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不定期連載 ゼロ・ハリのホームノマドへの道
~早くて簡単な「Instant Giga Drive」でホームラン ~


 「Mobile Central」連載中の「Bitmap Family Syndicate」などでおなじみのゼロ・ハリ氏による不定期連載です。四半期に1度程度は掲載の予定ですが、さて……。
 初回は、いまお気に入りの「Instant Giga Drive」をご紹介します。(編集部)

●HomeLANを導入する目的

 読者諸兄がHomeLAN(家庭内LAN)を始める目的は何なのだろう。筆者の場合はFDレス、CD-ROMドライブレスの軽量サブノートの「ThinkPad 235」を使っていたころ、事あるごとに要求されるCD-ROMドライブやFDDを取り付けるのがとても面倒で、脇にあるデスクトップパソコンのFDDやCD-ROMドライブを便利に利用できないか? というのが「HomeLAN」構築のきっかけだった。このように、自分のパソコンには備わっていない周辺機器をネットワークを経由していつでも繋がっているほかのパソコンの周辺機器で補うことがもっともメジャーな理由だろう。

 筆者の場合は、HomeLANを実践することで、軽量で便利なサブノートパソコンのアドバンテージを全く損なうことなく、必要な時にはいつでもCD-ROMやFDD、プリンタまでも利用できる環境になった。2台のパソコン間のファイルのやり取りも、そのサイズに関わらずFDやフラッシュメモリのお世話になることもなく、ネットワークを経由して瞬時に実現できる。高画素デジタルカメラの画像データをはじめ、音楽データ等を代表とする大容量のマルチメディアデータが増えた昨今ではHomeLANの意義は予想以上に大きい。
 また、これらのデータや友人知人の住所録マスターファイルなど重要なファイルのバックアップを何等かの方法で取りたいと考えるのも当然だろう。パソコンを家庭内だけでなく、オフィスワークと連係して活用している場合は、当然ながら自宅のパソコン上にも多くの仕事上のデータベースやアプリケーションも混在する。

 パソコンから超大型汎用機までの広範なITの世界を眺めて見ても、情報処理の全てをたった1つのハードウエアやソフトウエアだけで管理していた時代は短い。ハード・ソフトの共有資源を必要な時に、必要な量だけ、活用するのがネットワークを含めた情報処理の世界の定石なのだ。

 ファイルを共用したい時は大きなハードディスクがその要求を受け止めてくれれば良いし、高速なレーザープリンタを使いたい時はプリンタをネットワーク上に接続したい。しかし、周辺機器はパソコンに直結して動作するという時代が長かったために、高価なパソコンが、あたかもハードディスクやレーザープリンタのインターフェイスとして必要とされている感もある。今回ご紹介する「Instant Giga Drive」は、既にできあがったネットワーク・インフラストラクチャーを無駄にすることなく、最低の投資で有効に活用する事を目的に開発された興味深い商品だ。


●SOHO向けファイル+プリント・サーバー「Instant Giga Drive」

 LAN関連製品で米国量販店で最大のシェアを持つLINKSYSの日本法人である「リンクシス・ジャパン」が、1月末に日本国内で出荷開始予定の「Instant Giga Drive」は大容量データ時代にピッタリの製品だ。一口で言うなら、SOHO向きの「ディスプレイポートを持たないファイル+プリント・サーバー」だ。原稿を書いている現在は、まだ筆者が購入した製品版のInstant Giga Driveは手元に届いておらず、評価版を使用している。Instant Giga Driveはたった2本のネジで本体を開くことが可能だ。内部には小さくスマートなCyrixのチップとヒートシンクの付いたCPUを搭載したコンパクトなPC基板と、余裕のあるスペースに3.5インチのIBM製20.3GB HDDが収納され、Linuxでドライブされる。

リンクシス・ジャパン Instant Giga Drive
シンプルな背面には、10Base-T/100Base-TX共用ポートとプリンタ接続のポート、アップリンク機能切り替えスイッチ等がある。
2本のネジをはずすと外装は簡単にスライドして取り外すことが可能だ。

 既存のネットワーク環境とはハブを介してイーサネットケーブルで接続し、10/100Mbpsの両スピードに対応する。また、本体背面のアップリンク・スイッチを切り替えることでパソコンとクロス接続する事も可能だ。また本体背面のパラレルポートを備え、プリンタを接続する事で一般的なプリンタをネットワークプリンタとして活用できるプリントサーバー機能も搭載している。なお、AppleTalkもサポートしているため、Macintoshを含んだ混在環境でのデータ交換も実現できる。

 ネットワーク初心者ユーザーでも添付のマニュアル通りに設定を行なうことで、迷うことは無いだろう。既にWindows環境でネットワークを構築しているユーザーなら、既存のハブにInstant Giga Driveを接続し、ユーティリティソフトをクライアントPCに導入することで、自動的にネットワーク上に接続されたInstant Giga Driveを見つけだしてくれる。また、標準で「DHCPサーバー」機能を搭載しているので、DHCPサーバーとして各クライアントに対しIPアドレスの自動割り当てもできる。「DHCPクライアント」としての機能も併せ持ち、既に安価になった「ISDNダイアルアップルーター」等を導入済みの場合には、ファイルサーバー、プリントサーバーとして機能する。

Webブラウザ経由で簡単に制御できる一覧メニュー。ごく普通の管理者が行なうべきことは全て網羅されている
 一般的にこれらサーバー機能の設定や管理は、サーバー側でディスプレイを見ながら行なうというのが従来の方式であるが、Instant Giga Driveでは昨今の「ISDNダイアルアップルーター」同様にネットワークに接続されたクライアントPCからアクセスを許された任意の誰もがWebブラウザを通して、JAVAによる簡単な操作で管理運営が実現できる。

 専任のネットワーク管理者がいない個人や、中小のオフィス、部門ごとに簡易なファイル共有やプリンタ共有が必要とされる企業に最適なシステムだろう。HDDは出荷時にアクセスを許された管理者だけが見えるフォルダとそれ以外の全てのユーザーが見えるフォルダに分割されており、管理者はWEBブラウザを介してユーザーの権限をきめ細かく変更することも可能だ。初期設定後は、出荷時に規定されたパスワードを変更することで、一般的なセキュリティは保証される。

 現在筆者のHomeLANは初代の富士通製ルーターであるNetVehicle-Iから最新のPowerPCを搭載したNetVehicle-GX5に先頃置き換え、ワイヤレスLANの部分を除き100BASE-TX環境にアップグレードしている。どんどんハイパワーでインテリジェント化するルーターは、近い将来、今回紹介したInstant Giga Driveのような大容量サーバーとインテグレート、またハイブリッド化され、「SOHOサーバー」となるだろう。これらは常時接続のインターネットやケーブルTVのメディア・サーバーとなり、電機・ガス・水道等のライフラインのセンサー管理にも関与する時代がやってくる。メディアサーバーはデスクサイドではなく、給湯器の横などに目立つことなく鎮座し、「ホームノマド」(家庭内モバイルユーザー)はウエアラブルでシュリンクされたメディアブラウザをまとい、Home Gatewayサーバーにワイヤレスでアクセスする時代もそんなに遠くはなさそうだ。

 発売間近であるInstant Giga Driveの実売価格は米国版と大差無い8万円前後を想定しているようだ。TWOTOPが店頭およびオンラインで、バーテックスリンクがオンライン販売を行なう。1月下旬に出荷される初期ロットに関しては英語マニュアル+日本語簡易マニュアル付き。日本語マニュアル付き製品は2月下旬の出荷予定で、初期ロット購入者にはユーザー登録後、日本語マニュアルが送付される。
 保証期間が2年付き、トラブル時は交換品先送りが可能な「バックセンドサポート」も用意される。ネットワークの管理が趣味でない多くの個人、SOHOユーザーにとってInstant Giga Driveは価格性能比に優れたホームサーバー選択肢の筆頭候補となるだろう。出荷レベルの商品の到着が待ち遠しい。

□リンクシス・ジャパンのホームページ
http://www.linksys.co.jp/
□TWOTOPのホームページ
http://www.twotop.co.jp/
□バーテックスリンクのホームページ(Web販売)
http://www.vertexlink.co.jp/

(2000年1月18日)

[Text by ゼロ・ハリ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp