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Athlonプラットフォームを加速する
Apollo KX133チップセット搭載マザーボード登場



 VIA TechnologiesがAthlon用にリリースしたApollo KX133チップセット(VT8371)を搭載したマザーボードが発売になった。これまで常に指摘されてきたAthlonプラットフォームの脆弱さを補強する意味で、登場が待たれていたApollo KX133チップセットだが、果たしてどのようなパフォーマンスを持っているのだろうか? 今回は秋葉原で先陣を切って発売になったEPoX ComputerのEP-7KXAを入手し、そのパフォーマンスに迫っていきたい。

Apollo KX133チップセット Apollo KX133を搭載したEPoX ComputerのEP-7KXA


●AthlonプラットフォームがついにPentium IIIのプラットフォームに追いつく

 これまで筆者を含めてPC関連の書き手がAthlonについて語るときに、必ず2つの注意書きがされていることが多かった。「Athlonが搭載されている大手メーカー製PCは現在ない」と、「チップセットがIntelのプラットフォームに比べて弱い」である。このうち前者に関しては、1月19日の富士通に引き続き、日本ゲートウェイ、NECと立て続けにAthlon搭載PCが発売されたこともあり、現在ではかなり解消されたと言ってよい(800MHzという最高クロックをリリースしているメーカー数でみれば、Intelと互角かそれ以上とも言えなくはない)。これに対して後者の件に関してはこれまで解消されてこなかった。なぜかと言えば、Athlon用のチップセットを出荷していたのがこれまではAMDだけだったからだ。

 AMDは8月にAthlonを発表した時に、同時にAthlon用のチップセットとしてAMD-750チップセットを発表している。このAMD-750のスペックは、AGP 2X、PC100 SDRAM、Ultra ATA/66などに対応している。サポートするCPUバス(いわゆるFSB)がAthlon用のEV6バス(100MHzのDDRで200MHz)とUltra ATA/66に対応している点を除けばほぼIntelのIntel 440BX AGPsetと同等ということ、440BXが登場したのが'98年春であることを考えればスペックだけを比較すれば少々時代遅れな感が否めない。その間にIntelはIntel 810/810Eチップセット、Intel 820チップセットなど最新の機能をサポートしたチップセットをリリースしており、VIA TechnologiesもPC133 SDRAMやAGP 4Xなど最新のトレンドをサポートしたP6バス用チップセットをリリースしてきた。それに比べてAMD-750しかないAthlonのプラットフォームがやや脆弱であるとされるのは致し方ないことと言える。

 そうしたAthlonプラットフォームの脆弱さを補完するために、VIA Technologiesがリリースしたのが今回紹介するApollo KX133チップセットだ。Apollo KX133はVIAがIntelのP6バス(Pentium IIIやCeleronが利用するCPUバス)向けとして発売しているApollo Pro133A(VT82C694X)のEV6版となっている(その証拠にCPUバス以外のスペックはApollo Pro133Aと全く同じだ)。このため、AthlonプラットフォームでもAGP 4X、PC133 SDRAM(とVC SDRAM)など最新のテクノロジを利用することができるようになっており、まさに最新のチップセットと呼んでいいだろう。


●ユニークな機能を搭載しているEP-7KXA

 さて、今回紹介するApollo KX133搭載マザーボードはEPoX ComputerのEP-7KXAだ。EPoX ComputerはVIA Technologiesのチップセットを搭載したマザーボードを積極的に出荷しているメーカーとして知られており、Socket 7の時にもVIAのApollo MVP3を比較的早く出荷していた。今回筆者が購入したEP-7KXAはEPoX Computerの国内正規代理店であるマスタードシードの取り扱いの商品で、同社が作成した日本語マニュアルが同梱されていた。

マザーボードのシルクに書かれたコア電圧設定のリスト
 EP-7KXAはATXフォームファクタを採用しており、スロット数はAGP×1、AMR×1、PCI×4、PCI/ISA共通×1となっている。EP-7KXAはAthlon用のマザーボードとしてはユニークな機能を備えており、CPUコア電圧を設定するジャンパスイッチ、FSBのクロックを設定するジャンパスイッチなどが用意されている。最近ではAthlon 500MHzをクロックアップすることなども流行しつつあり、そうした用途にも使ってみたいユーザーには注目の機能と言える。コア電圧は1.5V~1.8Vまで0.05V刻み、FSBのクロックはジャンパスイッチで100MHz(DDRで200MHz)、133MHz(DDRで266MHz)に設定できる(さらにBIOSセットアップで細かく設定することも可能)。

 注目のメモリだが、100/133MHzのSDRAM、ないしはVC SDRAMを利用できる。今回は手元にあったPC133 SDRAM(CL=3)を利用したが、もちろん問題なく利用することができた。時間の都合でVC SDRAMは挿して起動を確認しただけだが、こちらも問題なく動作した。なお、メモリのクロックは標準ではCPUバス(つまりは100MHz)に同期している。133MHzで動作させるにはBIOSセットアップでの設定が必要になるので注意したい。


●AMD-750を上回る性能を発揮するが3Dの性能にはやや不満が残る

 今回はチップセットの比較と言うことで、AMD-750を搭載したMSIのMS-6167と、440BXを搭載したABIT ComputerのBE6を用意し、それぞれAthlon 500MHz、Pentium III 500E MHzを利用してベンチマークを行なってみた。440BXに関してはCPUが異なるため直接の比較はできないが、参考にはなるだろう。テスト環境は表1の通りで、ビデオドライバは同じバージョンのものを、IDEのバスマスタドライバに関してはいずれのチップセットでもWindows 98 Second Editionに付属のものを利用した。なお、AGPのドライバに関してはAMD、VIAの両チップセットに関しては両者のホームページに最新版が公開されており、それを利用した。特にVIAは2月2日付けで最新版(バージョン3.59)を公開しており、マザーボードに付属のバージョンよりも新しく、実際にユーザーが利用する場合もそちらのバージョンを利用したほうがビデオカード周りの問題が起こる可能性を少なくすることができるだろう。

 今回利用したベンチマークテストはZiff-Davis,Inc.のWinBench99 Version 1.1と、3D WinBench2000 Version 1.0、MadOnion.comの3DMark2000の3つのテストだ。CPU、L2キャッシュ、メモリ周りの性能を計測するCPUmark99(主に整数演算の性能を計測)、FPU WinMark(浮動小数点演算の性能を計測)の2つのテストだが、いずれもKX133を搭載したEP-7KXAが、AMD-750(MS-6167)、440BX(ABIT BE6)を上回った。このあたりはPC133の効果が少しはでていると考えていいだろう。

 ディスク周りの総合的な性能を計測するBusiness Disk WinMark 99(ビジネスアプリケーション環境のディスク性能を計測)、High-End Disk WinMark 99(同ハイエンドアプリケーション環境)の2つでもKX133(EP-7KXA)がほかの2つ(AMD-750、KX133)を上回った。ただ、1つだけ気になったのはディスクアクセスを行なうときにCPU占有率(CPU Utilization)がやたら高いことだ。ほかの2つ(AMD-750と440BX)が3%台となっているのに、KX133は13.8%となっている。

 VIAに関してはこれまでもIDE周りの性能や安定性がほかのチップセットより問題が多いとされてきたが、これもそうした問題と同じようにVIAのIDEバスマスタドライバの持つ問題と言える。今回はMicrosoftがWindows 98 Second Editionに添付しているVIA用のIDEドライバを利用したが、VIAが配布しているIDEドライバを利用してみようと考えてVIAのホームページを訪れたところIDEのバスマスタドライバは「互換性に問題がある」ということで配布が中止になっていた(2月7日現在)。こうしたことからもわかるように、VIAが配布するIDEバスマスタドライバには問題が多いので、できるだけOSに標準添付されているバスマスタドライバを利用した方がいいだろう(なにせ、VIAの関係者自身がそう薦める程だ)。

 ビデオまわりだが、High-End Graphics WinMarkでAMD-750がやや高いスコアを残していることを除けば、2Dのテストに関してはそんなに大きな差はない。3Dに関してはやはりIntelプラットフォームの優位性が浮かび上がってくる。3D Winbench2000、3DMark2000共に、440BXがハイスコアを出している。これに関しては今回利用しているSPECTRA5400 Premium Editionのドライバが何に最適化されているかを考える必要がある。筆者が利用しているドライバはインターネット・ストリーミング拡張命令(SSE)への最適化はうたわれているが、残念ながらAthlonがサポートする3DNow!テクノロジへの最適化は行なわれていない(ちなみに最新のGeForce256のドライバなどでは3DNow!にも最適化されているそうだ)。また、これはカノープスに限った話ではないが、ドライバの開発はまず大多数であるIntelチップセットをターゲットに開発され、それ以外への対応は後回しになることが多いと聞く。となると、IntelのAGPドライバで最も性能がでるようになっている可能性が高く、それがこの差になって現れていると考えるのが妥当だろう。特にKX133(EP-7KXA)はAMD-750(MS-61767)にもスコアで劣っており、そうした3Dにおける性能向上がKX133の課題と言えそうだ。

【WinBench99】
CPUmark 99FPU WinMark
KX133 + Athlon 50048.5 2,720
440BX + Pentium III 500E47.4 2,680
AMD-750 + Athlon 50047.6 2,710

Business Disk WinMark 99
(Thousand Bytes/Sec)
High-End Disk WinMark 99
(Thousand Bytes/Sec)
KX133 + Athlon 5002,610 7,330
440BX + Pentium III 500E2,550 7,230
AMD-750 + Athlon 5002,570 7,260

Disk Access Time
(Milliseconds)
Disk CPU Utilization
(Percent Used:小さいほど良い)
Disk Transfer Rate:Beginning
(Thousand Bytes/Sec)
Disk Transfer Rate:End
(Thousand Bytes/Sec)
KX133 + Athlon 50014.4 13.8
12,500 12,500
440BX + Pentium III 500E14.3 3.0
13,100 12,300
AMD-750 + Athlon 50014.4 3.7
13,100 12,300

Business Graphics
WinMark 99
High-End Graphics
WinMark 99
KX133 + Athlon 500225 663
440BX + Pentium III 500E224 618
AMD-750 + Athlon 500224 691

【3D WinBench 2000 & 3DMark2000】
3D WinBench 2000
3D WinMark 2000
(Frames/Sec)
3DMark2000
KX133 + Athlon 50031.3 2,202
440BX + Pentium III 500E33.2 2,237
AMD-750 + Athlon 50031.8 2,202

【表1:テスト環境】
メモリ:PC133 SDRAM(CL3、KX133)、PC100 SDRAM(CL2、AMD-750および440BX)
ハードディスク:WD AC14300
ビデオカード:カノープス SPECTRA 5400 Premium Edition
OS:Windows 98 Second Edition+DirectX 7.0


●今後価格低下が進めばAthlonプラットフォームの真打ちと成りうる

 以上のように、3Dにおける描画性能を除けば、多くの項目でAMD-750を上回ったKX133は、Athlonプラットフォームを拡大していく製品として意味があるチップセットだと言えるだろう。ただ、そのKX133を搭載したマザーボードの価格は思ったほど安くはない。EP-7KXAの価格はどこのショップでも大抵2万円オーバーで、最近では1万円の半ばまで下がってきたAMD-750搭載マザーボードと比べても高い(ただAMD-750マザーボードの最近の価格低下は在庫処分という面も否めないのだが)。だが、これは秋葉原特有の「初物価格」である可能性が高く、今後量産が進めばKX133がAMD-750搭載マザーボードの価格を下回る可能性はかなり高い。

 これまでのAMD-750搭載マザーボードはコストという観点では以下の3つの問題を抱えていた。

 (1)PCBが6層基板であること
 (2)チップセット自体が高価であること
 (3)レギュレータとコンデンサが多数必要なこと

 (1)はPCB(チップセットなどが搭載されている基板のこと)のコスト問題だが、マザーボードベンダ側の説明によるとPCBが4層(4つの層を持っていること、4枚の基板が張り合わされているようなものだと思えばよい)であるか、6層であるかの違いでPCB自体のコストは倍近い違いがあるという(もちろん、6層の方が倍近く高いという意味だ)。ならば、作れば作るほど高くついてしまうわけで、できるだけ早期に4層基板への移行が求められていた。なぜ、マザーボードベンダが6層基板しか作れなかったかと言えば、チップセットベンダであるAMDからは、6層基板を元にしたデザインガイドしか提供されていなかったからだ(なお、既にAMDもマザーボードベンダに対して4層基板にするデータシートを提供している)。VIAでははじめから4層基板のデータシートを配布しており、この問題に関しては解決済みだ。

 チップセットの価格についてだが、価格はマザーボードメーカーとAMD、VIAそれぞれの関係に基づいて決まる事であり、一概にどっちが安い高いとは言えない。また、多くのマザーボードベンダがAMD-750に比べてKX133は安価だと述べていること、またAMD自身が自社のチップセットはハイエンド向けに位置づけていることなどからAMD-750の方が高いということは容易に想像できる。となると、KX133はこれまでAMD-750が抱えていた2つのコストに関する問題を解決していると言っていいだろう。

 しかし、KX133でも解決できていないのが、(3)のレギュレータやコンデンサのコストだ。AthlonのCPUスロットとI/Oコネクタの間にはPentium III用のマザーボードでは見ることができない、巨大なレギュレータや数多くのコンデンサが並んでいる。こうした巨大なレギュレータやコンデンサが必要な理由は、Athlonの消費電力量が大きく、電圧を変換するときに発熱が多いためだ。筆者が取材したマザーボードベンダによると、440BXマザーボードと比較してこの部分だけで10ドル以上もコストアップになるということで、実に高いということが言える。これはAthlonが抱える問題と言え、KX133でもAMD-750でも同じだけのコストをかけなければならない。これを解決できるのはAthlonがすべて0.18μmへ移行して、消費電力が下がった後になる。

 このようにKX133はAMD-750のコスト問題のうち2つまでを解決している。現在はかなり高価であるものの近いうちには、KX133搭載マザーボードの価格がApollo Pro133A搭載マザーボードなみとまではいかないものの、それに近い水準にまで下がっていく可能性が高い。これまで言われてきたAthlonプラットフォームの脆弱さが解消される訳で、ようやくCPUの処理能力だけでなくシステム全体でもAthlonがPentium IIIと互角に戦う環境が整ったと言えるだろう。

 自作ユーザーにとって、KX133搭載マザーボードは現状ではAMD-750搭載マザーボードに比べてやや高めであり、人柱覚悟のユーザー以外には現時点では安価になったAMD-750搭載マザーボードをお奨めしたい。しかし、近い将来にAMD-750搭載マザーボードよりも安価になった際には文句無くKX133搭載マザーボードをチョイスしたい。

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http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000205/kx133.html

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(2000年2月8日)

[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp