西川和久の不定期コラム

デュアル液晶の超弩級ノートPC!
ThinkPad W700ds




本体

 筆者は昔からThinkPad派だったが、T43以降のモデルは所有したことがなく、たまに知人が持っているのを見かける程度になっていた。そんな中、編集部から最新版のとんでもないThinkPadがレビュー用に送られて来た。

 Core 2 Extreme QX9300、17型+10.6型デュアルスクリーン、4GBメモリ、200GBのRAID、そしてレノボ・ダイレクトショップの価格は720,000円(税別)!  何もかもが桁違いのモンスターノートPCだ。早速その内容をレポートしたい。

Text by Kazuhisa Nishikawa



●届いてビックリのThinkPad W700ds

 「究極のモバイル・ワークステーション」とキャッチコピーが付いているこのThinkPad W700ds、届くのをワクワクしながら待っていたが、いざ届いてみると箱のサイズは480×390×165mm。重量も本体が約5kgなのでACアダプタや他の備品も加わりずっしりと重い。雰囲気はとてもノートPCの梱包ではなく、一瞬何が届いたかと思ってしまったほどだ。そして箱から本体を取り出すと衝撃のサイズである。従来のThinkPadとの比較は後述するとして、簡単に特徴をまとめてみた。なお詳細な仕様は同社のPDFをご覧頂きたい。

  • OS Microsoft Windows Vista Ultimate(64bit) SP1 正規版
  • CPU Core 2 Extreme プロセッサー QX9300(2.53GHz)
  • チップセット Intel PM45 Express
  • グラフィックス NVIDIA Quadro FX 3700M(1GB)/ 外部接続時最大2,048×1,536ドット
  • ディスプレイ 17型WUXGA TFT液晶 (1,920×1,200ドット) / 10.6型WXGA TFT液晶 (768×1,280ドット)
  • メモリ 2GB×2 (PC3-8500 DDR3 SDRAM) / 最大8GB
  • HDD 200GB×2 (7200rpm) (シリアルATA/2.5インチ)/ RAID1、DVDスーパーマルチドライブ
  • インターフェイス 電磁誘導式デジタイザ、IEEE1394、モニタ(VGA)、DVI-D、DisplayPort、マイク/ヘッドフォン・ジャック、USB2.0(5)、RJ-11(モデム)、RJ-45(LAN)、ExpressCard/34、ワイヤレスLAN ON/OFFスイッチ、マルチカードリーダ、ドッキング・コネクタ
  • Wireless WiFi Link 5300AGN (3x3)、Bluetoothモジュール (V2.1+EDR)
  • 9セルLi-Ion システム・バッテリ (駆動時間: 約2時間)
  • サイズ W410mm×H51.4-52.5mm×D310mm/約5kg(9セルバッテリ搭載時)
 この太字の部分を見れば一般的なノートPCではないことが容易に想像できる。CPUはモバイル版初QuadコアのCore 2 Extreme QX9300を搭載する。17型のWUXGA対応液晶に加え、出し入れ可能なサブディスプレイとして10.6型WXGAの液晶パネルを搭載する。そのサブディスプレイは17型の液晶ディスプレイの裏側に埋め込まれている。10.6型と言えば、ネットブックでお馴染みのサイズだが、解像度が768×1,280ドットと、一回りアップしているため、これ単独でも普通のノートPCに相当するほどだ。

 Windows Vistaは、メモリが標準で4GB、最大8GBを生かすため64bit版がプリインストールされている。HDDは日立HTS54322が2台、筆者に届いたものはRAID 1(ミラー)になっていた。これはBTOでRAID 0(ストライピング)にも初期設定可能だ。BTOに関してはこの他に、「内蔵カメラモジュール」、「Blu-ray (ウルトラベイ・エンハンスド)」、「メモリ 4/6/8GB」「日本語/英語キーボード」などの選択ができる。

キーボードなど
ボディのサイズが大きいだけにキーボードはフルサイズ。タブレットの左上にあるセンサーは、PANTONE色見本に適応したカラー・キャリブレーション用のユニットだ

