Silicon Valley Conference Center |
会場:Silicon Valley Conference Center
米国カリフォルニア州サンノゼで行なわれている開発者向け会議のPlatform 2000の会場で、VIA Technologiesは2000年のチップセットロードマップを公開した。今回は筆者が独自にVIAのOEMメーカーから取材した情報などを交えながら、VIAの今後の製品展開について紹介していきたい。
VIA Technologies シニアストラテジックプロダクトマーケティングマネージャのエリック・チャン氏 | VIA Technologies マーケティングディレクターのディアン・ヘイズ氏 |
●Intel 815対抗の統合型チップセットを第2四半期に出荷
VIAのシニアストラテジックプロダクトマーケティングマネージャのエリック・チャン氏は、同社のP6バス向けチップセットを含む2000年のロードマップを公開した。それによれば第2四半期中に同社のスタンドアローンチップセットApollo Pro133A(VT82C694X)とVIAが協力関係にあるS3のグラフィックスアクセラレータであるSavage 4を統合したチップセットである「VS1-P6」を出荷する予定だという。このVS1-P6は従来ProMedia2のコードネームで呼ばれてきた製品で、今回新しくVS1-P6というコードネームに変更された。チェン博士によれば、VS1の意味は「Via S3 joint venture product1(VIAとS3の協力した製品の第1号)」という意味だそうだ。なお、VIAは1月にOEMベンダに対して、このVS1-P6の製品名はApollo PM133、型番はVT8605だと説明しており、既にサンプル出荷が開始されている。
VIAのデスクトップ向けチップセットロードマップ | VS1-P6(Apollo PM133)のチップセット構成図 |
このVS1-P6(Apollo PM133)の最も大きな特徴は、S3のSavage 4をベースにしたグラフィックスコアを内蔵していながら、外部AGPポートをサポートすることだろう。メーカーにとっては、BTOの注文時にユーザーの要望に応じて内蔵のグラフィックスコアを利用したり、GeForce 256のような高い描画性能を持ったチップを搭載したビデオカードを挿して出荷したりと柔軟に対応することが可能になる。また、ユーザーにとっても後から自分の好みのビデオカードを挿すことが可能で、アップグレーダブルという点でメリットがある。
このVS1-P6(Apollo PM133)のスペックは以下のようになっている。
ただ、Intel 815がAIMMというメモリモジュールをAGPスロットに挿すことで内蔵のグラフィックスコアの処理能力を向上させることができるのに対して、VS1-P6(Apollo PM133)はそうした機能を持っておらず、ローカルのフレームバッファ(いわゆるビデオメモリ)をサポートしておらず、メインメモリの一部をフレームバッファとして利用するSMA(Shared Memory Architecture)の構成だけが可能になっている。この違いがどの程度性能面に影響を及ぼすかは現時点では不明だが、少なくともその点ではIntel 815に劣っていることは事実だ。
しかし、VIAはIntelが持たないアドバンテージを持っている。それは柔軟性だ。VIAはVS1-P6(Apollo PM133)からグラフィックスコアを取り除いた製品をApollo Pro133Zとして提供する計画を持っている(現在のApollo Pro133Aの後継となる)。VS1-P6(Apollo PM133)とApollo Pro133Zはピン互換になっており、マザーボードベンダは1枚のPCB(いわゆる基板)を設計するだけで、VS1-P6(Apollo PM133)とApollo Pro133Zの両方のチップセットを搭載したマザーボードを作ることができる。
Intel 815では最初から内蔵のグラフィックスコアを使わずにビデオカードと組み合わせて利用した場合でも、グラフィックスコアを内蔵したIntel 815を選択せざるを得ない。Intel 815にはグラフィックスコア無しという選択肢はないからだ。これでは、内蔵のグラフィックスコアに無駄なコストを払わなければいけない。これに対して、VIAのチップセットを選択すれば、目的に応じてVS1-P6(Apollo PM133)とApollo Pro133Zを使い分けることが可能で、かつPCBが共有できるので低コスト化できる。機能面ではIntel 815が勝っているものの、柔軟性に関してはVIAが一歩リードしていると言えるだろう。
●Athlon向け統合型チップセットも同時に用意
また、引き続き行なわれたAthlon向けチップセットに関するセッションではマーケティングディレクターのディアン・ヘイズ氏により、Athlonチップセットのロードマップが説明された。ヘイズ氏は始めに発表済みのApollo KX133(VT8371)に言及し「既に20以上のマザーボードベンダが、KX133を採用したマザーボードを作成しており、今後も増える予定だ」と述べ、順調に進展していることを強調した。
