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ハンファ・ジャパン「DUO for laptop」レビュー
~1万円弱でノートがタブレットPCに

製品本体。USB接続の受信ユニット部と専用ペンで構成される

発売中

直販価格:9,980円



●液晶画面に取り付けることでノートPCをタブレットPC化

製品パッケージ。同社の直販ブランド「UMAZONe」(うまぞん)での取り扱いとなり、直販価格は9,980円。対応OSはWindows XP/Vistaとなっている。ちなみにパッケージに写っているのはホワイトだが、実際の製品はブラック

 ハンファ・ジャパン株式会社が販売する「DUO for laptop」は、ノートPCの画面上部に受信ユニットを取り付けることにより、液晶画面をタブレット化できるアダプタだ。直販価格は9,980円で、ギリギリ遊びで買える範囲と言えるだろう。今回試用品を入手したので、早速レビューをお届けしたい。

 製品本体は、USB接続の受信ユニット部と専用ペンで構成される。受信ユニット部はWebカメラの台座部分のような形状をしており、サイズもほぼ同程度。液晶画面のベゼル部に取り付けて使用する。取り付け位置は液晶上部が基本だが、実際には画面上部のほか、両側面への取り付けも可能だ。

 専用ペンは電池を内蔵しており、ペン先を押し込むと左クリックの動作になる。つまり液晶画面に押し付けるとクリックになるわけだ。また、側面のボタンは左クリックと右クリックが行なえる。これらペンの機構や使い勝手は、タブレット市場でデファクトスタンダードになっているワコムのタブレットに付属するペンと非常によく似たものになっている。

受信ユニット部。Webカメラの台座のような形状をしている。液晶画面の背面にマグネットのパーツを取り付け、そこに貼り付けることでPC本体に取り付ける 受信ユニット部のリアビュー。出っ張りのないスッキリした形状 USBコネクタ部。大き目のUSBメモリ程度のサイズ
専用ペン。指先の部分に左右クリックボタンを備える。先端は画面タッチ用の芯のほか、ボールペン芯も用意されている ワコムのタブレット intuos3 PTZ-630に付属するペン(下)との比較。全長はかなり異なるが、仕組みはほぼ同じだ 専用ペンは電池を内蔵しており、無線マウスに近い役割を果たす。電池は1日1時間の利用でおよそ1カ月間持つとされている
日本エイサーのAspire oneに接続したところ。専用ペンの芯との相性は、ノングレアタイプの液晶より、Aspire oneのようなグレアタイプの液晶のほうが優れている 液晶画面上部に装着された受信ユニット部 背面から見たところ
マグネットで取り付けているため、取り外しも容易 取付用のマグネットパーツ。液晶裏面には両面テープで取り付ける 電源はUSBによるバスパワー供給

 導入手順だが、ユーティリティをインストールしたのちに受信ユニット部をノートPCのベゼル部に取り付け、その後専用ペンを用いてキャリブレーション(同期)作業を実施するという流れになる。所要時間は5分程度だが、キャリブレーションにそこそこの手間がかかるのと、画面のサイズを設定する必要があるため、一般的なPC周辺機器と比べると煩雑な印象だ。

 もっとも、手間がかかるのはここだけ。キャリブレーションが完了したあとの利用方法は、マウスとまったく同じ。ペン先および左右クリックボタンを利用することで、クリック、ダブルクリックのほか、ドラッグなども行なえる。ただしマウスの代替というわけではないので、スクロールの機能などは用意されていない。

ユーティリティのインストール画面。インストーラはおおむね日本語化されているが、マニュアルやソフト類はすべて英語となっている。国内製品よりはハードルが高いことはあらかじめ認識しておいたほうがよさそうだ
【編集部注】製品版には日本語のセットアップマニュアルが付属します
受信ユニット部を接続したのち、まずはキャリブレーション(同期)を行なう ノートPCの画面サイズを設定する。ラジオボタンでの選択もできるが、下段のユーザ定義欄にサイズを入力したほうが、正確なキャリブレーションが可能になる
【動画】ThinkPad X60sでキャリブレーション処理を行なっている様子。そこそこ時間がかかる

●各種ソフトやアドインで、タブレットPCに近い利用スタイルを実現

 本製品は、受信ユニット部が超音波と赤外線でペンの位置を検出し、画面上にプロットするという仕組みになっている。座標検出はかなり正確で、前述の画面サイズ指定とキャリブレーションをしっかりと行なっていれば、まさにタブレットPCという操作感覚だ。今回本製品をインストールしたThinkPad X60sはベゼル上部にヒンジが飛び出ており、ちょうど受信ユニット部に覆いかぶさるような形状になっているのだが、干渉することもなく正常に動作した。

 手書きに関連するソフトウェアについては、OSもしくはアプリケーション(Officeなど)に該当の機能が付属していればそれを利用し、付属していなければ添付ソフトで補完する構成を基本としている。例えば、手書きでメモを取る機能については、Vista Home Premium以上のOSでは標準添付の「Windows Journal」を使用し、それ以外のOSでは本製品に添付されるソフト「DUO Ink Note」を使用するといった具合だ。ほかにも、Office 2007に注釈機能を追加する「DUO Ink Tool」や、手書きでメモが取れる「DUO board」などのソフトが付属している。

ノートPCの液晶画面に取り付ける以外にも、バインダーに挟んだり、紙に挟んで机上で利用することも可能だ 紙を挟んで利用する場合、この画面で紙のサイズを指定する。任意サイズが指定できないのは残念 手書き専用のアプリケーション「DUO BOARD」。ノートや原稿用紙を模した背景パターンを呼び出し、手書きでメモを取ることができる。矩形ツールも用意されているが、塗りつぶしなどはできない
Office2007用のアドイン「DUO Ink Tool」を表示させた状態。Word、Excel、PowerPointに手描き機能を追加できる Excelの表に手描きでマーキングをしているところ。これは描画画面で、この状態ではセルの編集は行なえない 描画画面を終了させると、もとのExcelの編集画面に復帰し、手描きのマーキングはすべてオートシェイプに変換されて表示される

 1つ注意したいのは、手書き文字をテキストデータに変換する、いわゆる文字認識機能については、添付ソフトが用意されておらず、OS側にこれらの機能がないXP HomeやVista Home Basicでは利用できないことだ。後述の通り、本製品ではペンを高速に動かすとカーソルがワンテンポ遅れて付いてくるという問題もあるため、手書きですばやく書き留めた文字をテキストデータに変換するという使い方には不向きだ。試用していても、文字認識機能そのものがあまり重要視されていないと感じた。

 このほか、ペンでジェスチャ操作を行なう「pen gesture」、簡易な付箋機能「Sticky Notes」などのソフトはVista Home Premium以上でないと使用できないので、本製品の機能をフルに活かすのであれば、Vista Home Premium以上のOSとの組み合わせをお勧めする。ちなみにこれらソフトウェアはCD-ROMからのインストールが必要になるので、ネットブックなど光学ドライブの無いPCに導入する場合は注意したい。

 また、専用に開発されたタブレットPCやクリエイティブ用途のタブレットに比べると、後付けの製品であるが故の操作性の難点も存在する。例えば、ペン先を画面から離した際、一般的なタブレットであれば、画面から1~2cm離したところでカーソルは静止するが、本製品の場合は数cm離してもまだ動いてしまう。Z軸(画面に対して前後)への移動を、Y軸(画面に対して上下)への動きとして拾ってしまうため、書き終えたつもりがズルズルと線が引かれてしまうことがあるのだ。Z軸方向の感度が調整できるよう、ユーティリティ側の改善を期待したいところだ。

 加えて、カーソルがピタッと止まってくれず、つねにビリビリとブレたような状態になる場合がある。CRTや光学マウスが近くにあると影響を受けやすいとのことだが、いろいろと試してみた限りでは、受信ユニットとベゼルとの間になるべく空間を設けないようにすることでブレが改善される場合があるようだ。これから購入される方は参考にしてほしい。

●高精細なクリエイティブ用途には厳しいが、手書きのタッチを出すには十分

 本製品に興味を持つ方の何割かは、クリエイティブ用途に使えるかどうかに注目されているのではないかと思う。実際に使ってみた限りでは、マウスよりは圧倒的に使いやすいが、専用のタブレットほどの使い勝手を求めるのはちょっと酷、という評価になる。

 上記の評価の根拠となるのはおもに2つだ。1つは筆圧感知に対応していないこと。付属マニュアルのFAQによると「開発中」だそうだが、現時点では本製品は筆圧感知に対応しておらず、基本的に始点から終点までの太さが均一な線しか引けない。フェルト芯はかなり固めで、描き心地は油性マーカーのそれに近い。なので、筆圧感知に対応したアプリケーション、具体的にはPhotoshopなどと組み合わせても、残念ながら恩恵は受けられない。

 もう1つはカーソルの動作速度の問題。本製品では、カーソルがほんのわずかペン先に遅れて着いて来るという特徴があるため、高速でペンを動かしていると、ペン先とカーソル位置にズレがあるように感じられてしまうのだ。ユーティリティ側で調整することにより、精度とスピードのどちらを優先するか選択できるのだが、もともとの精度がそれほど高くないようで、ストレスが溜まりやすい。

 そんなわけで、高精細なイラストの作成には不向きだが、もう少しラフなタッチであれば、これはもう十分に使える。例えばPhotoshopで細部の切抜きを行なったりするのは無理でも、ラフスケッチを描く分にはまったく問題ない。タブレットに興味はあるが、わざわざ買うのは抵抗があるというユーザが試すには、ぴったりの製品だと言える。

本製品は筆圧感知には対応していないが、擬似的なタッチの表現を変更することは可能。受信ユニットの取付位置についてもここで設定する 付属のユーティリティは英語版。項目数はそれほど多くはないが、タブレットに慣れていないとやや煩雑に感じるかもしれない ユーティリティが起動した状態では、カーソルの先端に十字のマークが付く

●アンチグレアタイプの液晶での利用には一工夫が必要

 今回は2台のノートPC(ThinkPadとAspire one)にインストールしてみたが、わずか5分程度のインストール作業を経て、これら手持ちのノートPCがタブレットPCと同じように使えるようになったことには、ちょっとしたカルチャーショックを受けた。前述のZ軸方向への感度が高すぎることなど、クセのある製品であることは事実だが、これが実売1万円以下で買えてしまうことには驚きを禁じ得ない。

 性能についても、さすがに高精細なグラフィック用途では厳しいと感じるが、ラフを書いたり、書類にぐりぐりと印をつけるといった用途には十分に使える。感覚的に近いのは、PowerPointのペン機能だろうか。書類に注釈を書き込んだり、手書きでメモを取るなど、用途は幅広く、工夫次第でさまざまなシチュエーションでの利用ができそうだ。

【動画】Aspire oneで「DUO BOARD」を起動し、手書きで文字を書いている様子

 あえて難を挙げるのであれば、前述の通り添付ソフトがややこしく、OSごとの対応がわかりづらいことと、手書きのメモを取る機能などに重複が見られるように感じられることだろうか。また、画面サイズが15.4型以下に制限されているためだと思われるが、一部の大画面ノートは非対応とされているので要注意である。同社サイトに非対応機種リストが掲載されているため、購入前に必ず確認することをお勧めする。特に、東芝のSatellite系とVAIOに非対応機種が多いようだ。

 最後になったが、本製品を導入する際には、手持ちのノートPCの液晶との相性に気をつけたい。グレアタイプの液晶であれば、表面にコート処理が施されているためにペンをなめらかに走らせることができるのだが、アンチグレアタイプの液晶はそうはいかず、ドラッグするたびに表面がキキキッとイヤな音を立ててしまう。今回試用した機種でいうと、グレアタイプのAspire oneでは軽快に使えたが、アンチグレアタイプのThinkPad X60sでは使い心地に難があった。どうしてもアンチグレアタイプの液晶と組み合わせるのであれば、ペンを滑らかに走らせるために、また液晶表面の保護のためにも、液晶フィルタや保護フィルムをあわせて導入するなど、一工夫することをお勧めしたい。

□ハンファ・ジャパンのホームページ
http://www.hanwha-japan.com/
□製品情報
http://www.umazone.jp/Page/GOODSDETAIL-166
□関連記事
【3月18日】ハンファ、9,980円のノートPCペンタブレット化アダプタ
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(2009年3月27日)

[Reported by 山口真弘]

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