2000年のCPUは、1GHzを目指すレースを繰り広げる……はずだった。ところが、Intelは、1GHzを大きく飛び越えてしまう。年内に登場する次世代CPU「Willamette(ウイラメット)」で、1.4GHz(!)という途方もないクロックを達成する見込みだからだ。
IntelのOEMメーカーによると、Willametteは今年の第4四半期に登場の予定で、スタート時から最高1.4GHzで投入されるという。Intelは、以前からOEMメーカーに今年のクリスマス商戦時期には、WillametteデスクトップをリリースできるようにCPUとチップセットを供給すると通知している。そのため、Willamette発表時には、同時に搭載マシンが大手PCメーカー各社からリリースされるはずだ。つまり、今年のクリスマスには、1.4GHzデスクトップが現実の製品として手に入るようになるのだ。プライスレンジは、現在のハイエンドPentium IIIデスクトップと同等レベルになるだろう。
●Pentium III 1GHzは9月ごろの見込み
また、IntelはWillametteを1.4GHzで投入するだけではなく、0.18ミクロン版Pentium III(Coppermine:カッパーマイン)プロセッサの1GHz化も前倒しする。これまで、同社はPentium III 1GHzを第4四半期に投入する予定だった。しかし、業界関係者によると、Intelはこのスケジュールを前にずらし、第3四半期の後半、おそらく9月ごろに1GHz発表を持ってきたという。同時に933MHzも前倒しし、こちらは第2四半期の後半に投入するという。業界情報によると、AMDもこれとほぼ同じか、少し前を行くスケジュールを立てていると言われる。そのため、AthlonとPentium IIIは、1GHzまではクロックで競り合う激しいレースを続けることになりそうだ。
また、Intelはすでに発表済みのPentium III 800MHzの次になるPentium III 850/866MHzのスケジュールも前倒しした。OEMメーカーによると、2月末からOEM向けに出荷すると伝えてきたという。850MHzは100MHz FSB版、866MHzは133MHz FSB版だ。
業界関係者によると、この850/866MHz版からIntelはCoppermineのステッピングを替え、高クロック品の生産量を増やすという。この「Bステップ版Coppermine」では、866MHzまでが採れるようになるだけでなく、現在のステップでは十分採れないため品不足に陥っている800MHz品も、潤沢に採れるようになるといわれる。そうなれば、800MHzマシンが順調に出荷されるようになるだろう。
ただし、0.18ミクロンのライン全てがBステップに移行するまでは、若干のタイムラグが生じるかもしれない。その場合は、すぐに800MHzが潤沢になるのではなく、第2四半期までの間に徐々に増えて行くことになるだろう。Intelは、もともと800MHz版からはステッピングを変える予定だったが、そのスケジュールもかなり前倒ししている。
●Celeronは第2四半期中に700MHzに
Intelは、Pentium IIIの高クロック版を前へ持ってくるだけでなく、Pentium IIIの製品構成全体を高クロックへシフトさせる。今年の夏までにはPentium IIIのローエンドは733MHzになり、今年の年末商戦時期にはローエンドはさらに800MHzになる見込みだ。つまり、現在Pentium III 600MHzクラスの価格帯のマシンは、クリスマス時には800MHzにグレードアップしていることになる。
また、IntelはPentium IIIだけでなく、その下のCeleronの高クロック化にも拍車をかける。Intelは、第1四半期中に0.18ミクロン版Celeron(Coppermine-128k)を投入する。このCoppermine-128kは事実上Coppermineと同じコアで、統合(On-Die)2次キャッシュメモリの半分の128KBを殺したものになる見込みだ。つまり、IntelはCoppermineの生産量が増えるに従って、その中の低クロック品をCeleronブランドで発売し始めるわけだ。
そのため、今年の製品構成では、Pentium IIIの高クロック化が前倒しになると、Celeronの高クロック化もつられて前倒しになる。Intelは、今年第2四半期には、Celeronを700MHzに引き上げる。つまり、これから第2四半期の終わりまでに、566、600、633、666、700MHzの5つのクロックの製品を矢継ぎ早に発表するわけだ。そして、年末商戦時期には大半のCeleronを700MHz以上にしてしまう見込みだ。また、グラフィックスコアとチップセットを統合した統合CPU「Timna(ティムナ)」も当初の予定の600MHzから667MHzにクロックを引き上げ、第3四半期中に投入する。
●モバイルPentium IIIは850MHzへ
モバイルCPUも、高クロック化する。Intelは、今年後半にSpeedStepを使ったモバイルPentium IIIで800MHz版を投入する予定だった。しかし、業界関係者によると、同社はこのクロックを850MHzに引き上げたという。今年のクリスマス商戦時期には、新しいPentium IIIノートはすべて650MHz以上のクロックになってしまう見込みだという。
また、IntelはモバイルCeleronの計画も前倒しにした。第2四半期中に650MHz、第3四半期中に700MHzを投入するという。どうやら、年末までには500MHzのノートPCは時代遅れのシロモノになってしまうらしい。Intelは、省電力版のSpeedStep対応Pentium IIIも、やや前倒しになり5月ごろには登場しそうだという。
圧倒的なまでのスケジュール前倒し。これがAthlonを意識しての展開であることは言うまでもない。これこそパラノイア(偏執症)企業Intelの本領発揮に違いない。
(2000年1月21日)
[Reported by 後藤 弘茂]