VS2-K7(Apollo PM133)のチップセット構成図。Socket Aのマザーボードをターゲットに開発されている |
基本的にはCPUバスがAthlonが採用しているEV6バスに対応している以外は、VS1-P6(Apollo PM133)と同等で、FSBは200MHzに対応している。なお、VS1-P6(Apollo PM133)に対してピン互換のApollo Pro133Zがあるように、VS2-K7(Apollo KM133)に対してもピン互換でビデオチップを内蔵していないApollo KZ133もある。こちらも一枚のPCBで両方のチップセットに対応可能になる。
これらを整理すると、2000年のVIAのチップセットは以下のようになる。
CPUバス | 現行製品 | 新スタンドアローン | 新統合型チップセット | ||
---|---|---|---|---|---|
P6 | Apollo Pro 133A | Apollo Pro 133Z | ←→ ピン互換 | Apollo PM133(Savage 4) | |
EV6 | Apollo KX 133 | Apollo KZ 133 | ←→ ピン互換 | Apollo KM133(Savage 4) |
このように、VIAは両方のメーカーのCPUに対して、同じ機能(性能)をもったチップセットを投入していく。これはSocket 7とSlot 1の両方にAGPバスをサポートしたチップセットを投入して以来のVIAの基本的な戦略といえ、今後もその戦略は続けられていく。
●2000年後半にはDDR-SDRAMに対応したApollo Pro266を導入
さらにVIAは2000年の後半には、DDR-SDRAMに対応したチップセットを投入することを明らかにした。その最初の製品はApollo Pro266という製品になる。Apollo Pro266は、PC266とよばれる133MHz動作(クロックの両エッジに同期して動作するので実際には266MHz)のDDR SDRAMのほか、PC133 SDRAMやVC SDRAMもサポートされる。Apollo Pro266の最も大きな特徴は、IntelがIntel 810やIntel 820でノースブリッジとサウスブリッジの間を接続するのに利用しているHub InterfaceのようなV-LINKと呼ばれるプライベートバスを導入することだろう。このV-LINKはHub Interfaceと同じように266MB/秒の転送速度を持っている点も含め、完全にIntelのHub Interfaceを意識した仕様になっている。
また、VIAはVS1-P6(Apollo PM133)とVS2-K7(Apollo PM133)の両チップセットををDDR SDRAMに対応させ、内蔵のグラフィックスコアをSavage 4からSavage 2000に変更した次世代の統合型チップセットの計画も持っている。それがP6バス用のVS10-P6(VIAはOEMに対してApollo PM266と説明している)とEV6バス用のVS12-K7(同Apollo KM266)だ。こちらもV-LINKに対応しており、ローカルのフレームバッファを搭載することも可能で、バス幅は64bitになるという。
以上の内容をまとめると、VIAのロードマップは以下のようになる。
CPUバス | 現行製品 | 新スタンドアローン | 統合型チップセット | DDRスタンドアローン | DDR統合型 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
P6 | Apollo Pro133A | Apollo Pro133Z PC133/VC AGP 4X |
←→ ピン互換 |
Apollo PM133(Savage 4) PC133/VC Savage 4コア 外部AGP 4X |
Apollo Pro266 PC266 AGP4X V-LINK |
Apollo PM266 PC266 Savage 2000コア 外部AGP 4X V-LINK |
||
EV6 | Apollo KX 133 | Apollo KZ 133 AGP 4X PC133/VC |
←→ ピン互換 |
Apollo KM133(Savage 4) 外部AGP 4X Savage 4コア PC133/VC |
? | Apollo KM266 PC266 Savage 2000コア 外部 AGP 4X V-LINK |
VIAのロードマップは、PC133に対応したチップセットがIntel 815しかないIntelのそれと比べて充実しているように見える。残る課題はVIAが提示したスケジュール通りに出荷できるかにかかっている。例えばVIAはApollo KX133を大量出荷したとアナウンス済みだが、マザーボードベンダに言わせると実際にはまだ受け取ってはいないらしい。そのあたりを解決できるかどうかが、VIAが飛躍するための鍵となるだろう。
(2000年1月28日)
[Reported by 笠原一輝]