半は会場を離れたあと(この日、San FranciscoでMicrosoftによるWindows 2000のラウンチイベントが開催されるため、大半の報道関係者は前日にSan Franciscoへ移動していた)。IDFに居残りした筆者は、ひょっとして大ニュース? と期待してしまった。

 ただでさえ、初日にはソニー(DVD-RAMに反対する最大勢力?)とIntelが手を組むという話(IDF終了後、正式に提携するという発表がなされた)があったばかり。加えて、PC2001に関するセッションでは、PC2001が備えるDVDドライブは「すべてのDVDフォーマットをサポートすること」という要求を見直す、という話がされていた。なんだかきな臭い雰囲気があったのである。

 結論から言うと、IntelがいわゆるDVD-RW(DVD-Rの発展型である規格としてのDVD Re-recordable)を推すことに決めた、というのは筆者の早とちりだったようだ。「DVD-RW」はどうも再書き込み可能なDVDという意味でのDVD-Rewritableを縮めただけのものだったようだ。だが、筆者が早とちりしたくなるような事情もある。一般PC向けDVD-Rドライブ、さらにはその発展型であるDVD-RWドライブが、近い将来登場しそうなのである。

■秋にはコンシューマ向けDVD-Rドライブも登場。ただし……

 現在市販されているDVD-Rドライブは、DVD-ROMやDVD-Videoのオーサリング向けで、価格も100万円近くする。とても、普通のユーザーが使えるものではない。だが、早ければこの秋くらいのタイミング、World PC Expoあたりに一般ユーザー向けのDVD-Rドライブが参考出品されそうだ。一般ユーザー向けと言うからには、価格も一般ユーザーの手の届くところにおりてくる。ひょっとすると、DVD-RWドライブの参考出品もあるかもしれない。

 ただし、一般向けに登場してくるDVD-Rドライブは現行のDVD-Rドライブ(オーサリング向けのDVD-Rドライブ)と同じではない。決定的に違うのは記録に用いるレーザーの波長で、オーサリング向けのDVD-Rドライブが635nmなのに対し、一般向けのDVD-Rドライブは650nmのレーザーを用いる。理由は、もちろんコピーガードのかかったDVD-Videoタイトルの複製を防止するためだ。つまりDVD-Rは、コピーガードされたタイトルの複製ができないよう波長を変える代わりに安価な一般向けDVD-Rドライブと、そのような制限のない代わりに高価な(そしておそらく販売チャネルが限られるであろう)オーサリング向けDVD-Rドライブの2つに分かれることになる。それぞれのドライブで用いる書き込みメディアは専用で、異なるドライブで書き込むことはできない(読み出しはどちらのドライブでもできる)。

 DVD-RWドライブは、この一般向けDVD-Rドライブの発展型として定義される予定だ。つまり、レーザー波長は650nmのみである。CD-R/RW同様、DVD-R/RWドライブを実現することも不可能ではないが、あくまでも一般向けDVD-RドライブとDVD-RWの兼用ドライブであって、オーサリング用のDVD-RWドライブやDVD-R/RWドライブは、レーザーピックアップの互換性の点からは考えられないことになる。

■DVD-RWとDVD-RAMのメリット/デメリット

 DVD-RがDVD-RWへと発展した時に論議を呼ぶのは、すでに存在する再書き込み可能メディア、DVD-RAM(規格としてはDVD-Rewritable)との関係だ。両方とも再書き込み可能なDVDという点では変らないし、現時点で一般のDVDプレーヤー(民生用DVDプレーヤー)で再生できない、という点でも変らない。

 両者の違いとしては、まず書き換え可能な回数が違うということが挙げられる。再書き込み可能といっても、DVD-RWの書き換え回数が1,000回程度なのに対し、DVD-RAMの書き換え回数はもう1桁上だと言われている。また、DVD-RAMのスパイラル上のデータトラックには一定間隔でヘッダが記録されており、これによりアクセス性能を改善しているのに対し、DVD-ROMと最大限の互換性を目指したDVD-Rの発展型であるDVD-RWにはそのようなヘッダは存在しない。PCで一般記録用に用いるには、DVD-RAMの方が性能面で有利だ。

 一方、DVD-RWの強みはDVD-ROMドライブやDVDプレーヤーとの互換性を取りやすいという点にある。DVD-RAMがランド/グルーブ記録であるのに対し、DVD-RWがグルーブ記録であることに加え、DVD-RWのピットの反射率が片面2層メディアの2層目と同じ18~30%なのに対し、DVD-RAMのピット反射率がそれより低い12~25%である点も、DVD-RWの方が低コストでDVD-ROMとの互換性を確保しやすい。

 もう1つ大きな違いは、原則的にDVD-RAMメディアがカートリッジに入っているのに対し、DVD-RおよびDVD-RWメディアはカートリッジを採用していないことだ。現状のDVD-Rドライブはメディアをキャディに収めるため、結果としてカートリッジに入れることになるが、書き込み後、DVD-ROMドライブやDVDプレーヤーで再生する際に簡便だ。最終的なメディア価格を決める最大の要素が量産規模であることは事実だが、カートリッジのないDVD-R/RWメディアの方がコストの点で有利だろう。

 とはいえ、再書き込み可能という性格の似たメディアが複数存在することにはデメリットもある。DVD-RAMを推進する東芝、日立、松下の3社は、DVD-ROMドライブについてもDVD-RAMメディアの読み取りをサポートする方向だが、DVD-RやDVD-RWをサポートするという話は聞かない。逆にDVD-R/RWを推進するパイオニアのDVD-ROMドライブは、将来DVD-R/RWをサポートする計画であるものの、DVD-RAMの読み取りをサポートする予定はないという。いずれもDVDフォーラムの正式規格なのだが、これが実情である。上述した通り、PC2001システムデザインガイドの規定(PCのDVDはすべてのフォーマットをサポートする)が見直されたのも、現状を追認したものといえる。

 現在、PCでの書き換え可能リムーバブルメディアとしては、CD-R/RWが抜群の普及を見せており、おそらくフロッピーディスクの後継となるのはこのメディアだろう。だがその次の世代、DVDクラスの書き換え可能メディアは、先行するDVD-RAMが普及するのか、今回取り上げたDVD-R/RWが普及するのか、現時点では何とも言えない状況だ。結局は、年内にも出揃うと言われる民生用のDVDビデオレコーダーで主流となった方式がPCでも支持される、ということになるのかもしれない。

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鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
□DVDレコーディング規格
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991014/key94.htm#DVD_rec
□DVD-RW
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991014/key94.htm#DVD_RW
□DVD-RAM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980127/key15.htm#dvd-ram

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(2000年3月15日)

[Text by 元麻布春男]


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