バッテリーとメモリ
バッテリーは10.8V、7.8AH、84.2WH。ネジを2本外すとメモリにアクセスできる。ThinkPadは昔からネジの部分に関係するパーツのアイコンが描かれてあるので解り易い

右側
右側には、USB×3、モデム、ペン収納、DVDドライブが並ぶ。USBコネクタが縦に二つ並んでいるため、その高さも想像し易いだろう

正面
正面には、マイク/ヘッドホン、SDカードリーダー、写真には写ってないが、逆側には無線LANのON/OFFスイッチがある

左側
左側は、CFカードリーダー、ExpressCard/34、USB×2、IEEE 1394のポートがある

裏
裏には、電源入力、ネットワーク、DVI-D、ミニD-Sub15ピン、DisplayPort。スリットはご覧のように前後左右全てにある


 ハードウェアとして特筆すべきはメインの17型の液晶パネル。ノングレアタイプで視野角もコントラストも発色も全てにわたって抜群で、驚くほどクオリティの高いパネルだ。更にカラー・キャリブレーション機能を内蔵しているため色に関して安心してオペレーションできる。

キャリブレーション前/後 実際のキャリブレーションは、付属の「huey PRO」を起動し、蓋を閉めるだけ。蓋を閉めると、タブレットの左上にあるセンサーが液晶パネルの状態を計測する。この時、作業中の音「ポヨポヨ……」が流れ始め完了すると「ピーピーピー」に変わるので画面が見えなくても直ぐわかる仕掛けになっている。キャリブレーション後、試しに写真などを表示したところ、実に見事に調整された。

 左の写真がキャリブレーション前(左)、後(右)の違いだ。写真はVista付属の壁紙を使っている。色温度D65、ガンマ2.2に設定しているが、雰囲気だけでも解って頂けるだろうか? 撮影に使ったデジカメは、両カット共、ホワイトバランスと露出を全く同じに設定しているので、写真の色やコントラストの差は、絶対的には何とも言えないものの、相対的にはそのままキャリブレーションの有無の差となる。試しに同じ壁紙を他の調整しているモニタ数台で表示したが、言うまでもなく正解は右側だ。

 逆に惜しいのは10.6型のサブディスプレイ。同じくノングレアタイプで多分これだけ見ていれば十分普通だと思われるが、なにしろメインディスプレイのクオリティが良過ぎるため全ての点において見劣りする。引き出した時に真横に並ぶためなお更その差が解ってしまうのだ。デュアルモニタは、このW700dsの売りの部分なだけに、もう一歩サブディスプレイのクオリティにもこだわって欲しかった。

 キーボードに関しては10キーもあり、キーピッチもフルキーボードと同等なため、デスクトップPCと何ら変わらない雰囲気でスムーズに入力できる。パームレストも十分以上に広い。ただ全体的に結構たわむ。ThinkPadでたわむタイプは見た事が無いのでこの点だけは気になってしまう。スペース的にも余裕があるので、もっとしっかりしたキーボードを乗せて欲しかったところだ。また、個人的に慣れてないだけだが、画面のセンターにキーボードのセンターが合ってないのはどうも調子が狂う。

 さてW700ds、デュアルディスプレイ搭載と言う最大の特徴を持った代わりに、最大の難点である410×310×51.4〜52.5mm(幅×奥行き×高さ)/約5kg(9セルバッテリ搭載時)もあるサイズと重量になっている。ノートPCと言うより、荷物を詰め込んだアタッシュケースといった感じだ。もちろん片手(両手でも)でひょいと持ち上がる重さでもサイズでもない。従って普段持ち歩く用途には適していないため、バッテリ駆動2時間も欠点とはならない。適切な言葉があるとすれば、昔流行った「トランスポータブル」だろう。設置面積で考えても最近のデスクトップPCは小型化しているので、比較してのメリットは薄い。やはりこれだけの機能がオールインワンで一気にまとめて移動可能という点がW700dsの最大の魅力となる。

●サイズとデュアルモニタに驚き

 文章でいくら「サイズが大きい」と書いても、比較対象の無い単独での写真からでは想像つかないだろうから、ThinkPad T42(液晶パネル14型タイプ)と並べてみた。このTシリーズは当時のThinkPadの中では大きい方で、持ち運びをメインとしたモデルではない。そのT42がまるで子供のように見える写真が上段となる。ACアダプタも巨大、T42の横幅とW700dsの奥行きが同じで更に蓋を閉めた状態で高さは倍ある。Trackpointにマットなブラックボディ、デザインなど全体的な雰囲気はThinkPadなのだが、サイズ的にはもこれまで見たことも無いクラスのノートPCだ。MacBook Proも大きい方だがこれ程ではない。

T42との比較1
決して小さくないT42が子供のように見える。ちょっと唖然とするサイズ差だ。写真を撮った筆者が一番驚いたかも知れない

ACアダプタ
手前がW700ds、奥がT42用のACアダプタ。出力も20v/8.5Aと強力。重さも830gと重量級だ

T42との比較2
ご覧のように、T42の幅が、W700dsの奥行きに相当する。また蓋を閉めた状態で高さが倍違うのがわかる

サブディスプレイ無しの状態
サブディスプレイ無しの状態。メインディスプレイだけでも1,920×1,200ドットあるのでデスクトップはかなり広い

サブディスプレイありの状態
サブディスプレイありの状態。メインディスプレイに加えて、サブディスプレイ768×1,280ドットの縦型デスクトップが追加される

ThinkLight
ディスプレイの上端に取り付けられたキーボード・ライト(ThinkLight)。キーボードのバックライトは無いものの、この明かりで十分暗い場所でもキー入力ができる


 写真下段は、このW700ds最大の特徴である液晶パネル部分だ。サブディスプレイの有無でその受ける印象も随分違う。実際の出し入れは、下の動画を参考にして欲しいが、結構ガタン・ゴトンと音がする。ThinkLightと呼ばれるキーボードライトは、T42も搭載しているが数は1つ。さすがにこれだけのサイズで十分な照度を得るためには2つ必要だ。[Fn]+[PgUp]キーのコンビネーションでキーボードライトをON/OFFできるのは従来のThinkPadと同様だ。
【動画】サブディスプレイの出し入れ

●使い勝手

 使い勝手であるが、さすがにCPUはCore 2 Extreme QX9300、グラフィックスにNVIDIA Quadro FX 3700M(1GB)、DDR3 4GBのメモリ、17型WUXGAの液晶パネルを搭載した64bit版Windows Vistaは快適そのもの。ハイエンドのデスクトップにも匹敵する。Windowsエクスペリエンス インデックスはご覧のようにHDDが5.2以外は全て最高の5.9をマーク。申し分ないスペックだ。更にサブディスプレイも解像度が高く、メインディスプレイと発色などの特性が異なるとは言え、かなり役に立つ。最近筆者もメインマシンではマルチディスプレイ化し、メインは編集用、サブは閲覧用と使い分けている。多分このW700dsも同様の使われ方を想定しているのではないだろうか。

RAIDの構成
起動時にRAIDの構成や状態などが表示される。手元に届いたマシンは日立HTS54322がRAID 1(ミラー)の構成になっていた

全デスクトップ
デスクトップ全体を画面キャプチャしたところ。メインディスプレイは1,920×1,200ドット、サブディスプレイは768×1,280ドットなので、メイン側の下は80ドット空いている。単独のノートPCの画面としては広大なデスクトップと言えよう

HDDのパーティション
250GBのHDDが2つ入っているが、RAID 1(ミラー)なのでリカバリーエリアなどを除くとOSから使える容量は約220GBとなる

文字認識
タブレットを使った文字認識。今回OSは英語版であったが、日本語も認識する。最後に書いた文字は最終的に「回」へ変換された。もちろんマウスの換わりとしても使用できる

huey PRO
「huey PRO」を起動、モニタのキャリブレーションが終わったところ。この後に色温度とガンマを設定する。とにかく蓋を閉めるだけでキャリブレーションできるのは失敗や間違いが無くかなり便利。できればW700dsに限らず上位のノートPCには欲しい機能だ

