多和田新也のニューアイテム診断室

Radeon HD 4870の高クロックモデル「Radeon HD 4890」




 AMDは4月2日、シングルGPUビデオカードの最上位モデルとなる「Radeon HD 4890」を発表した。定評あるRadeon HD 4870をベースに、クロックを上げることで性能を伸ばしているのが売りとなる。本製品のパフォーマンスをチェックしてみたい。

●コア、メモリをそれぞれ1割前後クロックアップ

 Radeon HD 4890は「RV790」のコードネームを持つコアとなるが、基本的な設計はRadeon HD 4870/4850で使われている「RV770」コア踏襲している。55nmプロセスで製造され、SPやテクスチャユニット、ROPなども同数である。トランジスタ数はRV770の9億5,600万個から若干増えて9億5,900万個となっている。主な仕様は表1にまとめている。

【表1】Radeon HD 4890の仕様

Radeon HD 4890 Radeon HD 4870
プロセスルール 55nm
コアクロック 850MHz 750MHz
SP数 800基
テクスチャユニット数 40基
メモリ容量 1GB GDDR5 1GB/512MB GDDR5
メモリクロック 975MHz 900MHz
メモリインタフェース 256bit
ROPユニット数 16基

【写真1】Radeon HD 4890を搭載するGIGABYTEの「GV-R489-1GH-B」。リファレンスデザインを踏襲した製品で、外観はRadeon HD 4870のリファレンスとほぼ同じ

 基本的には高クロックモデルと言い切っても差し支えない製品といえる。コアクロックは750MHzから850MHzで約13%増し、メモリクロックは900MHzから975MHzで約8%増しとなっており、トータルでは10%前後の性能向上が期待できるレベルといえる。

 Radeon HD 4870ではAMDのリファレンス仕様として、ビデオメモリは512MBと1GBの2種類があった、Radeon HD 4890では1GBのみが用意される。もちろん、カードメーカーが独自に2GBモデルを投入する可能性もある。

 さて、今回のテストでは、GIGABYTEの同GPU搭載製品「GV-R489-1GH-B」を借用しているが、リファレンスデザインのRadeon HD 4870とほぼ同じデザインだ(写真1、2)。1GBのビデオメモリを搭載するが、裏面にはメモリチップを実装していない(写真3)。

 電源端子も6ピン端子×2が、Radeon HD 4870と同じ位置に搭載されている(写真4)。消費電力については、リファレンスボードのピーク時消費電力が190Wとなっており、Radeon HD 4870の160Wを上回る。同じ設計、同じプロセスのコアを高クロック動作させているのだから、これは妥当だろう。

 ただし、アイドル時消費電力はRadeon HD 4870の90Wから、60Wへと抑制されているとする。これは、Radeon HD 4800シリーズが持つ省電力機能であるATI PowerPlayの挙動が変わったためだ。

 ATI PowerPlayはアイドル時にコアクロックを落とすことで電力を抑制する機能となる。Radeon HD 4870では最低動作クロックが500MHzに設定されており、定格クロックからの低下量が少ないことで、効果が今ひとつという印象を拭えなかった。Radeon HD 4890では、この最低動作クロックが240MHzと、定格動作の3分の1以下まで下がるようになった(画面1)。これにより公称のアイドル時電力が低下したわけである。

【写真2】ブラケット部はDVI×2、TV出力と一般的な構成 【写真3】1GBのビデオメモリを搭載するがメモリチップは表面の8枚のみとなる
【写真4】電源端子は6ピン×2を装備。Radeon HD 4870と同じである 【画面1】ATI OverDriveの画面で、アイドル時のクロックを確認すると240MHzまで下がっていることが分かる

●Radeon HD 4870からの性能向上具合をチェック

【写真5】Radeon HD 4870を搭載する、GIGABYTEの「GV-R487D5-1GD」。ビデオメモリは1GB搭載

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。テスト環境は表2に示した通りで、ここではRadeon HD 4870の1GBメモリ版を比較対象とした(写真5)。Radeon HD 4890のドライバはGIGABYTE製品に付属していたものを使用。ただし、このドライバはRadeon HD 4870では利用できなかったため、こちらはAMDのWebサイトからダウンロードした最新版を使用している。

【表2】テスト環境
ビデオカード Radeon HD 4890 Radeon HD 4870
グラフィックドライバ Driver Package Version.8.59-090204a-076050E Driver Package Version.8.591-090225a-076828C-ATI
(CATALYST 9.3)
CPU Core 2 Extreme QX9770
マザーボード ASUSTeK P5Q Pro(Intel P45+ICH10R)
メモリ DDR2-800 1GB×2(5-5-5-18)
ストレージ Seagete Barracuda 7200.11(ST3500320AS)
OS Windows Vista Ultimate Service Pack 1

 「3DMark Vantage」(グラフ1~2)の結果は、Radeon HD 4890が4870に対しておよそ13%程度性能を伸ばす結果となった。これは解像度や条件であまり変化が無く、非常に安定した性能向上を見せている。Feature Testの結果も似たようなものであるが、バーテックスシェーダによる演算負荷が高くなるGPU Particlesでは、ほかと比べやや性能が伸び悩む傾向が見られ、およそ12%の伸びとなっている。

【グラフ1】3DMark Vantage Build 1.0.1(Graphics Score)
【グラフ2】3DMark Vantage Build 1.0.1(Feature Test)

 「3DMark06」(グラフ3~5)の結果は3DMark Vantageほどの大きさではないが、およそ11%前後の性能向上で安定している。HDR/SM3.0テストで顕著だが、アンチエイリアスと異方性フィルタを適用したときのほうが性能向上の度合いが大きめに出ており、ビデオカードとしてのポテンシャル向上を感じさせる結果だ。

 Feature Testでは全般に13%程度の性能向上となっており3DMark Vatangeに近い伸びを見せるが、こちらも同様にShader Particlesで8%程度の伸びに留まった。いずれもパーティクルを使って描画行なうバーテックスシェーダへの演算負荷が高まるテストであり、この類のテストでスコアが伸び悩む結果が共通している点は覚えておきたい。

【グラフ3】3DMark06 Build 1.1.0(SM2.0)
【グラフ4】3DMark06 Build 1.1.0(HDR/SM3.0)
【グラフ5】3DMark06 Build 1.1.0(Feature Test)

 「Call of Duty:World at War」(グラフ6)も、わりと安定したスコア向上を見せている。ただし、3DMark06で見られたようなフィルタ類の適用や解像度による性能向上度合いの変化は見られない。

【グラフ6】Call of Duty :World at War

 「Crysis Warhead」(グラフ7)は性能が伸び悩んだアプリケーションだ。大きいところでは15%のスコア向上が見られる一方で、まったくスコアが伸びなかったところもある。ここまでスコアが伸びなかったのは本アプリケーションのみであり、ビデオカードのポテンシャルが引き出されていない印象すら受ける。ドライバで改善できるものならば、今後のチューニングに期待したいところだ。

【グラフ7】Crysis Warhead

 「Enemy Territory: Quake Wars」(グラフ8)は全般に10%弱程度のスコア向上が見られる。CoD WaW同様、フィルタ適用や解像度による傾向に明確な違いは見られない。他のアプリケーションに比べると差は大きくないが、確実にスコア向上が見られるといえる。

【グラフ8】Enemy Territory: Quake Wars(Patch v1.5)

 「Far Cry 2」(グラフ9)も、5~11%程度のスコアの伸びで、ほかのアプリケーションに比べると差は大きくない。ただ、フィルタ未適用時は5~8%程度のスコア差であるのに対し、フィルタ適用時は8~11%のスコアの伸びを示すという傾向の違いがある。また、解像度が高いほどスコア差を広げる傾向が出ており、Radeon HD 4890ならば高クオリティ時でも性能低下が抑えられるという明確な結果が出ている点は面白い。

【グラフ9】Far Cry 2(Patch v1.02)

 「Left 4 Dead」(グラフ10)はゲームエンジンのアップデートにより、これまで使っていたdemoファイルが使えなくなったため、新しくプレイデモを収録し直した。よって、従来の結果との比較ができないので注意されたい。結果は3~9%のスコア差と、今回のテストタイトルのなかでは、スコアの伸びがもっとも小さいアプリケーションとなった。

【グラフ10】Left 4 Dead

 「LOST PLANET COLONIES」(グラフ11)はとくにAREA1で良好な結果を見せ、負荷が高いテスト条件では17%を超えるスコア差を出した。小型のオブジェクトが動き回るデモとなるが、これにフィルタ類を適用するとROP以下の負荷が高くなる。メモリクロックの向上が功を奏した結果だと想像される。一方、AREA2のスコアは明確な傾向がない状況で5~14%の差とバラつきが大きい。

【グラフ11】LOST PLANET COLONIES(DX10,Patch v1.0.2.0)

 「Tom Clancy's H.A.W.X」(グラフ12)は今回からテストに加えた。アプリケーション内に用意されたパフォーマンステストは、海岸沿いの都市上空を飛び回るフライスルーのデモと、実際に戦闘機が登場するデモの2シーンからなり、結果は最大fpsと平均fpsが示される。ちなみにDirectX 10.1に対応するオプションも用意されるが、GeForceとの比較も考え、ここではオフにしている。

 結果は最大で15%近いスコア差となった。とくに高解像度、フィルタ適用など描画負荷が高いほどスコア差が広がる傾向が明確に出ており、Radeon HD 4890の良さがはっきり出ている。

【グラフ12】Tom Clancy's H.A.W.X

 「Unreal Tournament 3」(グラフ13)はPatch 2.0を適用。さらに、これまではHeatRayデモを使ってテストしていたが、今回から、より描画負荷の高いShangli-raデモへ変更した。よって、過去の結果と比較できないので注意してほしい。

 結果は最大で10%程度の伸び。Left 4 Deadもそうだが、WUXGAでも平均で100fpsを超えるようなアプリケーションであり、伸びの大小が使い勝手に劇的な変化をもたらすものではない。今回のテストのなかでは伸びが小さいアプリケーションとなっているが、スコアが少しでも上がったという事実のみを捉えておけばよいだろう。

【グラフ13】Unreal Tournament 3(Patch v2.0)

 最後に消費電力の計測である(グラフ14)。ここでの要点は2つ。1つはピーク電力は確実にRadeon HD 4890の方が高いということ。これは、冒頭でも触れた通り同じプロセス、同じ設計のコアを使った高クロックビデオカードということで、当然の結果だ。30W近い電力アップは公称どおりといえる。

 一方、アイドル時の電力は大きくは下がらなかった。ATI OverDriveではコアクロックが240MHzまで下がっていることを見て取れるが、それが電力にほとんど反映されていない結果になっている。意外な結果といえる。

【グラフ14】消費電力

●安定した性能アップを果たしたRadeon HD 4890

 以上の通りRadeon HD 4890の結果を見てくると、アプリケーションにより多少の違いはあるものの、総合的にはRadeon HD 4870から10%強の性能向上を見て取ることができた。コアクロック、メモリクロックの上がり幅から見ると、妥当なところだろう。

 一方、省電力機能の強化にも期待がかかったが、こちらはそれほど大きな効果を見ることができなかった。ピーク消費電力の向上の方が大きく、この点は性能向上のトレードオフとして受け入れる必要がある。

 価格は260ドル以下とされている。為替レートを考えると3万円以下が見込める設定だが、現在のRadeon HD 4870の価格を考えると、3万円前後が当面の相場になるのではないだろうか。アーキテクチャにRadeon HD 4870と大きな違いがなく、登場のインパクトが決して大きくないRadeon HD 4890だが、3万円前後という手が伸ばせる価格帯のハイエンドビデオカードとして面白い存在になっている。

□関連記事
【2008年6月30日】AMDの新ハイエンドGPU「Radeon HD 4870/4850」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0630/tawada144.htm
【2008年6月25日】AMD、1.2TFLOPSの演算能力を持つRadeon HD 4870
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0625/amd.htm

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(2009年4月2日)

[Text by 多和田新也]


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