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プロカメラマン山田久美夫のCeBIT 2000デジタルカメラレポート

リコー、DC-1を彷彿とさせる334万画素3倍ズーム機を出品


会場:Hannover Messe

開催期間:2月24日~3月1日

 CeBITは、COMDEXの数倍規模の巨大なイベントであり、このショーで発表される製品も数多い。デジタルカメラの世界では、わずか2週間ほど前にPMAが開催されたばかりだが、今回のCeBITでは早くもPMAとは違った新製品が登場し、その動きの早さを象徴している。

 そこで第1弾では、PMAでブースを持たなかった、リコーと三洋電機の新製品(参考出品モデル)についてレポートしよう。


●リコー:“DC-1”を彷彿とさせる334万画素3倍ズーム機「RDC-7」

 このところ新製品が少なかったリコーだが、今回のCeBITでは一気に2機種の新製品を公開した。なかでも注目されるのが、334万画素光学3倍ズーム機の「RDC-7」だ。

 リコーはカシオのQV-10とほぼ同時期からデジタルカメラ市場に参入していた老舗。その第1号機で、現在の多機能デジタルカメラの元祖的な存在ともいえる「DC-1」という名機があった。このモデルは、その後のどのズーム付きモデルよりも薄型の光学3倍ズーム機。しかも、当時としては最高の41万画素CCDを搭載していた。5年以上前のモデルながらも、音声付きの動画が記録できるほか、携帯電話や公衆回線を使った画像伝送機能までサポートされた多機能モデルだった。

 今回の「RDC-7」は、まさに現代版“DC-1”といえる。スタイリングはDC-1同様、横型の双眼鏡タイプと呼ばれるもので、リコーが「DC-1」や「DC-2L」で採用していたもの。カメラ全体をかなり薄型にできるうえ、全長の長いレンズ光学系やメモリーカード、液晶モニターなどを無理なく搭載できる、優れたものといえる。サイズは135.4×74×25.6mm(幅×奥行き×高さ)。CCDは334万画素を採用。レンズは光学式3倍ズームを搭載。これは35mmカメラ換算35~105mm相当のもので、きわめてコンパクトだが明るさもF2.6~3.4を実現している。ファインダーは光学式と液晶モニターの両方を装備している。

 液晶モニターは、携帯時にはボディ上部に閉じた状態で一体化されており、必要に応じて起こして、自分の使いやすい角度で撮影することができる。さらに、左右方向にも回転するため、縦位置でのハイアングル撮影も容易だ。この液晶モニターは驚くほど薄型に仕上がっており、液晶表面の反射の仕方から推測すると、どうも反射式のように見える。だが、説明では普通の2インチTFTとなっていた。しかしバックライトをこれほど薄型にできるのか、ちょっと心配な面もある。これだけ個性的なモデルであれば、いっそ、フロントライト付きの反射式液晶搭載機でもいいかもしれない。

 また、シャッターボタンも、ボディ上部と前部の2カ所に配置されており、使いやすい方を選ぶことができる。

 ブースには、ウィンドウ越しに2台展示されており、残念ながら実機を手にすることはできない。だが、展示機で実写したサンプルプリントが展示されており、実写可能な仕上がりのようだ。サンプルプリントの画質はかなり良好で、カラーレーザープリンターによるA3プリントでも、画面周辺までとてもシャープなイメージだった。

 ガラス越しに見た「RDC-7」は、実に個性的でシャープなスタイリングを実現しており、今春のどの300万画素級モデルにも似ていない、独特のアイデンティティが感じられる。

 機能的にもかなり凝っている。なかでも、画素をずらす事により2枚撮影したデータを合成し、700万画素相当の高精細画像を生成する機能は大きな特徴といえる。

 また同社のモデルらしく、レンズ前わずか1cmまでの超接写撮影もサポートされている。接写モードで撮影されたCPUのカットを見ると、肉眼では気が付かないような細部まできちんと描写されている。

 このほか、AVI形式によるサウンド付きの動画撮影機能や、130分ものサウンド記録(ボイスレコーダー)機能も搭載。また、OCRによる文字認識撮影用モードも備わっているなど、事務機に強いリコーならではのアイテムも数多い。

 今回はあくまでも欧州向けの発表であり、参考出品である。そのため、正確な発売時期や価格についてはまだ未定だ。欧州でも今夏には市場に投入されるようで、日本国内ではそれよりもやや早い時期に発売される可能性が高い。

 今春の300万画素級モデルは意外なほど似通った印象のものが多く、個性に欠ける嫌いがあったが、本機の登場で新たに魅力的な選択肢が加わったことは、喜ばしいことといえる。ぜひとも、早期に製品化して欲しい、今年前半の注目機種といえる。


 一方の211万画素単焦点モデル「RDC-6000」は、おとなしいモデルだが、なかなか魅力的な仕上がりといえる。211万画素機とはいえ、このクラスの単焦点モデルはやや魅力薄だがデザインがこなれており、サイズ的にもなかなかコンパクト。しかも、AVI形式による動画記録機能や300万画素相当の画像が得られるデータ補間機能、さらに海外で要望が多いWebカメラ機能も装備するなど、基本機能がしっかりと抑えられている。デザインもコンパクトカメラ風で親しみやすく好感が持てる。


●三洋電機:SX150の改良機と、iDフォーマットの試作機を出品

 三洋電機は日本での「DSC-SX150」の改良機となる「VPC-SX550EX」をCeBITで発表した。このモデルは、快速な従来機よりもさらに高速化が図られたモデルで、約0.7秒の撮影間隔と秒間30コマもの超高速連写。さらに、320×240ピクセル30フレーム/秒の動画撮影機能も搭載したモデルだ。

 基本的には、ボディはSX150とほぼ同じで、基本的な操作性もそのまま踏襲されているが、細かな改良が随所に施されている。
 詳細設定時のメニュー表示は、ドイツ語表示ながら従来機よりもわかりやすくなっている。

 また、動画撮影時のフレームレートがビデオ並に高速化されたことで、動きがかなり速いシーンでも、滑らかな動画撮影ができるようになっている。

 デモ機の完成度からみて、おそらく日本国内でもごく近い時期に正式発表されるものと思われる。


・iDフォーマットの試作機も充実

 同社はMACWORLD Expo/Tokyoでも、オリンパスとマクセルとの共同開発光磁気ディスクメディア「iDフォーマット」を使ったモックアップを出品し注目を浴びた。

 そして今回のCeBITではモックに加え、より製品に近い雰囲気を備えた試作機というレベルの光学3倍ズームモデルを出品した。

 このモデルは「SX111」という型番のiDフォーマットディスク搭載機だ。レンズは光学3倍ズームだが、画素数などの記載はない。だが、同社のネーミングの流れを見ると、数字型番の前のアルファベットが画像サイズを示しているのが通例。そこから推測すると、このモデルはSX150と同じ150万画素モデルと考えられる。

 iDディスクは、デジタルスチルカメラに組みこむには大柄な記録メディアだが、本機ではそのディスクをカメラのグリップ部にうまく収めている。といっても、グリップ部は結構厚手になる点が気になった。

 デザインはデジタルスチルカメラとデジタルビデオカメラを融合させたような雰囲気で、いかにも三洋電機らしいスタイリングといえる。

 本機の場合、730MBディスクを搭載していることもあって、静止画よりも本格的な動画撮影を意識したモデルのようだ。また、カメラの側面には大型の回転式ダイアルがあり、それを使って、カメラ内で動画編集ができる可能性もある。どちらかというと本機は「ソニー MD DISCAM」に近いモデルなのかもしれない。

 また、「MACWORLD Expo/Tokyo」で出品されたモックアップと同じく、iDフォーマットを使った液晶付きレコーダーも出品されていた。今回は展示位置の関係で、前回は見られなかった液晶モニター下にあるインターフェイス部分を見ることができた。そこにはIEEE-1394やUSBといった文字が見られる。もしかすると、IEEE-1394やUSBなどからデジタルデータを保存できる可能性もありそうだ。

 残念ながら今回、共同開発メーカーであるオリンパスからは、iDフォーマットを採用した機器の展示や発表は一切なかった。昨年発表されたiDフォーマットも、そろそろ具体的な製品が登場してきてもいい頃だけに、どのような形で製品に組みこまれるのか期待したい。

□CeBIT 2000ホームページ
http://www4.cebit.de/index_e.html

(2000年2月25日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp