イラストレータYOUCHANのワコム「Intuos4」レビュー
4月3日 発売 ワコムのグラフィックタブレットシリーズの最新モデルとなる「Intuos4」が、4月3日に発売される。タブレットは丈夫な入力デバイスである上、機能がシンプルなので、一度購入したら古いモデルをずっと使うユーザーも少なくない。だが、このたびリリースのIntuos4は従来モデルと一線を画している。その評価機を借用できたので、レビューをお届けする。 なお、レビューにあたっては、Windows XP PCに接続。試用期間中に主に使用したアプリケーションは、Adobe Photoshop CS3、Adobe Illustrator CS3、Corel Painter Xである。 ●ブラックでまとめられた外観
新モデルの本体サイズは、従来の「A5」、「A4」といった呼称から「S」、「M」、「L」、「XL」に変更となった。筆者がこれまで使っていたのは「Intuos3 PTZ631」という、A5サイズ・ワイド画面対応モデルだが、Intuos4ではLが近いサイズとなる。ちなみに、Lサイズは10キー付属のキーボードとほぼ横幅があっている。 本体パネル部分は艶があり、ファンクションキーやホイールなど直接触れる部分はマット仕上げになっている。ペンも本体もブラックに統一されて、スタイリッシュで格好良い。ただ、ペン軸のラバーは埃を吸着しやすいため、使っているとスグに埃っぽく白くなってしまった。前モデルのグレーのラバーでは、あまり目立たなかっただけに残念だ。 その代わりと言っては何だが、いつもコロコロ転がってしまうペン立てが存在感を増している。サイズが大きくなり、底には換えのペン軸と軸抜きが保管できるようになった。これで収納に困っていた、こまごました小物がひとまとめに出来る。こんな小さな工夫が嬉しい。
●利き手を考慮したシンメトリックデザイン
Intuos4の最大の変更点は、利き手に合わせて本体の向きを決められる「シンメトリックデザイン」になったことに尽きるだろう。これまでは、ファンクションキーやトラックパッドが本体の両サイドに搭載されていたため、ペンを持つ手がパッドに当たって誤作動を起こしやすかった。そのため、ドライバインストール後に、利き手側のパッドを無効に設定するユーザーも少なくなかった。これに対し、Intuos4では、パッドの位置が片側だけに集約され、さらに利き手に合わせて本体の向きを変えられるようになったため、ファンクションキーが利き手の反対側に来るようになった。 本体の向きを決定づける重要な「利き手」については、ドライバをインストールする際に設定する。この設定は、タブレット使用中にプロパティー画面からいつでも変更することが可能である。 ファンクションキーが片側に集約されるなど、デザイン的な変更が大きいが、コマンド名が有機ELディスプレイに表示される点も大きな改善点だ。前モデルでは、ファンクションキーのメニュー表示が一切無かったので、使いこなしが難しかったが、表示のおかげで割り当てがすぐに分かるし、割り当て変更の際にも、リアルタイムに表示が変更される。本体の向きに合わせて文字が反転表示されるのも、有機ELディスプレイ搭載の恩恵であろう。ちなみに、この有機ELディスプレイは省エネ設計になっており、しばらくタブレットの使用がないとOFFになり、ペン先が触れるなどすると表示がONになる。 タブレット本体の向きは、利き手によって異なるが、ケーブルの位置も場合によっては邪魔になる。これまでのタブレットは、ケーブルが本体と一体だったが、Intuos4ではケーブルの脱着が自由にでき、そのコネクタも2個用意された(XLを除く)。また、コネクタは、本体裏面のスライダを動かして、使用しない接続部が露出しないようカバー出来る。こういった細かな点も、ストレスなく使う上で重要なポイントだ。
●これは使える! ファンクションキー ドライバのインストールが終わり、実際にタブレットを使ってみると、ファンクションキーやトラックパッドの誤操作がないことに驚く。ファンクションキーには、その名の通りさまざまな機能を割り当てることが出来、画面スクロールはトラックパッドを指先でなでるだけで済む。これにより、キーボードやマウス操作が減り、ひいては作業ストレスも軽減できる。
ところで、これはタブレットをどう設置するかに大いに関係のあることだが、筆者はディスプレイの手前にキーボードを置き、その手前にタブレットを置いて使用している。Intuos3では、タブレットの奥のキーボード操作をしているとき、トラックパッドに袖口が当たってスクロールが利いてしまい、意図しないところで画面が揺れるといった不具合が多発した。せっかくの機能なのに、結局全てのファンクションキーとトラックパッドを「無効」にしてタブレットを使うしかなかった。 Intuos4にもファンクションキーが採用されているので、また無効にしなくてはならないのかと、当初はため息混じりに思った。ところが使ってみると、普通のキーボード操作で袖が当たる程度では全く不本意な動作はしなかった。Intuos4のファンクションキーは、指の腹でしっかりクリックしなければ利かないし、ホイール部はただ触るだけでは動作しない。それどころか、このファンクションキーは、タブレットの価値観をがらりと変えてしまうほど重要な働きをすることを、ほどなくして実感するに至った。 ●完成度の高いデフォルト設定
まず、左側に置いたとき手前に来る4つのファンクションキーは、デフォルトで「Shift」、「Ctrl」、「Alt」そして「手のひらツール」が設定されている。これらは、グラフィックソフトユーザーにとって頻度の高いショートカットである上、有機ELディスプレイでコマンド名が表示されているので、ストレス無く使いこなすことが出来、スグに使いこなせるようになった。別のコマンドを割り当てたい場合は、ユーティリティ画面のプルダウンからメニューを切り替えると、リアルタイムに変更出来る。先にも書いた通り、ファンクションキーを活用することで、作画中のキーボード操作が減り、タブレットから手を離す頻度が減った。 残りの4つのファンクションキーの内1つは、デフォルトで「コピー」、「貼り付け」等よく使うコマンドを選べる「ラジアルメニュー」が割り当てられている。これを選ぶと、画面上に円形のメニューがポップアップする。ラジアルメニューを活用することで、キーボードに触れずにコマンドが完了できるので、これもまた作業の効率化が期待できる。ただ、ポップアップはペン先が当たっている場所を基軸にして現れるため、2段階目で画面の外に出てしまうことがある点や、目的を達成するまでに2段階クリックが必要になるので、直感的とは言い難く、慣れが少々必要かと思う。 ●直感的な作業を支援するタッチホイール
ファンクションキーに挟まれた、中央の黒く丸いタッチホイールは、直感的な作業に割り当てられている。丸いホイールを指の腹でぐるぐる回すと、ペンを持つ手を離すことなく、ブラシサイズが変更できたり、画面のズームイン/アウトが行なえる。この操作感が絶妙で、個人的に手放せない機能である。 中でもブラシサイズの変更がすばらしい。アナログでの作画では太さの異なる筆を何本も用意して描いたものだが、この作業をホイールを回すだけで完了できるのだ。それどころか、太さがシームレスに変更できる点においては、アナログ以上の機能だと感じた。 これらの機能は、ソフトウェア側で対応している必要があるが、Photoshop CS4のユーザーなら、キャンバスの回転まで含めてフル活用できるし、Photoshop CS3やPainter Xでもブラシサイズの変更とズームは対応しているので、十分に堪能することが出来る。今後発売されるグラフィックソフトの新バージョンには順次対応されてゆくことと思うので期待したい。 唯一残念なことは、タッチホイールにLED表示がない点と、円形に沿ってモードが切り替えられているので、今どの機能を指しているのかがわかりにくい点で、これには不便さを感じた。 ちなみに、筆者が試したアプリケーション別の対応状況は以下の通りである。
●描き心地の向上 前モデルまでは、摩擦の大きなフェルト芯に差し替えなくては、ペン先がつるつると滑って使いにくかったが、Intuos4のデフォルト環境では、描画エリアに敷くオーバーレイシートとペン先とに、ちょうどよい摩擦があり、変更する必要を感じず、書き味が改善されていると実感した。ちなみに、本体には標準のポリアセタール5本以外に、ハードフェルト3本、エラストマー1本、ストローク1本の換え芯が用意されている。 筆圧に関しては、個人的にはデフォルト設定がやや柔らかすぎると感じたが、その変更もリアルタイムに行なえるため、作業途中でもアプリケーションを終了することなく「試し書き」の感覚で設定できる。
●総括。これは「買い!」 Intuos4では大幅なチューンナップが図られ、タブレットの使い方そのものが大きく変わったことを実感した。また、デフォルト設定が、実に研究されていることも高く評価したい。ドライバをインストールして、本体につなぐだけで、即戦力として十二分に役に立つべく、初めから設定されているのは実に気持ちがよい。 それから、これは個人的な見解になるが、2週間の試用期間中、肩こりが激減した。それまでショートカットのため、左手を伸ばしてキーボードに添えていたが、身体を軽くよじることになり、姿勢に無理がかかっていたのだと思う。そんな主観的な見解を評価に入れなくとも、ファンクションキーの便利さと、タッチホイールによるシームレスなブラシサイズ変更は、代え難い魅力に満ちている。作業効率アップに大きく貢献するモデルとなった。全タブレットユーザー必携である。 □ワコムのホームページ (2009年3月26日) [Reported by YOUCHAN]
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