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プロカメラマン山田久美夫の

CASIO「QV-3000EX」β機ファーストインプレッション


 新年早々、世界初のパーソナル向け300万画素モデル「QV-3000EX」が米国で正式発表された。このモデルのβ版ボディーを、米国で実写することができたので、そのファーストインプレッションをお届けしよう。


●日常サイズでも自然な立体感のある高画質モデル

 まず気になるのはなんといっても300万画素機の画質だろう。

 まださほど枚数を撮影していないうえ、ノートPCの液晶上で見た範囲だが、「これはスゴイ!」というのが素直な印象。これまでは200万画素級モデルでも、そこそこ満足していた部分があるのだが、300万画素機はそれを確実に上回るだけのポテンシャルを秘めていると感じた。

 それは、単純な解像度の高さだけではなく、総合的な情報量の多さからくる“自然さ”であり、得もいわれぬ“立体感”が撮った画像から感じられる点だ。これは実際に使ってみて、しみじみと感じることができた。

 なにしろ、頭の中では、「A5判くらいにプリントしないと、200万画素機との違いが出ないのでは……」と予想していたのだが、それが液晶上で縮小表示しても感じられるのは意外な驚きだった。

 試しに、画像処理ソフトで縮小リサイズしてみても、その印象はさほど大きく変わらず、やはりCCDの高画素化により、情報量が増えた分、通常は差がでないようなケースでも、それを“感じる”ことができるのは大きな驚きといえる。

 これはちょうど、音楽CDのサンプリング周波数と倍音成分の関係に似たものがあって、なかなか興味深いものがある。たとえば、100馬力の車と280馬力の車では、100キロで巡行した場合、理論上は同じでも馬力の余裕が安心感として感じられる。

 少なくとも、300万画素級モデルは、単にプリント用途のためだけの高画素(高解像度)ではなく、ディスプレイ表示やWeb上など意外に日常的なシーンでも威力を発揮すると言える。

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●自然さを重視したバランスのいい絵づくり

 これらの印象は、いうまでもなく今回の「QV-3000EX」を使っての感想であり、今後登場する300万画素級モデルに共通するものではない可能性もある。

 その意味で、本機の絵づくりは、想像以上にバランスのいい仕上がりといえる。カシオは「QV-7000」あたりを境に画質がグンと向上しており、今回の「QV-3000EX」はその集大成的なバランスのとれたものとなっている。

 CCDは1/1.8インチの334万画素(有効画素数324万画素)の原色系タイプを採用。レンズは、自社製ではなく、キヤノンの手による大口径の3倍ズームを搭載。明るさもF2.0~2.5ときわめて明るく、サイズも十分にコンパクトだ。どうしても、家電系メーカーはレンズ光学系がネックになりがちだったが、本機のようにカメラメーカー系ブランドのレンズを採用するのも、大胆だが信頼できる割り切りといえる。

 これらはいずれも、ハイレベルな描写性能を備えているため、本機ではそのポテンシャルを素直に反映した絵作りに徹しているのだろう。特に、主要ユニットのポテンシャルが向上したことにより、他社を含めた従来機のように、ソフト的に強い輪郭強調をしなくても、きちんとした絵作りができるレベルになったからこそ、このような自然な画質を実現できたものと思われる。

 もちろん、意地悪をして、ディスプレイ上で等倍か、それ以上に拡大表示してみると、多少のノイズを感じることもあるし、従来機に比べて輪郭が甘く感じるケースもある。だが、このような条件はごく希なものであり、さほど意味のない限界性能を見ているに過ぎない。特に300万画素級モデルのように、画像サイズが大きなモデルでは無意味だ。

 本機の自然さは、このような極端な条件よりも、日常性を重視した絵作りになっている点が功を奏しているわけだ。

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●高画素を感じさせない軽快な使用感

 ボディサイズは、アメリカ市場を意識してか、若干大きめな印象だ。といっても、これはコンパクトカメラ風デザインに仕立てられているために大きく見えるが、200万画素3倍ズームの「ニコン COOLPIX950」よりもコンパクトだ。

 手にした感じは、意外と持ちやすく、とても軽量に感じられる。ただ、ボディの質感はもう少し高めたい。

 基本的な操作部は、QV-2000UXに近い。使用頻度の高い機能に専用ボタンが設けられているため、ボタンの数は多いものの、使い勝手はなかなか良好だ。

 起動時間は約3秒と、ズーム機としては高速だ。さらに、高画素化で懸念される撮影間隔も、2秒以下と短く、実に軽快。もちろん、大容量バッファに画像を貯めて処理するタイプだが、撮影後の待ち時間も短く、通常の撮影ではほとんどストレスを感じることはないだろう。

 また、再生表示も高速で、約0.5秒間隔で次々コマ送りができる。このあたりは従来からの同社のモデルの美点だが、本機でもその点はきちんと受け継がれている。

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●銀塩カメラと対等に語れる300万画素の時代

 「パーソナル向け300万画素機は、過剰性能なのか?」これは私にとっての一番の関心事だった。だが、本機を実際に手にして、その画質を見た範囲では、300万画素級モデルで初めて、画質面でデジタルカメラが銀塩カメラと対等に語れるようになったと感じた。もちろん、CCDの高密度化による実効感度の低下やダイナミックレンジの狭さも若干感じられるが、それ以上に、これまでのデジタルカメラでは得られなかった、自然な立体感のある写りを実現できた点は大きな進化といえる。

 また、300万画素機のトップバッターとなった本機が、妙にハイエンド指向ではなく、日常性を重視した絵作りになっていた点にも安心した。

 日本国内での発表時期や価格設定は不明だが、米国での999ドルという価格設定は、現行の200万画素3倍ズーム機と同等か、やや安価なレベル。もちろん、気軽に買える価格ではないが、手が届かないレベルでは決してない。むしろ、画質や軽快感を考えれば、十分にリーズナブルといえる。

 名機「QV-10」が発売されてから、今年3月で丸5年になる。この5年間で、デジタルカメラはここまで急速な進化を遂げた。

 そして、ここ数年、やや低迷気味だったカシオの自信作である「QV-3000EX」は、300万画素級モデルの幕開けを飾るに相応しいポテンシャルを秘めた、なかなか完成度の高いモデルといえる。もちろん、米国での発表を先行させたことからも分かるように、本機は巨大な米国市場を強く意識したモデルであるが、同等のモデルが日本国内でも発売されると思われる。

 だが、個人的には日本市場に特化した、よりコンパクトで高品位な、デジタルならではの楽しさを感じさせるカシオならではの300万画素QVデジタルの姿もぜひ見てみたい。

 いずれにしても、今年は300万画素級モデルが続々と登場し、いろいろな面で、より余裕を持ってデジタルカメラを楽しめる時代が訪れそうだ。


□米CASIOのホームページ(英文)
(1月5日現在、この製品に関する情報は掲載されていない)
http://www.casio.com
□関連記事
【1月5日】米CASIO、光学3倍ズームを備えた300万画素デジタルカメラ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000105/casio.htm


■注意■

(2000年1月5日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp