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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

1GHzプロセッサは6月までに登場
AMDとIntelのクロック戦争がついに最終局面に


●AMDはThunderbird 1GHzを6月に投入

 IntelとAMDは、1GHzのスケジュールを大幅に早めたようだ。早ければ6月にも1GHzプロセッサが登場する。これは、Intelの技術カンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」や、その直後にAMDが顧客メーカーに対して行なった説明から明らかになったものだ。

 まず、AMDのスケジュールから。PC業界関係者によると、AMDはAthlonの2次キャッシュ統合版「Thunderbird(サンダーバード)」のサンプル出荷を開始、5月から量産出荷すると通知したという。このThunderbirdは最高クロック900MHzで始まるが、6月にはその上の1GHzが限定数投入されるという。さらにAMDは、第3四半期にはThunderbird 1GHzの出荷量を増やして来るつもりらしい。このスケジュールは、OEM向けであるため、AMDが正式にAthlon 1GHzを発表をするタイミングは、もう少し後ろへずれ込む可能性はある。しかし、AMDはクロック競争でIntelに勝つことを大命題にしているため、発表は可能な限り早くするだろう。


●Intelは1GHzを限定出荷で前倒しの可能性が

 AMDがこのスケジュールであるため、Intelも「Pentium III(Coppermine:カッパーマイン)」の1GHz版の出荷を前倒にする可能性が高い。実際、IDFのキーノートスピーチで、Intelのアルバート・ユー上級副社長は、1GHzチップはサンプル出荷を始めており、ボリューム出荷は第3四半期だが、限定生産は近いうち(shortly)になる、と含みを持たせた説明をしている。shortlyと説明するからには、4ヶ月半もあとの第3四半期に発表とは考えにくく、1GHzは限定数量がAMDと同程度の時期に登場してくる可能性が高い。

 ただし、この場合、最初に登場する1GHzチップは非常に数が少なく、場合によっては極めて高価になるかもしれない。じつは、そうした例は以前にもあった。Pentium II(Klamath:クラマス) 300MHzだ。Intelは、'97年5月のPentium II発表に際して233MHz版と266MHz版と同時に、当初は予定していなかった300MHz版も発表(出荷は第3四半期)した。しかし、300MHz版は限定出荷ということで、259,370円という異常な高プライスで、搭載マシンの出荷も少なかった。もしかすると、Intelは1GHzで、この時と似たような手段を取るのかもしれない。


●Intelは850MHzと9xxMHzの戦いはAMDに譲る

 Intelは、850MHzの戦いではAMDと争わず、十分製品が採れるようになるのを待つ戦術を取った。また、933MHzに関しても、焦らず5月に持ってこようとしていると、OEMメーカーは証言する。対するAMDは、900MHzのAthlon(ThunderbirdではなくK75コア)を4月までに発表するとメーカーに通知しているため、850MHzのみならず9xxMHzの戦いでもIntelはAMDに先を譲ってしまうことになる。

 このあたりの展開を見ると、IntelはAMDより先に高クロック品を出すことに固執することはやめたように見える。これは、昨年末、Coppermine 750/800MHzを急きょ繰り上げ発表したものの、製品の出荷量を確保できなかったことへの反省だと見られる。つまり、現在のIntelのスケジュールは、OEMメーカーを満足させられる出荷量の確保を前提としたもので、AMDより遅れるのは仕方がないと割り切ったものだと考えられる。そして、このスケジュールでは、Coppermine 1GHzの量産スタートは第3四半期後半になっている。つまり、そのままだと、1GHz突入は、AMDよりたっぷり1四半期遅れてしまう。

 Intelが、限定生産の1GHz版を出すとしたら、こうした製品計画の中で、1GHzの実績作りのために、5~6月頃に採れるだけの1GHz品を出荷する計画に変えたことを意味する。つまり、量産出荷はある程度の量を採れるようになってから行なうことで、OEMメーカーから文句が来ないようにし、その代わり限定生産という断りを入れて1GHz版を出すという戦術だ。これなら、850MHzの時のような不評を買う心配もなく、1GHz一番乗りの冠を取ることができる。

 Intelがもし1GHzを限定生産で発表するとしたら、それは933MHzを発表する5月というのがいちばん可能性としては濃厚だ。しかし、両社が1GHz一番乗りにこだわっているとしたら、相手の出方でスケジュールはどんどん変わってしまうだろう。というのは、片方が発表日を決めれば、もう一方が機先を制しようとその前に発表日を持ってくる可能性があるからだ。


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(2000年2月28日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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