Windowsエクスペリエンス インデックス
Windowsエクスペリエンス インデックス。HDDが5.2以外は最高値の5.9となっている


 HDDのWindowsエクスペリエンス インデックスが5.2と他と比較して揮わなかったため「CrystalDiskMark」で計ったところ、「Read Seq:34.32、512K:25.17、4K:0.413」「Write Seq:49.31、512K:25.78、4K:0.929」と、RAID 1の影響もあるのか確かに今一歩の値だ。RAID 0(ストライピング)にしたり、SSD化すれば速度は上がると思われるが、特にRAID 0はHDDが片方でも故障すると終わり。若干遅くても安全第一のRAID 1の方が無難だろう。

デバイスマネージャ、主なデバイス デバイスマネージャの主要部分を開いた状態がこの画面キャプチャだ。HDDがRAID、モニタがデュアルになっている事以外、特に変わった部分は無く、チップセットにIntel PM45 Expressを使った標準的な構成だ。ThinkPadは昔から標準的なパーツ構成になっていることが多く、Windows以外のOSをインストールする時でもドライバなどにあまり不自由しない。またNVIDIA Quadro FX 3700Mは、OpenGL 2.1、DirectX 10、Shader Model 4.0、CUDA対応など、究極のモバイル・ワークステーションの名に相応しいグラフィックスとなっている。

 付属アプリケーションは、Microsoft Windows Live Toolbar & Search、Intervideo WinDVD、Roxio Creator Business Edition、MyDVD、PC-Doctor for Windows、McAfee VirusScan Plus 8.0、X-Rite hueyPro、そして純正のThinkVantage関連のツールとなる。hueyProとThinkVantage関連以外は一般的にPCへインストールされているケースが多いため今更説明は不要だろう。

 ThinkVantageはThinkPadユーザーには馴染み深い純正のツール群だ。Access Connections、指紋認証ユーティリティ、ハードディスク・アクティブプロテクション・システム、System Update、Rescue and Recoveryなど、新旧関わらず全ThinkPadに適応され、例えば筆者が所有する既にディスコンのX31やT42/43も未だにアップデートされ続けている。違うThinkPadへ乗り換えてもシステム系のツールは同じで迷わず使える。

 前後左右全ての面にスリットがあるので熱やノイズがそれなりに出るのかと思っていたが、実際は静か。更にボディの何処を触っても熱や振動は感じない。もっとCPUに負荷がかかる処理を長時間行えば少しは変わるかも知れないものの、筆者が試した範囲ではそのようなことにはならなかった。静音性の高いノートPCだ。

 一点、筆者的に残念なのは、スピーカーの音質とパワーがボディのサイズの割には不足のことだ。もちろんステレオではあるが、これだけのサイズがあればもっと高音質のスピーカーも入るだろう。とは言え、このマシンの特性上、音楽を主に扱うことは考え難く、あるとすれば動画の編集時に音が必要になる程度。用途を考えるとメーカー的にここにこだわる必要は無かったのだろう。

●総論

サブディスプレイをどう使うか?はアイデア次第!
サブディスプレイをどう使うか?はアイデア次第!

 ノートPCでサブディスプレイを搭載し、QuadコアのCPUやRAIDなど、これまでデスクトップPCでしか得られなかった環境をそのままノートPC化したThinkPad W700dsはスペック的には間違いなく最高峰だ。更にモニタのキャリブレーションやタブレットも搭載。写真にデザインにCAD/CAMに3D、ムービー……など、どんな作業も楽に処理し、そして色を忠実に再現する。

 ただこれらと引き換えに、値段とサイズ/重量が最大のネックとなるものの、例えばパワーの必要な仕事だが、セキュリティ上、不在時は環境ごと鍵の付いたロッカーに保管しなければならないなど、用途によってはこれだけのスペックをオールインワンで持ち運びも可能と言うのは凄い魅力となり得る。とてつもないパワーを秘めたThinkPadだ。



□レノボ・ジャパンのホームページ
http://www.lenovo.com/jp/ja/
□製品情報
http://shopap.lenovo.com/jp/notebooks/thinkpad/w-series
□関連記事
【2月25日】レノボ、サブディスプレイ搭載のモバイルワークステーション
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(2009年3月17日)

[Reported by 西川和久]


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