ひねってスクロールする「SlimBlade Trackball」レビュー
発売中 価格:129.99ドル
2008年末以来、トラックボールの新製品投入が相次いでいる。ロジクールが既存の製品をリフレッシュしたり、サンワサプライが大玉のトラックボールを投入してきた。中でもトラックボールユーザーの期待を一身に受けているのがKensingtonの「SlimBlade Trackball」(以下SBT)だろう。 SBTはボール+4ボタンのオーソドックスなトラックボールに見えるが、ユニークな機能としてボールを左右にひねることでマウスのホイールと同じようにスクロールできる。ただし、中クリックはない。また左上と右上のボタンで、それぞれメディアプレーヤー機能とドキュメントビュワー機能へアクセスできる。 本体サイズは約132×150×30mm(幅×奥行き×高さ、ボールを除く)、重量は約303g。ボールの直径は約55mm。分解能は公開されておらず、dpiは切り替えできない。 これまでのトラックボールは、ホイール機能無しや、別途ホイールを搭載した製品ばかりだった。Kensingtonの「Expert Mouse 7」でもボールの周囲にホイールを配していたが、今回の製品ではその機能をボールに統合してよりスマートな製品になっている。 ●スタイリッシュなハードウェア 具体的に製品を見ていこう。 ご覧の通り、筐体は鏡面仕上げのグラファイト。これにベージュのラバー系パーツを組み合わせ、ボールはルビーレッドだ。ティザーサイトでは筐体カラーがかなり黒に近いが、それよりは明るい色合い。また、ボールの周囲を取り囲むパーツはシルバーになっている。 側面から見ると、台座部分に薄いトップを重ねた形状になっていて、なるほど名前の通りスリムな印象だ。実際の製品は小柄で、キーボードの奥行きより一回り小さいくらいだ。左側面のタブ風のパーツは、同社製品とのドッキング用のガイド。右側面には同様のスリットが設けられている。 PCとの接続インターフェイスはUSB。ケーブルはファブリックタイプで柔らかい。背面を見ると、ボールが覗ける穴が開いている。その周囲にはラバーがあり、4つのラバー製の足と合わせて、本機をしっかりとホールドする。ただ、ボール周りのラバーにはゴミがたまりそうなのが気になる。 総じてスタイリッシュな面持ちだが、鏡面仕上げということで、表面への指紋の付着が気になるかもしれない。ただし、グラファイトなのでブラックよりは指紋が目立ちにくいようだ。
ボタンは左下が左クリック、右下が右クリック、左上がメディアモード起動、右上がビューモード起動として機能する(後述)。中クリックがないため、タブブラウザなどで多用するユーザーには少しつらい配置になっている。 ボタン内部のスイッチはボールの中心から垂直水平から45度ずれた辺りに設定されている。そのため、ボタンの端の方を押すと天板がたわんでストロークが深くなってしまう。結果としてクリック感が良くないという印象になる。スイッチの真上に指を意識的に配置する必要がありそうだ。 トラックボールの要である、ボールを支える“支持球”はルビー製。トラックボールの回転は一級のスムーズ性を確保し、心地よく利用できる。センサーはレーザー式を2基搭載する。
さて、本機の最大の特徴であるひねりによるスクロール機能だが、基本的にスムーズに回転するクリック感のないタイプだ。ロジクールの「MicroGear プレシジョンスクロールホイール」ほどではないが、勢いをつけるとそれなりの行数をスクロールできる。とは言え、複数の指を用いる必要があり、一般的なマウスと比べると疲れるかもしれない。 スクロール機能は通常のポインタ操作と排他的に動作しないため、ひねりによってある程度カーソルがブレる。乱暴に回すとカーソルは飛んでいってしまうが、うまくひねれば、勢いをつけた場合でも2~3cm(24型WUXGAのディスプレイ)のブレに収まる。 また細かなギミックとして、ボールをひねると小さな「かりかり」という効果音が本機から発生するようになっている。その効果音1回がスクロール1回に相当するので、それをカウントすることでクリック感が無いひねり動作でも意図通りにスクロールすることができる。 結果として、指一本で扱えるホイールには及ばないものの、十分快適に使えるスクロール機能を提供している。
●機能面には難点も ハードウェアの作りは良いものの、ソフトウェアを含めた機能面ではやや残念な仕上がりになっている。 前述の通り、本機は通常状態のナビゲーションモードから、左上クリックでメディアモードに、右上クリックでビューモードに入ることができる。これらのモードへ入ったり、各機能を利用すると、画面上にオーバーレイでアイコンが表示される。 メディアモードでは、再生/一時停止(左下)、停止(右下)、音量調整(ひねり)、トラックの進む/戻る(ボールの左右)という機能が利用できる。音量調整はマスターボリュームを変更する。しかし、これらの機能をサポートしているのはiTunesのみだ。一応、Windows Media Playerでも再生/一時停止/停止などは機能する。
ビューモードでは、ドキュメントを100%のサイズで表示(左下)、ドキュメントをウィンドウ幅に合わせて表示(右下)、ズームイン/アウト(ひねり)、ドキュメントのスクロール(ボール)という機能が利用できる。これらの機能は、ExcelやWord、Internet Explorer、Firefox 3、Acrobat、Photoshopなどで利用できる。
メディアモードの各機能はキーボードに搭載されていることが多く、わざわざポインティングデバイスに搭載する必要はなかったと思う。そういった機能を搭載したマウスが一般的ではないことを考えると、同社の方向性にずれを感じた。 ビューモードについても、通常のモードでスクロールが可能だし、拡大縮小は多くのアプリケーションにおいてCtrl+スクロールで可能なため、わざわざビューモードに入る必要性を感じられなかった。 普段の使い勝手を考えると、左上に中クリック、右上に「戻る」や、左クリックを押しっぱなしにしてドラッグ&ドロップをサポートする機能を搭載すべきだっただろう。 ボタンの設定をそうカスタマイズすればいいと思うが、本機の公式ドライバは各ボタンをカスタマイズできない前時代的な仕様になっている。 ●日本版の登場とソフトの改善に期待 とは言え、ボタンをカスタマイズできないという問題については心配無用だ。ネット上では既に、カスタマイズツールが流通し始めている。メーカー保証外だが、それを利用することで、中クリックや戻るを設定し、ポインティングデバイスとして必要十分な機能を利用できる。 本機の価格は129.99ドルだ。国内で入手する場合、いろいろ込みで15,000円前後になり、ポインティングデバイスとしてはハイエンドクラスの価格帯に入る。が、それに値する使い勝手は十分に備えていると思う。 ハードウェアレベルでは軽快なボールの回転とデザインが素晴らしい。注目のひねりによるスクロールはユニークなだけではなく、SEによるギミックと合わせて十分に使える機能に仕上がっている。ただし、それに組み合わせるソフトウェアは魅力が乏しく、融通が利かないため、一手間かける必要があるだろう。 なお、本製品は並行輸入の英語版である。国内では目下品薄のようだ。日本語版もいずれ登場すると見られるが、詳細は明らかになっていない。 □Kensingtonのホームページ(英文) (2009年3月24日) [Reported by matuyama@impress.co.jp]
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