Click


Platform 2000レポート
これがCrusoeだ!~TransmetaがCrusoeのリファレンスボードなどを公開

Silicon Valley
Conference Center
1月26~27日 開催(現地時間)

会場:Silicon Valley Conference Center

 カリフォルニア州サンノゼにあるSilicon Vally Conference Centerにおいて、開発者向けのイベントであるPlatform 2000が1月26日、27日(いずれも現地時間)の二日間にわたり開催されている。初日となる本日は、基調講演と先日Crusoeを発表したばかりで大きな注目を集めるTransmetaのセッションなどが開催された。


●「当社の戦略はモバイルに注力していくこと」とTransmetaのジム・チャップマン氏

Transmeta セールス・マーケティング担当副社長ジム・チャップマン氏

 基調講演の一番最初の講演者として、現在注目を集めるTransmetaのセールスとマーケティング担当副社長のジム・チャップマン氏が登場し、Crusoeの特徴や同社の戦略について語った。基本的には1月19日に行なわれたCrusoeの発表会と内容は大きく変わらないが、このなかでチャップマン氏は「当社の戦略は非常にクリアで、今後もモバイルに焦点を当てていくということだ」と述べ、Transmetaのターゲットがモバイルだけであることを強調した。

 この講演の中でチャップマン氏は、従来のモバイル向けx86プロセッサの抱える問題を「x86のアーキテクチャはとても複雑。しかし、これまではソフトウェアの互換性の問題がネックになり、他のアーキテクチャのCPUは利用できなかった」と述べ、Crusoeの目的がそうしたx86プロセッサの複雑さを解決し、かつx86の互換性を維持するというところにあると述べた。「エンドユーザーにとってバッテリ駆動時間は非常に重要な要素だ。Crusoeを利用すれば従来のx86プロセッサを利用した場合に比べて大幅にバッテリ駆動時間をのばすことができる」と述べた。


 さらに、チャップマン氏はDVD再生をサポートしたCrusoe搭載ノートパソコンについての説明の中で、「昨日ある日本メーカーが作ったCrusoeを利用したDVD-ROM搭載PCを見た。この製品はCrusoeを利用することでバッテリ駆動で2時間半もDVDを再生することができる」と述べ、具体的なメーカー名には触れなかったものの既に日本のOEMメーカーを獲得していることを示唆した。

 引き続き行なわれたTransmetaのロバート・ベディチェック博士によるCrusoeに関するセッションでは、Crusoeについての詳細な説明が行なわれた。基本的には既に後藤氏のコラムなどで紹介済みの内容だったが、セッションの最後にはQ&Aが行なわれ、いくつかの興味深い質問も出たので紹介しておこう。

Q:Crusoeのコードモーフィングのソフトウェアはアップグレード可能か? 可能だとしたらもしアップグレードに失敗した場合はどうなるのか?

ベディチェック氏:Crusoeのコードモーフィングのソフトウェアはアップグレード可能になっている。また、アップグレード時の問題に関しては、コードモーフィングのソフトウェアを通常使用するものと、緊急用のバックアップの2つを搭載することが可能になっている(筆者注:GIGA-BYTEが採用しているDual BIOSのようなものだと考えればよい)。例えば、通常用のコードモーフィングをアップグレード中に何らかの問題が発生して、コードモーフィングのソフトウェアが消えてしまっても、もう一方の緊急用のコードモーフィングソフトで起動し、通常用の部分に再度書き込みを行なえばよい。ただし、こうした構成をとるかどうかはOEMメーカーの選択次第だ。

Q:Crusoeは各種の拡張命令セットには対応しているか?

ベディチェック氏:MMXに対応している。

Q:インターネット・SIMD拡張命令や3DNow!などのSIMD型の演算を行なう拡張命令についてはどうか?

ベディチェック氏:現時点では対応していない。もちろん、将来的にはそれに対応する計画はあるが、公式にお話しできるようなものはない。


●TM3120搭載モバイルインターネット専用端末やTM5200搭載のリファレンスボードなどを公開

  会場の一角に設けられたTransmetaのブースでは、Crusoeを搭載したモバイルインターネット専用端末やCrusoeを搭載したリファレンスボードなどの展示が行なわれた。モバイルインターネット専用端末は2製品が展示されていた。いずれもCrusoeのうちローエンド向けのTM3120を採用した製品で、OSはMobile Linux、ブラウザにはNetscape Communicatorを採用しており、モックアップではなく実際に動作していた。2製品のうちVAIOのC1シリーズのようなCCDカメラがついているモデルは、ノートパソコンのOEM事業で有名な台湾のQuantaの製品で、実際にQuantaからPCメーカーなどにOEM供給されるという。

M3120を搭載したモバイルインターネット端末の試作機。DSTN液晶を採用し、ポインティングデバイスはペン。キーボードはソフトウェアエミュレーションを利用する。右側のCCDカメラがついた青いモデルは台湾のQuantaの製品 Mobile Linux上で動作するNetscape Communicator

 Crusoeを搭載したリファレンスボードはCPUに700MHzのTM5200を搭載している。サウスブリッジにはALiのM1535が採用されており、グラフィックスコントローラにはSilicon MotionのLynx EMが採用されており、あとはCardBusのコントローラとPCカードスロットを搭載しさえすれば、すぐにノートパソコンも作ることができる(実際にはこんな大きなマザーボードはノートパソコンには使えないので、小さくする必要はあるが)。ボードの裏側には、コードモーフィングのソフトウェアを格納したEEPROMが用意されており、それ以外にも通常のx86プロセッサ用のBIOS ROMも搭載されていた。OSはWindows 98が実際に動作しており、説明員によると既にLinuxの他、x86プロセッサで動作する主要なOSはテスト済みだということだ。

 なお、ボードに実際に触ってみたところ、やや暖かいかなという程度で特にすごく熱いということはなかった。モバイルPentium IIIを搭載したノートパソコンが放熱装置をつけていても外部がとても熱くなることと比べるとこの差は決して小さくないと言える。実際の製品が出荷されていない現時点ではモバイルPentium IIIとくらべてどうかなどを論じることはできないが、Transmetaの主張するようにバッテリー駆動時間を大幅に引き延ばすことができるのであれば、モバイルユーザーにとってのメリットは決して小さくない。そうした意味では早くTM5200を搭載したノートパソコンが実際に登場することに期待したい。

TM5200が搭載されたCrusoeのリファレンスボード。Windows 98が動作していた リファレンスボードに搭載されたTM5200。700MHzで動作しながらも、発熱量は非常に少なくCPUクーラーなしでも問題なく動作していた リファレンスマザーボードに搭載されていたALiのサウスブリッジ(M1535)とSilicon Motionのグラフィックスアクセラレータ(Lynx EM)。説明員によれば、サウスブリッジはALiでもVIAでもPCIバスに対応したものであれば、何でも利用できるとのこと マザーボードの裏側に搭載されているコードモーフィング用のソフトウェアが納められたEEPROM



□関連記事
【1月27日】Transmeta/Crusoe関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000127/trans_i.htm

(2000年1月27日)

[Reported by 笠原一輝]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp